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説明編集

第二次世界大戦中のアメリカ海軍空母の艦級。エセックスを一番艦とする。

基準排水量27,000トンと、日本の翔鶴型に匹敵する大型空母であった。開戦前から着手されていたが、真珠湾攻撃を受けて、建造隻数が大きく追加された。1942年末から竣工し始め、以後ほぼ2カ月に1隻の割合で続々と就役、マリアナ沖海戦では6隻、レイテ沖海戦では8隻が参加、以後、沖縄戦や日本本土空襲にも多くが参加した。装甲空母ではなかったため、特攻機で大きな被害を蒙ることもあった。太平洋戦争中に17隻、その後に7隻の計24隻が竣工、ほかに8隻が建造中止となった。

大戦後も、朝鮮戦争に参加、多くのものはアングルドデッキ化などの改修を受けジェット化時代に対応したが、ベトナム戦争を機に退役していった。

設計編集

エセックス級は1939年にヨークタウン級の拡大改良型として設計が開始された。主な課題は搭載機数の増加、飛行甲板の拡大、速力の上昇、そして対空火力の向上とされた。設計開始時は基準排水量20,000トンとされたが、後にこれを大きく上回っている。装甲空母とすることも検討されたが、搭載機数が大幅に減る事を嫌い、往来通りに装甲を格納庫下に設けるとした。(格納庫を軟らかくして爆風を逃がし、頑丈な船体で沈没せず耐える事が出来た。)しかし、飛行甲板が破損する可能性を考え、艦首側からも着艦できるように艦首から艦尾まで着艦制動索を設けた。これに加え、格納庫内に非常発進用のカタパルト一基を設けた(無論甲板上にもある)。理屈の上では、飛行甲板が使用不能になった場合も艦載機を発艦できるが、史実では活躍した例はなく、結局多くの艦が撤去した。

舷側エレベーターを採用したため、ヨークタウン級に比べて搭載機数が大幅に増えた。

それもあり大戦当時の記録映画には本級の飛行甲板にズラリと並んだ艦載機という映像が多数残っている。


対空火器は設計段階では新型の5インチ両用連装砲に加え、4連装1.1インチ機銃や、0.5インチ単装機銃などであった。

 

主機関としては、圧力40 kgf/cm² (570 psi)、温度450℃の高温高圧缶による蒸気タービン推進方式が採用された(参考:大和型25kgf/cm2・325℃、翔鶴型空母30kgf/cm2・350℃、島風型駆逐艦40kgf/cm2・400℃)。

この高温高圧缶の性能と二段式減速タービンの採用により、15ノットで15,440海里という航続距離が得られた。

また一部の艦の船体には敵の射撃管制を混乱させる事を目的としてダズル迷彩が塗装されていた。

 

1945年11月26日には空母レイク・シャンプレイン (USS Lake Champlain, CV-39)がモロッコのタンジールからアメリカ合衆国のバージニア州ハンプトン・ローズに4日と8時間51分で到着した。この記録は1952年の夏に客船ユナイテッド・ステーツに破られるまで世界最高記録であった。

1950年7月14日から22日にかけて、空母ボクサー(USS Boxer, CV-21)は150機の空軍及び海軍機、1,000名に及ぶ兵員を積んでカリフォルニア州アラメダから日本の横須賀まで8日と7時間で太平洋を横断して送り届けるという記録を作った。帰路(7月27日から8月4日)では7日と10時間36分という記録を打ち立てている。

 

建造編集

1940年2月にネームシップであるエセックス(CV-9)がニューポート・ニューズ社に発注され、同年5月にCV-10~CV-12、8月にはCV-13~19が発注されている(CV-16~CV-19はベスレヘム・スティール社)。建造中に様々な設計変更がなされ、大きなところではCV-7ワスプで好評だったサイドエレベーターの追加、細かな変更としては故障の多かった1.1インチ連装機銃のボフォース4連装40mm機銃への、威力不足とされていた0.5インチ単装機銃のエリコン20mm単装機銃への変更などである。


