※この記事は『ファイナルファンタジーⅩ』のネタバレを含みます！
いえ ゆい
のぼ めの
れん みり
よじ よご
ゅ
はさ
てか
なえ
くた
ま
え
『夢』の始まり
物語の千年前、スピラ世界に存在した二大国ザナルカンドとベベルの間で戦争が勃発した。
ザナルカンドの「召喚士」たちは人々の「夢」を力とする「召喚獣」で立ち向かうも、強力な機械兵器を有するベベルには敵わず、次第に追い込まれてしまう。
もはや母国の滅亡は避けられぬと悟った当時の指導者エボンは、せめて「夢」として国を永遠に残そうと考え、生き残った国民もそれに同意した。
そうしてガガゼト山に集まったザナルカンド人は術の力となるべく、魂を肉体と切り離して像に封じた「祈り子」となり、エボンはそれを使って「夢のザナルカンド」を召喚。同時に自らは膨大な生命エネルギー「幻光虫」を集め、夢の守護者としての“鎧”となる巨大な怪物『シン』を産み出した。
こうして、現実のザナルカンドは滅亡したが、祈り子となった国民は『シン』に守られながら、永遠に平和な夢の中で眠りについたのである。
『罪』の始まり
しかし、エボン本人は『シン』の核となったことで自我も人の姿も失い、永遠に夢のザナルカンドを召喚し続ける呪縛に囚われた怪物「エボン=ジュ(呪)」となってしまった。
さらに現実世界では『シン』が自身を脅かす可能性のある機械文明を破壊しはじめたことで荒廃。ベベルもまた滅亡寸前にまで追い込まれ、無念の死をとげた者たちが魔物と化してさらに人を襲う。
生き残りの召喚士ユウナレスカと夫ゼイオンが命と引き換えに「究極召喚」で『シン』を倒すも、その究極召喚獣にエボン=ジュが取り憑いて、数年の「ナギ節(平和な刻)」の間に新たな『シン』に作り替えてしまう……
どうあがいても『シン』を倒すことはできないと悟ったユウナレスカはあまりの無念に死人(実体を持つ魂)となり、せめて人類が絶望しないようエボン=ジュの存在を隠しつつ、廃墟と化したザナルカンドで『シン』に立ち向かう召喚士に究極召喚を授けるしかなかった。
指導者たちもまた、人々の心の拠り所として、『シン』をザナルカンドを滅ぼした機械文明への『罪(sin)』と偽り、質素に慎ましく日々を過ごしてゆけば、“いつかは”罪が償われる。という「エボン教」を説いた。
たとえそれらが気休めにすぎない、いつわりの希望であったとしても……
こうしてスピラ世界は千年もの間『シン』による破壊と殺戮が続く「死の螺旋」に囚われることになったのである。
『真実』となった『夢』
スピラが荒廃してゆく間も穏やかに過ごしてきたザナルカンドの祈り子たちだが、祖国が滅亡してから千年後、ありえないはずの出来事が起こる。
空想の産物でしかない夢のザナルカンドの住人ジェクトが、休息のために訪れた『シン』に飲み込まれ、なんと現実世界に飛び出したのである。
何も知らぬ彼は息子ティーダのいる故郷へ帰るため、召喚士ブラスカとガード(護衛)のアーロンと共にザナルカンドへの旅に同行。しかし旅路の中で帰還は不可能だと悟り、息子をアーロンに託してブラスカと共に究極召喚に望む。
そうして究極召喚獣の祈り子となって『シン』と闘い……新たな『シン』となった。
残されたアーロンはユウナレスカから真実を聞いて激昂し、襲いかかるも返り討ちにあい命を落とす。しかし彼もまた死人となり、『シン』となったジェクトに導かれて、ティーダの住む夢のザナルカンドへたどり着いたのである。
この一連の出来事は祈り子たちの間に波紋を呼び、「夢」を見続けることに疲れはてていた彼らは“夢を終わらせる”ため、父と同じく『シン』に飲み込まれてスピラへやって来たティーダと、ブラスカの後を継いで旅をする娘ユウナに協力するようになる。
『夢』の終わり
旅路の末に廃墟のザナルカンドにたどり着き、ユウナレスカから真相を聞いたティーダとユウナは究極召喚に依らず『シン』を倒す手段を模索する。
そうしてエボン=ジュの存在を知り、直接倒すべく飛空艇で『シン』の体内に突入。同じく侵入していた宿敵シーモアを倒し、たどり着いた最深部でついに父と息子は再会した。
エボン=ジュは召喚獣に取り憑いて、新たな『シン』を作り出す……ゆえにエボン=ジュと戦うには依代となる、これまで力を貸してくれた召喚獣たちを全て倒さなければならない……ジェクトは召喚獣としての力を解放し、全てにケリをつけるべく息子と刃を交える。
ユウナもまた、旅の中で契約した召喚獣を次々と呼び出し、別離の言葉を交わしながら倒してゆく。
全ての召喚獣を倒すと、取り憑いていた黒い球体のもやが晴れ、ついにエボン=ジュはその姿をさらけ出す。
