パーフェクトソルジャー
かんぜんなるへいし
第三次銀河対戦(百年戦争)末期に、ギルガメス連合が秘密裏に研究し、その生産を目論んでいた強化人間。ヨラン・ペールゼンが提唱した異能生存体の存在を求めた結果として生まれたものであり、突き詰めればキリコ・キュービィーの複製でもある。
誕生経緯
百年戦争において、アーマードトルーパー(通称AT)の性能が進化し過ぎた結果、並みの人間では現時点以上の性能を持つATに搭乗しても、性能や負荷に振り回されて戦果を挙げることは不可能という結論に達する。それを補うものとしてPSの必要性が提唱されるようになった。
開発の初期段階から、一度脳内を完全にリセットして脳に戦闘プログラムのみを学習させるため、普通の人間に比べてかなり機械的な思考回路で行動し、感情の起伏も至極乏しいものとなる。脳に教育処理を施した後に一般常識を再び刷り込むため、人間としての生活には支障はきたさないらしい。また肉体も高性能なATの負荷に耐えられるよう、処置が施されている。
ただし、一度これらの処置を受けると決して元の人間には戻れなくなる。
戦果
クメン内乱にて、秘密結社から反乱軍へ「プロト・ツー」イプシロンを戦線投入した例がその最たるものであり、彼の存在一つでクメン軍は甚大な損害を被ることとなった。これによってイプシロンの駆るATH-14-WPCスナッピングタートルは『ブルーAT』の異名とともにクメン軍に恐れられることになる。
致命的な3つの欠陥
人工的に生み出されたが故に、肉体はヂヂリウムという特殊液体金属を定期的に浴びる必要性があり、これを怠ると運動機能が低下し、最終的には身体機能全てが停止して死に至る。二つ目の欠陥として、脳の開発段階で別の刺激を受けると刷り込み作用を起こすことが挙げられる。これがプロト・ワンが欠陥とされる原因ともなった。そして最大の欠点がその短命さで、PS処理された個体は2年後に寿命を迎えることになる。
プランバンドール・スキャンダル
OVA『機甲猟兵メロウリンク』にて語られる。惑星ミヨイテで、メルキア方面軍プランバンドール大隊から傘下のシュエップス小隊により、ヂヂリウムが強奪された事件とされる。その実はPS計画の首魁、ギルガメス軍ディーテル・ロイル・バッテンタイン中将の元へ、大量のヂヂリウムを確保するために仕組まれた陰謀であった。
PS計画の失敗
人工的に強化兵士をつくり出し、戦場での優位を確保するために各地の紛争に介入する形で実験的に投入されてきたPS計画だったが、最終的には破綻した。その原因がいずれも、死なない兵士の理想型としてPS計画の構想母体となった異能者キリコ・キュービィーにあったというのは皮肉である。
キリコから「フィアナ」と名付けられることとなるプロト・ワンは、その誕生課程でキリコを見たために彼への依存心が強くなり、それ故に戦闘よりもキリコへと関心が向き、秘密結社から欠陥品の烙印を押される。結果、彼女はキリコと行動を共にした。
秘密結社幹部のセルジュ・ボローによってPSに必要なのは純粋な憎悪であるという解析がなされ、その中でプロト・ワンに愛情を寄せていたプロト・ツー/イプシロンはプロト・ワンを奪ったキリコへの憎悪から、執拗にキリコを狙った。だが結果討ち果たせず、最終的にサンサでの決闘に敗れて死亡する。
更にPSは前述の通り大きな欠点を抱えていた。その寿命は僅か2年であり、しかも能力の維持と生命を保つために高価なヂヂリウムを大量に消費しなければならないということは、コストパフォーマンスにおいてあまりにもすこぶる劣悪であった。ジャン・ポール・ロッチナはPSは時代に対応した一種の新人類という解釈を語ったが、上述の問題点に加えて元の人間に戻すことはできないという非人道的な境遇を鑑みられたことにより、結果、第4次銀河大戦においてはPSは運用されることはなくなった。
なお、ボローは「PSを通常の人間に戻すことは不可能」と断言していたのに対して、メルキア軍でPS開発に携わったカルマン・トムスによれば、PSを普通の人間に戻すことは「不可能ではない」とのことであったらしいが、トムスが殺害されてしまったことから、その真偽は謎のままである。
