概要
ツノゼミ(角蝉)と名前が付くが、セミ(蝉)ではない。ただし同じ半翅類の中では比較的近縁で、セミと同じセミ型下目に分類される。
その名前の通り、背中(前胸部)から角状の突起が生えており、種によってこれが大きく異なる。例えば、シンプルに植物のトゲのような見た目をした種は角の用途を想像しやすい一方で、Uの字だったり、アンテナみたいな形をしたものだったりと何の為にこんな形状をしているんだと言わんばかりの奇妙な種も多い。更に角というより帽子や団扇のような種までいる始末であり、依然として謎の多い構造である(実際、ツノゼミの学名「Membracidae」は団扇状の角の種類の学名 Membracis にちなみ、これは「膜」や「葉状」を意味するラテン語「membrana」に由来する)。
また、角の大きさから重そうに見えるが、中身はプラモデルのように空洞である。
植物の茎に張り付いて篩管液を吸い取り、後脚で勢いよくジャンプする。枝の上を跳び跳ねる様から英語では「Treehopper(ツリーホッパー)」と呼ばれる。
セミのような大声で鳴ったりはしないが、腹部を震わせて植物の皮に振動を送る形で仲間同士のコミュニケーションを取っていて、鳴かないというより人には聞こえない鳴き方をしている。
一目で簡単に見つかりそうな面白い形をしているが、そうはいかず、とにかく小さい。種類によって異なるが2ミリから25ミリ程の大きさとなり、1センチに満たない種が大半である。
一応、アブラムシ同様「甘露」として余分な糖分を排出している為、それを目当てに集まるアリを手掛かりに探す方法が在ると言う。
世界中で確認されているだけでも3,200種ほどが存在しており、未発見種の存在を考えるとその数は凄まじい物が有る。
人間との関わり
基本的には人間に危害を加える事はない。角や色のバリエーションが多く、どこか可愛らしい外見な為か愛好家も多い。
特にヨツコブツノゼミという種に関しては、名前の通り独特な造形の角と、学名 Bocydium tintinnabuliferum の日本人にとっては下ネタにしか聞こえないカナ転写「ボッキディウム・チンチンナブリフェルム」)が有名。
もちろんこの学名の由来は日本語の下ネタではない。そもそも「tin」を「チン」と発音するのは日本語以外では一般的でなく、また「Bocy-」の部分も語源(ギリシャ語 βοκῡ´διον ボキューディオン)的には「ボッキ」と発音しないので、わざと日本語の下ネタに寄せるように発音されたという考案者の悪意が覗える。種小名「tintinnabuliferum」は「鈴を持つ」という意味だが、偶然にもその由来である魔除けの鈴チンチンナブルム(tintinnabulum、これも語源のラテン語的に発音は「ティンティンナブルム」である)は、大抵は勃起した陰茎に鈴をかけた造形であるため、かえって前述した下ネタに好都合だった。
創作作品に登場するツノゼミ
- 天装戦隊ゴセイジャー
- 彗星のブレドランのモチーフとして登場。
- テラフォーマーズ
- 本作に登場するテクノロジーで、人間に様々な生物の能力を移植するM.O手術ではツノゼミの性質をデフォルトで組み込んだ上で他の生物の性質を上乗せする。そのため甲殻などを持たない生物ベースでも人為変態(変身)前よりは耐久性があるのだが、テラフォーマーの圧倒的パワーはそれでも容易く絶命させてしまう。
- マヌ〜ルのゆうべ
- ヨツコブツノゼミをモデルとしたキャラクター「ツノミン」がメインキャラの1人として登場する。
余談
ツノゼミの前胸部の角から翅に共通した遺伝子を発現され、これを基にその角は(2.5億年前の祖先から昆虫の前胸部で無くしたはずの)翅に相当し、どんな形や大きさの物も中身は空っぽの原因がこれだという説が提唱され、一時期話題になった。
しかしこの説は後に懐疑的に見受けられ、特にその研究は翅のある中胸部の一部を前胸部の一部と見間違えており、同じ遺伝子を発現されるだけで同じ器官とは言い切れない(同じ遺伝子が複数種の器官の形成に関与するのは生物でよくあること)、などの指摘を受けている。