借金
しゃっきん
概要
読んで字の如く金を借りる行為全般のこと、またはそのお金のことである。
融資・ローンもほぼ同じ意味合いで使われるが、これらはどちらかというと銀行などから厳格な審査を経た上で借金をすることを指す事が多く、知人や親族などから借金をする場合にはあまり用いられない(俗に「親ローン」などという呼び方をすることはある)。
借りた側が金を返せない・返さない、逆に貸した側が期限前なのに返せ・見返りを多めにして返せなどと迫る、などといったトラブルが多く、それを題材とした創作物も人気があるため、世間一般ではブラック・ダーティ・アウトローなイメージがまとわりつく。
そのため「借金=悪」という思想も根強いが、実際のところ資本主義経済を回し、私達の生活を豊かにしているのはズバリ借金という存在に他ならない。
先進諸国がここまで急速に経済成長を果たすことができたのも、リスクを取って借金をして、消費を先回しにする人たちがいてくれたからである。
詳しくは下の動画を参照されたい。
金融機関は資本主義経済において、金が余ってる人と金が足りない人を結びつけ、借金により経済を回すという社会的役割を持った企業であるということができる。
なお金融の仕組みを利用して、銀行に預金を預けたり債券などの有価証券を購入したりすることで、一般人も貸し手側になって利子収入を受け取ることもできる(投資)。
そもそも、やりたいことや買いたいもののための金が貯まるのを待つには人間の一生はあまりにも短すぎる。借金が出来なければ子供がいるうちに家を買うことはできないし、家庭によっては若いうちに大学に通うこともできないかもしれない。独立起業したい人だって、業種によっては資金が貯まるのを待っていたら老人になってしまう。
それなら一念発起をして若いうちに借金をして投資してさらに大きく稼いだり、買ったもので得られる便益を享受する方が圧倒的に幸せだろう。
結局のところ、借金が悪になるのはその目的が「浪費」であるケースがほとんどであり、借金をしてもっと大きな利益を生む「資産」を買う場合はむしろ人生を輝かせる可能性もある。
この考え方を、金融業界では「レバレッジをかける」という。
※もちろん借金は大きなリスクと不安を産むため、実際に借りるには綿密な返済計画が必要、というのは大前提である。
きちんとした銀行や信販会社等からお金を借りる場合、借りる側(債務者)の信用情報や収入情報を、大量に蓄積された統計データに基づいて審査して金額・金利を決定し、万が一のトラブルについてもシステマティックに処理される。
しかし家族・友人からの借金はきちんとした返済能力の確認や取り決めなしに行われる上、トラブルになった際の対処能力も限界があり、幸福だった関係をたった数万円の貸し借りであっても完全に壊してしまいかねないため、一般に推奨されない。
借金の種類
個人の場合
個人の借金は文字通り銀行や信販会社から現金その物を融資する方式と、現金を融資する代わりにクレジットカード会社や信販会社がその代金を立て替える方式が存在する。
前者は超短期は「キャッシング」、中長期なら「ローン」と呼ばれる。後者は「ショッピングクレジット」と呼ばれ、悪名高いリボルビング払いも該当する。
無人契約機といって、銀行預金や自動販売機の感覚で借金をできる機械も街中に設置されている場合がある。
例えば自動車の場合などは、そのブランド専門の金融会社(トヨタファイナンスなど)も存在し、消費者に自動車ローンを提供することもある。最近流行りの残価設定クレジット(残クレ)も、そうした会社が提供している。この場合は転売を防ぐため、借金を返し終わるまでは金融会社が法律上の物品の所有者となる。
世知辛い話をすると個人で普段の娯楽やショッピングにも借金をしてしまうような層は返済能力に問題がある場合が多く、自転車操業に陥っていることもある。債務不履行のリスクを企業は背負うため、そのリスクの分だけ金利が高めに設定されている(リスク・プレミアム)。クレジットカードや無人契約機の借金は基本的にこれであり、よほどの急場で無ければ(いやたとえ急場であったとしても)推奨されない。
法人・政府の場合
企業が金を借りる方法としては、金融機関から直接現金を融資してもらう方法と、債券を発行することで金融機関以外も含めた幅広い相手から借金する場合の2パターンがある。
企業では急場を凌ぐための短期の借金は慣例的に珍しくない。特に銀行では金が大きく動く分、1日〜数ヶ月だけの中央銀行からの借金がよく使われる。金融機関の経済的活動を円滑にするため、(インフレ抑制目的の利上げの期間を除き)基本的に金利は安めに設定される。
また製造系の業種でも、原材料購入〜製造〜納品から支払いを受けるまでのタイムラグで、経営にそこまで大きな問題は無いにもかかわらず現金が一時的に枯渇してしまう場合もあるため、融資を受けることがある。
