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首(北野武)の編集履歴

2024-09-16 17:43:43 バージョン

首(北野武)

きたのたけしのくび

『首』は、北野武監督による歴史小説。

どいつもこいつも狂ってやがる

概要

北野武原作の歴史小説。2019年発表。KADOKAWAより出版。

2023年に映画化。北野武自身が監督を務め、羽柴秀吉役としてキャストに名を連ねている。


30年前から構想が練られ、黒澤明にプロットを見せたところ「面白そう」と褒められた。

「戦国版アウトレイジ」の様相だが、その実態は戦国武将をどうしようもない一人の人間として描き、騙し合い・裏切りに合いながらも戦国時代そのものを茶化すブラックコメディである。北野映画らしいバイオレンスや残虐描写は健在で近年美化された歴史モノに対するアンチテーゼの側面も持ち合わせている(逆に言えば、高い製作費をかけ、名優達がシリアスな演技をしてるが、出来上がったものは登場人物が誰1人格好良く描かれていない「深作欣二や北野武本人が撮ったヤクザ映画を戦国時代に置き換えた話」「モンティ・パイソン・アンド・ホーリー・グレイル的な不条理コメディ」とも言えるが)。

なお、下記の登場人物・キャストをみれば判るが、役名やマトモなセリフがある女性キャラはほぼ0である。その代りに男色や男同士の嫉妬が話の上で重要な要素となっている。

本作では何のシーンのテロップは一切ない。本能寺の変の1582年前後の知識があるとより楽しめるだろう。

あらすじ

時は戦国時代。羽柴秀吉と千利休に雇われ、謀反人と逃げ延びた敵を探して各国を旅する曽呂利新左衛門は、信長に反旗を翻した荒木村重を偶然捕らえる。一方、丹波国篠山の農民・茂助は播磨へ向かう秀吉の軍勢を目撃、戦で功を立てようと軍に紛れ込むのだが…。


信長、秀吉、光秀、家康を巻き込み、荒木村重の首を巡る戦国の饗宴が始まり、それはやがて本能寺の変へと繋がっていく。


登場人物及びキャスト

  • 羽柴秀吉:ビートたけし(北野武)

「あんな狸おやじなんか、死んだっていいんだよ!」

「俺は百性だよ!」

「俺が天下取ったらな、あいつらみんな消えてもらう」

庶民出身≒現代人である観客に近い感性の持ち主として描かれ、男色や切腹のような「武家にとって当り前」の事を「自分には理解不能な奇習」と見做しているフシが有る。

ある意味で、登場する戦国武将達の大半が囚われている「ホモセクシャルと区別が付かないモノとして、極めて露悪的に描かれた男同士の友情や主従関係」の呪縛から自由な人物とも言える。

だが、かと言って、少しも善良でも頭脳明晰(字が読めない描写がある)でもなく、自己中心的かつその事を隠す気すらない「無神経さや開き直りもここまで来れば一種の邪悪さ」というべき男。


「これは……天命だと思うか?」

「これでは、今までの私は、殴られ損だ!」

信長にどれだけ殴られようとも、愚直なまでに忠誠を誓う。信長に反旗を翻した荒木村重とは盟友であり、そして恋仲でもあった。

謀反人として出奔した村重を追う役目を信長に命ぜられるが、その村重と意外な形で再会し…。

本人は何から何までいたって大真面目な人物だが、そのせいで逆に、本作を羽柴秀吉がツッコミ役のコメディ映画として観た場合には「最大のボケ役」「自分がボケ役だとさえ気付いていない究極の大ボケ役」とも言える。


「皆殺しに決まっとるがや!」

「人間、生まれた時からすぅべて遊びだわ!」

「サルにハゲ、働き次第(しでえ)で跡目を選んだるに。俺のために死ぬ気で働け!」

紹介PVにおけるキャッチコピー「イッちゃってる天下人」の通り、村重や光秀などの部下に対する折檻や、村重の一族を女子供まで容赦なく打首にする大量殺戮、真昼間からの森蘭丸とのアツい情事など奇行の限りを尽くす。会話はコッテコテの名古屋弁である。家督は嫡男の信忠ではなく、最も勲功を立てた家臣に譲ることを公言し、光秀らの発奮を促しているが…?

第六天魔王」「悪のカリスマ」の皮を被ってるだけの現代で喩えるなら「人間として薄っぺらいブラック企業の経営者」、もしくは「やってる事は極悪なのに変な所でマヌケな暴力団組長」と言ったところか。

大河ドラマ等で人格者として描かれる事が多いが、ある意味史実の信長に最も近いのではないだろうか。


「私は、天下など欲しくはありませんよ」

言わずと知れた江戸幕府の初代将軍。信長の同盟者であり、誰に対しても柔らかい物腰で接しているが、捉えどころがないとも言え、信長からは密かに「腹が読めない危険人物」と見做され、命を狙われている。歴史のイメージ故か見た目は白髭の老人。

