以下、ネタバレ注意!
セキュリティに異常発生
セキュリティに異常発生
障害を取り除くため 楽園防衛プログラムを起動します
「すマナい 子供たチ…」
「キミ達では 不可能ダ」
「……逃ゲテクレ!!」
AIは 楽園防衛プログラムに 上書きされました
「邪魔者ハ ハイジョ スル!」
????AIが 勝?を しか?てき?!
楽園防衛プログラム 起動
■■■は こ■以上 戦■ つも■は な■!
楽園防衛プログラムが 勝負を しかけてきた!
概要
『ポケットモンスター スカーレット・バイオレット』の、事実上のラスボス。ポケモンシリーズ本編では初となる、人間・ポケモン以外のラスボスであり、ウルトラサン・ウルトラムーンのハウ以来となる非チャンピオンのラスボスである。
英語版での名前は「Paradise Protection Protocol」。
その正体は、生前のオーリム博士/フトゥー博士(以下、博士)が作った、タイムマシンを守るための緊急防衛プログラム。
博士は自身の分身であるオーリムAI/フトゥーAI(以下、AI)に戦闘プログラムを搭載し、タイムマシンを守る番人的役割を与えていたが、万が一そのAIが敗れた際の保険として用意されていたもの。AIの発言から、その存在はAIも知らなかったと思われる。
直前のバトルで主人公に敗れ、戦闘プログラムから解放されたAIだったが、駆け付けたペパーと言葉を交わそうとしたところで楽園防衛プログラムが発動。プログラムがAIを乗っ取り、主人公に再び戦いを挑んでくる。
この戦闘開始前のメッセージでは
オーリムAI/フトゥーAIが 勝負を しかけてきた!
の文字列にノイズが走り
楽園防衛プログラムが 勝負を しかけてきた!
に書き換わってしまうのだが、その際に一瞬だけ
オーリムAI/フトゥーAIは これ以上 戦う つもりは ない!
と表示される。自分の意志に反してプログラミングに従うしかないAIの悲しさを表していると言えるだろう。
さらに、乗っ取り後は博士の名前の表示が「オーリムAI/フトゥーAI」から「オーリム/フトゥー」に変化し、一人称も「ワタシ/ボク」から、日誌で確認できる博士本来の一人称である「私/僕」となる。このことから、「楽園防衛プログラムの人格は博士の残留思念ではないか?」 との意見もある。
……もしくは、AIの方は(本物の博士の書き記した日誌の中で「少し合理的すぎる」との記述があったので、)思考そのものは完全に同一ではなく、博士の理性で構築されたと考えられる一方、楽園防衛プログラムに関しては博士の願い・野望・エゴと言ったもので構築されているという見方もある。
戦闘
楽園の守護竜
その戦いの実態とは、博士のID以外のモンスターボールをロックすることで手持ちのポケモンを一切使えなくし、丸腰にしたところをコライドン/ミライドンで一方的に攻撃するという、ポケモンバトルの前提すら無視するあんまりなもの。(ペパー曰く「大人のやることとは思えない程ズルい」)その証拠に、これまでのトレーナー戦で(直前のAI戦ですら)戦闘開始時に出ていた「VS」の文字が表示されない。
一応、博士の研究室にて、モンスターボールのIDをロックする技術について書かれた日誌を読むことができるので、勘の良いプレイヤーならその時点でこの先何が起こるかを察することができただろう(もっとも、察せたところでどうすることもできない訳だが)。
想定外すら発生しない様に抜け穴を徹底的に潰してあると言えば聞こえはいいが、機械的かつ無慈悲に一切の容赦なく侵入者に凶暴/冷酷なポケモンを差し向けて一方的に嬲らせてまでタイムマシンを死守しようとするその姿には、オリジナルの博士の執念、というより最早狂気を感じさせる。
なお、ボタンの技術をもってしてもハッキング不可能だったらしく(曰く「変な電波で妨害されている」)、一同は絶体絶命の窮地に陥る。
だが、危機的状況で唯一、作動するボールがあった。物語序盤に主人公がペパーから受け取ったコライドン/ミライドンのボールである。