国(中央政府)や地方自治体(地方政府)が借金をする場合もある。これも債券(公債)の発行によって行われる。国の借金(国債)はしばし社会問題として取り沙汰されるが、国債の発行はマクロ経済をコントロールする目的も含まれるため、よほど債務不履行の危険が無ければ基本的には悪とは言えない。
物品を借りる「リース」も毎月お金を払う点や、初期費用を抑えて高額なものを使用できるという点など共通点が多く、広義には借金の一種という見方もできる。
借金の返済
当然融資を受けるというのはお金を貸し与えることであり、債務者は融資者にお金を返済する義務が生じる。この時借りたお金(元本)はもちろんのこと、元本に応じた利息(利子)を支払う必要が生じる。この利子が融資者にとって儲けとなるわけである。
ショッピングクレジット等では一括返済という指定の期日に融資額(及び利子)を全額支払うという元本一括返済方式がとられる場合も多いが、大体の場合は分割返済方式である事が多く、その支払い方法は何通りか存在する。
元利均等返済
毎回返済金額が一緒になる返済方式。但し実際の返済金額は利息を支払う必要があるため、最初は返済金額に占める利息の割合が多いのが特徴的である。
元金均等返済
毎回決まった金額の元金を返済する方式。その為、利息が多い最初は支払う金額が多めになりやすい。
残高スライド方式(残高リボルビング方式)
返済額が一定なのは元利均等返済と同様であるがその返済額が元本に応じて変動する返済方式であり、追加の融資などが行われる消費者金融などで多用される。
返せなかった場合
借金の契約をする前に担保に設定した不動産や有価証券などを取られるか、連帯保証人/保証人が代わりに支払いを行う義務を負う。貸主が悪いと、漫画のように借金取りに激詰めされることもある。
法律に則った「破産」という手もあるが、モラルハザード(この場合は救済をアテにして、返せない借金をしまくってやりたい放題すること)を防ぐために一定の条件が設定されているので、アテにしすぎると身を滅ぼす。
貸し手や事情によっては、より低金利なローンプランを紹介してくれて、それを借りて返済後、改めて低金利な状態で返済に向けて再出発することもある(借り換え)。
死亡の場合は返さなくても良くなる契約となることが多い(住宅ローンの団信など)が、全ての借金がそうではなく、そもそも死んでしまったら元も子もない。
「ご利用は計画的に」というのは煽りや宣伝文句でもなんでもなく事実である。
債券の場合
債券は利子と元本を一緒に返すのではなく、償還(完済)までは利子のみが支払われ、最後に元本が返ってくる形となる。
これが返せなくなるのを破綻・債務不履行・デフォルトなどと呼ぶ。
企業の発行する社債は弁済優先順位が設定されており、優先順位が高い社債は利回りが低く、順位が低い社債は利回りが高いという形式でバランスが取られている。中には「永久劣後債」のように、破産時に弁済義務を一切負わないことが前提の債券もある。
企業が破産した場合は他企業に買収されて生き残る道が残っている可能性があるが、多くの場合は不採算部門の解散や財産の処分、従業員の大量解雇、経営陣の退陣など痛みを伴う改革に迫られる。この時うっかりハゲタカファンド(死にかけの企業を買収し、残ってる財産を叩き売らせてポイ捨てするタチの悪い投資会社)に買われてしまうと目も当てられなくなる。
あまりに巨大な企業が破綻した場合はあらゆる方面に悪影響が及ぶため、政府が経営再建に乗り出す場合があるが、これは上でも述べたモラルハザードを招く原因になるため、滅多に行われない。
国の債務不履行は主に経済が不安定な新興国で起こる。その国の通貨が信用されなくなってほぼ無価値になるので凄まじいインフレが発生し、海外の物は買えなくなり、公共サービスも停止するなどして、内乱に近いレベルで国中が混乱する。この場合は国際金融組織や他国の支援を受けながら財政を立て直すことになる。ちなみに世界的常習犯はアルゼンチンで、実に9回ものデフォルトを引き起こしている。各国で同じ通貨を遣う場合は飛び火する場合があり、例えばEU加盟国のギリシャは財政危機に陥り、同じ通貨(ユーロ)を遣うドイツなど先進国に大迷惑をかけまくっていたこともある。
地方自治体としては、メロンで有名な北海道夕張市が多重債務により2006年に破綻。これにより人口の大量流出に見舞われ、現在も法の下に財政再建に取り組んでいる。
ちなみに新興国・発展途上国の破綻よりも、先進国の超大企業の破綻の方が経済に与えるインパクトは強い。この場合、取引のある世界各国の企業も減収になって最悪破綻、というように連鎖する場合がある。
