ダスカーの悲劇
だすかーのひげき
「ダスカーの悲劇」とは、ファーガス神聖王国内で起きた事件。
「風花雪月」本編開始の4年前に勃発しており、当時のファーガス国王ランベールが何者かに暗殺されたと言う事件。唯一の生存者は、ランベールの子息ディミトリ=アレクサンドル=ブレーダッドであった。
実行犯はダスカーの民とされており、その報復としてドゥドゥー以外のダスカー人の多くが虐殺された。
その後のダスカー領はクレイマン子爵領の所轄となっている。
青獅子の学級
事件唯一の生存者。大勢の者の凄惨な死を見てしまった結果、幻聴、幻覚、味覚障害、睡眠障害に苛まれてしまうことになった。
ダスカー人虐殺を生き延びた人物。事件の主犯がダスカー人でないことを知っていたディミトリに助けられ、従者になった。
事件で亡くなった騎士グレンの弟。父のロドリグがグレンの死に「それでこそ騎士の最期だ」と評したことで、父との間に強い確執が出来てしまった。おそらく嫌いな物に「騎士道」があるのはそれが理由と思われる。無双での支援によると、ロドリグの発言の後に彼をぶん殴ったらしい。
事件で亡くなった騎士グレンの婚約者。事件の真相が「全てダスカー人が仕組んだこと」となっている風花本編での支援では、ドゥドゥーに助けてもらったのに冷たい態度を取ってしまった。
無双では主犯格でダスカー人でないことが早期の段階で発覚した為、嫌いな物に「ダスカー人」がなくなっている。
彼女の父であるギュスタヴが、自責の念で出奔。
そこまで大した関わりはないのだが、義兄であるクリストフがダスカーの悲劇の加担者として教団に処刑されている。
王国関係者
先述のグレンの父親。彼の死を「それでこそ騎士の最期だ」と評したことで、息子のフェリクスとの強い確執が出来てしまった。
しかし無双での支援会話で和解を果たす。その時の語りは「最期の血の一滴まで、グレンは友を、ファーガスの未来を守るために戦ったのだ。グレン自身が選んだ死に方を、父親の私が認めてやらずにどうする」とのこと。
なおグレンの死だけでなく親友同然だったランベール王の死後残されたディミトリを守り抜くために多くの苦労があったこともフェリクスは理解している。
アネットの父で、王国騎士。ダスカーの悲劇の報せを聞いて駆けつけた時には時既に遅しで、このことが自責の念となって出奔。セイロス騎士ギルベルトとなった。
カロン家の息女で、セイロス聖騎士。親友のクリストフを「ダスカーの悲劇」に加担したとして、レアに身柄を渡してしまい、ロナート卿に恨まれてしまうことに。
この先、重大なネタバレがある為、注意されたし。
結論から言えば、ダスカーの悲劇の目的の1つはランベールを罠に嵌めて殺害することにあった。
本編ではこの辺りの描写はかなり断片的で、王国の闇に深く関わっているコルネリア以外では、ランベールの内縁の妻であるパトリシアと、ダスカー征伐にて武功を上げた西方貴族のクレイマン子爵が関与していたことぐらいしか描かれなかった。
王国側の発端としては会談のためダスカーへ向かうとのことがロドリグの回想でランベールは話している。
事後からランベールはパトリシア及びディミトリを連れて行ったのは間違いないが、瀕死の重症を負ったディミトリはとにかくパトリシアの行方は分からなくなっている。
パトリシアについてはコルネリア本人から「ダスカーの悲劇はパトリシアが望んで起こしたもの」との証言があった。また3年間王国に亡命していたことも知らされず、「会えずじまいだった実の娘エーデルガルトに一目会わせてほしい」と望んだパトリシアに対して、王であるランベールの首と引き換えに望みを叶えることになっていたということも語られている。
裏付けとして、襲撃の際パトリシアの乗る馬車には手出ししないよう命じられていたという当時の実行犯の証言もあったが、メタ的にこの辺りの真実を明らかにするような回想などは特になく、王国ルートでも真相は明かされなかった。
さらに不可解なのは王国を離れたエーデルガルトは後にアンゼルマと再開したという話は一切ない。当時王国にいたエーデルガルトはアランデル公に引き取られ帰って行ったことはディミトリの回想とエーデルガルトもまた短剣を渡した男の子の正体はディミトリであることを思い出す描写はあるものの、連れて行かれたエーデルガルトは帝国の地下で紋章を付与する実験に経て本編に至ることから、ダスカーの悲劇自体は帝国を巻き込んでいる可能性が少なからず残ってしまう。