コライドン/ミライドンは元々エリアゼロで博士が管理していたポケモンであり、ボールのIDも博士のものであったために影響を受けなかったのだ(そう言う意味では結局"想定外"が発生してしまったとも言える)。
『ポケモン』コマンドから入れ替える手持ちを見ると今までポケモンバトルでは選択することが出来なかった、しかし宝探しの冒険の間ずっとそこに存在していたコライドン/ミライドンのアイコンのみが選択できるようになっている。これを選択することで主人公はボールからコライドン/ミライドンを繰り出す。
コライドン/ミライドンは主人公の想いに応えて遂にバトルフォルムへの回帰を果たし、楽園防衛プログラムへと立ち向かうことになる。ここで改めて「VS」の文字が表示され、まともに戦えるようになる。
こちらの手持ちはコライドン/ミライドンのみしか使うことができない、所謂ミラーマッチになっている。
相手の技を出す順番も決まっており、仲間たちのセリフに従えば使うべき技や行動が分かる(つまり半分イベント戦)が、その順番は
- ちょうはつ(一度追い払った"弱虫"が相手である為コチラを完全に舐めている)
- かえんほうしゃorパワージェム
- ビルドアップorじゅうでん
- ギガインパクトorはかいこうせん(様子見をやめ最大火力の技で一気にトドメを刺そうとしてくる。博士のAIが「殲滅■準備ヲ開始スル」と述べていることから、この行動はAIの指示によるものと思われるが、楽園の守護竜自身も予想外の抵抗に遭ったことで冷静さを失ったとも解釈できる)、この時ボタンが「なんとか"こらえて"!」と言うが…
- ギガインパクトorはかいこうせんの反動で動けない
- テラスタルオーブがチャージされ(直前のAIとの戦闘で既に使用していた場合でも自動的にチャージされる)、仲間たちの応援によりコライドン/ミライドンの攻撃/特攻および素早さにバフがかけられ、最大火力のドラゴンテラバーストを先制で放てるようになる
- こちらの先制で決着
といった流れになる。
つまるところ勝ち確定のイベント戦だが、コチラの取るべき行動及び実際の演出は一見の価値あり。
なお仲間の台詞はあくまでヒントである(操作自体は強制されない)ので、発言の意図を読み取れなかったり意図的に無視したりすると上記と全く違う行動をとることも可能。
その場合であってもこちらのポケモンは(なかよし度補正の演出で)延々と堪え続け、仲間(特にネモ)のヒントが更に直接的なものになっていき、それでも従わずに戦闘開始から8ターンが経過すると自動的に操作が行われるので必ず勝利する仕様になっている。テラバーストのPPは10あるため、8ターンを待たずして枯渇する事は無い。
ちなみに効果いまひとつの技や、コライドンの不一致テラバーストなど与ダメージに乏しい技を選んでしまうと満を持して放ったはずのドラゴンテラバーストをギリギリ耐えられてしまい、締まらない展開となってしまう。
特に味方ミライドンのイナズマドライブの演出を確認しておきたいからという理由でいまひとつの技をあえて選択し、この状況を発生させてしまったバイオレットユーザーは多いようだ。
とはいえとどめを刺し損ねた場合はボタンの応援によって味方の火力が上がる演出が挟まるため、セリフ回収も兼ねてイナズマドライブの演出を見ておくのも悪くはない。
また通常のバトルと同じくプラスパワー等のドーピングアイテムや回復アイテムも使用できるが、上記の通り使用しなくても勝てるようになっている。アイテムはしっかり消費されてしまう上にターンも嵩むので、通常は使う必要がない。
しかし1ターン目でプラスパワー(コライドン)/スペシャルアップ(ミライドン)を使用し、2ターン目以降全てアクセルブレイク(コライドン)/パワージェム(ミライドン)を撃つと上記の想定された流れと同じターンで勝利できるため、テラスタル発動の演出にかかる時間をカットしたいRTAでは逆に開幕ドーピングがセオリーになっている。
なお、楽園の守護竜戦のBGMは序盤のフィールドで流れるBGMのアレンジとなっている。
