概要
賢治の死後に遺された未発表作で、初稿から第4次稿まで存在し、大幅に内容が異なっている。一般的に知られるのは第4次稿のストーリー。
作中には宇宙に関する色々な要素が散りばめられている。内容全体の解釈は様々で未だ定まっていない。
あらすじ
空想好きな少年・ジョバンニは、長く家を空けている父親の事で同級生にいじめられながらも、貧しい家計を支える為にアルバイトをしながら学校に通う毎日を送っていた。届かない牛乳を取りに街に出た帰り、祭りの最中にまた同級生から心無い罵声を浴びせられ、ひとり寂しく丘の上に立つジョバンニの目の前に、突然謎の言葉と共に機関車(ディーゼル)が姿を現す。我に返ったジョバンニの目の前には、ジョバンニの唯一の親友である少年・カムパネルラの姿があった。
主な登場人物
ジョバンニ
貧しい家計を支える為にアルバイトに励む、孤独で空想好きな少年。漁師である父が長らく家を空けている為、友達に「お前の父親はラッコの密猟で投獄されている」と噂され、苛められている。母と二人で暮らしており、一人暮らしをしている姉がいる。
カムパネルラ
ジョバンニの同級生であり親友で、父親同士も親友だった。裕福な家庭に育っている優しい性格で、他の同級生がジョバンニをからかう際は気の毒そうにしている。ジョバンニと銀河鉄道に乗り込み、共に旅するが……。
現代表記として「カンパネルラ」を採用する資料もある。
ザネリ
ジョバンニの同級生。先頭に立ってジョバンニを苛める。
大学士
学説を証明する目的で、プリオシン海岸で古代牛の化石を発掘している。
鳥捕り
乗客の一人。雁や鷺などの鳥を捕まえ、食用に売る商売をしている。ジョバンニやカムパネルラに売り物の鳥を惜しげもなく分けてくれる気前の良い人物。
燈台守
乗客の一人。灯台の明かりを規則通りに間歇させるのが仕事。クレーマーにべらんめぇ口調で啖呵を切る威勢の良い人物。ジョバンニやカムパネルラ、かおる達にリンゴを分けてくれる。
かおる、タダシ、青年
12歳くらいの姉、6歳くらいの弟、二人の家庭教師。乗っていた船(タイタニック号)が氷山に衝突して沈没し、気がつくと銀河鉄道に乗っていた。回想の話から現世ではすでに死亡していると推測される。
カムパネルラの父
第4次稿にのみ登場。カムパネルラがザネリを助けて溺れた際、ジョバンニにカムパネルラの生存の可能性が無い事と、ジョバンニの父が帰ってくる知らせを伝える。
ブルカニロ博士
初稿から第3次稿のみに登場する「やさしいセロ(チェロ)のような声」をした大人。ジョバンニが銀河鉄道に乗ったのは博士の実験によるものだった。銀河鉄道内では、どこからともなく声が聞こえるか、乗客として現れる。ジョバンニにものの見方や考え方などを指し示す。後述のアニメには未登場。
アニメ映画「銀河鉄道の夜」
1985年に制作された劇場用アニメ映画。杉井ギサブロー・監督、別役実・脚本、細野晴臣・音楽。登場キャラクターが猫で描かれているますむらひろしの漫画が原案となっている。
毎日映画コンクール・大藤信郎賞受賞。
ストーリーは第4次稿を基にしている。
出演
ジョバンニ:田中真弓
カムパネルラ:坂本千夏
鳥捕り:大塚周夫
無線技師:青野武
カムパネルラの父:納谷悟朗など
pixivに投稿された作品にもこの映画に関連するものが多く、影響力の高さが窺える。
作中の登場人物の殆どが擬人化された猫であることにより、一部の宮沢賢治研究家から非難を浴びた。賢治が猫嫌いだった、という一部の研究家の主張も背景にあったようである。