クレイマン子爵についてはコルネリア死亡後に尋問され、ダスカーの悲劇への関わりと「急進的な政策を行うランベールを少し脅かすだけだった」という参加の動機を語ったが、ダスカーの悲劇に他の誰が加担していたのかについては語ることはなかった。
こうした本編での歯切れの悪さを補完するように、後の作品で補足説明が追加されていく。
まずDLCで追加されたハピの支援会話によれば、パトリシアは決して善人を装っていたわけではなく、監禁されていたハピを見て憤るような心優しい面もちゃんとあったとのこと。また、ディミトリとの支援会話でランベールとパトリシアは夫婦であったにもかかわらず、意図するように会話がなかったことで両者によるすれ違いも原因の一つとディミトリは推測した。
そして「風花雪月無双」の「青燐の章」で更にしっかりした補足が入った。
まず、本編ではほとんど物語に関与しなかったランベールの実兄・イーハ大公リュファスが首謀者レベルで事件に絡んでおり、コルネリアともグルであった。
リュファスは「風花雪月」第1部の2年前であった内乱にディミトリを出陣させ、その折に殺害しようとも図っていたが両方とも失敗していた。もっと言えば、平時もリュファスは護衛という名の監視を四六時中ディミトリにつけていたという。
風花雪月無双ではとあるNPCの証言でディミトリが士官学校に入る前の時点で少なくともブレーダット家の騎士の大半がイーハ大公側についており、蒼燐の章ではイーハ大公の処断後、シェズを王直属の私兵団隊長として起用する理由の一つになるほどディミトリは真実から遠ざけられていたばかりか、ダスカーの悲劇における生存者として始末しようとイーハ大公から命を狙われていたことも判明する。
その上、アネットの伯父であるドミニク男爵を除く多くの西方貴族がクレイマン子爵と同様の理由でランベールを邪魔に思っており、イーハ大公側に加担した。挙げ句の果てには、ダスカーの悲劇への関与を知って憤ったドミニク男爵による追及を受けても「(ランベールは殺されても)仕方のないことだった」と開き直る態度を見せた。
こういった新情報からするに、ランベールは間違ったことはしていないものの賛同を得ていない中での政策の実行などの理由でかなり恨みを買っており、潔白なイメージとは裏腹にかなり混沌とした政争の真っ只中に身を置いていたことがわかる。
肝心のパトリシアはと言うと、ロドリグが入手したエリデュア子爵へ宛てられた書簡で、ランベール殺害を認知しつつその計画について内通者と淡々と語り合っていたことがわかった。
前述のハピの話と総合すると、根っからの悪人ではなかったが先述のすれ違いのせいでランベールに対しては「エーデルガルトのためならば切り捨てられる」程度にしか思っていなかったことになる(このことを痛感したディミトリが落ち込んでいる場面がある)。
彼女の末路については
- コルネリアが「エーデルガルトの手にかかって死んだ」と発言
- しかしディミトリがエーデルガルトに母親について尋ねると、不思議そうな顔で「幼少期に別れたきり会っていない」と返答
- タレスは誰が殺したとは言わず「我らの野望の薪となって燃え尽きた」と発言
と、やや情報が食い違っているが、確かなのは闇に蠢く者の操り人形としてその生涯を終えたということは間違いないだろう。エーデルガルトに炎の紋章を宿すための実験には多数の他の被験体がいたことがわかっており、そう考えるとエーデルガルトの実験のための被験体としてエーデルガルトの認知しないところで命を落としたと考えるのが自然なのかもしれない(この捉え方なら三者の表現が一応矛盾せずに成り立つ)。
いずれにしてもダスカーの悲劇は「タレスの命を受けたコルネリアに化けたクレオブロスがファーガス王国の不満分子を炙り出し、その者たちに国王を殺すように仕向けた内乱」と見るのが答えである。
だとすれば、ダスカー人がそれを自分達のせいにさせたファーガス王国の人間を信用出来ないのは当然のことで、ドゥドゥーの外伝にてディミトリに対し「我らは受けた恨みも恩も忘れない」と発言したのも、憎しみの対象であるファーガスの人間であるディミトリが同胞を助けたことを忘れてはならないという意思を示した台詞である。