遺伝確率250億分の1の衝撃
謎の研究文書『ペールゼン・ファイルズ』の甘美な誘惑
異能の部隊は存在するか
概要
前作赫奕たる異端から実に12年ぶりに制作されたOVAであり、現世代にボトムズという作品を再認識させた立役者である。
タグではペールゼンファイルズが多く使われている。
時系列では、OVA『レッドショルダードキュメント・野望のルーツ』とTV版第1話の間に位置するエピソード。
2009年には、ボトムズシリーズで初の劇場版として映画公開もされた。
作品解説
今回のテーマはズバリ『異能生存体』。
250億分の1という天文学的数値から生まれると目された「不死の生命」、驚異的生命力と絶対的悪運ですべてを切り抜ける赫奕たる異端の存在である…。そして、それらを研究したレッドショルダー創始者たるヨラン・ペールゼンの極秘研究文書『ペールゼン・ファイルズ』の謎に迫る。
キリコとは、異能生存体とは、そしてファイルに隠された真実とは…?!
全編を通して、これまで以上に戦場の臨場感と謀略の色を押し出し、またファンはもちろんボトムズ初心者でも楽しみやすいよう、しっかりと脚本が練り込まれている。
さらにボトムズシリーズ初の3DCGを導入し、OPや劇中での戦闘描写で、荒野を100体近いスコープドッグが練り歩く壮観たる光景を見せてくれる。また、3DCGの欠点である「重量感の無さ」が、かえって『動く棺桶』とまで揶揄される脆弱なスコープドッグの印象を強くすることに一役買っている。
嘘を言うなっ!
やはり、お約束の高橋良輔監督考案・銀河万丈氏担当の次回予告も強烈なインパクトでむせさせてくれる。特に2巻の宣伝用PVは、その雰囲気と相まってボトムズファンでないアニメファンにも強烈な印象を与えた。
特に、ほぼ同時期に放送されていた『ストライクウィッチーズ』は、ボトムズと同じ軍事系アニメであり、キリコの声優である郷田ほづみ氏が音響監督を務めていた関係もあって、盛んにネタにされることとなった。
また、最近では某ハートフルボッコ魔法少女とも、ある意味納得のシンクロ率を叩きだしている。
ストーリー
アストラギウス銀河の百年戦争末期、レッドショルダー解体後、惑星ロウムスでの無謀とも思える渡河作戦についたキリコは、ほとんどの兵士が死亡する中で、やはりただ一人生き残っていた。
その作戦を観察していた情報省次官・フェドク・ウォッカムは、その結果を見ながらひそかにほくそ笑む…。
弱った体を引きずりながら、キリコは新たな戦場である惑星ガレアデに降り立つ。そこで、奇妙な縁と裏でくすぶる謀略に導かれ、とある分隊が編成されることとなった。
登場人物
<CV:郷田ほづみ>
今回も主人公として登場。本作では18歳。階級は曹長。
レッドショルダー解体後に惑星ロウムスでの渡河作戦に従事し、その後惑星ガレアデに配属され、バーコフの率いる分隊に編入される。
<CV:長嶝高士>
痩身で髭面のギルガメス連合兵士。階級は曹長。
惑星ガレアデの基地に向かう輸送艦でキリコと出くわして興味を持ち、ガレアデの峡谷基地奇襲作戦以後、分隊長としてキリコたちを率いることになる。
荒くれ者の多いAT乗りも珍しい温和な学者肌で、気象観測の専門知識を持つ。のらりくらりとした言動も目立ち、自身に危険が及ぶかどうかという勘してはずば抜けて高い。
リーダーとしての統率力は高いが、実は何よりもまず自己の保身を優先するという臆病な性質を秘めており、それ故に部下を見捨て敵前逃亡を繰り返してきた悪癖から、中尉まで昇った地位を剥奪されて辺境送りにされたというきな臭い経歴がある。
スコープドッグには、専用装備として六連式ミサイルランチャーが装備されている。
<CV:江川央生>
大柄で屈強、強面のギルガメス連合軍兵士。階級は曹長。
見た目以上に卓越した戦闘技能を持ち、その俊敏さと素早い判断力から高い戦闘能力を有する。その一方で、短気で傲慢な部分があり、分隊のメンバーとはよく衝突を繰り返すことになる。
