概要
連続テレビ小説『ちむどんどん』のストーリー構成の杜撰さを、批評するTwitterハッシュタグ「#ちむどんどん反省会」のこと。
放送中Twitterでトレンド入りを繰り返していた為か2022年の新語・流行語大賞候補にノミネートされてしまった。
ネット上の批判
このドラマは沖縄が本土復帰してから50周年を記念して作られた。
しかし、一部のキャラの悪行・無理のある展開・雑な時代考証など問題点だらけで批判が多い。
それゆえ、脚本担当の羽原大介氏に対しても「今までは面白かったのに何かあったのか」「マッサンやフラガールと違って実話が無いパターンは苦手なのか」といった疑問や考察の声すら挙がるほど。朝ドラ受けをしている博多華丸・大吉はコメントに困ることが増え、朝ドラ受けをしない日も増えている。
民放のドラマなら「嫌なら見なければいい」で済むが、NHKのドラマは視聴者からの受信料で作られている。見るのをやめても「受信料でひどいドラマが作られる」という問題点は変わらない。民放で不人気なら話数が削減されたり広告収入が減ったりするものだが、NHKのドラマはいくら問題点が噴出しても放送を打ち切るという動きは一切なく、受信料が下がるわけでもない。こういった点も批判が多い一因といえる。
SNSなどでは、連続テレビ小説に対する批判タグとして「〇〇反省会」というタグが使われていたが、これまでに無いレベルで批判意見が目立つ様になり、本来なら好意的な書き込みに使われるであろう「ちむどんどん」タグでも批判が増え、反省会タグのみでは批判意見との棲み分けが困難になってしまう。
その対策として本家タグに加えて原則好意的な書き込みを示す「ちむどんどんする」という派生タグまで生まれる事態が起きている。
なお、「〇〇反省会」タグは下半期の作品(NHK大阪放送局制作)に使われることが多く、東京制作の上半期の作品はタイトルを捻った(例:「半分白目」、「なちゅぞら」など)ものが主流だったが、今作品はなぜか反省会タグのほうが優勢であった。
一部のキャラの悪行
- 比嘉暢子(結婚後は青柳暢子)
- 本作の主人公であり、ヒロイン。連続テレビ小説ではヒロインが天真爛漫なのはお馴染みの設定だが、彼女の場合は自分の夢ばかりを優先して他人の立場を全く考えない傾向があり、悪印象を与える方向に出てしまっている。例として、自分が勤めるレストランオーナーの大城房子に「料理をしないのに偉そうだ」と詰め寄る、取り分けられた料理に「自分の分が少ない」と文句を垂れる、和彦の恋人である大野愛に「和彦を好きになったけど愛がいるからあきらめる」とわざわざ宣言する、和彦の家のお手伝いさんにいらないと言われた弁当を毎日押し付け、それを止めようとした和彦に「何か間違ったことしてる?」と問いかけるなど枚挙に暇がない。
- 身重の体で独立しようとする暢子を理由や代替策を交えて延ばすよう説得する周囲に対しても「うちは諦めたくありません!」と強硬な姿勢を崩さなかった点に代表されるように、問題に対し努力で解決したり、折衝することもなく一点張りの強硬な態度で相手を折る姿勢が目立つ。
- そもそも暢子は高校3年生になるまで何の夢も目標もなく、母親がわざわざ知り合いに頼んで就職先を決めてくれたというのに、高校最後の文化祭で料理の面白さに目覚めただけならまだしも、その文化祭の終了後に突如として「東京に行ってコックさんになります!!!」と、よりにもよって母親や知り合いや就職内定先の人を含む大勢の人々の前で爆弾宣言し、母親や知り合いや就職内定先の立場など一切無視して勝手に内定を踏み倒していた。この後、母親や知り合いがどうやって就職内定先に謝ったのかは劇中では省略されていたが、こんな気まぐれで無神経な思い付きの爆弾宣言が母親や知り合いにどれだけ多大な迷惑をかけたか暢子本人は分かっているのだろうか? いや、全然分かっていないだろう。