珊瑚海海戦の戦訓を踏まえ、対空、対水上、高度測定用など、多種多様なレーダーが追加された。なお、建造時期、造船所、戦場での変更などにより、レーダーの配置パターンは無数にある。

短船体と長船体編集

エセックス級には大きく分けて二つのグループがある。エセックスやホーネットに代表される短船体型と、非公式にタイコンデロガ級とも呼ばれる長船体型である。見分けるのは容易であり、横から見て艦首がわずかに傾斜しているのが短船体型で、大きく傾斜してクリッパーバウみたいな形をしているのが長船体型である。なお、水線長は両タイプとも同じである。


長船体型は基本的に対空火力向上型であり、艦首と艦尾に一基ずつだった4連装40mm機銃を二基ずつに増やしている。しかし、射角を稼ぐために飛行甲板は短くされてしまい、パイロットからは不評であった。

太平洋へ編集

エセックス級の初陣は1943年8月、CV-9エセックスとCV-10ヨークタウンを含む第5艦隊による南鳥島(マーカス島)空襲であった。その後、ラバウルやマキン、タラワなど、各地に空襲を行った。1944年になると、多くのエセックス級が太平洋に到着し、米海軍主力空母となった。最大で100機を超える搭載能力を活かし、マリアナ沖海戦やレイテ沖海戦、更には坊ノ岬沖海戦などで縦横無尽に活躍している。日本海軍機動部隊壊滅後は主に上陸作戦の支援、日本本土の空襲、通商破壊などを行った。CV-13フランクリンやCV-17バンカー・ヒルなど、日本軍の航空攻撃で大破した艦はあったものの、優れたダメージコントロール能力により、撃沈された艦はない。ほぼ全艦何かしら被弾はしているが、CV-12ホーネットは18ヶ月間の作戦行動中、59回も攻撃されながらも一度も被弾していない。

戦後改装編集

エセックス級は戦後も引き続き運用され、改良の上、朝鮮戦争やベトナム戦争などにも参加している。主な改造はジェット機を運用するための飛行甲板の強化やアングルドデッキ化、対空砲の撤去などである。主力の座を新鋭のミッドウェーやフォレスタル級に譲った後、対潜空母(CVS)として活躍したエセックス級もある。なお、高速性を活かし、多くの艦が海に着水したジェミニ計画、及びアポロ計画のコマンドモジュールを回収している。例として、レイク・シャンプレインはNASA初の有人宇宙飛行を達成したマーキュリー3号、イントレピッドはジェミニ3号、ホーネットは初めて月面に着陸したアポロ11号を回収している。

 

飛行甲板を撤去して大陸間弾道ミサイルの発射台を設置する改装案もあったがさすがに廃案になった。

その艦齢の高さや周囲の艦艇、艦載機の近代化もあり、最後まで第一線に残ったグループもベトナム戦争の時期を境に退役したが、武装を外し離着艦用の練習空母として改造された「レキシントン」が長らく艦載機のパイロットを育成する裏方として稼働しており、48年間にわたる本級の活躍の最後を飾った。(1991年に退役)


余談ではあるが昭和30年代の日本国政府内における海上自衛隊の空母保持構想において、当時現役であった本級の供与を受けることが検討されたことがある。


現在編集

現在米国内で4隻が保存、展示されており、一般人が乗艦することが可能である。


CV-10 ヨークタウン - マウントプレゼント町、サウスカロライナ州

CV-11イントレピッド - ニューヨーク市、ニューヨーク州

CV-12ホーネット - アラメダ市、カリフォルニア州

CV-16レキシントン - コーパスクリスティ市、テキサス州


ヨークタウン、イントレピッド、ホーネットは坊ノ岬海戦に参加しており、最初に大和に魚雷を命中させたのはホーネットの艦載機である。なお、四隻とも近代化改装されており、太平洋戦争時の姿を留めていない。しかし、各所に名残はあり、一度訪れて探すのも面白いと思われる。

