概要
十脚目・センジュエビ下目・センジュエビ科に分類されるエビの一種。学名「Polycheles typhlops」。
大西洋と太平洋の深海(300m~2000m程度の砂泥底)に生息し、日本でも太平洋側に住んでいる。
かつてはイセエビ下目に分類されていたが、後にザリガニやロブスター類(ザリガニ下目)の方が近いと判明。しかしザリガニ下目よりは遠かったようで、センジュエビ下目にされた。
特徴
体長12㎝くらいで、頭胸部が長方形の箱のように大きく、腹部はやや華奢という前半が重い体型。
体は上下に平たく、目が退化している。外面の硬い外骨格は隆起線が目立ち、腹部には反った棘が中央に並んでいる。
ちなみにこのエビの「センジュ」は千手観音の事だが、もちろん手(脚)が千本もあるわけではないので普通のエビと同じ10本脚。
じゃあ何が「千手」なのかというと、「ハサミ(手)が8つあるのを千手観音に例え」ての命名。これは他のエビには見られない珍しい特徴(他のエビのハサミは6つが最多)なので相当印象的だったのだろう。属の学名「Polycheles」も「沢山(poly)のハサミ(chela)」という意味。
そのくせ最後の脚だけ普通のエビと同じ形状だが、センジュエビ下目全般だと、全ての脚がハサミの種類もいる。
このハサミは最初の1対が特に大きいが、カニやザリガニのようなご立派なものではなく、テナガエビのように細長く、見るからに貧弱。
普段は体の左右に折り畳んであり、伸ばしきると10㎝くらいになる。他の脚までハサミ状の理由は不明で、細かいエサも逃さない工夫か、何らかの感覚器官を兼ねているかだろうと考えられている。
大きな胴体に貧弱な脚とは頼りなさそうな体型だが、深海の海底をすいすいと泳ぐ様子が確認されるので不便でもない模様。また普段は砂に潜り、通りすがりの小魚や小型の甲殻類を待ち伏せして捕食すると考えられている。
可食
生でもおいしく食べられるのだが、大きい頭(正確には頭と胸)に対して肉のある腹部が小さいことや、エビミソも期待できるほどは詰まってないため身どころは少ない。
※ちなみにカニミソ(こいつの場合エビミソ)と呼ばれる部位はレバーや膵臓にあたり、胸にある。背わたは腸。
ロクな価値もないためわざわざ漁獲する漁師もいないらしく、時々網にかかる事があるくらいだという。味噌汁のダシなどに用いられる。
関連タグ
テナガエビ:同じ細長いハサミのエビ。こちらは淡水性で、夜にライトで照らすと目が光る。