ある意味、典型的なAT乗りの性格をしているとも言える。
キリコとは、ガレアデ基地郊外でキリコと共に身体を休めているときに顔を合わせ、同時に謎の狙撃者に襲われる。
キリコと同様に、彼と関わった部隊はほぼ全滅しており、周囲から「死神ゴダン」という仇名をつけられている。
その経歴から、恨みも多く買っているようである。
スコープドッグには、ソリッドシューター(バズーカ砲)を装備している。
<cv:矢部雅史>
バーコフ分隊でも最年少の少年兵。階級は伍長。16歳
天性のAT乗りとしての資質を持つが、何故かキリコに対して異様な恐怖心を抱いており、キリコが熱病でガレアデ基地の医務室に搬送された際に、眠るキリコに襲撃をかけている。当人も発作のようなものとしか分かっておらず、特にキリコと二人だけになるとその発作が強烈に出てくるようになる。
根は年相応で、割と明るく血気盛ん。
クールそうな見た目とは違い、分隊のムードメーカーとしての位置にいる。
<cv:後藤哲夫>
バーコフ分隊に最後に編入された小太りなギルガメス連合兵士。階級は曹長。
かなりの臆病者で、よく部隊の足を引っ張っては短気なゴダンになじられたり殴られたりすることが多い。元々はATの整備担当であったが、どういう訳かバーコフ分隊に編入される。また、それ故に純粋な操縦技量は他の分隊員に劣っており、それが彼の臆病さに拍車を掛けている。
一方で元整備士という経歴から、ATの血液ともいえるポリマーリンゲル液に関する技術は高く、-250℃の極寒の地でも易々と耐えうる配合をおこなえる。また、ATの構造上の弱点を分隊の誰よりも熟知しており、いざ戦闘となればその知識を活かした独自の戦術で戦うため、臆病な性格さえ足を引っ張らなければ、操縦技量の劣りを補い得るだけの戦闘力は持っている。
実は裏で誰かしらと繋がっている様子…。
<cv:石塚運昇>
ギルガメス連合の情報省次官。
今回、バーコフ分隊編成を仕掛けた黒幕であり、謎の研究文書『ペールゼン・ファイルズ』の謎を解こうと、軍事裁判からペールゼンの身柄を強引に引き取り、尋問を開始する。
同時に、バーコフ部隊の動向を観察し、ある実験を展開する。
<cv:大塚周夫>
レッドショルダーの創始者であり、今回は、軍事裁判にかけられたのちにウォッカムのもとへ護送されることになる。自身の研究文書である『ペールゼン・ファイルズ』に関して、ウォッカムとの駆け引きを演じることになる。
- コッタ・ルスケ
<cv:銀河万丈>
ウォッカムの忠実な側近を勤める男。
だが、この声と出で立ちはどこかで……?
スタッフ
企画・製作 | サンライズ |
---|---|
原作 | 矢立肇、高橋良輔 |
監督 | 高橋良輔 |
シリーズ構成 | 吉川惣司 |
キャラクターデザイン | 塩山紀生 |
メカニックデザイン | 大河原邦男 |
アニメーション制作 | アンサー・スタジオ |
発表 | 2007年10月26日~2008年8月22日 |
話数 | 12話(全6巻) |
劇場版公開 | 2009年1月17日 |
サブタイトル
1 「渡河作戦」
2 「ガレアデ」
3 「分隊」
4 「死の谷」
5 「尋問」
6 「異能」
7 「狙撃」
8 「冷獄」
9 「ダウンバーズト」
10「戦略動議」
11「不死の部隊」
12「モナド」
テーマ曲
【OVA】
OP『鉄のララバイ』
ED『バイバイブラザー』
作詞:高橋良輔
作曲:磯崎健史
編曲:佐々木総作、福田真一郎、二宮英樹
歌手:柳ジョージ
【劇場版】
『炎のさだめ』
作詞:高橋良輔 作・編曲:乾裕樹 唄:TETSU
OVAで『赫奕たる異端』以来のテーマ曲付の作品となった。
その歌詞はOP・ED共にボトムズの骨子たる「むせる」の体現かとも言うべき最低野郎っぷりであり、柳ジョージ氏の年期に裏付けされた渋い歌声がより鉄と血と硝煙の雰囲気を醸しだす。
劇場版では、TV版のOPをTETSU(織田哲郎)氏がリミックス版で歌いあげている。