概要
エミリア編に登場するキャラクターであり、エミリアの幸せの全てを奪った人物。元々スーパーモデルとして恋人のレンと一緒に暮らしていた日常は、彼がレンを殺害したことで一変した。
裏組織「グラディウス」に入隊したエミリアは、IRPOのような警察組織では追いかけるのが難しい対象として裏の立場から彼を追い詰めることになる。しかし、エミリアたちの追跡をかわし続け、政府組織であるトリニティの重要施設に単身入り込むなどの手腕を見せており、尻尾をつかまれてもいつも巧く逃亡に成功する。
大きなエネルギーを発生させる「キューブ」という物体を狙っているらしく、ルーファスが裏組織グラディウスを率いて彼を追いかけるのも、このキューブを彼の手に渡らせたくないためである。
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以後、ネタバレが含まれます
結末(ネタバレ)
彼はいつも仮面を被っているのだが、その「仮面に正体が隠されている」。しかしその実態は2通りあり、しかも大きく異なっている。
プレイヤーの行動によって正体そのものが変化するため、以下に分岐を挙げる(リージョン「バカラ」での任務中における行動如何による)。
ジョーカーを深追いせず諦めた場合
ジョーカーの本体は仮面。つまり「仮面(に込められた意識体)に正体が隠されている」ことになる。
古代文明の代物であり、装着者を操り、壊れるか装着者が死ぬまで決してその呪縛から逃れられない。そしてその装着者(つまり被害者)は、殺されたはずのレン。
しかし、レン本人がわずかに残った意識で抵抗したときに叫んだ一言「仮面を破壊しろ!」が、エミリアに「仮面だけを銃撃する」という(常軌を逸した)作戦を決意させる。
そして、数々の任務を先陣切って行ってきたエミリアは、なんとこの作戦を成功させる。
こうして仮面から解放され正気に戻ったレンは、その後グラディウスメンバーに囲まれてエミリアと挙式を挙げるのだった。
(ただしラストの描写がやけにあっさりと終わってしまうため、内容の濃いもう一方の方が真エンドではないかという声もある)
ジョーカーを追いかけた末にボスと戦った場合
ジョーカーの本体は装着者本人。つまり「仮面に正体(である本人)が隠されている」ことになる。仮面そのものは何の変哲も無い普通のものであり、その装着者は殺されたはずのレン。
レンは自分の意思でキューブを手に入れ、エミリアと一緒に世界の全てを手に入れようと考えていたわけである。物語上で終始見られた微妙なニュアンスのセリフも、ジョーカーがレン本人だとすると、エミリアへの(歪んだ)アプローチだったと解釈できうる。
最終バトルで舞台となった聖堂を崩したのも、エミリア以外のグラディウスメンバーを瓦礫の下敷きにして、エミリアと2人きりで世界を手に入れようとする計算だった。
しかしそんな形の幸せを、エミリアは受け取ろうとしなかった。
そして——レンを射殺。
これにより戦う動機を完全に失ったエミリアは、組織を除名されることになる。
いずれの結末でも、「エミリアの銃撃で『ジョーカー』が討たれる」という展開自体は同じである。
「正体」に関するエピソード
レンがジョーカーとなった理由は上記の2種類なのだが、呪いの仮面が正体であった場合はともかく、本人がジョーカーを名乗る為にただの仮面を身につけたきっかけはリマスター版が発売されるまで明かされることはなかった。
リマスター版で新たに追加されたヒューズ編では、ヒューズの視点からエミリアの事件を追う「ジョーカー事件」にて上記を踏襲し、エミリア編と同様に途中の行動でジョーカーの正体が分岐するようになっている。
こちらはトリニティ・ラムダ基地におけるヒューズの行動が分岐ポイント。
- ヤルート執政官を追い詰める → 仮面が正体ルート
- エミリアを追いかける → レン本人が正体ルート
また、エミリア編冒頭に登場したもののその後一切説明の無かったレンの偽装死体について、後述の『裏解体真書』の小説版に登場していた設定が本編逆輸入され「バイオ肉で製造されたクローン」であったことが明言された。
ヒューズは「レンの遺体」に生活履歴の痕跡が一切なかったことをジョーカーに突き付け、ジョーカーの正体が死んだはずのレンであることを暴く。
ここまでの展開は共通だが、その後のジョーカーの反応が上記のルート分岐で2通りに分かれていく。
このうち本人がジョーカーとなるルートにて、レンがヒューズに対して何故彼がジョーカーになったのかを語り始める。
捜査官として真面目に勤務していたレンだったが、仮面を被ったその時、一つの疑問を抱いたのが始まりだった。それは捜査官としての自分も、所詮はかりそめの姿、いわば一種の仮面にすぎないのではないか?という、自身の根幹を問うものである。
つまり、仮面を被ってからジョーカーになったというきっかけに関して言えば、本人が正体であるこちらのルートでも変わりはなかったのである。
一度自分自身の根幹に疑問を持ってしまうと、もう疑問は止まらなくなってしまう。なにしろ犯罪者を検挙しても検挙しても、次から次へと犯罪者が出てくる毎日。ならば自分のやっていることは何なのか? 果たしてこんなことをしているべきなのだろうか?
