概要
フルタイトルは『ウルトラマンティガ・ウルトラマンダイナ&ウルトラマンガイア 超時空の大決戦』。
1999年3月6日(土)にて全国松竹系で公開。脚本は長谷川圭一氏、監督と特技監督は小中和哉氏が担当している。
前作『光の星の戦士たち』が好評を得たため、ダイナの次回作に当たるウルトラマンガイアもウルトラマンティガ・ウルトラマンダイナとの共演が検討されていた。
世界観が異なるガイアとの共演を円滑に進めるため、ウルトラシリーズがフィクションの作品とされている限りなく現実に近いパラレルワールドが物語の舞台として用意された(本作の劇中劇としてのガイアと現実のガイア本編の筋書きとは異なる世界。尚、放送内容の一部が後に逆輸入された)。
本作はウルトラシリーズで初めて(舞台装置として)『パラレルワールド』/『マルチバース』設定を導入した作品であり、『大決戦!超ウルトラ8兄弟』も同様の設定が取られ、『大怪獣バトル』シリーズ以降は本格的にマルチバース設定が導入される事となった。
当初は『ダイナ』最終回で行方不明となったアスカ・シンがガイアの世界にやってくるという展開や、脚本の初稿でラストシーンでティガとダイナも変身を解き、高山我夢と一緒にマドカ・ダイゴとハネジローを連れたアスカが三人で並んで歩くという描写も存在していたのだが、長野博とつるの剛士のスケジュールの都合とアスカの行方を観客に先を読ませないようにする為にこれらの案は見送られた(3人の共演は別世界ではあるが、9年後の『大決戦!超ウルトラ8兄弟』で実現した)。また、アスカ本人は10年後、『ウルトラ銀河伝説』で再登場した。
『テレビマガジン特別編集 平成ウルトラ映画全集』(講談社・2000年)掲載のインタビュー記事(P84〜P85)によると小中和哉監督は制作当時はダイナは別の世界に行っていたという解釈をしていたようだ(上述の展開もその解釈から来たもの)。そしてそこからガイアの世界観との兼ね合いを視野に入れつつ、実兄・小中和哉氏との会話を経てメタフィクション構想へと昇華された。そして、子供目線の映画を作りたいという案を元に長谷川圭一氏と共に子供達の日常の中に非日常が入り込むというストーリーに仕上げたという。
長谷川氏が企画の存在を知ったのはガイア4話を仕上げた段階であった為、テレビシリーズのストーリーに影響する話は作れないと語っていた事からもその苦労がうかがえる(実はヴァージョン・アップするというガイアの流れ自体はこの時点で決まっており、作中世界で序盤にV2が登場するという無茶が出来るのもそれが理由なのだろうか)。
ガイアのV2とスプリーム・ヴァージョンが登場しており、これらが初登場した第26話とこの映画の公開日は同日に行われた。
この世界における『ガイア』は少なくとも第10話までは我々の世界と同じ放送内容だったようで、第13話が異なる内容となっている。作中を見る限り女児のファンも結構いる人気番組の模様(玩具店のラインナップを見る限り、昭和ウルトラマンや『ゼアス』は放映済みであることがわかる)。
一方で、子供達以外から見れば我夢は国籍不明機に乗ってきた不審者として扱われ、警察から追われる羽目に。
当初、学校の先生役には、かつて鈴木清がカメラマンとして参加していたテレビドラマ『うしろの正面だあれ』に出演した歌手の和田アキ子に出演してもらおうと交渉を行ったが、彼女のスケジュールの関係で実現しなかった。
主題歌はテレビシリーズ同様「ウルトラマンガイア!」となっている。
音楽は本編同様に佐橋俊彦氏、そして『ティガ』と『ダイナ』の楽曲を担当している矢野立美氏が担当した。
同時上映は『ウルトラマンM78劇場 Love & Peace』であり、前売り券購入者特典もM78化したTDG三戦士が描かれた折りたたみ式のおにぎりケースであった。
時系列について
(もし、繋がっていると仮定した場合は)少なくともV2とスプリーム・ヴァージョンが登場した第26話以降。
ただし、『ウルトラマンオフィシャルデータファイル』(デアゴスティーニ)の『戦いの系譜 PART2』(61-6)ではチャートに記載されておらず、『大決戦!超ウルトラ8兄弟』と同様に欄外での解説となっており、繋がっていないとも解釈できる。
あらすじ
テレビ番組『ウルトラマンガイア』の主人公高山我夢に憧れる小学三年生の少年、新星勉は勉強もスポーツも苦手な気弱な少年だった。
ある夜、録画していたガイアを見ていた勉は、謎の空間に吸い込まれたかと思うと飛来した赤い球と「何も変わらない」と呟く少女を見る。
翌日、勉のクラスに夕べ見た少女に瓜二つな容姿の謎の少女「七瀬リサ」が転校してくる。彼女と親しくなる勉だったが、彼をいじめのターゲットにしている上級生、鹿島田浩たちに絡まれ情けない姿をさらしてしまう。