なお、史実における「側室にやたらと未亡人が多い」はブス専に翻案されている。


「ワシが侍大将じゃぁぁ‼︎」

「ワシはただ、侍になりたかっただけなんや!」

羽柴秀吉のように「農民から大名や侍大将に成り上がる」事を目指しているが基本的に馬鹿

侍になろうと百姓仲間の為三と(老父と妻子を置き去りに)秀吉の軍勢に参加するが、敵に奇襲され戦になり、恐怖の余りその場に崩れてしまう。…が、辛くも生き延びると敵の大将を取った為三を殺害し手柄を横取りするというにとんでもない真似をするが、その事を心の奥底では気に病んでいる。その場面を曽呂利に目撃され、行動を共にすることになる。


「…みぃんな、アホか」

お調子者の抜け忍であり、秀吉や利休の元で諜報活動・便利屋をやっているが、現代でいうなら落語家芸人が表の顔。しかし元忍びとあって戦闘能力はそこそこ高い。

羽柴秀吉と並んで、劇中で起きる様々な事態に観客が入れたくなるであろうツッコミの代弁者と言える。


「…妬くぞ俺は」

「俺はな、ずっと、ずーーっと我慢してきたんだ!」

本作における、いわば「人の姿をしたマクガフィン」。

演者である遠藤憲一は、かなりシリアスな演技をしているが、困った事に行動原理のほぼ全てが色ボケと嫉妬(ただし男色)にしか見えない。物語を通して被害者でもあり、迷惑の種をばらまく元凶でもある。


新左衛門の関係者

新左衛門と旧知の人物。新左衛門からは「佐兵衛兄さん」と呼ばれる。

新左衛門が連れている2人組。ほとんど喋らない。なお、原作小説では「デカブツ」と「チビ」というキャラクターとして登場している。


茂助の関係者

茂助の百姓仲間。茂助を誘って羽柴軍に参加するのだが…


明智光秀の関係者

明智の腹心。明智のために奔走する。


織田家臣団

織田家の重心。信長から、長秀は"神妙面"、一益は"鬼面"と呼ばれている。例に漏れず、信長を恐れている模様。

信長の小姓。真昼間からアーッな光景を繰り広げたりする。

史実でも実在した織田信長の黒人の家来。カタコトではあるが日本語は喋れる。だが、信長の奇行には時折母国の言葉で悪態をついており、家来ではあるが尊敬はしていないようだ。

なにげに、話の要所要所で重要な役割を果たすが、にもかかわらず「古臭いステレオタイプな黒人描写」から外れている点がほぼ皆無、という良くも悪くも本作がどんな作品かを象徴する登場人物。


秀吉の関係者

「兄者!」

秀吉の弟。秀吉のことは「兄者」と呼び慕っているが、川を渡る秀吉を見て「兄者が溺れ死んだら俺が大将だな」とブラックジョークをかますシーンも。近年の歴史ドラマでは有能な補佐役として描かれることが多いが、本作のPVでは「兄の威を借る腰巾着」と酷評されている。

「お前は黙って言うことを聞いてればいいんだ。悪いようにはせん」

秀吉の腹心。荒木村重の城に捕らえられていた後遺症で脚が不自由であり、杖を使って歩いている。秀吉のために新左衛門をや茂助を利用し、策謀を巡らすが、何かと秀吉からの扱いは雑であるのに加え、警戒すらされている、割と不憫な役回り。

秀吉の部下としてコキ使われている。秀吉には八つ当たりされ、秀長には威張り散らされと散々な目に遭っており、彼らが互いに責任を押し付け合う姿はこの映画のコメディシーンの1つ。

ちなみに、現実では小六は秀吉にとって最古参の家臣であり、そんな粗略に扱われるような身分ではなく、忠家に至っては秀吉の家臣ではなく"織田家に属している宇喜多家"の陣代(主君が出陣できないときの代わりの大将)なので、粗雑に扱っていい人物ではない。

毛利家の面々

毛利家の家臣。良くも悪くもクソ真面目な武人。彼のシーンはこの映画の笑い処。

毛利家につかえる僧侶。和議を巡って官兵衛と激しいやり取りを繰り広げるのだが…


家康の関係者

徳川家康の腹心。家康を守るために奮闘する。


その他

怪しげな忍びたちをまとめる長。白塗りの肥満体で不気味。

「あの人のもとにおったら、首がいくつあっても足らしまへんやろ」

茶人。…なのだが、得体の知れない不気味な男。鎧兜で武装した迫力ある武将らとは異なる威圧感を醸し出している。

「お前は…喋り過ぎだ」

千利休に付き従う謎の老人。


余談

  • 秀吉や光秀と並ぶ織田家重臣であった柴田勝家前田利家は一切登場していない。
    • 史実でも、この時期、柴田勝家は上杉景勝との戦いの為、前田利家は能登の領主に任じられていた為、安土や京都(または、安土や京都にすぐに駆け付けられる場所)には居なかった。
    • 逆に言えば、本能寺の変のすぐ後に引き返せた豊臣秀吉が(運も、その運を活かせる才能・状況についても)異常だったのである。

外部リンク

・ホームページ

https://movies.kadokawa.co.jp/kubi/


関連タグ

北野武 本能寺の変

アナログ(ビートたけし):同時期に公開された対照的な北野武原作の映画。タカハタ秀太が監督を務めている。

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