※『ジョジョの奇妙な冒険』Part6「ストーンオーシャン」終盤のネタバレ注意
概要
ストーンオーシャン終盤、終始徐倫らを圧倒し独り勝ちするかと思われたプッチであったが、徐倫から希望を託されていたエンポリオの咄嗟の判断で形勢逆転され、一気に窮地に陥る。するとそれまでの強気な態度から一転、必死に命乞いをする。
や……やめろ……エンポリオ……
こんな事を!……ウェザーを止めろッ!!エンポリオッ!
こんな事をさせるなァーーッ!!
わたしが到達したわたしの『能力』は!!
『神』のご意志だッ!『神』が望んだ能力なのだッ!
新しい人類が始まり人間の未来はこれで救われるのだッ!
この時の加速が始まったケープ・カナベラル『以前』で……
わたしが死んだら人類の『運命』が変わってしまうぞッ
きっと違う未来になる!ここで死ぬわけにはいかないッ!
ケープ・カナベラルの後ならいくらでも命を捧げようッ!!
わたしがここまでやって来た事が起こらないという事に変わってしまうんだッ!
人々は時の旅で見た運命を見なくなる!覚悟を知る事がなくなるんだッ!
『覚悟こそ幸福』という事を思い出してくれッ!
ここでわたしは死ぬわけにはいかないのだーーッ
しかし……
わからないのか?
おまえは『運命』に負けたんだ!
『正義の道』を歩む事こそ『運命』なんだ!!
とエンポリオに一蹴され
やめろォオオオオ
知った風な口をきいてんじゃあないぞオオオオオオ
ンバッ
このちっぽけな小僧がああああああああああ
あああああがああああ ぐあばあぁぁぁ
と激昂するもむなしく、頭部を潰されて死亡した。
ジョジョのラスボスは追い込まれると口汚く相手を罵る傾向があり、プッチもご多分に漏れずだがちっぽけな「ガキ」ではなく「小僧」と発言する辺り妙に品を感じさせる。これはプッチの他の罵倒を見ても納得である。
しかし、身動きが取れなくなり拳を乗せられ完全に詰んだ後の「ケープ・カナベラルの後なら云々」の命乞いは、端的に要約すると「やっぱり完全勝利でなくてもいいので引き分けで勘弁してください=天国完遂の代わりに後々エンポリオがプッチの打倒が確定する」に過ぎず、身勝手で都合がいい情けないモノであるため、他のラスボスよろしく非常に不様である。
ちなみにこのセリフは連載時には登場していなかった。連載時には神父は頭部をウェザーの拳で(時が加速しているので)ゆっくりと潰されていき、上記の「ンバッ」の所で頭部を完全に潰され死亡していた。
そのためこのセリフはコミックにて追加された2ページで、「ンバッ」の後ではまだ死んでいなかったが、完全に醜い本性をさらした神父が、最期の悪足掻きでエンポリオに襲い掛かろうとした際に発したものである。
しかし、この時点ですでに時の加速の維持すらも出来なくなったようで、半ば潰された顔面をウェザー・リポートにガシッと掴まれ、バリバリと音を立てて肉を剥がされ、悲鳴を上げたままウェザー・リポートのラッシュを受けて完全敗北となった。
そして、ここでプッチの死で世界が一巡しきらず、元の世界とも異なる新たなパラレルワールドに1人放り出されたエンポリオのその後……
アニメ版では
2022年のアニメ版では、以下のような描写になっている。
プッチ「や……やめろ……エンポリオ……ウェザーを止めろッ!こんな事をさせるなァーーッ!!わたしが到達したわたしの『能力』は!!『神』のご意志だッ!『神』が望んだ能力なのだッ!新しい人類が始まり人間の未来はこれで救われるのだッ!まだ時の加速が始まったケープ・カナベラルに到達していない……『メイド・イン・ヘブン』は未完成なのだッ!ケープ・カナベラルの後ならいくらでも命を捧げようッ!!わたしが死んだら、わたしがここまでやって来た事が起こらないという事に……!人類の『運命』が変わってしまうんだぞッ!人々は時の旅で見た運命を見なくなる!覚悟を知る事がなくなるんだッ!『覚悟こそ幸福』という事を思い出してくれッ!」
「ここでわたしは死ぬわけにはいかないのだーーッ!!!」
エンポリオ「わからないのか?おまえは『運命』に負けたんだ!」
プッチ「ほざくな小僧……!」
エンポリオ「ぼくひとりじゃあない……ぼくをここに送り込んだ徐倫おねえちゃんの意志だ!ウェザーも、F.F、エルメェス、アナスイ、それに承太郎さんもだ!みんな未来なんか知らなくても『覚悟』があった!覚悟ができていなかったのはおまえだ、プッチ!」
「『正義の道』を歩む事こそ『運命』なんだ!!」
プッチ「やめろォオオオオ!知った風な口をきいてんじゃあないぞオオオオオオァァァッ!!」
「このちっぽけな小僧がああああああああああ!!!」
「覚悟こそ幸福だ」と宣いながら、そのまま加速をケープ・カナベラルに到達させればプッチが死のうがなんだろうが勝ち確定の状況で、その後に訪れるであろうエンポリオの報復を回避する小賢しい欲を出した結果、全てが台無しになった両者の遣り取りはプッチの理想の薄っぺらさと、エンポリオが受け継いだ仲間の意志がより強調されている。
そもそもの話として、この世界において「『覚悟』とは……犠牲の心ではない!」「覚悟とは!! 暗闇の荒野に!! 進むべき道を切り開く事だッ!」と彼の敬愛するDIOの息子に定義されているモノであり、絶対に避けられない諦観ではない。
その観点ではプッチの発言は完全にズレており、極論だが「論破が先に来ている周回遅れの論破すら不要な詭弁」でしかなく、それ故に「覚悟が出来ずビビってるのはお前だけ」とする趣旨のエンポリオの台詞は、原作では(五部の次章である事情もあり)必要がなかったが、それぞれが『黄金の風』と『ストーンオーシャン』が独立した作品であるアニメ版にて、改めて言及する必要が出たのだろう。
そして、エンポリオの「正義の道を歩む事こそ運命」という台詞は、懺悔で知り得た事を他人に口外してはならない決まりと個人的、宗教的にも妹に近親相姦の罪を犯させてはならない神父としての正義を果たそうとした結果、妹の死を招いてしまったプッチからすれば盛大な皮肉なものの、どれだけ辛い出来事であろうとその過去と折り合いをつけられるのはプッチ本人のみであり、それを見当違いのありがた迷惑で贖罪を果たそうとした結果、自らの敗北と死に行き着いたプッチの有様はまさに「運命に負けた」という他ない。
意志を託した仲間達が映る回想シーンでは、3部の処刑BGMが「『正義の道』を〜」の所では波紋の音声が流れており、ジョースター家の黄金の精神が確かに受け継がれた実態が示唆されている。
視聴者からは「良改変」「素晴らしいアニオリ」「言ってほしい言葉を言ってくれた」「漫画を読んだ当時はバッドエンドだと思ったが、エンポリオに意志を受け継げた『ジョースター』が勝ったのだと再認識できた」と賞賛された。
尚、ラッシュを食らう前に皮を剥がされるシーンは『右フックとアッパーで殴り飛ばされてからのラッシュ』という演出に変更されている。