概要
時代考証とは、現在では主に創作物に登場した要素が設定された時代に合致するかどうかを検証すること(考証も参照)。あるいは時代劇、歴史創作の制作に当たり、当時ありえた風俗、技術、作法に基づいて作品を組み立てる事。
考証の語源は、日本・中国の両国であまりにも古文書やそれらの解説書の内容が実態から乖離していたり、最悪の場合は作者すらも偽っているケースが多すぎたことで、こうした文献を鵜吞みにせず内容をきちんと検証しようとして提唱された考証学から。
西洋でもこうした動きは実証主義として知られる。
こうしたことから、現代でも「文献等の内容の整合性を確認する」という意図でこの言葉が用いられることがある。
明治維新後、時代の趨勢もあってか日本国内では歌舞伎などの演劇といった芸能・エンタメ界隈でもクオリティ向上の一環からなるべく演じる時代に即した舞台設定を行おうとする機運が高まることになった。
この結果、「考証」の概念が創作面にも応用されるようになっていく。
詳細は➡時代考証:Wikipedia
ただし、現代の歴史創作では、当時の時代背景に合わない服や道具や現代風の言葉づかい、もしくはいわゆるお約束に基づき、史実とは乖離した描写をあえて採用している場合が多い。例えば江戸時代以前の女性の化粧風俗である引眉とお歯黒は昔の時代劇ではよく採用されていたが、現代では採用されることはほとんどない。
あくまでも創作物のクオリティを上げるためのものであり、教科書のような歴史解説が目的ではないのである。
時代考証の適用方法
フィクションにおける時代考証をどの程度重視するか、あるいはどのような形で守るか、は作品による。
『あんみつ姫』や『銀魂』などでは時代考証は完全無視されており、「時代にそぐわないものが多数登場する」というのをギャグにしている。『真夜中の弥次さん喜多さん』では「主人公たちがバイクで江戸を飛び出したところで時代考証に厳しい岡っ引に捕まり、バイクを没収される」というネタがある。
日本中世史を専攻した尼子騒兵衛の手による『落第忍者乱太郎』にも、時代にそぐわないものが非常に多く登場するが、これは尼子のこだわりにより、当時存在しなかったことが分かりやすいものに限定されている。つまり紛らわしいものは出してはならないという縛りをかけているのである。
長寿シリーズでは、時代考証の基準を変える(現代風の価値観を取り入れたライトな内容にする、逆にリアリティを重視したハードな内容にする、など)ことが従来のファンの不興を買いがちである。大河ドラマの一部の作品がこれにあたる。
『風雲児たち』シリーズで有名なみなもと太郎氏はエッセイ漫画『挑戦者たち』で時代考証の難しさについて、「時代劇時代」という表現を出している。例えば同じ江戸時代でもその中で風俗や風景にも変化や違いがあるにもかかわらず、服装や髪形、建物が同じまま流用されている点から、フィクションにおける江戸時代は時代考証を無視した描写をこのように紹介した。
他方では、記述のように学術面での用法で『考証』が使用されるときはフィクション作品に対する以上に確実かつ厳格さが要求される。
少なくとも、時と場合によって使用意図が大きく変化する用語であることを留意しよう。