しかも、わざわざ東京まで行って銀座のイタリア料理店で何年も修行したのに、結局は店を退職して、子供の時から慣れ親しんでいた沖縄料理の店を東京で開き、挙げ句は分野の異なるイタリア料理の修行をしていたせいで沖縄料理の魅力を伝えることができなかっただの、最終的に故郷に戻って店を開きたいと思った際には東京の店が重荷になるなど、「ちむどんどんする」を優先するあまり周囲の迷惑も顧みず無計画に突っ走るため、どこまで行っても視聴者の共感を得にくいヒロイン。こんなねずみの嫁入りみたいな結末になるのなら、そもそも分不相応に高望みして東京にこだわったりせず、最初から地元沖縄の料理店に就職しておけば良かったのに、下らない見栄のせいでとんだ回り道をしてしまったものである。
- 演じた黒島氏に関しても主役として目立つ機会も多く、作品が不評に立つためか度を越した批判も見られた。そのためか、黒島氏のファンからは「公金で作った黒島結菜のネガキャン」と評されることも……。
- 比嘉賢秀
- 暢子の兄。彼の自己中で無責任な振る舞いの数々は目に余るものがあり、いくらフィクションでも…と、多くの視聴者から不満の声がある。家族への愛情と行動力は本物だが、その資金の工面手段は主に知り合いに金を無心してからの競馬(有り金全部賭けた上にもちろん外れる)や、詐欺師の我那覇良昭が持ちかけるビッグなビジネス(しかも同じ人物に何度も似た手口で騙される)といった大穴狙いばかり。金を受け取った際に度々置いていく「借りた金は部にして返す」という手紙が彼の全てを物語っている(注:彼は「倍」という漢字を「部」と書き間違えるほど頭が悪く、しかも本人は漢字の書き間違いにすら気付いていないのである)……。
- ただし、賢秀の悪行やそれを咎めない母に関しては沖縄の視聴者から「当時の沖縄の長男にはよくあったこと」との声もある。実際、『ちゅらさん』でも悪質さに差はあれどヒロインの兄が盛大にやらかす一幕がある。しかし、暢子と和彦の恋愛模様のドロドロが繰り広げられた週ではむしろ賢秀が唯一の癒しという妙な現象も見られた。
- 養豚場で曲がりなりにも素直に働く気になった矢先に、親しくなっていた清恵が一度離婚経験があることを知るや否や「俺を騙していたのか!」と突如激昂するという酷い発言をしてしまう。過去が後ろめたいのは賢秀も同じで、それを棚に上げるどころか突っ込まれた際には逆ギレする始末。
チンピラ同然の元夫の酷い扱いがトラウマになって思い出したくなかっただけであり、商談の邪魔をされたとはいえ傷心の女性に対してあんまりだと再度批判されることになってしまった。
- 比嘉優子
- 暢子の母。母として暢子たちを優しく、時に厳しく見守る……かと思いきや、子供たちの数々の問題行動を「何も間違っていない」と笑顔で全肯定する人物で、賢秀や暢子が自己中心的な人物になった諸悪の根源と言われている。
- 特に賢秀には大甘で、彼がどんなに悪いことをしても咎めようとしない。何かとすぐ賢秀に大金を渡しては借金を増やす羽目になっており、なぜその大金を病弱な歌子の治療に使わないのかとも批判されている。
- 優子が賢秀に甘い理由は「戦後に亡くした弟に重ねていたから」と説明されたが、その点を差し引いても優子は賢秀に甘すぎる異常な人物になっている。
- そういった理由で長女の良子には賢秀と同じ位警戒されているものの、「ニーニーの悪い癖がいつまでも直らない」と本気で止められれば彼女のいないタイミングでこっそりと送金したり、賢秀が売る栄養ドリンクを応援する意味で買うのはともかく、マルチ商法だと説明しても「はいはい、そんなことより…」と即聞き流したりと無条件に甘やかす癖は直るどころか日に日に悪化しており、良子1人ではとても手に負えないのが現状。
- それでも、兄妹達が「母の悪口を言う奴だけは許さん」と口を揃えて発言する程、母親として深く慕われていることは間違いないのだが…。
