「お前達の生体エネルギーがベロニカに命を与える。誇るがいい、ベロニカの活力となれることをな」(第44話のトランザの台詞から)
登場話数:第44話「魔神ロボ!ベロニカ」、第45話「勝利のホットミルク」
概要
トランザの手により建造された、究極の巨大ロボ。「グレートイカロスを超えるロボットを造る」という目的の元、試作ロボとしてのG2の開発と失敗とを経て完成に至った。
ロボというだけあって金属的かつ硬質な外装ではあるものの、そのフォルムはどちらかといえば有機的な方向性であり、作中でも目を細めたり口を開閉させたりと、ロボでありながらも生命体のような仕草が見られるのが特徴である。また動力源についても、拉致した人間を体内に閉じ込め、その生体エネルギーを吸収するというシステムを採用している。
格闘戦でもグレートイカロスを凌駕するほどの実力を発揮するが、手持ち武器として大剣を装備する他、口から発生させる衝撃波や、尻尾から放つ高圧電流、それに腹部から射出し敵機への進入路も兼ねるアンカーなど、搭載された武装も多彩かつ強力なものばかりである。防御の面においても左手から発生させるバリアでバードメーザーを無効化し、さらに背中の翼によって空からの攻撃も可能である等、あらゆる面において隙のない性能の持ち主でもある。
コックピットには4人分の操縦席が設けられており、戦隊ロボと同様にバイラムの四幹部全員が搭乗する。もっとも、ほとんどの操縦を担当するのはメインパイロットであるトランザで彼が一時的に離脱した際にもグレイとマリアの2人だけで動かせていたことから操縦に四幹部全員が揃っている必要はなく、あくまで他の3人にトランザの権力を誇示する意味合いが色濃いものとなっている。
クリスマス間近の時期に敵組織が大攻勢を仕掛け、大規模な巨大ロボ戦が展開されるという所謂「クリスマス商戦」を見越した展開のために登場したスーパー戦隊シリーズとしては最初の敵戦力でもある。
このような展開がクリスマス前に設けられた背景には番組の切り替わりの時期が2月中旬~下旬に後ろ倒しとなったことで、最終決戦に入るまでにこうした山場を盛り込む余裕が生じたこと、それに2号ロボやスーパー合体ロボ等の定番化による、販促サイクルの変化等も関係していると考えられる。
デザイン
デザインは雨宮慶太が担当し、デザイン上のポイントとして「キレイで優雅な怪物」が志向されている。本作では野口竜が怪人デザインのほぼ全てを手掛けており、雨宮はメイン監督として演出方面に注力していた都合上、このベロニカが雨宮が本作で唯一デザインを手掛けた敵怪人となる。
頭部のデザインについては、本作以前に雨宮が企画に関与していた『スペクトロン』という巨大ロボット作品(Vシネマ『大予言/復活の巨神』の前身に当たる)において、タイトルと同名の主役ロボットのそれとして描き起こされたものがベースとなっている。
作中での動向
建造は第43話の時点で既に進められており、完成の後巨大なモノリス状の物体として夜の市街地に出現。さらにその場に居合わせた人間をグリナム兵によって拉致し、ベロニカの動力源とした。
一夜明けてモノリスの中から姿を現し、周辺のビルを破壊してその力を誇示しながらも、現着したジェットイカロスにあっさり劣勢に追い込まれるベロニカであったが、それすらもあくまで「敵に勝利を確信させ、一転して窮地に追い込むことで敗北の屈辱を増させる」というトランザの意図に沿った行動に過ぎなかった。
その意図通りに反転攻勢でジェットイカロスを圧倒すると、後から加勢に入ったジェットガルーダをも散々に翻弄し、グレートイカロスへの合体も妨害する等猛威を振るったが、勝利を目前にしてラディゲの出しゃばりにより隙が生じてしまい、そこを突いてのイカロスのバードニックセイバーでの反撃を喰らって損傷したため撤退を余儀なくされてしまう。
グレイによる修復の後、再度市街地に出現したベロニカは、グレートイカロス修復までの時間稼ぎとして出撃したテトラボーイを一蹴し、さらにあらかじめ合体状態で現れたグレートイカロスさえも圧倒、必殺のバードメーザーを難なく無効化して実力の差を示してみせた。
この時点でも既にベロニカの圧倒的優勢という状況は揺るがぬものであったが、トランザはそれに飽き足らず、機体内部に動力源として捕らえた人々の姿を示してジェットマンの動揺を誘い、その隙をついて腹部のアンカーでグレートイカロスを貫くと緊急脱出を図った雷太、香、アコの3人を捕らえて引き上げるに至った。
グレートイカロスが大ダメージを負うのみならず、パイロットたるジェットマンの過半も喪失するというかつてない窮地に見舞われる中、その修理の暇すら与えぬかのように三度ベロニカは市街地に出現、残された竜と凱は応急処置を施したグレートイカロスで再出撃するもやはり歯が立たず、エンジンルームの損傷を修復しながら何とか応戦するのが精一杯という有様であった。
そして再びベロニカのアンカーがグレートイカロスを貫き、これにて決着がつくかと思われたその時、ラディゲがコックピットに密かに仕掛けた装置が作動し、ベロニカの機能が停止するという予想外のアクシデントが発生する。二度までも自分の意に背いたラディゲを粛清せんとトランザまでもが操縦を離れる中、この事態を逆転の好機と見た竜はアンカーを通じてベロニカの内部へと侵入、エネルギー源とされたラディゲが逆にベロニカのエネルギーを吸収したのも手伝って、囚われの身となっていた人々の奪還に成功する。
エネルギー源を失い弱体化しながらも、なおグレートイカロス相手に優位に立つベロニカであったが、ここで小田切長官の指示により、ジェットマンはバードメーザーに乗せてテトラボーイを撃ち込むという起死回生の戦法を敢行。この捨て身の攻撃にはさしものベロニカも耐えきれずにボディを貫通され、圧倒的な強さを発揮していた魔神ロボも呆気なく爆発四散した。
- もしラディゲを最初から搭乗させなかったら?そもそもベロニカを単独操縦仕様に造っていたら?
- もし一度目の反逆の時点でトランザがラディゲを処刑するか監禁して搭乗を禁じていたら?
- ラディゲの二度目の反逆がベロニカがグレートイカロスにアンカーを打ち込んだあのタイミングでなかったら?
- トランザがラディゲを「エネルギーをベロニカに吸収させる」のではなく、もっと確実な方法で処刑していたら?
- ラディゲが囚われの雷太達を解放する代わりに、その場で殺害していたら?
いずれの場合でもジェットマンの勝利はまずあり得ず、正に「幸運が奇跡的に積み重なって得た薄氷の勝利」とも言うべき結果であった(「東映テレビヒーロー図鑑」で香は「勝てたのは運が良かったとしか言いようがないですわ」と述べている)。裏を返せば、バイラムにとっては本来99.999%負けるはずのない戦いであったのも事実であるが、この大番狂わせは図らずも内紛で度重なる勝機を逃し続けたバイラムと固い結束で最後に訪れた一瞬の勝機をとらえて逆転したジェットマンという真逆の構図を強調する格好となったのである。
後の展開を考えると、このベロニカのエネルギーを吸収してラディゲが強化されることがなければトランザの最終攻勢でジェットマンが全滅していた可能性も高い(トランザのあの末路も無かっただろう)。