エボン=ジュと究極召喚
究極召喚を使った召喚士は死ぬ。
これは実は究極召喚の発動によるものではない。
究極召喚を使って『シン』を倒したら、命を落とすのである。
究極召喚獣が『シン』を倒せるのは、召喚獣の祈り子と召喚士の親愛の絆が強大な力(『シン』を構成する幻光虫を分解する能力)を発揮するため。
しかし、その絆が仇となり、召喚獣がエボン=ジュに取り憑かれて『シン』に作り替えられる際の凄まじい苦痛が召喚士にも伝わり、それに耐えられず命を落とすのである。
さらに祈り子像も、召喚獣が完全に『シン』となった時点で失われてしまう。
逆に言えば、ただの契約によって喚ばれた召喚獣では究極召喚としての力は発揮できないが、エボン=ジュに取り憑かれても召喚士の命は失われない。
(それでもいくらかは苦痛を感じるようで、最後の戦いでは呼び出すたびにユウナは疲弊していた)
シーモアの場合はすでにエボン=ジュの存在を知っており、究極召喚獣となった母を『シン』に変えたくなかったため使うことはなかった。
また、彼自身が『シン』となって世界を滅ぼすという狂気に取り憑かれていたため、もはや絆は失われていたと思われる……
これらの設定は劇中でも説明されておらず、ユウナが生存しているのは単に「究極召喚ではない方法で倒したから」だとしか思われていない。
なお、ユウナが使役できる召喚獣たちはアニマを除き、千年前の戦争を戦ったザナルカンドの祈り子たちの究極召喚獣である。
『罪』の終わり
エボン=ジュの正体は、黒い卵のような身体に左右5対の蠢くカギ爪、鳥のような尾羽根と、完全に人の姿からかけ離れており、まるでダニかインベーダーのよう。
しかし表面にはエボン教のシンボルマークが浮かび上がっており、まるで泣いているようにも見える。故郷が滅んだ悲しみか、罪の重さに対する苦痛か、まやかしの故郷を喚び続ける絶望か。
また、左右にいびつな形の「ジュ=パゴダ(仏塔)」が浮いている。
壮大な物語の最後に戦う敵としてはなんとも弱々しい姿で、大きさも人間と同程度でしかない。
しかし能力は(通常のプレイでは)非常に高く、99999のHPと200もの魔力を持つ。
HPを1/4に激減させる「グラビジャ」に、最強の攻撃魔法「アルテマ」は即死級の威力。
こちらの攻撃は当たるたびに回復魔法「ケアルガ」で9999回復されてしまう。
また、お供のジュ=パゴダは複数の状態異常を引き起こす「カージュ」でこちらの行動を阻害する他、MPを奪う「アスピラ」で魔法を使えなくしてしまう。
……と、確かにラスボスにふさわしい強さがあるのだが……
実はこの戦闘(と、直前の召喚獣戦)は祈り子たちによって常に戦闘不能になっても復活する「リレイズ」状態になっており、絶対に負けることがないのである。
そのため、実質的なラストバトルはジェクトとの戦いで、エボン=ジュとの戦いはイベントに等しい(故意に全滅することは可能)。
攻略法も多数用意されており、合計10000以上のダメージになる連続攻撃ならば有効。
キャラクターの育成が不十分でも、魔法を跳ね返す「リフレク」をエボン=ジュに使えば回復を阻害できるし、こちらから手出ししなければ敵味方全体が対象の「グラビジャ」しか使わないため、勝手に瀕死になってしまう。
さらに、状態異常への耐性がガバガバの穴だらけで、致命的な状態異常攻撃が次々と効いてしまう。
継続ダメージを与える「毒」状態にして放置するもよし。回復行為がダメージになる「ゾンビ」状態にするもよし。一定時間後に必ず戦闘不能になる「死の宣告」さえ効いてしまう(しかもカウントはたったの3)……あのさぁ……
永遠のナギ節
戦いに勝利すると、エボン=ジュはゆっくりと上空に浮かんでゆき、左右のジュ=パゴダに挟まれて巨大な石碑となる。
それはまばゆい光を放ち、塵となって消えていった……
『シン』は、空を覆うほどの大爆発とともに消滅し、ザナルカンドの祈り子たちは永遠の眠りについてゆく。
死人のアーロンと召喚獣たちもユウナの舞いの下、異界へと旅立ってゆく……
ついにエボンは永遠の「夢」から解放され、同時にスピラに生きるすべての命を取り巻く『死の螺旋』が終わったのである。
そして、ティーダは……
関連項目
外部リンク
Ebon Ju：同名のYouTuber。2022年のブーム以前からワッカのMAD動画を召喚もとい投稿している。界隈では「Ebon ju老師」と呼ばれ親しまれており、当該ブームの先駆けとなった動画にも師へのリスペクトやオマージュとみられる演出が存在する。
といっても、エボン=ジュの正しいスペルはYu Yevonなのだが。
