概要
東方Projectに登場する綿月依姫と藤原妹紅のカップリング。
依姫は『東方儚月抄』、妹紅は『東方永夜抄』にそれぞれ初登場しており、妹紅は『儚月抄』(主に小説版と4コマ版)にも登場している。
2014年12月時点では原作では両者の直接の接触は見られていないが、両者にとって極めて縁の深い現在の永遠亭の面々を通しても縁を持つ。人間関係と設定の方面から二人の縁を取り持つのは、人物としては八意永琳と蓬莱山輝夜である。設定上のアイテムとしては「蓬莱の薬」を通して間接的な縁をもち、原作においてそれぞれの形で「炎」を操ることにも共通点をもつ。
八意永琳と蓬莱山輝夜
妹紅が蓬莱人として今日に至るあらゆる因縁の起点となるのが輝夜である。
そして妹紅と輝夜を蓬莱人たらしめた「蓬莱の薬」は輝夜の能力と永琳の叡智と技術によるものである。
「蓬莱の薬」は輝夜や永琳が月の都から追われる要因ともなっている。
三名の関係については各キャラクターの個別の記事及び「蓬莱の薬」、「蓬莱人」を参照。
一方の依姫においてはかつてまだ永琳が月に所在した頃に姉である綿月豊姫とともにその教えを受けており、依姫や豊姫は後に永琳らが地上へと隠れた後長い時間を経ても永琳を慕い続けている。
依姫は永琳と古くからの縁であり、妹紅もまた強力な縁で結ばれた輝夜を通して月の人々とも縁の繋がりが生まれているのである。
なお『儚月抄』の4コマ版である『月のイナバと地上の因幡』では依姫もまた豊姫とともに地上へと降り、永遠亭を訪ねている。永遠亭は今日では妹紅も訪れる場所であり、永遠亭は、今日の幻想郷において両者が出会う事の出来る場所でもある。
「炎」
妹紅は長い時間を生きる間に妖術によって火を操る術を身につけており、スペルカードなどではその火炎によって不老不死を表す不死鳥と不死の罪とを表現する。「竹取物語」に描かれた「蓬莱」の意味とも絡んでその様はまさに「不尽の火」である。
時には自身が火だるまになりつつ相手方に突撃するなどの不老不死でなければ使用できないようなスペルカードも生み出している。
依姫は『儚月抄』作中において神降ろしを行い、「 全てを焼く尽くす神の火 」である「愛宕様の火」を行使している。さらに「火雷神」(ほのいかずちのかみ)を降ろし、その雷撃と火柱とを自在に操っている。
炎の神々
「愛宕」に関連した今日の愛宕信仰は様々な神々を祀るものであるが、日本神話に関連した神々としてはカグツチ(火之迦倶槌神)やイザナミ(伊弉冉)などが祀られている。
特に火の神であるカグツチはそれ自体が火炎の存在であり、生まれた際には母神であるイザナミに死に至るダメージを負わせている。そしてイザナミが死後に黄泉へと下った後、傷んだ体に生じた八つの神の内の一つが火雷神である。
なお依姫は火雷神に命ずる際に「 七柱の兄弟を従え この地に来た事を後悔させよ 」としているが、日本神話において黄泉のイザナミの体に発生していた神々については火雷神を含めた八柱総称して「火雷大神」とも称される。
この内、火雷神はイザナミの胸に生まれていたとされる神である。
またかつて妹紅が「蓬莱の薬」に関連して出会うこととなった木花咲耶姫は、日本神話においてはその子について夫瓊瓊杵尊(ニニギノミコト)に不義を疑われ、その疑念を晴らすべく火中での出産に臨んでいる。これは神々の子であるニニギの子供であるならばどんな状況でも無事に出産できるはずだ、という信念に基づくものである。
妹紅と依姫は作中でそれぞれに関連して登場した神々についても「炎」に由来するものを持つものがあり、いずれも出産に際して「炎」にまつわるエピソードを持つという点にも共通点がある。なお神話などで出産と炎(特にその危険性)が関連付けられた理由としては古来においても出産が命の危険を伴うものであった事の喩でもあるとされる。炎は「生」と「死」の両端な価値を同時に内包した比喩としても用いられているという解釈である。
寿命
妹紅は「蓬莱の薬」の服用によって不老不死となった身であり、死ぬことはできない存在である。
一方の依姫ら月の民は、豊姫によれば「 不老不死ではない 」。事故などでの「死」もある模様であり、豊姫は「 私達だって何れ寿命によって死ぬ運命にあるのかもしれない 」とも独白している(『儚月抄』)。
ただし依姫の存在している時間感覚は他の存在とはいわば桁が違う長さのものでもあり、元となった日本神話の神々においてもその寿命は今日想定されている宇宙の寿命よりも長いため、実際には永遠とも思われる時間を共に過ごし得る可能性を持つ。
しかしながら「不老不死」ではなく寿命以外の形での「死」もあり得る様子であるため、妹紅と輝夜の間柄のような、尽きる事のない永遠を実感し合うことは出来ないのかもしれない。
その他の人間関係
輝夜や永琳以外の人間関係としては両者に関わるキャラクターとして鈴仙・優曇華院・イナバがある。
月にいた頃に依姫が期待を寄せていた鈴仙は『月のイナバと地上の因幡』にて妹紅に(冗談ながら)兎鍋にされかけており、『儚月抄』小説版では依姫との会話中の独白で、豊姫が鈴仙の地上での行方に関する可能性の一つに「 人間に捕えられて鍋にされた 」というものを挙げている。
どうやら豊姫の予測が妹紅によって危うくも実践されるところであった模様である。
加えて鈴仙は同作で依姫にみっちりと鍛え直されるところであったが、妹紅は鈴仙に自身の鍛錬のために協力してもらっているなど、各々の方向性での「強さ」という点でも鈴仙を通してそれぞれの在り方が描かれている。
また『永夜抄』で妹紅が対峙した博麗霊夢や霧雨魔理沙は『儚月抄』において依姫と弾幕ごっこを行っている他『永夜抄』で霊夢と共に妹紅と相まみえた八雲紫は『儚月抄』では地上と月に関連したストーリー上の重要人物である。
紫に関連しては、図らずも紫の動向を遠因として妹紅は輝夜の今の気持ちを知ることともなっている。
この他、依姫は豊姫の妹であり、妹紅もまたそのモデルとなった関係性においては三人の姉がいるとされる人物であるなど、共に「妹」とという位置づけでもあることにも共通点を持つ。
二次創作では
二次創作においては両者が交錯する際には永遠亭の面々がその縁をつなぐ場合も多い。
永遠亭は原作においても「月都万象展」などの形で外部に対してイベントを開催したりすることがあり、『月のイナバと地上の因幡』では依姫もまた豊姫とともにアイデアを提供してもらうべく地上へと呼ばれたりしている。
二次創作ではストーリーの起点として描かれることの多い輝夜や背景部分や展開を牽引したりする永琳らに関連して二人が登場したりするなどの形で二人が交流する様子が描かれる事もある。