「沖田の子供たち、そのまた子供たちが行く、か」
CV:玄田哲章
概要
『宇宙戦艦ヤマト2199』から登場する、地球側のキャラクター。リメイク版新規キャラだが、完全なオリジナルではなく、デザインは劇場版『さらば愛の戦士たち』、及びヤマトシリーズのTV2作目に登場した、参謀長(※)のリメイクである。容貌は概ねオリジナルを踏襲しており、カイゼル髭や堅物そうな表情により厳格なキャラクターとしてデザインされている。
※勘違いしやすいが、長官の傍に控えている坊主頭の人のは参謀であり、防衛会議で古代に「君はオブザーバーだ!」と叫んだ参謀長とは別人である。ちなみにプレイステーションゲーム版では参謀が参謀長に統合されている(参謀長の姿と役職をした参謀といった感じ)。
2199
概要
- 所属:国連宇宙軍 極東管区
- 階級:宙将
- 肩書:軍務局長
- 出身:茨城県
- 年齢:55歳
軍人として極東管区の軍務を束ねる立場にあり、政治面で統括している藤堂平九郎行政長官を支えている立場にある。また、軍人でありながらも政治的野心を抱いており、英雄視されている沖田十三を快く思っていない節がある。
イズモ計画派
芹沢はイズモ計画推進派であり、ヤマト計画が提出されることに不快感を示していた。地球の再生を願う事よりも、生き残った人類で纏めて他の星へ移住した方が確実である、との考えを持っていたのではないかと推測される。ただしこれはガミラスも同じ銀河系に属している可能性が高い、というヤマト発進時の地球側の認識による(当然ヤマトクルーも当初そう考えていた)。実のところガミラスは大小マゼラン星雲を統一した上で彼らから見れば辺境にあたる天の川銀河に着々と手を伸ばしており、仮にイズモ計画によって地球を捨てて逃げたとしても、結果的にはどの道ガミラスに遭遇する事は避けられなかったであろう。
国連宇宙局の幕僚監部作戦部9課でヤマト計画が本格的に始動した後も、彼はイズモ計画に固執しているフシが見られた。それはヤマトのクルーに新見薫をスパイとして(小説版では伊東真也もスパイとして送り込まれていた模様)入れている事からも窺える。
またヤマトが発進する際のエネルギー不足に際して「ヤマト計画は断念するように」と具申したり、発進直後の惑星間弾道弾ミサイルの爆発にヤマトが巻き込まれた際には「熔けて消えてしまったのでは」とヤマトに対しては露骨にネガティブな発言が見られた。
しかしいくらヤマト計画憎しとは言え、とりあえずはヤマトが発進しないと新天地が見つからないためイズモ計画も進まないのですがそれは…
開戦の発端
オリジナルとは違い、ガミラスが一方的な攻撃を仕掛けてきた訳ではなく、実は地球側からの先制攻撃が発端となっている。オリジナルと違いギャップが強く、視聴者の間でも賛否の湧かれる所でもあるが、その戦争の原因を作ったのが芹沢であると言っても過言ではない。厳密に言えば、彼の上にいた上層部であるが。
初のガミラスとの邂逅において、中央委員会は攻撃する事で意見を一致させていた模様。その理由として、
- エイリアン(当時はそう称した)達に、地球の位置を知られてしまうのを避ける為
- 地球側の呼びかけに一切応じない、或いはリアクションを見せない
- 呼びかけを無視して、太陽系内部へと侵入している
以上の点を踏まえて判断された模様。よくよく考えれば、中央委員会も強ち間違った判断を下したわけではない。地球上でも他国の領域に軍艦や戦闘機等が侵入しようとすれば、防衛の為に緊急離脱を呼びかけたり迎撃されるのは当然の事であるからして、当然の選択とも言えるだろう。
また、総集編映画『「宇宙戦艦ヤマト」という時代』では、過去に異星文明の戦闘艦が発見されたことが語られており、「争いという概念を知る異星人」が存在する可能性を把握していた政府・軍の上層部は神経が尖っていた模様。
ただ、じゃあ反対した沖田が脳内お花畑かというとそうではない。なぜなら沖田が主張したのは非戦でも平和主義でもなく慎重論だからである。