同型艦リスト編集

単独でイラストが描かれているものはほとんどない。リンク先の多くはその由来である。戦場名や、戦没艦の襲名が多い。


エセックス (USS Essex, CV-9)19世紀に活躍したフリゲートに由る

ヨークタウン (USS Yorktown, CV-10) 戦没空母の襲名。元々は独立戦争のヨークタウンの戦いに由る

イントレピッド (USS Intrepid, CV-11) 『大胆不敵』を意味する

ホーネット (USS Hornet, CV-12) 戦没空母の襲名(帆船ホーネットから数えて八代目)

フランクリン (USS Franklin, CV-13) ベンジャミン・フランクリンに由る

タイコンデロガ (USS Ticonderoga, CV-14)独立戦争のタイコンデロガ砦の攻略戦に由る

ランドルフ (USS Randolph, CV-15)ペイトン・ランドルフに由る

レキシントン (USS Lexington, CV-16) 戦没空母の襲名。元々は独立戦争の戦いに由る。本級において最後まで現役であった。

バンカー・ヒル (USS Bunker Hill, CV-17)独立戦争・バンカーヒルの戦いに由る

ワスプ (USS Wasp, CV-18) 戦没空母の襲名(帆船ワスプから数えて十代目)

ハンコック (USS Hancock, CV-19)ジョン・ハンコックに由る

ベニントン (USS Bennington, CV-20)独立戦争・ベニントンの戦いに由る

ボクサー (USS Boxer, CV-21)アメリカが拿捕したイギリス軍艦名より

ボノム・リシャール (USS Bonhomme Richard, CV-31)ジョン・ポール・ジョーンズ提督座乗の、フランスから譲り受けたフリゲートに由る(更に遡ればベンジャミン・フランクリンの『貧しきリチャードの暦』に由る)。英語読みならボンノム・リチャードだが、フランスへの敬意を込めて、フランス語読みのボノム・リシャールと呼ばれる

レイテ (USS Leyte, CV-32)太平洋戦争・レイテ沖海戦に由る

キアサージ (USS Kearsarge, CV-33)キアサージ山に由る

オリスカニー (USS Oriskany, CV-34)独立戦争・オリスカニーの戦いに由る

レプライザル (USS Reprisal, CV-35) キャンセル

アンティータム (USS Antietam, CV-36)南北戦争・アンティータムの戦いに由る

プリンストン (USS Princeton, CV-37) 戦没空母の襲名。元々は米海軍最初のスクリュースループに由る

シャングリラ (USS Shangri-la, CV-38) 記者団にドーリットル空襲の発進地について聞かれた際のルーズベルト大統領の答えに由る(更に遡ればジェームズ・ヒルトンの著書に出てくる理想郷に由る)。米国海軍所属の艦艇の中で唯一、架空地名から命名された艦でもある。

レイク・シャンプレイン (USS Lake Champlain, CV-39)米英戦争・シャンプレイン湖の戦いに由る

タラワ (USS Tarawa, CV-40)太平洋戦争・タラワの戦いに由る

ヴァリー・フォージ (USS Valley Forge, CV-45)独立戦争中の宿営地に由る

イオー・ジマ (USS Iwo Jima, CV-46) キャンセル、硫黄島の戦いに由る

フィリピン・シー (USS Philippine Sea, CV-47)太平洋戦争・マリアナ沖海戦の英語名に由る


1945年3月計画中止

CV-50

CV-51

CV-52

CV-53

CV-54

CV-55

関連イラスト編集

舰R舰C

関連タグ編集

アメリカ海軍 空母 ヨークタウン級(一つ前のクラス) アイオワ級(同時代の戦艦)

大戦中の搭載機:F6F SB2C TBF

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