ハチクマとは、猛禽類の一種である。
概説
漢字で「八角鷹」「蜂角鷹」と書く。
学名は【Pernis ptilorhyncus】、英名は【(a) honey buzzard】である。
全長57~61cmの猛禽類で、羽の色など個体差が大きく、一羽一羽が個性的な種。雄は全体的に眼が茶色個体が多く、風切羽に黒い帯がある。雌は眼が黄色で羽の帯が細い。
ユーラシア大陸に広く分布し、日本にも夏の渡り鳥として九州から北の山地に飛来する。春と秋は大群を形成して渡り、9月下旬の長崎県福江島では一日に数千羽が見られることも。
和名の由来はクマタカに似ていることに由来する。
なんで「ハチクマ」なのかというと……
ハチ目最大の天敵
このハチクマ、大変変わった食性の持ち主であることでも知られる。
彼らの主食は“クロスズメバチ”である。
一応、他の小型の昆虫や蛙や蛇、小鳥などもときおり捕食するが、彼らにとって一番の御馳走は大きく育った蜂の巣とそこに棲む蜂たちに他ならない。
樹上に出来た小型のスズメバチの巣はもちろん、オオスズメバチのような地中に巣を持つ大型種さえ、彼らからすれば立派な御馳走でしかない。
スズメバチだけでなくアシナガバチも捕食対象としている。
樹上の巣は枝から忍び寄りながら巣の壁面を破壊、中から飛び出してくる蜂たちを啄み、巣を壊しながら中の幼虫や蛹を食べていく。
地中にある巣も、僅かな成虫の出入りから巣のありかを見つけ出し、猛禽類としては大きな脚で器用に掘り起こすと、あと樹上の巣と同様に美味しく頂いてしまう。
子育ての際には壊した蜂の巣の一部を持ち帰り、中にいる幼虫や蛹などを雛たちに啄んで与える。
小型の巣なら一日足らずで崩壊させ、ときには自身の数倍以上もある巨大な巣を一カ月以上もかけてじわじわと陥落させてしまう。
面白いのは、多くの猛禽類が餌に対し強い独占欲を発して他の個体を追い払うのに対し、ハチクマは他の個体が来ても気にせず餌となる蜂の巣を一緒に襲撃する点である。
つまりハチクマによる巣への集団リンチが実現してしまうのだ。
もちろん蜂だって必死に毒針を突き立て、ハチクマを追い払おうとする。
しかしハチクマの羽の下には鱗のように硬い羽毛が密生しており、これが蜂の針を撥ね退ける鎧として機能しているという。また数時間もすると蜂たちの方が攻撃をあきらめ、巣を放棄して去ってしまうらしい。これについては専門家の間で「蜂の攻撃性を削ぐフェロモンや蜂の嫌う体臭を放っている」という説があるが、詳しい事は分かっていない。
稀に養蜂場のミツバチの巣箱を襲うこともあるが、襲う頻度は本当に稀少で、興味本位でつついてついでに中身を貰っていく程度らしく、養蜂場側からすると「スズメバチ退治の益鳥」として大目に見ているところがある。
ハチクマも巣箱をこじ開けられないとわかると潔く帰っていく。
また養蜂家は、巣箱に余分な巣ができるとこれを取り除く必要が出てくるが、取り除いた巣はハチクマのいい餌になるという。