概要
原典である『宇宙戦艦ヤマト』においても滅亡寸前の地球からごく限られた人類を別の惑星へと脱出させる計画は存在していたが、リメイク版の『宇宙戦艦ヤマト2199』で改めて名称が設定された。
地球から16万8千光年離れたイスカンダルへ惑星汚染浄化システム「コスモリバースシステム」を受け取りに行く「ヤマト計画」の前身。
イズモ計画ではごく限られた人類をイズモ計画船に乗船させて地球を脱出させ、人類移住に適した惑星を世代を継ぐレベルの長期間に及ぶ宇宙航海で捜索するというもの。
運良く人類の移住に適した惑星が発見されても限られた人間しか移り住むことが出来ず、イズモ計画船に乗れなかった人類は見捨てることになる本計画は2198年にイスカンダルからの技術供与と情報によって破棄が決定し、ヤマト計画が実行されることとなった。
しかしヤマト計画に対して懐疑的な者も多い。
そうした中イスカンダルの技術や情報を否定せず、ワープ航法の多用で宇宙航行の時間を削減しつつ移住可能な惑星を発見次第その情報を持って地球へ帰還すれば確実に多くの人類を救えると考えた芹沢虎鉄はヤマトクルーの新見薫へ内密に指示を与え、さらに実働部隊の隠れ蓑として保安部を設立させ、その中核に伊東真也を始めとする息のかかった人間を所属させた。
以下はネタバレ。
イズモ計画派の暗躍
新見はカウンセリングを通じて乗組員の心理状態を把握し、見込みのある人物をイズモ計画に勧誘していき、さらに父親の件と航海日程の遅れで精神的に不安定になっているであろう島大介を神輿として誘い入れた。
惑星ビーメラ4に到着し、そこが移住先に成り得る星だと確認されると、イズモ計画派は行動を開始。
艦長である沖田十三は病床にあり、実質的なトップとなっている副長の真田志郎へ、新見はイズモ計画への転換を強く進言するが、にべもなく断られる。計画遂行の障害になる真田は保安部に拘束され、代わりに島が艦の指揮権を委譲されたということにした。
その後、保安部が第一艦橋を始めとする艦内各所を制圧。島の口から「ヤマト計画の成功率が低いため、真田副長と協議し、沖田艦長の了承も得たうえでヤマト計画を中断し、イズモ計画へ転換した」という旨を語らせ、イズモ計画を実行しようとした。
なお、伊東は沖田と真田を口封じのため謀殺するつもりだった。
そして地球へ帰還するために発進しようとするが、このタイミングで惑星探査に赴いていた古代達が帰還してくる。彼らが戻ってくるとややこしいことになるため、伊東は受け入れずに置き去りにしようとしたが、島は着艦させようとした。この対立により、伊東は島を殺そうとする。
犠牲者を極力出したくなかった新見は伊東を妨害。すると伊東は今度は新見を殺そうとするが、直前で星名透に阻止される。
実は伊東の腰巾着と思われていた星名は藤堂平九郎の密命を帯びた二重スパイであり、イズモ計画派の動向をずっと監視していたのである。島も星名に協力していたのだった。
沖田の監視に着けていた保安部員は星名によって取り押さえられており、復活した沖田が第一艦橋に登場。「沖田の了承を得た」という嘘を突き通すことが不可能となり、計画は失敗に終わった。
その後
反乱に加担したメンバーは全員営倉へ監禁されることとなった。
このうち新見に関しては、七色星団海戦のタイミングで特殊削岩弾への対処のために解放され、その後沖田の許可により現職に復帰した。
それ以外のメンバーは営倉に入れられたままであり、その多くは同海戦での雷撃機ドルシーラによる魚雷攻撃で営倉が破壊された際に行方不明となってしまい、生存は絶望的となっている。その中で伊東と薮だけは辛うじて生還しており、格納庫のコスモシーガル内に身を潜め、その後の惑星レプタポーダでの騒動を引き起こした。
なんだかんだあって伊東は死亡し、薮はガミラスに身を寄せることになる。その後、『宇宙戦艦ヤマト2205』では……
イズモ計画の遺物
イズモ計画自体は白紙になったが、この計画用に用意された装備は残っており、その後の航海の助けになっている。
『星巡る方舟』に登場するキ8型試作宙艇はイズモ計画派の反乱が成功した場合に用いる予定だった惑星探査用の機体である。
さらに『宇宙戦艦ヤマト2202』では、波動エンジン技術が入ってくるより前に防御装備として考案されていた、岩塊を身に纏って追加装甲とする「ARGOシステム」(アステロイドシップ)が登場する。
余談
実はヤマトのデザインを検討するにあたってイズモ計画時代の艦のデザインもざっくりとだが考えられている。
戦艦三笠に似た雰囲気をしており、武装など各部パーツは金剛型宇宙戦艦などと類似したものとなっている。
コミカライズでは
むらかわみちおによる『2199』のコミカライズでは、内容の掘り下げと若干の変更が行われている。また、キャラクターの立ち位置も一部変わっている。
芹沢によって潜入させられた工作員は25名。ほとんど保安部員で占められていたアニメ版と異なり、こちらは各部署に散在している。それらがリーダーの指令の下、各々独立して活動を行っている。
メンバーは互いの正体をほとんど把握しておらず(新見ですら伊東しか把握していなかった)、それゆえに万が一発覚しても芋づる式にはなりにくい構造となっている。さらにリーダーの正体はメンバーの誰も知らない。
航海中、工作員は水面下で協力者を増やしていき、目算でヤマト全体の約4分の1(つまり200人以上)を掌握。さらに新見は上層部の人間である島を確保した。なお、伊東は古代を勧誘しようとしたようだが、彼の反応を見て諦めている。