- 比嘉賢三
- 暢子の父。序盤で亡くなったためさすがにダメエピソードはないだろうと思われたが、過去に房子と東京で店を開く約束を反故にして沖縄で結婚して連絡を絶ったという話や、賢秀が善一の店で小銭を盗んだ際に「お前は悪いことをしたがお前は悪くない」という謎理論で養護するというダメ親父エピソードが回想で続々公開され、この両親に育てられれば子供もああなる、と呆れられた。
- 比嘉良子(結婚後は石川良子)
- 暢子の姉。実家のために喜納金吾と結婚寸前までいったが、結局は石川博夫との恋愛結婚を選択する。しかし、古風な石川家の風習に馴染めず「離婚する」と喚き出し、視聴者から「やっぱり金吾にしておけば」と言われる始末。何しろ金吾は最初から「結婚後も教師の仕事は続けていい」と良子に言ってくれていたのだから、視聴者たちが金吾との結婚を勧めたのは当然であろう。
- また、娘の晴海が生まれると「先生の代わりはいるが母親の代わりはいない」と専業主婦を選択したのに、子供が成長すると「私の名前は晴海ちゃんのお母さんじゃない、人として成長したい」と職場復帰を希望し、受け入れられなければ離婚するとまた喚き出し、視聴者から「やっぱり金吾にしておけば」と言われる始末。石川家への職場復帰の説得についても良子自身が石川家本家へ直談判せず博夫に任せきりで、「不誠実だ」「だから職場復帰を認めてくれないのでは?」という意見もある。
- そして博夫と別居し実家に戻り、病弱な妹の歌子に晴海を預けて職場復帰を果たすなど、兄妹にも負けず劣らず周囲を顧みない傍若無人な人物になっている。ただ、余計なことばかりする賢秀や危機感が無い優子に対して毅然と注意できる数少ない存在であり、融通の利かない以外は比嘉家の中では比較的良識的な人物ではある。
- 母・優子に再婚話が持ち上がった際に「結婚は当人同士だけの問題ではない」と言ったり、暢子が結婚しても家事と仕事を両立させると宣言したときに「両立は大変だよ」と言うなど、視聴者から見れば「お前が言うな」と言いたくなるような展開もあった。
- 石川家の男達
- 博夫の祖父や叔父といった彼らも、昔からの風習・しきたりを重んじ、良子に本家の嫁たる自覚を要求する場面が度々描かれるが、そんなに厳しい家風なのになぜ結婚が許されたのか、実家住まいではなくなぜマンションでの別居が許されたのかなど謎が尽きない。
- 挙げ句の果てには、石川家の男達が初登場した第53話も含めてただの一度も姿を見せず、劇中で存在が語られることもなかった石川家の曾祖母が、何の伏線も脈絡もなく第80話に突如として現れ、良子と博夫に離婚を迫る石川家の男達を一喝して黙らせたことにより、数年間に及ぶ良子と博夫の結婚問題が一気に解決するという、不自然極まりない展開に視聴者たちは唖然。「この曾祖母が最初から登場していれば良子と石川家の確執は起こらずに済んだのでは?」とか「作者は良子と博夫の結婚問題をどうやって解決すればいいのか思い付かず、当初の設定にはなかった曾祖母を無理やり登場させて石川家の男達を黙らせるという苦肉の策に出たのでは?」などといった趣旨の疑問や批判が相次いだ。
- 比嘉歌子
- 暢子の妹。暢子に振られたのを分かっていながら、砂川智を結婚式へ連れていくために仮病を使いアッラ・フォンターナに連行しており、さらに到着すると示し合わせたかのように良子が「賢秀が来れなくなった」と言って県人会のみんなで智を式場に強制連行するなど、智の古傷をえぐるような行為に「これでもう比嘉家にまともな人物はいなくなった」「智の気持ちも考えろ」と批判が殺到した。さらにはこの展開に以前東京の病院で検査しても歌子の病気の原因が不明だったことから「病弱なのも仮病なんじゃないか?」と視聴者から勘繰られてしまうこととなった。