冒険の最初期に出会い、苦楽を共にしてきた相棒が、遂に本来の力を取り戻して最後の敵に立ち向かう場面を飾るにふさわしい、中々に憎い演出といえよう。
結末
死闘の末主人公たちが楽園防衛プログラムを破ったことにより、AIは自我を取り戻した。
しかし、自身の存在がタイムマシンを復旧するシステムの一部になっている、つまり自分がいる限りタイムマシンを止めることは永久にできないことを悟ったAIは、自分自身が古代/未来へ飛んでしまうことで、タイムマシンを完全に止めることを決断。
「ワタシ/ボク 自身が 古代/未来 の世界を」
「この目で 見たくて たまらないのだよ」
「冒険に 胸を 躍らせるとは……」
「こういう気持ち なのかな」
「オーリムAI/フトゥーAI」はエリアゼロの結晶の力が強い深淵部の施設内でなければ機能を維持できない。つまりタイムマシンで施設を離れるという事は、AIの機能停止を意味する。
それを理解していながらも、タイムマシンを完全に止める為、何よりも主人公たちの冒険を見守るうちに自分も冒険に出てみたいという願いが強くなったことから、自分とオリジナルの博士が夢にまでみた古代/未来の世界に行く事を選んだ。
そして、博士の最終手段さえ打ち破った主人公たちを讃え、息子であるペパーに長年放置していたことを本物の博士に代わって謝罪し、温かい言葉をかけた後、本物の博士の形見でもあるスカーレット/バイオレットブックを片手にタイムマシンで旅立っていった。
「……さらばだ 自由な 冒険者たちよ!」
「ボン・ボヤージュ!」
ボタンの言う通り、「オーリムAI/フトゥーAI」が残された短い時間の中、古代/未来の世界で楽しく冒険していることを願うのみである。
こうして、パルデアの危機は救われ、ペパーと母/父との長い因縁にも終止符が打たれることとなった。
また、彼女/彼との決着を持って楽園の守護竜とパートナーのコライドン/ミライドンの因縁にも終止符が打たれ
「いじめに立ち向かい、乗り越え」(スター団を巡り過去の清算を行う物語/縄張り争いに敗北)
「強さを取り戻し」(各地のヌシを巡り弱ってしまった相棒を治す物語/そのトラウマを乗り越え)
「対等なライバルとなる」(ジムを巡り頂きに立つ物語/リベンジを果たす)
まさにスカーレット/バイオレットにおける三つのストーリーの総決算となっている。
余談
これをクリアすることでようやくスタッフロールが流れてゲームクリアとなる。
また、博士がスカーレットブック/バイオレットブックを持ち出してしまったため、ゲームクリア後の起動画面では、机の上に置かれていた本がなくなっているという演出が取られている(さらに言うと、背景にある窓もそれまで閉じられていたのがエンディング後は開かれるようになる)。
なお、スカーレットブック/バイオレットブックはアカデミーのエントランスにペパーが持っていたものとは別のものが置かれており、そこで自由に閲覧ができる。手放してしまうと二度と読めなくなってしまう…ということはないので安心しよう。
その後、エリアゼロの最深部を再び訪れると、特定の場所に楽園の守護竜として使役されていた個体が佇んでおり、捕獲することが可能となる。
なお、楽園の守護竜は散々"弱虫"と侮っていた相手に負けたのがよほど不服だったのか、再戦時、捕獲直後にモンスターボール越しにパートナーのコライドン/ミライドンに喧嘩を売ろうとする一幕がある。
上記のAIの手持ちとして戦う楽園の守護者は
と、どちらもタイプ一致技を持っていないという初代ポケモン並みの悲惨な技構成になっている。一応得意分野である特殊技のパワージェムを特性で強化できるミライドンはまだマシだが、コライドンは得意分野の攻撃力を活かせないばかりかミラーマッチでは半減されてしまうかえんほうしゃを採用しており救いようが無い。
とはいえミライドンもじゅうでん(次に使用する電気技を強化)を使用→しかし電気技を採用しておらず無関係なはかいこうせんを放つという謎行動をするのでどっこいどっこいである。