工作員とその協力者達は、艦内で航海の先行きの不安を周囲に語り、ヤマト計画や艦上層部への不信感を乗組員に植え付けていった。この時イズモ計画についても怪しまれない程度にそれとなく触れている。そして惑星ビーメラ4にて工作員全員が一堂に会し、計画の最終段階へと入った。
その内容は、
- 沖田艦長が病床にあるのに乗じて、保安部が副長の真田を拘束(名目は後述する島が暴露した内容を秘匿していたため)。
- 協力者である島に指揮権が委譲されたということにする。
- 島の口から「ヤマトは大マゼラン銀河内の航路図を有しておらず、ヤマト計画の実現性が極めて怪しい」という事実を全乗組員に暴露させる。
- 混乱する艦内で工作員たちがイズモ計画のことを本格的に語り始め、「イズモ計画の方が良いのでは?」という方向へ乗組員を心理誘導する。
- 治安維持のためと称して保安部が乗組員を掌握。さらに保安部が「調停役」を買って出て、乗組員から選出した代表団を伴って第一艦橋に向かう。なおここで選出された者は(志願した薮を除いて)全員工作員である。
- 第一艦橋において上層部と代表団の交渉により、ヤマト計画からイズモ計画への転換を決定する。
アニメとの大きな違いとしては、イズモ計画派の工作員という存在は完全に隠匿されており、あくまでも艦内で自然発生したイズモ計画への回帰論に上層部が同意したことによる計画転換という形を取ろうとしていることである。
島と新見も表向きはイズモ計画とは無関係で、上層部側の交渉相手という立場を取っている。なお、このとき沖田艦長と真田副長はもちろんのこと、徳川彦左衛門は島への暴行で謹慎処分中、古代は惑星探査で不在、そして森雪は異星人であるとの嫌疑で交渉の場から爪弾きにされ、残っているうちの最上位士官は新見と島のみ。調停役である伊東達もイズモ計画側の人間であり、この交渉は完全な出来レースとなっている。
島による一方的なヤマト計画中断の宣言を行っていたアニメ版の計画と違い、こちらは下っ端も巻き込んだ(表面上は)民主主義的なものとなっているため、正当性がより確保しやすく、その後の混乱が抑えやすくなっており、アニメよりも一層現実的な計画と言える。
この計画は代表団が第一艦橋入りするまでは順調に進んだ。しかし、出来レースであるはずの交渉は思わぬ方向へ行く。島がヤマト計画の続行を判断したのである。
さらにそれにともなって伊東が島に銃を向ける。この行為を含め、第一艦橋に入ってからの伊東は計画書に無い行動が多々見られ、星名が伊東を暴走しているとして制止しようとする。伊東は自分向けの指令書にだけ書いてあった緊急時用の行動であると嘯き、星名はそれを否定した。
だがこれは伊東の誘導尋問だった。星名は工作員ではなくその協力者という立ち位置である。つまり工作員に渡される指令書の内容を知るはずがない。そもそも工作員はお互い独立しているので、どんな内容の指令書を渡されたか知るのは「渡された当人」と「渡したリーダー」の2名だけである。にも拘らず星名は伊東の嘘を即座にきっぱりと否定した。それはすなわち指令書の内容を知っていたということであり、星名こそがリーダーであるということを伊東に看破される。
実は伊東は藤堂平九郎の密命を帯びた二重スパイであり、工作員とそのリーダーの特定と摘発を狙っていた。
それはつまりイズモ計画派の工作員による一連の“反乱行為”が既にバレているということであり、さらに沖田艦長の復帰したことで目論んでいた正当性の確保は完全に失われてしまう。そして身バレした工作員たちはもれなく拘束されることになった。
その後、沖田艦長の口から全乗組員へ向け自身の復帰を伝え、さらにイズモ計画の実態(後述)について語り、そのうえでヤマト計画の推進を宣言した。
乗組員のほとんどにはイズモ計画派の反乱行為は知らされず、交渉の結果ヤマト計画の続行が決定されたということになっている模様。
計画の真実(ネタバレ注意)
ワープ技術獲得以前のイズモ計画が人類全ての生存を諦めているという点はアニメ版と同じだが、実はワープ技術獲得後もそれは変わっていない。
地球に残されたまともに動かせる艦がヤマト1隻しかないため、移住のためには人類をヤマトでピストン輸送するしかないが、如何にワープがあろうとも人類絶滅まで1年足らずの状況では限界があるからである。
なので、ワープ技術は単に成功率を高めるという効果しかなく、イズモ計画は最初の予定通りの内容で進めることとなっていた。
その内容もより残酷なものとなっている。それは、ヤマトに人類を含めた地球上の生物の遺伝子情報を保存し、地球に似た環境の惑星を発見したら、そこで繁殖させるというもの。
つまり新天地で新しく人類を誕生させてしまおうというもので、現生人類の存続は全く考えていない。ヤマトクルーですらアダムとイブではなく、その守り人でしかないのである。
さらに初期の計画では、地球に残された人類は攻め込んできたガミラスと刺し違えることになっており、地下都市にはそのための重核子爆弾が仕掛けられている。
ヤマト艦内でこれらの事実を把握していると明言されているのは沖田・真田・伊東の3名のみ。
(リーダーの星名に関しては不明だが)新見を始めとするイズモ計画に加担した者すら知らず、彼らは全ての地球人を救えると信じて行動していたため、真実を知った際には大きなショックを受けた。