概要
「月刊コロコロコミック」において1980年2月号から1983年5月号まで連載されていた少年漫画。作者は後に『つるピカハゲ丸』やコミカライズ版『ラチェット&クランク』で知られるのむらしんぼ氏。
コロコロには珍しく受験をテーマにした漫画であり、実際に受験シーズンに連載が始まった。
…のだが、その内容はもはや受験漫画の皮をかぶった超展開格闘漫画であり、それどころか連載途中で漫画のジャンルが急に変わるなど、突っ込みどころがありすぎて突っ込みきれないカオスな内容となっている。
あらすじ
進学塾の名門・大日本進学塾に入学した一人の少年・轟一番が、書いても減らない鉛筆「四菱ハイユニ」と必殺技を駆使して試験勝負で並みいる強敵を倒していく。しかし、それには本人も知らない真の目的があった…。
問題の内容
- 受験漫画なのにアクションの描写が存在する。主人公の轟一番がライバルと試験勝負をするのだが、本作の受験戦士ならば(ひっかけ問題を除き)「全問正解は当たり前」なので、実際は早解き勝負…ではなく早書き勝負。そのため受験戦士達が『ゲームセンターあらし』ばりのアクションで解答を書いていく様はあまりにもシュールである。おそらく初見でこの漫画を読んだ人は、ほぼ全員がこの漫画が受験漫画であることを一瞬忘れてしまうであろう。また、一番はピンチを迎えるたびに新秘技を生み出すのだが、その秘技が「答案二枚返し」、「ゴッドハンド」などもはやカオスすぎて理解不能なレベル。ぜひ一度、自らの目で確かめていただきたい。
- 一番の使用する「四菱ハイユニ」は書いても書いても磨り減らないというありえない鉛筆。なおダイヤモンド以上の硬さを誇るうえ、成分の一つは一番の鼻くそ(「四菱~」とか言っているが、自作である)。
- 試験中、睡魔が襲ってきたときは自分の足に鉛筆をブッ刺して睡魔に打ち勝つ。足に鉛筆を刺しているため回答ができないという新たなピンチに陥るも、自らの血で回答し難局を切り抜ける。
- 当初は3回までの連載予定だったが、予想以上に人気が出てしまい終わるに終われず、一番は受験に成功したにもかかわらず受験を続けなければならないという、受験漫画にあってはならない展開になった。どうやってそのピンチを乗り越えたのかは、登場人物欄、各自単行本もしくは自伝漫画『コロコロ創刊伝説』を参照の事。
- 後半になって突然「これまでの受験勉強の技は全てボクシングのためのものだった」と、ボクシング漫画に路線変更する。これは、作者ののむら氏曰く、単純に受験ネタが尽きたため仕方なくボクシングに題材を変更したとのこと。だがこの路線変更が災いして人気が急降下し、程なくして連載終了となった。
- 今風に言うならシリアスな笑いな作品のためツッコミは不在。そのためカオスな世界観に拍車をかけている。
- そもそも受験漫画にもかかわらず答案に回答を記載する場面しか描かれず、「何を書いたか」は愚か、試験の教科すらわからない。
他にもこの漫画のカオスっぷりは数多く存在し、ここでは紹介しきれない。気になった方は一読することをお勧めする。
登場人物
※メインの登場人物のみ記述。
- 轟一番
本作品の主人公。常に頭に「1」と書かれた白いハチマキをしておりそこに愛用の四菱ハイユニを挟んでいる。普段は出っ歯でおマヌケ面のザ・昭和のコロコロ男子だが受験(勉強)と友情、ガールフレンドの明日香に対しては熱い情熱と根性を見せる受験戦士である。学校や塾の授業では驚異的な集中力で学力を高水準でキープしている。
第1〜3話で見事常二に勝利するも開府中への入学は不合格だった。それはなんと出生届を母親がミスっており一歳他のキャラより年下だったという衝撃的な事実だった(その後ボクシング編にて母親は義理の母だった事が判明した為若干この設定の不自然さが減った)。その後も塾にて続々と勝負を挑んでくる受験戦士達と対決したり時には非道な行為に手を染める戦士達に殴り込みに行く事もあった。
その後、ボクシング編では死んだ実の父親、及び轟家が代々有名なボクシング一家であり受験戦士としての技は全てボクシングの為だった!という新事実が発覚し、実は父の友人だった塾長から「水月拳(ワンパンチで空気を圧縮し、ツーパンチでその空気の塊を撃ち出す技)」なる必殺技を伝授されボクシングに挑戦していった。
が、最終回ではボクシング選手と受験戦士を両立させた新技を開発した。
必殺技は主に「答案2枚返し(2枚の答案を左右同時に完璧に両立させて解く)」「ゴッドハンド(手が消えるようなスピードで答案を解く)」「四菱ハイユニ返し(四菱ハイユニを投げてトラップを破壊する)」やその場で思いついた技を即席で使っていく。
- 常二勝
一番のライバルにして親友。イケメン。塾での成績は一番より少しだけ下。第1話〜第3話で一番と対決し敗れて以降は「お前との勝負はまだついていない!それまでオレ1人が塾から去るわけにはいかん!」と受けた中学の合格通知を破り捨て中学浪人(別の中学に行っている可能性はあるが)して塾に通い続け時には家の財力、受験戦士の力で一番の戦いをサポートする。ボクシング編にても一番を倒す為に自身もボクシング選手へと転向した。
ある意味「お前を倒すのはこのオレだ!」的なライバル兼親友キャラとしては『あらし』の一平太と同じくコロコロ元祖かもしれない。
明日香
一番の幼馴染にしてガールフレンド。常に一番を敵真的に支えるお姉さん系ヒロイン(背が頭2個分も違う!)。敵に捕まったりした際も「あたし、一番くんのためなら死ねるわ!」と自分の安全よりも一番の勝利を優先する愛の戦士である(一番の方も「明日香は俺の全てだ!」と明日香の為ならどんな不利な条件でも飲むので良いカップルである)。一応彼女も塾に通う受験戦士だが特に特徴や必殺技はない。
ちなみに彼女は常ニと違って1〜3話で塾も卒業し普通に開府中に通っていたが、2年目の受験時に開府中のPTAが悪に手を染めていたことを知り退学した。
余談
作品内のアクション描写は『ゲームセンターあらし』の影響を強く受けており、のむら氏も後に「当時は必死に『あらし』を真似ていた」と語っている。
路線変更の後、読者からの手紙は一気に2倍の量になったが、その大半は路線変更への抗議の内容だった。その中には鉛筆の削りかすや消しゴムのかすが入れられた手紙もあったという。
連載後半に人気が急降下したとはいえ、まだ中の下程度の人気は維持していたらしく、本来は打ち切りになるようなレベルではない事を当時の担当編集者に明かされ、のむら氏は「だったら続けさせて下さい」と訴えたが、「ただ生活のためだけに、ダラダラと描き続けていいのか?」と叱責されたという。それから間も無く本作の連載は終了した。
その後のむら氏は不遇の時代を経験した後に、『一番』以上のヒット作『つるピカハゲ丸』を送り出す事になった。
後に、怒り新党において本作が紹介された。