またPS計画の推進者であったバッテンタイン中将は第3次銀河大戦の終戦前、前述の「プランバンドール・スキャンダル」の嫌疑にかけられている。そのようなトラブルの中「素体」プロト・ワンは開発されたが、リドで秘密結社に奪取されてしまい、その後プロト・ワンが秘密結社を離れキリコと行動するようになってもギルガメス軍は彼女を奪い返すに至らなかった。
バッテンタイン中将は、プランバンドール・スキャンダルの中心である腹心のオスカー・フォン・ヘルメシオン准将がシュエップス小隊の生き残りであるメロウリンク・アリティによって追い詰められた際、キーク・キャラダイン中尉に命じてヘルメシオンを抹殺するが、結果的にその保身行動はバッテンタインの政界進出の目論見を潰えさせ、PS計画も断念することとなってしまった。
バララント製PS
OVA『ビッグバトル』にて登場。PSはギルガメス連合の敵対国・バララントにおいても開発が進んでおり、生体への直接処理がメインであったギルガメスに対し、バララント製PSは肉体のサイボーグ化による処置を用いている。その恩恵により、ギルガメス製PSのような特殊な処置をさほど必要とせず、コスト面ではギルガメスよりも優れている。しかし、思考や感情はごく普通の人間であるため、精神面は不安定になりやすく、結果として戦果の一定した確保には向かなかった。
ネクスタント
OVA『赫奕たる異端』にて登場。銀河結社マーティアルの首魁であるヴィアチェスラフ・ダ・モンテウェルズ枢機卿が、事故で重体となった愛娘テイタニア・ダ・モンテウェルズにこの処置を施した。
ギルガメスとバララント両国のPS技術の総決算というべき代物で、最大の改善点としてヂヂリウムの照射を必要しないことが挙げられる。また、その肉体の殆どをサイボーグ化させ、体内に「補助脳」と呼ばれる回路を組み込むことで、思考速度や判断力、反射神経と運動能力を格段に向上させている。そのため生身でATの一小隊を釘付けにできるほどの戦闘力を有する。そして補助脳を起動させてATで戦えば、キリコすらをも凌ぐ戦闘能力を発揮することが可能となる。
ただし、補助脳には機能させたまま戦闘を行うと、ネクスタントの生命維持と人格に危険が生じるという欠陥が存在する。また、機械の身体は細かいメンテナンスを必要とし、緑色の血液も定期的に交換もしくは透析を受けなければならないという問題も存在する。
後年の 『幻影編』にもキリコへの刺客として3人のネクスタントが登場し、『パチスロ・装甲騎兵ボトムズ』にもデボラ・グレンという女性ネクスタント(外見はテイタニアのボツ案に酷似している)が登場している。
ロボトライブ
TVシリーズ終了から300年後の世界を描いた小説『装甲騎兵ボトムズ ガネシス』に登場。厳密にはPS(強化人間)では無いが、系列に含まれるのでここで解説する。
ネクスタントの技術をベースに制作された兵器で、第五次銀河大戦(二百年戦争)中のアストラギウス暦7493年に実戦投入された。サイボーグであったネクスタントとは違い、完全なロボット(アンドロイド)であるが、「補助脳」から発展させた「メガブレイン」の登場で軍事行動に必要十分な忠誠心と判断力を持っている。
凄まじい機動力や人間では携帯できないような大型火器を運用可能なこと、人間サイズな事から来る運用の柔軟さなどで第五次銀河大戦では主力となっており、ATは過去の遺物となってしまっている。
戦闘用として開発されたが、家事労働従事用や疑似家族構成用のものもあり、作中の大戦が一時休戦となった世界では軍から放出されたロボトライブが人間の職を奪う形となり、軋轢が生まれている。
外見についてはひと目でロボトライブと判別できるものの、最新型については人間との判別が難しいタイプも存在している(特に疑似家族構成用はその目的からほぼ人間と変わらない外見を持っている)。
愛称(あるいは蔑称)として「ロビー」と呼ばれており、休戦前後から原因不明の暴走を起こしているものは「マッビー(マッドロビー)」と呼ばれる。バララントも同様の兵器を運用しており、こちらは「ニュードロイド」と呼ばれている。
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