上の理屈は同じ常識・ルールを共有する者同士だからこそ通じるものであり、全く交流の無かった異文明との間で通じるかはこの時点ではわかっていない。ありとあらゆる呼びかけを行ったというのもあくまで地球人が知る範囲の方法でのことであるし、そもそも相手がこちらのルールに合わせてくれるとも限らない。白旗揚げたら徹底抗戦と受け取られるような事例はそれこそ現実フィクション問わずありふれた話である。
そうでなくとも先制攻撃を大義名分に攻めてくるつもりの可能性だってあるのだから(『ヤマトという時代』では実際にそれがガミラスの基本戦略だと明言された)、慎重を期すのは間違っていない。
しかし、かといって芹沢が言うように静観して手遅れになったら元も子もないため、どちらの主張も一理あるわけである。
実際にはガミラスは地球と概ね同じルールが通じたわけだが、呼びかけを理解したうえでわざと無視していたらしいため(しかも相手は覇権主義国家)、芹沢の危惧自体は結果的に間違いではなく、一方で先制攻撃により侵略の大義名分を与えてしまったという側面もあるため、結局攻撃支持の正否は判断しづらいところである。
有体に言えばガミラスが太陽系に侵入してきたこの時点で地球に理想的な選択肢など既に残されていなかったのである。
この事件で問題として挙げるならば、その後の政府発表内容にあっただろう。素直に「領域侵犯による迎撃を理由に止む無く攻撃した」というのではなく「ガミラスが先制攻撃を加えてきた」と虚偽の発表を行ってしまった。その理由はパンフレットの解説によると失態隠蔽と戦意高揚のためらしい。初戦で地球軍は艦隊を8割損失する大敗北を喫しており、自分から仕掛けて返り討ちに遭いましたでは軍幹部らの立場が危うくなると判断したのだろうか。また戦力の大部分を失った状態では敗北主義が蔓延する可能性もあり、士気を保つために憎しみを利用したとも思われる。
もっとも、この急場しのぎの対応が後々に禍根を残すこととなった。
経歴
2191年にガミラスと地球が初めて邂逅した際、沖田に対して中央委員会の決定事項として先制攻撃を命じた。沖田は「人類初の異星文明との接触だ。性急に過ぎる」と拒否するが、芹沢は軍務局長権限で沖田を解任。
そこでガミラスと先に遭遇していた、先遣艦ムラサメに対して、芹沢は砲撃命令を言い渡した。結果として戦端を開いたのは地球側となってしまい、ガミラスと戦うことになるが、相手の圧倒的な兵力で打ち負かされてしまった。
この事に関し、芹沢は報道で「エイリアンが一方的に戦端を開いた」等と嘘の報道を行った。しかし、ムラサメが撃沈されたのを筆頭にして、地球艦隊は初戦で敗退。その後も敗北を重ね、8割を喪失するという散々な結果を招いた。さらに生き残りである山崎奨には、先制攻撃の意図を聞かれても答えず、逆に箝口令を敷き、秘密を守らせている。
イズモ計画を中断され、ヤマト計画が進行する様子に不快感を示しており、イズモ計画復活を狙って新見を潜り込ませた。ヤマト発進の際には事あるごとに計画中止を進言している。なお、ヤマトが帰還してきたときには姿を見せていない。
2202
概要
- 所属:地球連邦防衛軍
- 階級:宙将
- 肩書:統括副司令官
- 出身:茨城県
- 年齢:59歳
『宇宙戦艦ヤマト2202愛の戦士たち』にて引き続き登場する。しらばっくれたのか裏取引でもしたのか、或いはガミラス戦役での人材不足が深刻だったのかは定かではないが、イズモ計画の黒幕にもかかわらず更迭はされなかった模様。
国連が解体されると共に、新たに設立された地球連邦防衛軍の統括副司令官へ就任し、引き続き統括司令長官となった藤堂のサポートを行う事となる。またイスカンダルとの条約を無視して波動砲艦隊構想を推進する(が、実際には彼自身が決めた事ではなく、あくまでも上層部の決定であり、彼はそれに従ったまでである)。
彼の(或いは上層部の)見解によれば、沖田とスターシャの間で結ばれた条約は公式的な物とは言い難いばかりではなく、いち艦長の独断で決定した口約束であり地球政府の意志とは違う事から、条約を反故にしているとのことである。
