曖昧さ回避
- 歩兵用の長槍の一種。※この項で解説
- 北半球に生息する大型淡水魚カワカマスの別名。 ⇒カワカマス
- ゲーム『League_of_Legends』の登場キャラクター。 ⇒Pyke
- ゲーム『千年紀の終りに』に登場する、惑星モタビアの先住種族モタビアンの青年。
- 日本のバンド『ヒカシュー』の曲。1980年に発表されホラー映画『チェンジリング』のイメージ・ソングになった。
- 漫画『HUNTER×HUNTER』の蜘蛛の形質を持ったキメラアントの一体。
- 漫画『エリア51(久正人)』の主人公マッコイの持つ付喪神化したコルトM1911の通称。
- 英語圏の姓の一つ。
- バイクの誤表記。
槍としてのパイク
「パイク(pike)」は、15世紀から17世紀にかけて、歩兵用の武器として対騎兵や対歩兵に対して幅広く使用された長槍の一種である。
名称の由来は、15世紀にフランス語で「ピケ(pique)」と呼ばれた歩兵用の槍の英語発音から。
形状は、4mから7m程度の長い柄に、25cmほどの木の葉状の刃がついていた。重量は3.5から5kgくらい(英語版wikipediaでは2.5㎏~6㎏)。変に重く書かれている記事はも存在するが、10lb(10ポンド=約4.5kg)と書かれているのを10kgと勘違いしただけのようである。
その重量・その大きさから定義上は巨大武器といえるのだがこの類の武器がそう呼ばれたり具体例に出される事はほぼ無い。理由としては巨大武器に定義される物は概ね英雄・豪傑が用いる一騎当千の特徴を持つ得物が選出されるケースが多く、また当武器は下述の通り歩兵、特に数で押す雑兵の武器としての性質が強くまたその特徴はファンタジー系作品ではより悪い方向に強調され「非力な雑魚の武装」の典型とされる事が多いからであろう。
使用方法は、パイクを持った歩兵は密集方陣(内部まで隙間なく並んだ四角形の陣形)または横隊を組んで前進し、歩兵に対しては前方に突き出した槍と重厚な方陣の圧力で、騎兵に対しては腰ために構えて膝を当てて固定して槍衾を作る事によって対抗した。彼らの任務は突撃してくる騎兵や歩兵の迎撃だったが、しばしば味方の射手や騎兵の援護、撤退する味方の支援などにもあたっていた。
陣形を組む全兵士が一体となって移動し、隙間のない槍衾を作るには長期の訓練を必要とする。素人を集めてパイクを持たせて並べただけでは移動にも手間取り、敵に槍衾の隙を突かれて蹴散らされてしまうだろう。
また、密集方陣を作るには弓兵や銃兵や騎兵に比べて大量の兵士を必要とした。
歩兵が質も量も劣っていた中世封建社会では出来ない戦術だった。
パイクを最初に使ったのは15世紀のスイス傭兵である。独立心の旺盛なスイスでは郷土防衛のため独自の軍隊を編成し、定期的な訓練を行っていた。スイスがブルゴーニュ公国の重騎兵部隊に対抗するために作り出したのがパイク部隊だった。スイスがブルゴーニュ公国や神聖ローマ帝国との戦いに勝利すると、パイク部隊は傭兵部隊として人気となり、国外へ出稼ぎに行くようになった。
また、各国の中央集権化が進んで常備軍を所有するようになると、スイス傭兵を真似てパイク部隊を編成した。フランスのピカルディ兵団(現在の陸軍第一歩兵連隊)もその1つで、現存する最古の軍部隊の1つとされている。
中でも、パイク兵と銃兵を組み合わせたスペインのテルシオは最強の歩兵部隊として名を馳せた。
なお、よく「パイクは遠心力を利用して上から叩きつけることで近接する歩兵に対して破壊的威力を誇った」という言説が見られるが、これはあくまで『長柄槍を使う日本の足軽』の兵法であって、西洋のパイク兵が多用していたわけではない。
どちらかといえば突きを主体とし、重層な方陣による圧力で相手を崩す戦闘が基本の為、日本の『備』のような少数隊の戦闘とは様相は大きく異なる。(そもそも後方から何十もの槍が前に斜めに突き出しているような隊形で前列が槍を前後に振り回したら大惨事しかない)
銃剣の発明により射手が近接戦闘を行えるようになってくると、完全に姿を消した。
が、イギリスでは第二次世界大戦時に本土防衛用に水道用の鉄パイプに余剰銃剣を溶接したホームガード・パイクが製造された。
なお、当時の首相ウィンストン・チャーチルの提案により製造されたが、さすがにホームガードらはもっとましな武器をよこせと怒った。
なおチャーチルは「多少しょぼくてもいいからとりあえず武器を作って国民全員に持たせろ」という比喩で、「槍でも棍棒でもいいから武器を作れ」と書簡にしたためたのだが、
それを軍の偉い人が大真面目に解釈した結果こうなったと伝わる。