概要で経済を成長させるのは借金と述べたが、経済を壊すのもまた借金、というのも無視できない事実である。
借金のメリット/デメリット
一般人にとっての借金の場合
借金のメリットは何と言っても現在お金が無い、または不足している状態であったとしても商品を購入したり、急な出費に対応する事が出来たりすることである。
例えばパソコンが急に壊れ、新しいパソコンを購入するのに10万円要ったとして、直ぐに払うだけの能力が無い場合に借金をすることで購入し、次の収入で返済する、と言った具合である。
しかしながらこのメリットは同時にデメリットでもあり、現在お金が無くても商品を購入したり、お金を獲得する事が出来たりするため、うっかり返済能力を超える借金を行ってしまう人は後を断たない。
このような時、昔なら信販会社がヤクザや反社会的勢力と繋がっており、取り立てにヤクザがおしかけてくる事もあったが、近年は法規制の強化によって厳しい取り立ては難しくなった。
日本では借金を返さなくてもすぐに刑法上の罪に問われることはない(そうしないとリスクを取って借金をしてくれる人が少なくなり、ひいては経済成長が鈍化するため)が、それでも債務不履行で自己破産に陥ると社会的信用を喪失することに加え、財産を強制的に処分させられたり、クレジットカードが作れなくなったりするなど、現代人としては相当に生きづらい環境に追い込まれることになる。
富裕層にとっての借金の場合
もう一つの借金のメリットは、現金を手元においたまま、手持ちのお金を増やせる点にある。つまり金はすでに十分あるけれど借金をする、というパターンである。これなら確かに前項目で述べたような債務不履行の危険が無くなるが、利息払う分だけ損することになるのでは?と思われるだろう。
このパターンのポイントは消費・浪費のためではなく、投資のために借金を活用する点である。
金融業界には「晴れの日に傘を貸し、雨の日に傘を奪う」という格言がある通り、お金持ちほど低金利に大金を借りられるが、お金が無い人ほど高金利かつ少額しか借りられないという原則がある。もっというと、お金持ちはむしろ銀行側から「借金していただけないでしょうか」と頭を下げられる側の立場である。つまり金を借りる必要のないお金持ちほど、むしろ借金をするのが有利、ということになる。
なお上の理屈でいくと、「5億円も借金がある」と言っている人の多くは困窮した多重債務者ではなく、むしろ5億円も借りられるだけの信用がある富裕層であることが多い。
手元に現金を残しつつ、富裕層(ここでは資産数十億、数百億円以上の人のこと)特有の圧倒的な低金利で借金して、高い利回りの資産を買う。成功すればもちろん良し、失敗に終わっても手元資金が豊富なので破産はしない。
というかそもそも失敗する確率自体が低い。一般庶民が利回り30%という超絶ハイリスク・ハイリターン投資で100万円を投げ捨てて心臓バクバクさせながらなんとか勝ち取れるかどうか分からない利益よりも、富裕層が1億円を利回り1%という超絶安全資産※に気軽に投じるだけで確実に得られる利益の方が3倍以上大きい利益を叩き出してしまう。富裕層側は全く無理をする必要が無いのである。
しかも、もし富裕層側が3%(一般的な資産運用における平均よりやや堅実なリターン)を目指すだけでその差は10倍になってしまうし、さらに資産に余裕があるからリスク自体を取りに行きやすい……と、完全なワンサイドゲーム状態である。
こうして「富める者はますます富む」という資本主義の正のスパイラル・勝ちパターンに入ることができる、というわけである。
ただし富裕層はただでさえ動かせる資金が大きいので、彼らや、彼らの資産を預かる"ヘッジファンド"のレバレッジを駆使した投資行動が膨らみ続けて、いざどこかで失敗すると世界経済に与えるダメージも甚大になる。過去繰り返されてきた金融ショックの類の原因がこれに起因する場合も多く、そうした悲劇を未然に阻止するために、各国の中央銀行は政策金利を早めに上げるなどして対処する。
またフランスの経済学者トマ・ピケティが名著『21世紀の資本』で世に出した、「r>g」(世界全体で見た投資利益の拡大速度は、労働利益のそれより大きい)の不等式で知られる通り、貧富の格差拡大の原因ともなっている。
これらのようにミクロ(個人単位)ではメリットが大きくても、マクロ経済(国や社会全体)で見るとデメリットの方がむしろ大きいという点にも留意されたい。
借金に関する雑学
「国の借金」
日本の借金(といわれる国債発行額)は2022年現在で1241兆円である。1秒あたりにおよそ110万円程度ずつ増えていく計算であるため、正確な数値は日々(というか時々刻々と)変化していく。
国の借金などというインチキ経済用語が存在するが、正しくは「政府の借金」である。
貸し手と借り手、どっちが有利?