- 沖縄で歌手になろうと奮闘する歌子を手伝おうと、智は取引先の居酒屋で歌子の歌を披露する場面を手配する。その際店主にはギャラはいらないと言い、歌子にはギャラは前払いでもらったと嘘をつくが、実際に歌おうとするとまた上手に歌えなくなり、歌子はライブを止め店主にギャラを返そうとしたことで智の嘘が判明。歌子は智を「だましたの?」と責めるが、上述のように智を仮病を使ってだました歌子には視聴者から「お前が言うな」の大合唱で歌子の株も大暴落した。
- 青柳和彦
- 6年も付き合って両親公認の婚約相手がいたのに、結婚直前で暢子のことが気になり出して、それを察した婚約相手が身を引くという朝ドラ史上稀に見るひどい相手役。しかも婚約者側の両親は住居のマンションまで用意しており、結婚式のキャンセル料等はどうしたのかは以降全く言及されなかった。しかし婚約破棄からわずか数日後に暢子からプロポーズされて結婚を決めるという結末になり、視聴者からはクズ(他にクズ彦、カス彦等)と言われるようになってしまった(このことについては作中で田良島にも皮肉られている)。
- 新聞記者なのに相手の話をさえぎって自分の話をし始める、取材相手になぜか上から目線といった悪癖も目立つ。また、「女性も働き、自立すべき」という1970年代にしては現代的な思想を声高に語るが、その持論を展開している背景で愛に料理を取り分けてもらってそれに礼を言うこともないなど、言行不一致な所も見られる。
- 暢子と結婚後は極端にセリフが少なくなり、たまに喋ったとしても暢子のやることに賛成するだけになり存在感が薄れていった。
- 田良島甚内
- 登場人物の中では比較的まともなキャラだったが、「母親の一番の不幸は、息子と結婚できないことっていうからな」という問題発言(もっともニヤニヤ冗談を飛ばすような言い方だったが)をして、視聴者からの評価が大きく下がってしまった。この発言の典拠は不明だが、さもこれが一般的に言われている言葉であるかのように発言している。また、田良島は精神年齢が幼稚で社会常識がない暢子を「人柄は100点満点」、前述の通り不誠実の見本のような和彦を「誠実な男」と評する(もっとも母親の前で「クズ男」なんて言えるわけがないが)など、人を見る目は皆無だと視聴者から言われている。
- 矢作知洋
- 「アッラ・フォンターナ」の元料理人。突然店を辞めた従業員の一人であった彼がいきなり現れたと思いきや店の金と権利書を盗んだ上に失踪。権利書を手に反社会勢力が店に現れて脅しに来るという吉本新喜劇ばりの展開になり、権利書の買取りを拒否すると様々な嫌がらせをするというもはや道徳観どころではない状況になってしまった。おまけに肝心の弁護士も当てにならず、警察もまともに動いてくれないだろうということから警察にも相談しようとしなかった。
- もっとも、暴対法のできる前の昭和はこのように暴力団が幅をきかせていることがよくあり、単に警察に通報すれば解決するという時代ではなかったことは事実である。後述の通り基本的に時代考証がいい加減な本作において、数少ない「時代的に正しい描写」がよりにもよってこの場面というのは、何とも皮肉な話である。おまけに、上記の反社会勢力の男達が店内で暴れている所に突如として三郎が現れると、男達の親分が「戦争中に三郎に世話になった」という理由であっさり店から手を引くという、これまた何の伏線も脈絡もない不自然極まる話の急展開に視聴者たちは開いた口が塞がらない状態であった。
- しかし、暢子の店に雇われてからは非常識な暢子に対してのカウンターという立ち位置を獲得し、視聴者からの人気が急上昇した。
- モブ
- 主要人物以外のモブについても、乱暴ないじめっ子やチンピラが度々現れて暴力を働くというエピソードがあまりに多く、整合性がとれない以前にそもそも話の通じない前提の人物が多すぎて世界観が世紀末とも言われる。朝から見るドラマにもかかわらず「ヤクザ映画みたい」「これじゃチンピラどんどん」と嫌悪感を示す視聴者も多い。