経歴
第8浮遊大陸基地奪還の折、中央司令部にて4名のオブサーバーと藤堂と共に戦局を見守っていた。作戦実行直前には芹沢が地球艦隊全将兵に向けて作戦内容を説明した。戦闘の最中、ガミラスと地球の軍需産業オブサーバーが芹沢に対して耳打ちしているのが確認される。
カラクルム級戦闘艦の登場で戦線が混乱する状況下を狙い、秘密裏に派遣していたアンドロメダによる拡散波動砲使用を藤堂に進言(言葉にして発しなかったが、藤堂はその存在を知っていたため何を言おうとしたか理解していた)。
許可を受けて秘密裏にインプットされていた『プランA』を発動。戸惑う将兵やオペレーター達を余所にして波動砲攻撃が実施された。見事にガトランティス艦隊を殲滅したが、カラクルム級が道連れ覚悟で地球へ特攻を仕掛けてきたのを知った時には、さしもの芹沢も冷静ではいられなかった。
まして落下予測地点が中央司令部であることが判明した折、非常識極まる特攻戦法に呆然としてへたり込んでしまった。そこに改装中のヤマトがショックカノンを持って迎撃した事で地球は未曾有の緊急事態を脱したのだが、ヤマトを勝手に動かされた事に戸惑いと怒りを覚えていた。
ヤマト乗組員がヤマトで無断発進しようと画策した際には、特殊部隊を派遣して拘束させようとするが、藤堂が無暗な戦闘を禁じたため、思うように制圧できず、最終手段の戦闘衛星もヤマトの先制攻撃で破壊されてしまった。戦闘衛星の破壊で一線を越えたと判断した芹沢は、アンドロメダにヤマト撃滅を命じるが、ガミラス大使ローレン・バレルが地球連邦大統領と取引を行い、ヤマトの反乱容疑を解除したため、徒労に終わる。
ガトランティスの主力が地球圏に攻めてきた際には、時間断層による戦力補給を背景に渡り合おうとする。この際、「地球のために!明日を生きる子供たちのために!」と各部隊への発破をかけているため、彼なりに地球を守りたいという意思が窺える。
戦後、古代進と森雪を救出するために時間断層を潰すか否かを国民投票で決めることになると、時間断層存続派として熱弁を振るった。しかし、真田とのすれ違いざまに「君たちが羨ましい」と晴れた顔で漏らしている。
イズモ計画にしろ波動砲艦隊にしろ、そして時間断層の存続にしろ、彼の判断は責任ある立場として効率や成功率などの合理性を求めたものである。そんな彼にとって合理を乗り越え、人間性を以て未来を切り開けるヤマト乗組員には若干の羨望があったらしい。
ヤマトが古代達を救出して帰還した際には、銀河の艦橋で思わず涙を流す芹沢の姿が見られる。
2205
概要
- 地球連邦防衛軍 統括司令副長官
- 階級:宙将
- 年齢:61歳
経歴
ガトランティス戦役を経て「平和国家として生まれ変わった地球」を内外に喧伝すために派遣される「平和使節団」の中の「地球全権大使」というとてつもない重責を担って、第65護衛隊旗艦ヤマトに乗艦した。
ヤマト内外で様々なことが起こる中、いつもと変わらぬような傲慢さあふれる物言いでバレルと会話するが、イスカンダルへの救援に行くかを決める会議で「我々平和使節団が乗ったままでは絶対にイスカンダルへは行けない」と断言することで暗に自分たちを下ろしてイスカンダルへ向かうよう促すなど、『2202』以前よりも態度が軟化したことをうかがわせる場面も。
最終的に、土門竜介ら若手クルーが起こした反乱に古代ら年長組が便乗、イスカンダルへ救援に向かうことが決まったことで、バレル、山南共々内火艇に避難していた所をそのまま置いていかれることになった。
総評
『2199』序盤でこそヤマトクルーら主人公サイドの足を引っ張る無能な味方枠として見られていたが、結果的に起こした行動が全て凶に回っただけで、芹沢もまた本人なりに地球や人類の滅亡の危機を憂い、信念を持ってそれらを食い止めようと行動した人物であり、決して利己的な要因だけで動く愚物ではない。
特に『2202』における先述の演説で、芹沢に対する見方を改めたファンも多いのではないだろうか。