一般にインフレが続く経済においては、借金をするのが有利とされる。
これを説明するに当たって簡単にするため、極端なモデルケースを考えてみる。
例えばあなたが今500万円を借りて、1年後に利息込みで600万円を返さなければならないとする。この間に100円のドーナッツが200円になるようなインフレが起きていれば、あなたの賃金は2倍になっているはずである。つまり元々の手取り年収が500万円なら、1年後は1000万円になっているはず※なので、600万円の返済は簡単できる、というわけである。
(※ここでは税金や昇給までの時間差などは考慮しない)
この間あなたの購買力は変わらず、従ってドーナッツを買える個数も変わらず5万個であることに注目されたい。
この場合貸し手にとっては、利息込みの借金を返済してもらったにも関わらず、この間買えるドーナッツの個数は5万個から3万個になり、従って実質的には損をしてしまっていることになる。本来500万円が600万円になって、金利にして20%得するはずが、実際は購買力まで含めると40%の損失になってしまった。この20%を名目金利、-40%を実質金利と言い、特に後者のように物価上昇率まで考慮して計算することは、マクロ経済や投資を学ぶ上では必須の考え方となる。
このケースで貸し手が損をしないためには、インフレを前もって予想して金利を高く設定しておくか、変動金利(インフレになるにつれて利払いも増える金利設定)で貸し付けるなど、実質金利を意識した契約をすることが必要となる。
デフレの場合は逆で、もしドーナッツが50円になるような場合、あなたは手取り250万円になったにも関わらず返さなければならない借金は600万円のままなので、貯金がなければ破産か自転車操業に陥る。
逆に貸し手に取っては(債務不履行のリスクこそ生じているが)、完済してもらえればドーナッツ12万個分の購買力を得ることができる。
この場合の借金の名目金利は20%のままだが、実質金利は240%となる。
この考え方を応用すると、今後インフレになると考えれば借り手に、デフレになると考えれば貸し手に回るのが有利になると言える。ただ実際には皆が同じことを考えるのでインフレなら貸し手不足に、デフレでは借り手不足になりがちであり、したがって思う存分自分の思うような金利で貸し借りできる、というわけには行かない。
またそもそも一寸先の経済の未来を見通すのは、ノーベル賞学者ですら困難を極めるため、上記の話を意思決定に用いる際は、あくまで参考程度に留めるのが吉である。
その他の借金の用法
スポーツのリーグ戦で負け越し数を借金という言い方で現すことがある。「チームの借金は2」など。
逆に勝ち越した分を「貯金」と呼び、勝ち越しの多い相手チームを「(チームに由来する名)銀行」や「貯金箱」と露悪的に呼ぶこともある。
借金が多いキャラクター
- デデデ陛下(星のカービィ(アニメ)):117京441兆2426億1370万8686デデン
- 両津勘吉(こちら葛飾区亀有公園前派出所):1663兆2928億5903万8850円
- ヘスティア(ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか):2億ヴァリス(日本円だと2、300円くらい)
- 綾崎ハヤテ(ハヤテのごとく!):1億5838万4000円
- 堂嶋/石原洸(牌王伝説ライオン):5000万円+10日毎に利息500万円
- デンジ(チェンソーマン):約3800万円
- 伊藤開司(賭博黙示録カイジ):629万円+年利18%の利息
- クロウ・ブルースト(第2次スーパーロボット大戦Z):当初親父から借金100万Gを相続し、見事返済してもさらに力を増して戻ってくる…という悲惨なループを続けている。
- ノーザーク(ACVI):借金をしては返済を踏み倒すことを繰り返しているというダメ人間。