放課後、勉は隠れ家にしている廃工場で夕べ見た赤い球を見つける。望めばなんでも願いが叶うというその球に、勉は本物の我夢に会いたいと願う。果たして上空に海が広がりファイターEXと本物の高山我夢が現れた。
しかし球は浩たちに取り上げられ、怪獣を出現させてしまった。
登場怪獣・登場ウルトラマン
回想で登場
登場人物
- 新星勉
ウルトラマンに憧れる小学3年生で実質的な主人公。勉強や運動、コミュニケーション能力にやや難がある為、いじめっ子や母親からウルトラマンを卒業するよう催促されているが、人一倍真っ直ぐな心を持っており、これが誰にも負けない彼の長所になっている。クライマックスでは彼の勇気が勝利へと繋がった。
愛読書はガリバー旅行記で本作のキーワードとなる。また廃工場に秘密基地がある。
「超時空のアドベンチャー」では正義感を胸に警察官に就職したが、大人になっていく内に現実の壁に衝突し、本人の心にも迷いが生じている。
演ずるはあの濱田岳氏である。母親役はかとうかずこ氏が担当。
- 平間優
勉が気兼ねなく話せる親友で、メガネが特徴的。
しかしながら、現実に対して鬱屈とした思いを抱えており、赤い球に魅入られてキングオブモンスから二代怪獣を実体化させた。
「超時空のアドベンチャー」では量子科学研究所の研究主任として我夢がこの世界に来た影響で誕生した天才集団「シーカー・アライアンス」と共に並行世界の研究を行なっている。
14年後にジャンファイト!するのは別の話。
- 七瀬リサ
本作のヒロインである謎の美少女。ある日、勉の通う小学校に転校して来て仲良くなった。
その正体は…。
「超時空のアドベンチャー」では勉と結婚し、小学校の教師を勤めている。無論、この七瀬リサとは名前と容姿が同じなだけの別人である。
別の世界ではギャシー星人だったり仮面ライダーデルタだったりする。
- 鹿島田浩
「そろそろウルトラとか卒業せえよ!」
気弱な勉少年を虐めていた上級生の少年で、言い回しがどこか方言じみている。
性格は高慢だが、その本質は誰よりも脳内に怪獣の情報を事細かにインプットし、自分でオリジナルの怪獣を造形できる程の怪獣ヲタ。ウルトラマンよりも怪獣が好きだったが故に勉少年を見下し、趣味に対してオープンな彼を羨んでいたのだが、ティガやダイナが現れた時の反応を見るにウルトラマンが特別嫌いという訳ではない模様。事件の中で成長した勉を認めて和解し、かけがえのない友人となった。
「超時空のアドベンチャー」ではフィギュアメーカーの「宇宙堂」に就職し、順風満帆な人生を送っているように思われたが…?ちなみに現在の商業主義になったウルトラシリーズに関しては思う所があるようだが、酸いも甘いも嚙み分けたのかニーズの違いがあるのだと割り切っており、「今のウルトラにだってたくさんファンがいるわけだし、いつまでも昔ものが最高だって今の子供らに押し付けるのは違うんじゃねーのか」と言っている。怪獣を添え物扱いされる事には快く思っておらず、彼らがいるからこそ、ヒーローも成り立つのだと考えている辺り、円谷キャラらしい人物である。
- 中原耕平
浩の取り巻き。彼も造形の才能があるらしく、スキューラを創作している。
事件解決後は勉の友人になった。
「超時空のアドベンチャー」では彼もウルトラ好きに目覚めたらしく、中堅出版社で怪獣図鑑の企画やガリバー旅行記の復刻を目論んでいるも、上手くいっていないようだ。出版社という仕事柄か、哲学用語にも明るい方。
- 小杉亘
浩の取り巻きで、実家が眼科医。
彼も造形の才能があるらしく、バジリスを創作している。事件解決後は勉の友人になった。
「超時空のアドベンチャー」では彼もウルトラ好きに目覚めたらしく、中野ブロードウェイでコレクターショップを開くも経営難で店を畳み、ならばと妻と一緒に祖父が残した居酒屋を「馬耳栗鼠」と名付けて新装開店するもやはり上手くいっていない様子。
おもちゃ屋の店長を務めるどこかで見たことあるような人物。
ウルトラマン列伝やウルトラマンクロニクルZヒーローズオデッセイでは登場シーンがカッ…もはや何も言うまい。しかしながら、Youtubeの本編フル配信ではノーカットであった(一方、以前のフル配信ではカットされていた)。
店内にはウルトラ怪獣シリーズ、ウルトラヒーローシリーズ、エスプレンダーなどの玩具が陳列されており、この世界にも財団Bが存在する模様。
関連タグ
超時空のアドベンチャー-続編にあたる作品
大決戦!超ウルトラ8兄弟-こちらも、ティガ・ダイナ・ガイアの共演作であり、ウルトラシリーズがフィクションの作品として扱われている。