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イギリス海軍の航空母艦
メイン画像(…の、ダダじゃない方)。
世界初の空母である英空母フューリアスを始めとする先行の空母の運用実績を元に世界で初めて全通甲板を採用し、その後の空母の在り方を決定付ける一隻となった。
概要
元々はイタリアの客船「コンテ・ロッソ」として発注され、イギリスの造船所で建造が行われていた最中に第一次世界大戦が勃発し建造が中断されてしまうという不幸に見舞われるも、本格的な航空母艦の構想を練っていたイギリス海軍の目に止まり第一次世界大戦が終結する直前の1918年9月に空母「アーガス」として就役した。
前述の通り世界に先駆けて全通甲板とエレベーター式の艦橋を備えていた事に加え、艦載機の搭載数も約20機と大幅に増えるなど先進的な構造だった反面、着艦装置は未熟なままであり甲板に備え付けられた縦索式のアレスティングワイヤー(余談だが空母としてアレスティングワイヤーを初めて搭載したのも本艦である)は着艦の際の事故が多発し実用的な着艦装置の搭載は1931年まで待たなければならなかった。また「航空機の離着艦に必要の無い構造物は甲板上から排する」という徹底した設計思想により、煙突の代わりに船内に這わされた煙路を通じて船尾のダクトから排煙する「焼き鳥屋」式の排気システムを取ったため乗組員は熱と煙に悩まされる事となった。
艦歴
第一次世界大戦では終結間際に就役したため参加する機会は無く、地中海艦隊に配備されていた間もチャナク危機に出動した以外には騒乱を経験せず、1932年から1938年にかけて数回の近代化改装を受けると共にクイーンビー無人標的機の母艦や練習空母などの補助艦として使用された。
第二次世界大戦では予備艦であったが、1940年の4月に現役復帰しイギリスへ向かうオーストラリアとニュージーランドの部隊を乗せたUS3船団を巡洋戦艦フッドらと共に護衛して、8月に行われたハリー作戦ではフッドが旗艦を務めるH部隊に加わり空母アーク・ロイヤルと連携してマルタ島へイギリスから運び込んだ12機のホーカーハリケーン戦闘機と2機のブラックバーン スクア急降下爆撃機を送り込み、11月のホワイト作戦でもH部隊と共に同数の戦闘機と爆撃機をマルタ島へ送った。
12月25日にはWS5A船団と先代にあたるフューリアスに同行してジブラルタルへフェアリーソードフィッシュ雷撃機を輸送中に、大西洋上でドイツ海軍の重巡洋艦アドミラル・ヒッパーと遭遇し攻撃を受けるも、護衛の駆逐艦らに追い払われて事無きを得る。この時アーガスに積み込まれていたソードフィッシュは爆装されており、更に肝心の魚雷はスクアを搭載したフューリアスの方に積み込まれていたという痛恨のうっかりを犯し、ヒッパー捜索のためにスクアが発進したのと入れ替わりにアーガスからフューリアスへと着艦したソードフィッシュには雷装が施され、すったもんだの末に反撃の態勢が整った頃には視界不良もあってヒッパーは捕捉される事無く逃げ去っていた。
1941年に入ってからも航空機輸送のためにイギリスと地中海の往復を続け、9月には空母ヴィクトリアスに護衛されながらソ連援助のためのRAF151航空団のパイロットと24機のハリケーンをムルマンスクへ送り届けた。
11月のパーペテュアル作戦では、マルタ島に航空機を届ける事には成功するものの、ジブラルタルへ帰投する途中の13日15時に僚艦のアーク・ロイヤルがドイツ海軍のU-81から雷撃され、曳航の甲斐なく翌日早朝に沈没する。また悪い事に、この損失は地中海に配備されていた他の英空母が
- グローリアス:ノルウェー沖に駆り出され既に沈没
- イーグル:本来の所属である東洋艦隊へ戻された後に本国で修理と改修中
- イラストリアス:ドイツ軍の空爆を受け大破、アメリカで修理中
- フォーミダブル:ドイツ軍の空爆を(以下略)
