「子供じゃない、17歳は大人だ!」
演:井浦秀智
登場話数:第19話「父はドクターマン」、第20話「プリンスの挑戦!」
概要
ドクターマンが作り出したメカ人間の一体。
記事冒頭に示した台詞にもあるように17歳程度の少年の姿をしており、その端正な顔立ちの右半分を隠すように長く伸びた前髪や、ドクターマンと同様に黒を基調とした出で立ちなどが、外見上の特徴として挙げられる。
こうした容貌や出で立ちは、ドクターマンがかつて生き別れとなった息子の成長した姿を想像し作り出したことによるところが大きく、実際にドクターマンからも「後継者」として位置付けられる立場にあった。
新帝国ギアの最高幹部として秘密裡に作られ、ドクターマン自ら教育を施しただけあって、その秘めたる実力も相当なものがあり、ビッグスリー一の怪力の持ち主であるモンスターを片手でいなして逆に制裁を加えてみせたり、自らの専用機たるメカジャイガン・グロテスカンスを独自に開発するなど、幹部格であるビッグスリーを全ての面で凌ぐ。
バイオマンとの戦闘においても、光線を発射する指揮棒とショットガンを武器とし、矢吹ジュンが変身しようとしたところを狙ってこれを拘束し人質としたり、グロテスカンスのメカ内蔵を奪われた際にはこれを取り戻さんと無差別攻撃に及ぶなど、知能的かつ悪辣な手段で彼等を追い詰めてみせてもいる。
冷酷で自身家な側面が目立つ一方で、前述の通り子供扱いされたことに対してムキになって反論したり、自分に対して生身の状態で向かってくる南原竜太に対し「丸裸同然のお前を倒しても自慢にならん」とプライドを傷つけられたかのような素振りを見せる他、自身にとっては未知の存在である母親を求めて彷徨ったりと、外見年齢通りとも言える内面の未成熟さも露呈している。
とりわけ後者については、造物主たるドクターマンにわずかながら残されていた人間性が反映されていることを、作中でも彼自身が言及しており、自身の家族に対する未練を否応なしに突き付けられる格好となったドクターマンの手によって、結果的にプリンスの将来も絶たれる格好となってしまうのである。
作中での動向
工場地帯にて、バイオマンとメイスン達が戦闘に及ぶ中、突如として彼等の前に姿を現したのが作中での初出であり、周囲にガスタンクのガスを充満させてバイオマンに手出しをさせまいとするメイスンのやり口を手ぬるいと一蹴するや、彼を巻き添えにする形でガスタンクを破壊するという、仲間への被害も厭わぬ姿勢を登場早々から示してみせたのであった。
「バイオマンを倒すためなら、お前達がどうなろうと知ったことか!」
ドクターマンによってその素性が明かされ、彼の命によりビッグスリーも指揮下に入った後、プリンスはいよいよ本格的に行動を開始。グロテスカンスの一部を構成するメカ内蔵を利用してエネルギー施設を襲撃し、駆け付けたバイオマンをも一蹴してみせるが・・・「子供」であるにもかかわらず非道な振る舞いに及ぶプリンスに対し、命の尊さを教えるべく生身で挑んできた南原にいたくプライドを傷つけられてしまう。
その場は一旦退きながらも、プリンスは南原がブルースリーになったところを倒してやると息巻き、彼を誘き出すべくジュンを人質に取ると、目論見通り彼女を助けるべく変身して現れた南原と干戈を交えることとなり、巨大戦においても自らグロテスカンスを駆ってバイオロボと対決。再生能力を活かして相手を大いに苦戦させ、メカ内蔵を奪われるというアクシデントが起きながらも無差別攻撃をちらつかせることで、なおも優位に立とうとしてみせた。
しかし、メカ内蔵を取り戻してなお付近にいた親子に銃口を向けたことで、怒り心頭に発した南原からの再度の説得を受けることとなり、その中に出てきた「母」という言葉をきっかけとして、プリンスはにわかに混乱を来し何処ともなく彷徨い出すに至ったのである。
「母さん、母さん!・・・何だ今のは? あれが母さんなのか? 俺の母さんなのか!? 母さん、母さーん!」
この思わぬ顛末を前に、モニターしていたドクターマンはビッグスリーにプリンスを連れ戻すよう厳命。そしてその際メイスンと揉み合いとなったことで素顔が露見し、バイオマンにもプリンスがメカ人間であるという事実が知れてしまう。
「わしとしたことが、またまた人間の心を持つメカを造ってしまった・・・新頭脳ブレイン然り、そしてまたお前・・・」
その超天才ぶりゆえに、プリンスにも自身が忌み嫌う「人間の心」が芽生えたことを疎んだドクターマンは、息子というものに対する執着を振り払うかのように、プリンスから「母」にまつわる記憶を除去するのみならず、心を持たぬ完全なる戦闘メカへと改造した上で、再度バイオマン打倒の尖兵として差し向けた。
しかし、ドクターマンの非情な仕打ちを知って怒りに燃えるブルーには、さしものプリンスでも到底敵わず、不利を悟ってグロテスカンスに乗り込み再び巨大戦へと持ち込むも、バイオロボにコックピットのある胸部を狙われグロテスカンスは敗北。プリンスもそれに巻き込まれる形で最期を迎えた。
プリンスにまつわる一連の顛末は、それを生み出したドクターマンには機械至上主義へのさらなる傾倒を、ビッグスリーにはドクターマンの正体が人間であったがゆえの衝撃をもたらし、一方ではバイオマンにも、ドクターマンが何者であるのかという謎に目を向けさせるなど、敵味方双方に様々な形で波紋を投げかけることとなった。
そして、事件解決後に南原が立てた「ドクターマンには本当に息子がいたのではないか」という推測は、それからしばらく後になって正鵠を射ていたことが、とある人物の登場によって明らかとなるのである・・・。
備考
デザインは出渕裕が担当。前年の『科学戦隊ダイナマン』より、プロデューサーの鈴木武幸が「アニメ的な美形キャラを出したい」という要望が出されていたことを受けて考案されたキャラクターであり、デザイン的には「女子萌えポイント」を意識する形で、島村ジョー(『サイボーグ009』)などに代表される「前髪で片目を隠す」という要素が盛り込まれている。
この表現自体は、『ダイナマン』にてメギド王子をデザインする際にも、帽子のつばに置き換えるという捻った形で盛り込まれており、それをストレートにやってみたのがプリンスであることを、出渕も後年のインタビューの際に述懐している。
プリンスは第19・20話の前後編以外にも、第49話にてバイオハンター・シルバが作製した別個体(プリンス2世)が登場している。シルバはこれを利用してネオグラードへと潜入し、ギアに鹵獲されたバルジオンを奪還せんと目論んでいたが、偶然それを知ったとある人物によって、彼のネオグラード潜入に利用されることとなる。