やがて疑問は、一つの結論へと飛躍することになる。
犯罪者は決してなくならない。ならばいっそのこと、自分が犯罪者としての頂点に立てばよい。
犯罪者の頂点に立つために、すべてを手に入れる力をもたらすキューブのありかを探るための活動を始めた。すべてを手に入れればエミリアを幸せにすることもできるだろうと、他意なく本気で考えていたのだった。
ヒューズ編でこのルートに辿り着いた場合、ここで対峙するのはエミリアではなくヒューズとなる。それが結局、彼の運命を生存へと変えていく。どこまでいってもヒューズは事件を鋭く追ってくる「先輩」。そのヒューズに「お前は後輩だから俺は先輩として負けられない。勝ちたければ、刑事として先輩である自分を超えてみせろ」と言われた事で目を覚まし、元の鞘にもどることができたのだった。
余談だが、ジョーカーの正体がレン本人だった場合の裏設定として、心変わりした時期はキューブ事件を追いかけていた時期だったという。これが、本人の意思でジョーカーとなった際にキューブを求めた理由と思われる。
なぜレンの手に仮面が渡ったのか?
したがって、「ジョーカーという存在」が出現したのはどう転んでも仮面が使われるようになってからだが、その仮面はもともと何らかの事件の証拠品押収物としてIRPOに保管されていたものらしい。
事件が起こる前、レンはエミリアとの結婚をヒューズに報告した際、ヒューズから結婚祝いとして「ヒューズ自身の顔写真がプリントされた絵皿」を贈られている。
・・・はずだった。
ところがヒューズはこの時、適当な袋が無いからと証拠品袋に絵皿を入れて渡そうとしていたのだが、手違いで、絵皿ではなく仮面の入った袋を間違えてレンに渡してしまったのである。
その後、いざ仮面を検分しようと会議室に残された袋を開いて謎の変な絵皿が出てきたのでサイレンスは大慌て。
絵皿を一目見たドール曰く「この世でトップクラスに無価値なもの」。
上述のようにレンが心変わりしたルートならともかく、レンが仮面に操られてしまったルートでは100%間違いなくヒューズのせいであったため、後者のルートではいい話っぽく強引に丸く収めようとしたヒューズに対し、当然エミリアがブチ切れてヒューズがボコボコにされるオチに。「許さない、絶対!」
なお、どちらのルートでもエミリアとレンの結婚式にてヒューズがこの絵皿を嬉しそうに掲げて写り込む結末となる。後者ではヒューズが生傷だらけになるが。
また、エミリア本編と違い『ジョーカー』の正体自体はどちらも生存し、エミリアとレンが幸せな結婚生活を迎える文句なしのハッピーエンドとなる。
(正体が呪いの仮面の場合はその後IRPOで仮面が厳重保管となってしまうようだが)
派生作品
なお、キャラ崩壊の著しい裏解体真書のヒューズのストーリーでは仮面を被り豹変(レン本人が正体ルート準拠)。とは言え、ジョーカー自体の動向は本編とは丸っきりかけ離れたギャグ調である。
生命科学研究所で死体を特注し偽装した後(ケンカしていたエミリアを驚かそうとしていた)、仮面を被り気分が高揚。行き着く宛もなく死体偽装の種明かしもせず各地のリージョンの史跡を巡ってディーヴァと知り合いになる。
で、世間荒波に揉まれすっかり擦れてしまったエミリア(ピンクタイガー)に絞め技を食らって婚約解消…と生きてはいるものの因果応報の結末を迎えている。
