ほうとうとは、小麦粉を練って作った生地を適当な幅に切って作る麺料理である。山梨県では主に煮干し出汁で味噌仕立てのスープを用い、豚肉、かぼちゃ、こんにゃく、サトイモ等の野菜や具を共に煮込む。
奈良時代に唐からの餺飩(はくたく)という小麦粉を棒で伸ばした麺が伝来され、平安時代になまって「ほうとう」となったという説がある(ちなみにうどんは同じ麺料理の混飩が訛ったものとされている)。また、戦国時代に山梨県内は米作が難しく代わりに麦作が多かったため、麦で作れるこの料理が開発され、武田軍の陣中食として携行されていた。
うどんやきしめんと違い、生地を練るときに塩を使わずに、小麦粉と水のみで練るため、独特な食感となる。また、生地をほとんど寝かさずに調理するため、麺に使われた小麦粉がスープに溶け込むことでスープにとろみがつくことも特徴の一つである。
麺の形状は地域によって差があり、すいとんとの区別が曖昧な場合もある。
ほうとうの派生
おざら
素材はほうとうと同じであるが、太さはほうとうと冷や麦の間ぐらいの麺を冷やし、醤油ぺーつの温かいつゆをつけて食べる。つゆの中に千切りにしたにんじんや玉ねぎ、しいたけ、油揚げを入れることもある。夏季はほうとうの売り上げが落ちることから、甲府市のほうとう料理店が1970年代に考案したもの。ちなみに提供されるのは夏期のみである。
小豆ぼうとう
ほうとうの麺に小豆で作った餡が載せられており、汁粉の中に麺を入れることもできる。山梨県北杜市の須玉地区で古くから供されているもので、2004年には国の選択無形民俗文化財に指定されている。
煮ぼうとう
埼玉県深谷市のほうとう。武州ぼうとうともいう。味噌仕立てであるが甲州ほうとうと比べて味は薄く、またかぼちゃの代わりに深谷産のネギが入れられている。
ラーほー
2004年頃に山梨県笛吹市で考案されたもの。名前の通り麺はほうとう、スープはラーメンである。普通のほうとうより素早く調理ができ、また価格も安く設定することができる。笛吹市内の飲食店で提供されている。
ほうとう奉行
山梨県内では保守的かつ「間違ったほうとうにしない」ようにと鍋奉行ならぬほうとう奉行という者が少なからず存在する。
- 生地は麺であること、かつとろみがあること。麺でないものやうどんみたいにとろみがないものは邪道。
- 汁は味噌でなければならない。醤油や小豆などで味付けは邪道。当然冷たいほうとうも邪道。
- 具材は野菜中心で、かぼちゃを入れるのは必須。肉や魚を入れるのは勿論、かぼちゃが入っていないのは邪道。
- ほうとうは家庭で作って食べるもので、店で売っているものは邪道。
- ほうとうを食べれない山梨県民は山梨県民に非ず。
このように根所のない完璧(と自負する)主張をしては思い通りでないほうとうに対しては苦情・抗議をするというハラスメントを平気で行なう者もいる。実際河口湖畔で観光客用店舗を出していた某ほうとう屋敷は「肉や蟹を入れたほうとうを出したら抗議の電話やメールが大量に来た」として営業が難しくなり、(他に詐欺に遭ったなどもあったが)閉店に追い込まれている。
また、ほうとう奉行の主張に対して当然ながら以下の反論もある。
- ほうとうの発祥が不明で、山梨県(甲斐国)とは限らない。確かに山梨県内で発展したものであるが、埼玉県や群馬県にもほうとうがあり、これらが甲斐国から伝来したという資料はない。
- 地域によっては古くから麺ではなくすいとんにしたり、味噌ではなく小豆を使用しているほうとうがある。特に後者は無形民俗文化財に指定されており、国からも認められている。
- かぼちゃを入れていない煮ぼうとうを全否定しており、地域間対立を助長する行為である。
- 昨今の核家族化や時間に余裕がないことから、山梨県民でも店で食べることが多い。
- 小麦アレルギーなどほうとうを食べたら命に関わる人に対して「山梨県民に非ず」などと排他的態度をとるのはアレハラ(アレルギーハラスメント)でしかない。
このように行き過ぎた主張はかえってほうとうを遠ざける行為であり、ほうとうを守りたいとしても程度をわきまえるのが大事である。
関連タグ
美味しんぼ・・・10巻『ペンションの名物』でほうとうを取り上げている。なお、アニメ版でのみ、「かぼちゃを入れないほうとうなんてほうとうじゃない」と埼玉の煮ぼうとうを否定するセリフを山岡が言っている。
ストライクウィッチーズ・・・アフリカの魔女シリーズ(小説版「アフリカの魔女 ケイズ・リポート」)で真美が調理し、マルセイユが食するシーンがある。因みに小説版の作者・鈴木貴昭氏のブログで小説版の原型を読むことができる。
ゆるキャン△・・・原作3巻P80及びアニメ1期第9話でレシピを紹介、大垣千明が各務原一家のために調理している。
笛吹らほ・・・「ラーほー」のイメージキャラクター