- 立場的に何をやらせても悪人の理不尽な言いがかりとして片付けやすいため、話の整合性を無理矢理とるために多用されていた可能性が高い。
無理のある展開
借金問題をはじめとしてさまざまな問題が立ちはだかるが、週末ではどのように解決したのか特に触れられないままうやむやになることがよくある。暢子の腕が上達する様子が描かれていない、数年間何もなかったのに突然恋愛感情が芽生えるなど、描写の積み重ねが行われないために唐突感のある出来事も多い。
また、時間の経過を「あれから数年」で済ますのはドラマなどではよくあることなのだが、本作では事あるごとに数か月、数年と時間がよく飛ぶだけでなく、「暢子が料理している場面がない(あっても盛り付けてるシーン)」「子供が生まれたらすぐ成長」「いつの間にか借金完済」「好きになったら結婚」などなど細かい過程をすっ飛ばすことが多すぎる。
上記の石川家の曾祖母が出てきて問題を一気に解決する以外にも矢作の退職に端を発したヤクザの嫌がらせが親分が三郎に恩があったということで解決したり、結婚を許さない重子の態度を崩したのはオーナーの発案した料理だったりと、とにかく主人公以外の大活躍で丸く収まることが多くて主人公たちの成長がまるで見られない。
暢子が高額な電話料金を全く気にせずたびたび長距離電話をする(1970年代当時の電話料金は2.5秒で10円)、東京都の銀座で仕事をしている人々が神奈川県の鶴見で集う、暢子が銀座のフォンターナの閉店後に仕込などを済ませてから鶴見のあまゆに帰って店の手伝いをしている、賢秀が住所を知らないはずの和彦の家にやって来る、フォンターナに毎年来る常連客を6年も勤務している暢子が知らない、矢作がわざわざ鶴見まで来て食い逃げするなど、常識的に考えてありえないようなシーンも多い。
見るからにチンピラで清恵から強請ろうと数年間探し回っていたはずの元夫・涌井が清恵の父・丈雄に何処かへ連れられ、一人戻ってきた丈雄の「奴と話を付けてきた。もう二度とここには来ない」という台詞の通り本当に綺麗さっぱりいなくなってしまった。
「奴が来た時のために、色々と手を回してあった」とのことだが、多少では引き上げそうにない人物だっただけに、丈雄がどのような方法で話をつけたのか全く語られていない。
豚の餌にでもなったかというネタにされることもあったが、仮に丈雄がそれほど恐ろしい人物だとしたら、元夫の涌井が知らないはずがないだろう。
結局彼の行方は最後まで謎のままで、清恵に離婚歴があったことが判明する為だけに出てきた完全な一発屋となってしまった。
沖縄県のやんばると東京・鶴見が主な舞台なのに、深夜に沖縄県のやんばるから電話してきた良子が翌朝に神奈川県の鶴見に現れるという、1970年代はおろか2020年代でも不可能な短時間での長距離移動がしょっちゅう行われている。そもそも深夜にバスや飛行機などの公共交通機関は動いていないのだから、良子はどれだけ急いでも翌朝までは沖縄県のやんばるを出発できるわけがない。また、賢秀は千葉県の牧場を拠点としているのに、なぜか神奈川県の鶴見にちょくちょく来ている。
和彦の母・重子が暢子との結婚を反対する理由も当初は「家柄の違い」「住む世界が違う」という話だったのに、いつの間にか「結婚しても働き続けたいという女性とは幸せになれない」と論点がずれてきている。
前述の通り、石川家の男達が初登場した第53話も含めて石川家の曾祖母はただの一度も姿を見せておらず、博夫自身も石川家に曾祖母がいると劇中で語ったことはただの1度もなかった。それにも関わらず、良子と博夫が結婚してから数年も経過した第80話になって、それまで設定になかった曾祖母を突然登場させたのは、作者が良子と博夫の結婚問題を解決させる方法を思い付かなかったための苦肉の策ではないかと視聴者からは指摘されている。