この後レンは無事復職。モンドフルボッコの現場にドール・コットンと共に駆けつけている(肩を貸していたドールが離れたので足の甲を思いっきり踏まれた)。
ちなみにこちらのエミリアはヒューズのあまりのクレイジーさに惚れ込んでしまい、よりを戻したいレンを完全スルーしてヒューズにアプローチを繰り返すようになる。哀れレン…。
インペリアルサガではキューブルートにて、仮面がジョーカーとなっているルートを再現した物語に発展していく。捜査官レンを装ってヒューズに同行していたが、計画の障害になることに徐々に気づき始め、言葉巧みにキューブのありかとは逆の地域へと誘導する。ところがヒューズの現場での鋭い勘はその煙幕を見破り、自身のところまで辿り着かれてしまった。
原作と違って本物のキューブを手に入れていたジョーカーは、ディーヴァを差し向けたうえにIRPOとグラディウスのタッグの前にもものともしない。しかし、レン本人が「自分を撃て」と叫んだことで、唯一腹を決めていたヒューズは本当に発砲。
しかしヒューズからすれば「レンは自分がプレゼントしたジッポーを左胸のポケットに入れている」ことを誰よりも知っており、狙ったのはこのジッポーのほうであった。助かることを承知の上で一芝居打った形であり、心臓部にショックを受けたジョーカーの仮面は「宿主のレンが死んだ」ととっさに誤認したため、その場で仮面が外れ、すばやくヒューズに押収される。
ところが、レン本人はそのジッポーを火が付かない不良品としてとっくの昔に捨てており、しかしながらジョーカーが武器として使う投げナイフを同じポケットに入れていたため、強運で助かっていたのである。あわや本当に殺すところだったことに気づいたヒューズは心底肝を冷した挙句、エミリアにボコボコにされるハメに。
その後、ジョーカーの仮面はヒューズに無断で憑依を禁じられた挙句、こき使われる立場に置かれ、利用される末路を辿るのであった。
なお、この時のやりとりである「ヒューズが語った仮面の処分案として、火山の火口に投げ捨てる」「仮面が怯えてヒューズに許しを請う」というものは、シチュエーションこそやや異なるもののほぼそのままの形でサガフロ1リマスターの仮面ルートにも採用されている。
続編インペリアルサガエクリプスでは、その仮面は新天地ディミルヘイムにおいてもIRPOの管理下に置かれ、憑依を禁じられている立場から目立った動きを長らくしていなかったが、ある日レン夢に現れ、かつてジョーカーとなった時の高揚感を思い出すよう唆す。
翌日、レンは任務中に上記リマスター版の「捜査官としての疑問」を感じつつ心が揺れ動くが、派遣先の現場で捜査官としての自分では太刀打ちできない状況に追い込まれてしまう。
窮地に陥ったことで手段を選んでいる場合ではないと考えた彼は意を決して仮面を装着、再びジョーカーとなる。
別人のような高揚感という普段の自分なら為せない状況が幸いして打開には成功し、再び乗っ取られることのないようギリギリの意志力を振り絞って仮面を外してみせた。
だが仮面は、実はかつてヒューズにいわれた憑依禁止を(厳罰を恐れて)きちんと守っており、最初からレンを操ってはいなかった。その高揚感はレン自身の心の中に元々あるものだと説明するが、レンはジョーカーとなった反動で心身ともに著しい消耗に襲われる。憑依の有無以前に、仮面自体に何らかの作用があるのか、それともレンが自覚しない二面性を抱えているのか、それは定かではない。