主人公の個体が縄張り争いで負けたのは十中八九レベル差があったからだろう。あるいはこちら特有の温厚な性格が不利に働いていた可能性もある。
仮にこちらの個体がドラゴンクローやりゅうのはどうを覚えていたら返り討ちに会っていたかもしれない。
クリア後に戦う時は見下していた相手に負けて考えを変えたのかちょうはつがアクセルブレイク/イナズマドライブになっている。
博士はパラドックスポケモンが起こしたとみられる事故からコラミラを庇って命を落とした、というのは両博士の項目で解説してある通りだが、この事故を起こした張本人こそ楽園の守護竜であるという疑いが強い。というのも、事故が起きた第4ユニットにある「何かが暴れた痕跡」から事故=パラドックスポケモンが暴れたことそのものと思われ、また並みのパラドックスポケモンより明らかに強大な生物である本編のコラミラを「庇う」必要が生じるような存在というのが、コラミラより強い楽園の守護竜以外で考えられないからである(あるいはまだ発表されていない他のパラドックスポケモンという可能性もなくはないのだが)。
この場合、彼らは自分で手にかけた相手の妄執を守るために戦っていることになり、どうやって再びコントロール下に置いたのかを含めて余計に不気味さが増す。
尤も博士を手にかけたのが誰であれ、犯人を明言するのは特定のポケモンへのヘイトを高める事態になりかねないため、ぼかしたままにしておくのが賢明であろう。
ただし、事故現場は周囲のオブジェクトがやたらと結晶化しているという形で荒れた様子が描写されており、テラパゴスはともかく楽園の守護竜には結晶を操る能力など無いため楽園の守護竜犯人説について懐疑的な考察も存在する。
作中描写から、このプログラムはAIの戦闘プログラムが敗れた際の保険として作られていたと考えられる…のだが、その存在をAIに知らせない理由が特に存在しない。自身を上書きするプログラムの存在を教えることを倫理的に躊躇った可能性もあるが、同時に博士自身がAIを信用しきっていなかった可能性も浮上する。自身の思考をトレースしたはずのAIがタイムマシンを停止しようとする可能性を考えていたとすると、博士は自身の行いが(口では「それも自然の形」と言っているものの)非合理的、あるいは悪事に近い行動であると認識した上で憧れを優先していた可能性があり、そう考えると博士も過去の面々と同等の利己的思考を持っていたのかもしれない。
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くろのラスト、氷触体、ダークマター:外伝作品における、人間・ポケモン以外のラスボス。
Asriel:黒白目化、ラストバトルが絶対に勝てる仕様になっているラスボス、オリジナルが故人であるなど共通点が非常に多い。彼が登場するゲームの作者TobyFox氏は、本作のBGMの一部を担当(テラレイドバトル)しており、曲の特徴からオーリムAI/フトゥーAI戦のBGMも担当しているのではないかとの予想が上がっていたが、Toby氏公式メールマガジンにて予想通り担当が確定。更にパルデア地方フィールドBGM他多数曲担当している事も判明し、ポケモンSVはToby曲に触れる機会がポケモン剣盾より遥かに多い作品となっていた。
ザッキー(サンリオタイムネット):過去と未来をテーマにしたゲームに登場するキーキャラクター。物語の冒頭で主人公に助けを求める非力な存在に見せ掛けて、実はタイムネットを破壊しようと目論むラスボスであった。やっと苦労して倒せたのに第二形態であるホワイトサッキーに変貌し、再び襲ってくる点が共通する。
マホロアソウル(星のカービィWii/星のカービィWiiデラックス):禁断の秘法に自我を乗っ取られて襲い掛かってくる敵キャラクター。デラックス版ではプレイヤーの旅を助ける役目も担っており、ある条件を満たすと戦闘中に自我を乗っ取られながらもこちらに回復アイテムを渡して助力してくれたり、説明文で葛藤の様子を確認できたりと博士AIに近いポジションに就いている。ちなみに過去作では暴走したAIがラスボスを務めたこともある。