法律の面でも矛盾がある。
智が「大島さんの芋、東京のみんな食べたらびっくりすると思う」と沖縄のさつまいもを東京の人にも食べてもらいたいというシーンがあるが、沖縄県のさつまいもの県外持ち出しは植物防疫法で禁止されている。ただし発言のみなので実際に持ち出したかは定かではない。
鶴見北西信用金庫の職員が暢子に杉並区の物件を紹介するシーンがあるが、途中から職員の言動がまるで不動産屋のようになっている不審点に加え、そもそも信用金庫は法律で営業範囲を決められているため、神奈川県の信用金庫が東京都杉並区の物件を紹介できるはずがない。
第20週「青いパパイアを探しに」では、無職状態となっていた元フォンターナ調理人の矢作が自身の商売道具である包丁を肌身離さず持ち歩いていたというエピソードが描かれたが、実はこの行為は銃刀法に抵触する可能性があるとネット上で指摘され、一時「銃刀法違反」というワードがSNSのトレンドに上がった。さらに同回が放映された翌日の8月26日、京急電鉄の電車内で寿司職人の男性が所持していた包丁を誤って床に落とし、驚いた乗客が非常ドアコックを開けて電車が緊急停車するトラブルが発生。このニュースが流れると「リアル矢作現る」「ひょっとして鶴見に向かってたのか?」などとネット上で再び騒がれる事態となってしまった。全く、タイミングが悪過ぎなのか逆に良過ぎなのか…。
これ以外にも時系列を細かく見ていくと矛盾しているシーンが多々ある。
自称高級レストラン「アッラ・フォンターナ」
当初は「予約が取れない人気高級レストラン」という触れ込みだったが、「これで高級とは?」と首をかしげるような描写が多い。
まず、初登場時に暢子が沖縄から上京したままの姿(薄手のシャツに短パン、ビーサン)で入店できており、ドレスコードがないのかと言われてしまっている。
接客は店の方針としてソムリエと思しき人物が一人いる以外にホール専用スタッフを置かず、全て厨房スタッフがまかなっているが、テーブルが少ない小さな店ならともかく、フォンターナの規模でホールスタッフ兼務となると料理を作っている間、ホールがほったらかしになってしまうなど、かなり無理が出てくる。それに調理をしていれば必然コックコートは相当汚れるはずだがその状態で接客に出るのは問題にならないだろうか。また、暢子は肩まで伸びた髪をまとめることすらせずに垂らしていることについてはツッコミが多い。
部外者の賢秀が閉店後の店に入ってきて食材を勝手に触る、仮にも記者である愛を厨房に入れる、閉店後に店に来た怖い人を入れてしまうなど、セキュリティ面でも問題がある。
賢秀が一目惚れした女性をフォンターナに誘った際になぜか社員総出でお出ましになり、それをそのまま受け入れるなど「予約が取れない」という設定はどこへやら。
接客に至っては、テーブルまで案内した客の椅子を引かない。料理を運んだあと、テーブルの横に突っ立って食べるのを見つめている。スタッフが常連客と大声で談笑する。暢子が初めて訪れた際にオーナーとシェフが2人して暢子を「マサカヤー様」とあだ名する。注文されたとはいえワインボトルを一人一本提供し、泥酔者を出すなど高級レストランとしてはあり得ない接客態度の数々が散見される。
二ツ橋シェフが両足を骨折し、1か月の入院(両足骨折の割に1か月と短過ぎる入院期間にもツッコミがある)になった時も6年以上勤務して来たはずの厨房のスタッフが突如全く連携出来なくなり、暢子がシェフ代行をオーナーから指名された際は矢作等他のシェフ達からは「やはりコネか」と不満の声が上がり、後に矢作を含めた3人のシェフが退職するきっかけの1つとなっている。
出てくる料理も盛り付けが簡素で味気ないと言われることも多く、66話に出てきたバースデーケーキに至っては素人が作ったレベルのモノであった。
