概要
小松左京が1960年代に執筆したSF小説および、それを原作とした日本映画『復活の日』に登場する架空の原子力潜水艦。
元はアメリカ海軍に所属する艦で、艦長はマクラウド大佐。漏出した生物兵器「MM-88」により人類含む地上生物の大半が死滅した中、同艦は長期間海中に潜航できる原潜だったため、北海の海中に潜っていたことで全乗員がMM-88の魔の手から逃れて生存していた。
その後、MM-88が低温で増殖できないがために無事だった南極の観測隊と、同じく潜行していたことで無事だったソ連海軍原潜T-232号と合流。以後、滅亡してしまった南極の外の世界をT-232とともに海中から調査する作業に奔走する。
物語終盤には、ホワイトハウスの自動核報復装置を停止させるための決死隊をアメリカ本土に送り届けた。その後の同艦の顛末は語られないが、決死隊とともに同乗していた科学者がエピローグに登場するため、南極には帰還できた模様。しかし燃料棒交換の時期が近付いており、南極にはそれを行う施設が無いことから、最終的には放棄されたと考えられる。
排水量は6,000トン、機関は軽水加圧型原子炉で、1回交換する分の予備燃料棒と、緊急で燃料棒を交換するための遠隔つめかえ装置を備えている。
武装としてポラリスⅢ(おそらく現実の潜水艦発射型弾道ミサイル「ポラリス」の改良型ポラリスA3、またはその架空の発展型)を搭載すると記載されていることから、艦種は弾道ミサイル原潜と思われる。これ以外の武装は特に言及されないが、「テレビ気球」と呼ばれる偵察気球を装備しており、海中から上空へ発進させられる。
ネーレイド号以外の潜水艦
上記のようにT-232号も南極と合流し、終盤にはクレムリンの自動核報復装置停止に決死隊を乗せて向かった。しかしこちらは予備燃料棒がなく、ネーレイド号よりも燃料棒交換時期が喫緊に迫っており、南極には帰還できなかったことが示唆されている。決死隊がクレムリンに到達できたかも語られていない。
ネーレイド号とT-232号の他にも1隻、アメリカ海軍のシーサーペント号という原潜が人類滅亡後も無事で南極を目指していたが、シーサーペント号は時期的に一番後から出港したため乗員に患者が発生し、南極からの要請でネーレイド号とT-232号が不意討ちで撃沈した(しかしマクラウド大佐は、同艦は自沈したと主張した)。
映画版
1980年代に同作を原作として公開した映画版でも登場する。
こちらではイギリス海軍に所属変更し、艦名も「ネレイド号」と若干変えられている。撮影にはチリ海軍からバラオ級通常動力潜水艦「シンプソン(旧SS-413スポット)」がチャーターされて使われた。
メイン画像は映画版のネレイド号である。
MM-88の魔の手から逃れて生存していたのは原作と同じだが、先に南極に合流しようとしたT-232号が艦内でMM-88による患者を出し、南極への上陸を拒否されたことで強硬上陸しようとしていると無線傍受で把握。対潜ミサイルでT-232号を撃沈した(何気に日本映画には珍しい潜水艦戦が描かれたシーンである)。その後は一度立ち去ろうとしたが、南極側からネレイド号には感染者がいないことを確認されたため、合流と乗員の上陸を許可された。
その後は原作と同じだが、最終的にどうなったのかは原作と同じく語られない(こちらでも上記の科学者がエピローグに登場するため、恐らく帰還には成功している)。
今作では上記の対潜ミサイルのほか、原作の「テレビ気球」の代わりにVTOL式の偵察ドローンが搭載されている。原作小説版と異なり弾道ミサイルを搭載している描写はない。また、所属は変わったが艦長の名前は原作と同じくマクラウド大佐である。
シーサーペント号は登場しない。
児童小説版
新井リュウジが2009年以降の21世紀初頭に舞台を移し、低年齢層向けにリメイクした児童小説『復活の日 人類滅亡の危機との闘い』では、再びアメリカ海軍の「ネーレイド号」として登場。
こちらの物語展開は小説版をベースとしているためT-232号との戦闘シーンはなく(ソ連が崩壊したためT-232号はロシア海軍所属となった)、艦長も相変わらずマクラウド大佐だが、艦種は攻撃型原潜に変更。2009年の時点で新造艦であり、ニュージーランド沖で連続潜航時間を更新する試験中にMM-88による人類滅亡に巻き込まれている。その後の展開は原作と基本同じ。
映画版と同じく、水中射出可能な偵察ドローン(無人偵察機)を搭載している。
しかし攻撃型原潜へと艦種変更されたために弾道ミサイルは搭載せず、武装は魚雷、巡航ミサイルなどになっている。なお、どちらも核弾頭が用意されているが、南極に合流した後はこれら武装を下ろしている。
その他の潜水艦
原作小説や映画版と違い、本作ではアルゼンチン、イギリス、チリも南極に潜水艦を1隻ずつ持ち込んでいることが語られている。しかしいずれも長期潜航できないディーゼル潜水艦だったため無用の長物と化しており、作中にも直接的には登場しない。
原作小説に登場したアメリカ海軍のシーサーペント号も「シー・サーペント号」と若干艦名を変えて登場するが、こちらはディーゼル潜水艦に変更されている。
原潜と違って長期潜航できず、艦内の空気を入れ替えるため外気を吸入した際、エアフィルターを通したにも拘らずMM-88が艦内に侵入し、原作と同じく乗員に患者が発生したため、ネーレイド号とT-232号の手で撃沈されることとなった。ただし、今作では原作と違って自爆自沈したことがハッキリと強調されている。
※ なお、2009年時点のアメリカ海軍とイギリス海軍はディーゼル潜水艦を所有しておらず、全潜水艦が原潜である。