といずれも地中海を離れている中での出来事であり、アーガスは地中海で唯一運用可能な空母となったため現地に留まっている。
更にこの約10日後には戦艦バーラムがU-331の雷撃で沈没、12月19日にはアレクサンドリア港に停泊していたヴァリアントとクイーン・エリザベスの両戦艦が人間魚雷を用いて侵入したイタリア海軍の特殊部隊による爆破工作で大破着底するなど、戦況は大きく枢軸側に傾きつつあった。
1942年の初頭にはH部隊と共に英国本土に呼び戻され、地中海に新たに配備されるスピットファイア戦闘機をイーグルと共に激しい攻撃に晒されているマルタ島へ送り続けた。
6月10日から15日にかけて行われたハープーン作戦では、イーグルらH部隊の艦船と共にマルタ島に向かう輸送船団の間接護衛に参加し、ソードフィッシュを中核に2機のフルマー戦闘機を加えた編成で対潜哨戒を行っている。14日には大挙して襲来したイタリア空軍機の攻撃を受け、被弾こそしなかったがサヴォイア・マルケッティ SM.79雷撃機1機、z1007爆撃機1機を撃墜するのと引き換えに、イタリア側の爆撃機によってフルマーを2機共撃墜され、日暮れには間接護衛隊は引き返した。その後は直衛隊の奮戦もあって空と海からのイタリア軍の猛攻と機雷原に半数以上を失いながらも、輸送船団は翌日の夜にマルタ島に到達した。
ネルソン級を始めとする強力な艦隊が加わったペデスタル作戦では、直接の参加はせず作戦の実行に先立って行われた訓練の支援に留まった。
11月のトーチ作戦ではフューリアス、ビクトリアス、フォーミダブルと共にシーファイアでアルジェを目指す米英合同の上陸部隊の兵士達を空から援護し、ヴィシー・フランス軍の降伏直前の11月10日に残存機の空爆を受けて小破した(この作戦ではカサブランカに展開したアメリカ海軍第34任務部隊のレンジャーと護衛空母が同様の航空支援を行っている間にヴィシー・フランス海軍の艦隊と交戦しており、同部隊のウィチタ、ブルックリンらアメリカ海軍の艦艇も同艦隊と戦闘を行っている)。
その数日後には地中海からイギリスへ戻る船団の護衛に加わり、道中で護衛空母アヴェンジャーがU-155に撃沈されるも何とかアーガスと船団は無事にイギリスへ辿り着く事が出来た。
1943年の5月に半年にも及ぶ長い修理を終えると護衛空母への転換が検討されたが取り消され、再び練習空母となる。その後も除籍や航空機用の貨物船への転用が持ち上がるも、いずれも実現せず44年の9月27日までパイロットの育成を務めた後、同年の12月にはチャタムに係留され宿泊艦として終戦を迎えた。
46年に除籍され解体。
擬人化
中国のスマホゲーム『戦艦少女』に本艦を擬人化したキャラクターが登場する。中国語での表記は百眼巨人。あだ名は白眼、百百目鬼、アーガス先生など。こちらとこちらの記事も参照。
「軽空母アーガスよ。空母のみなさんによーく教えこんであげるわ。」
傷病兵収容艦
英海軍が運用する航空支援艦。
元は1981年にイタリアで建造竣工したコンテナ船「コンテンダー・ベザント」。
先代同様のイタリア生まれである。
フォークランド紛争で航空機輸送艦として借りたのをきっかけに英海軍が購入し、簡易ヘリ空母として1988年改装された。
上記空母退役より40年近く経過し、金のなかった英海軍にとっては文字通り渡りに船だった
(安くあげるためにカタパルト等を省略しヘリ空母としたインヴィンシブルよりさらに安く仕上がった)。
初の全通甲板を備えた先代と逆に現代の航空運用艦船としては珍しく全通甲板ではない。これはヘリとVTOL機しか運用しないので全通の必要が無いからである。VTOL機ハリアーも退役した今となってはヘリのみの運用である。
また、煙突の煙がヘリ発着を邪魔するという先代とは違う悩みを抱えてしまった。
病院船としては手術室や集中治療室を備え、最新の医療施設を有する優秀な船である。
現代の商船改造空母といえる。