50話で暢子が沖縄料理のイカスミジューシーをヒントにイカスミパスタを作るが、もともとイカスミパスタはイタリアの伝統料理であることをフォンターナの料理人はおろかシェフの二ツ橋やイタリアで修行してきたはずのオーナー房子ですら指摘しなかったため、まるで暢子がイカスミパスタを発明したかのような描写になってしまっているなどもはや専門知識の必要もなくおかしいと断言できるような間違いもある。
暢子が店の料理に勝手にアレンジを加えてしまうのも問題がある。店の味を独断で勝手に変えていいものではないし、元の料理自体がそもそも日本人にほとんど知られていないものが多いのにアレンジ料理を作る必要性がない。
その他イタリア料理の描き方の問題点について日伊協会常務理事を務める長本和子氏から指摘されている。
そもそもドラマの舞台となる70年代には、日本ではイタリアンはまだ一般的ではなく、高級レストランといえばまずフレンチが主流なのであるが。
レストラン内の描写ではないが、房子がワインを飲もうと言って赤ワインを注ぐが、ボトルに貼ってあるラベルは白ワインだったり、別の場面ではスパークリングワインのボトルから出てきたのがただのロゼワインだったりと、適当なことをしてしまっている。
脚本の羽原大介は「僕たちおじさん3人は料理の知識が全くないんです」、演出の木村隆文は「僕にとって料理は『美味いか、不味いか』ではなく『食べられるか、食べられないか』」と発言している。取材不足以前の制作人の料理に対する知識や興味のなさがそのまま出てしまっている。(ちなみに「3人」のあと1人は制作統括の小林大児である)
いや、そんなんで許されるか。
食べ物を粗末にする
手っ取り早くハプニングを演出するためなのか、鍋をひっくり返す、料理を運んでくる最中に転ぶ、料理を焦がす、良子が生徒のために考えた給食がほとんど手をつけられずに廃棄されるなど、とにかく食べ物を粗末にするシーンがこれでもかと出てくる。
挙句108回ではフォンターナに訪れた矢作に対し、焦げた料理を出すという嫌がらせを行うプロの料理人にあるまじき行為が描かれ批判が続出した。
いい加減な時代考証
物語の時点では存在しないもの、通称オーパーツと呼ばれているものが多数登場する。
和彦が母親と闇市に行くシーンがあるが、和彦の年齢的に闇市が行われていた時期と計算が合わない。
(以下に挙げるものは1978~79年の話を指している)
- ペットボトルの醤油が使われているが、この時代には存在しない。
- ズッキーニの入った段ボール箱が登場するが、この時代の日本ではズッキーニの知名度は現在よりもはるかに低く、ズッキーニの大量栽培は行われていない。
- 賢秀が夜に競馬中継を聴いているシーンがあるが、実際に夜の競馬が始まったのは1986年からであり、それも現在に至るまで地方競馬のみに限定されている。
- 物件情報が活字で印刷されているが、この時代はまだワープロがとても高額で一般には普及していないため手書きでないとおかしい。
- 暢子が開店した沖縄料理店「ちむどんどん」に置かれたレジが時代設定の四半世紀後の2005年に発売されたタイプ。
- 1978年当時の日本ではとっくに廃れていたはずのオート三輪に乗っている、都内にコンクリの敷かれてない大きな道路があるという逆オーパーツ状態も見られる。
沖縄本土復帰50周年記念ドラマのはずだが…
と言うか、そもそも沖縄返還がコンセプトの話だったはずが、返還に関してほとんど触れられていない。構想段階で話し合いを進めていくうちにいつの間にか「どこの誰にでも当てはまるような話にしよう」という当初のコンセプトを無視した結論になってしまった。
当時の本土では沖縄県民に対して差別的ともいえる状況で、沖縄出身というだけで部屋が借りられなかったり、「沖縄県民入店お断り」というひどい店もあった。当時の世相にあえて触れない作品もあるが、沖縄本土復帰50周年記念ドラマを謳っているのに全く触れないのは不自然ともいえる。
