「宇宙戦艦ヤマト」という時代
うちゅうせんかんやまとというじだい
世紀を越え、希望の光を灯し続けた伝説の艦──その全記録
正式タイトルは『「宇宙戦艦ヤマト」という時代 西暦2202年の選択』。(Pixivタグとしてもよく使われる)略称はヤマトという時代。
『宇宙戦艦ヤマト2199』から始まった「「宇宙戦艦ヤマト2199」シリーズ」の作品の一つであり、『2199』と『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』の総集編(主体は『2202』)。
2021年6月11日公開。当初は2020年に公開される予定だったが、2021年1月15日に延期され、さらに新型コロナウイルス感染症の影響で同年6月11日に再延期された。上映時間は120分。
制作を担当したstudio MOTHERにとっては、設立後初の作品である。
前述の通り、本作は「総集編」と呼ばれてはいるものの、ただ単に『2199』と『2202』を圧縮しただけの作品ではない。真田志郎の視点で、1969年のアポロ11号打ち上げから『2202』の結末までを顧みる、所謂モキュメンタリー形式となっている。また、公式作品では初めて内惑星戦争と第二次火星沖海戦が映像化され、その詳細が掘り下げられた。
福井晴敏曰く「再放送待ちしなきゃいけない時代でもないのに総集編作る意味はない」とのこと。確かにBD・DVDはおろかネット配信でも容易に見れる時代では、総集編の強みは「短時間で全体の流れが分かること」くらいしかないわけである(あとは「映画館の大画面で」という強みもあるが、『2202』は劇場特別上映をやっていたのであまり意味がない)。
そのうえ、ただでさえ尺不足で喘いでいた作品の全26話を2時間にまとめたらもはや何がなんだか分からない作品になってしまうという懸念もあった。
そこで本作はどちらかというと「2199」シリーズ未視聴者が次回作『宇宙戦艦ヤマト2205』へ向けた予習とするという役割に比重が置かれることになり、アポロ11号打ち上げから『2199』を経由していくことで、「現実の延長線上としてのヤマト世界」を視聴者に意識させる作りになっている。
構成としては、全体2時間のうち、最初の10分強が前史、その後の20分程度が『2199』、残りの約90分が『2202』となっている。
『2199』の部分は全体の流れと次作『2205』に関わる箇所のみの抜粋になっており、イズモ計画派の反乱エピソードやドメル将軍関係のエピソードは丸ごと省略されている。
また、あくまで地球側視点の物語なので、異星人側エピソードはデスラーとズォーダーそれぞれに直接関わる範囲のみ(それも地球側の解釈でのもの)。なお、デスラーの心情の部分は、彼と関わりの薄かった真田に語らせるのは違和感があるため、クラウス・キーマンによる報告書という形で描写された(そのため真田以外のキャラで唯一台詞が新録された)。
シリーズ全体を俯瞰しやすくするためや、現実の延長線ということを示すために、年表も改めて設定されている。
『2199』はヤマト発進日からの経過日数は明確なものの、肝心の発進日が曖昧(劇中の情報から2月11日か12日だろうとは考察されていたが)だったため、そこを明確化された。
『2202』もヤマト発進がクリスマスぐらいの時期ということ以外は全く決められていなかったが、本作で改めて設定された。『2202』はタイトルに反して半分以上が2203年のエピソードであるため、本作での「2202年」は「ヤマトがテレザートへ向けて発進した日」という部分が強調されている。最終話は2203年末ということになっているが、これも流石に2年もずれるのはまずいと判断されて2203年内に収めようとしたため。
『2199』からの作風の変化や、尺の都合による説明不足や物語構成の不備、SFというよりファンタジー寄りの各種設定、等々により賛否両論の『2202』だが、本作は2時間という尺ゆえに最低限の内容を分かりやすく簡潔にまとめているため、観た人からの評判は概ね悪くない。ただし、『2202』の内容自体に改変が加えられているわけではないので、合わないという人には合わないだろう。あとドンパチは少ないのでそれが好みに人には合わないかもしれない。
- BGMは大人の事情で『2199』(TVシリーズ)で録った音源を使うことができないので、使用できるのは『星巡る方舟』以降の音源のみだったのだが、佐藤敦紀がそこに含まれていない「艦隊集結」をヤマト発進シーンに使いたい(オリジナルが「艦隊集結」を使っていたため)と強く願ったため、再録してもらった(『2205』のサントラに収録)。
- 挿入歌の「Great Harmony」も、大人の事情でボーカル無し版だけの予定だったのが、やはり佐藤の要望でボーカル有り版を使うことになった。この際、佐藤が独断でボーカル有り版を使った映像を作って見せてきたらしい。ついでにいうと急な変更にプロデューサーが慌てて権利関係の処理に走り回ったそうな。
- 惑星シュトラバーゼのエピソードも本作には入っているのだが、『2202』の時にあまりにも説明不足を酷評されていたためなのか、当時設定のみで劇中ではろくに語られていなかったシュトラバーゼの特性と古代達の救出方法についての解説が(本作の本筋にあまり関係ないのに)入っている。
- 『2199』『2202』のヤマトの波動砲シーンが全て入っているため、ヤマトの波動砲発射回数は(旧作も含めた)シリーズ最多の9回。