ジェンダー論や良子の夫婦での家事の分担等の考え方など、そもそも登場人物の思想が現代的すぎる。
著名人の反応
以上、これでもかとストーリーの展開や設定に問題点が上がる中、本作を視聴していた著名人からも厳しい意見が寄せられている。
毎期10作以上をチェックするドラマウォッチャーとして知られている声優の緒方恵美だが、8月5日にTwitterで「良い要素はたくさんあるから… 頑張ってほしくて… もうちょっと…もうちょっとって… …だけど。だんだん、…流石に、ちょっと。残念だけど…戦線離脱。朝ドラではめずらしいなあ…」と本作の視聴をギブアップするコメントをした。リプでも「逃げないことで有名な緒方さんが逃げるドラマ」と話題になった。
- 礒崎陽輔
本作に対して政治界からもコメントが。元農林水産副大臣で元参院議員の礒崎陽輔は8月14日にTwitterで「俳優の皆さんは立派に演じられていますが、脚本の論理性が崩壊しています。私自身沖縄振興の関係者として残念であり、既に手後れかもしれませんがNHKは猛省する必要があります」と厳しいコメントをした。
ミュージシャンのヒャダインも8月17日にTwitterで「ちむどんどん、朝からなんかいやーな気持ちになりますねえ。何とかならないのかな。見なきゃいいんだな。」と、視聴を離脱するようなコメントをしている。
有名なアニメ制作会社ガイナックスの元代表取締役で評論家の岡田斗司夫も6月5日における自信の生配信で「朝ドラのちむどんどんは、ついに見るのを止めましたね。いや中身が無いだけでは駄目と言えないというのをさっき話したんですけど、中身が無くてノリが悪くて辻褄が合わなかったらもう駄目だと思ってですね見なくなったんですけども…」と語っている。
ウルトラマンや仮面ライダーでお馴染みの脚本家である長谷川圭一もTwitter上で可愛がっていたブタを食卓に出すくだりがキツく初期にリタイアしたことを明かしている
後継作品に及ぼした影響
『ちむどんどん』放送後の2022年10月から大阪放送局で制作される後期朝ドラ『舞いあがれ!』の放送が開始されたが、朝ドラファンの中には演出や脚本から「ちむどんどん」との共通性を見い出そうとする「ちむどんどん後遺症」発症者が続出し、「#舞いあがれ反省会」というハッシュタグまで作られるようになり、11月21日からスタートした「航空学校編」では脚本、演出等がバトンタッチしたことで前編とガラリと変わったこともあり、特にそれが顕著となった。全くの風評被害である。
紅白歌合戦では…
例年の紅白歌合戦ではその年に放送された朝ドラに関する特集コーナーが設けられたり、紅組司会(2021年以降は紅白の区別なし)を朝ドラ主演女優が務めることが多いが、「第73回NHK紅白歌合戦」では司会に黒島ではなく橋本環奈が選出(一応、黒島はゲスト扱い)、朝ドラ特集コーナーも三浦大知が「燦々」を披露する前に少し触れられた程度で後継作品の『舞いあがれ!』に多く時間が割かれるというあまり話題に上がらないような徹底した措置がなされている。ちなみに、司会に選ばれなかったとしても、審査員に選ばれたり、PR大使を務めたりしていたが、黒島はそれらにも選ばれず、次作の福原遥が審査員に選出されている。どうしてこうなった
参考資料
- 料理考証の問題点 - https://toyokeizai.net/articles/-/602174
- 法的な矛盾 - https://www.excite.co.jp/news/article/AsageiMuse_excerpt_15458/
- 時代考証の誤り - https://www.excite.co.jp/news/article/AsageiMuse_excerpt_13869/
関連タグ
純と愛…同じく沖縄が舞台で、主人公の親類がクズキャラな朝ドラ。