マタンゴ(遊戯王)
またんご
『遊戯王オフィシャルカードゲーム デュエルモンスターズ』のカードの1枚。2000年1月という遊戯王OCG最初期に登場した地属性・戦士族の効果モンスター。
外見は目と腕のついたキノコだが、種族は植物族ではなく戦士族。おそらく、元ネタの映画におけるマタンゴが元人間だったことを反映しているのだろう。
同時収録された通常モンスターの「きのこマン」はしっかり植物族である(キノコは植物ではないというツッコミはさておき)。
カード効果は扱いに困るものとして低評価であったが、2022年に対戦環境で猛威を振るったカテゴリー「クシャトリラ」への対抗手段として注目を浴びる。
カードテキスト
効果モンスター
星3/地属性/戦士族/攻1250/守 800
自分のスタンバイフェイズ毎に、コントローラーに300ポイントダメージを与える。
自分のエンドフェイズに500ライフポイントを払えば、このカードのコントロールは相手に移る。
登場初期の評価
召喚・特殊召喚したターンにライフ消費で送りつけても、相手にとっては儲けものでしかなく「敵に塩を送る」効果としか思えないものである。
当時は生け贄召喚(アドバンス召喚)の概念が無かったため、そのような前提で設計されたものと思われる。
しかし、多種多様な召喚方法が増えた現在は、リリースよりもシンクロ・エクシーズ召喚の素材、もっと簡単に処理するならリンク召喚の素材にされるのがオチである。
果ては送り付けたところで、持ち主が自分のコイツが突如牙をむい襲いかかってくることすらあったり。
ロック戦術も《異次元への案内人》の存在があって、総じて役立たずなカードであった。
登場から22年以上も経って、突如脚光を浴びるカードと化した。
「自分フィールドにモンスターが存在しない場合、このカードは手札から特殊召喚できる」というカード効果で展開するクシャトリラに刺さるカードとして、ミラーマッチでのデュエル機会にピンポイントでピックアップされたのである。
さらに研究が進むにつれ
- 戦士族なのでクシャトリラの主力モンスターの1枚であるクシャトリラ・ライズハートとサポートカードを共有できる。
- クシャトリラデッキでは送り付けられたマタンゴの処理が困難。
- この戦術の大前提なのだが送り付けるタイミングがエンドフェイズなので「送り付けてから特殊召喚してそこから行動」ができず、後手に回ることを強いられる。
- クシャトリラ・ユニコーンやクシャトリラ・フェンリルの特殊召喚を封じられたクシャトリラはクシャトリラ唯一の下級モンスターであるクシャトリラ・ライズハートを通常召喚する以外に手はないのだが、クシャトリラ・ライズハートは星4でマタンゴは星3故にこの2枚ではエクシーズ召喚が行えない。エクシーズ召喚に使うには貴重な防御札である灰流うらら、もしくは自分もマタンゴを召喚してランク3を出す以外に手段がない。
- クシャトリラでは同じ送り付け効果を持つ夢幻崩界イヴリース対策として自身と相手フィールドのモンスターを破壊する効果を持つ空牙団の懐剣ドナが採用されていたのだが、ドナの召喚条件は「種族の違うモンスター2体」であり、同じ戦士族であるクシャトリラ・ライズハートとマタンゴの2枚ではそれを満たせない。マタンゴからドナを出すなら貴重な防御札である灰流うららや増殖するGを切ることを強いられる。
- 汎用リンク1モンスターに変換しようにも星3なのでリンクリボーやサクリファイス・アニマの素材にはできず、攻撃力1250なので転生炎獣アルミラージの素材にもできない。
- クシャトリラは基本的にエクシーズ主体のデッキであり、カテゴリ内にチューナーがいないこともあってエクストラデッキにシンクロモンスターをほとんど採用しないため、シンクロ召喚での処理もほとんどの場合不可能。
- スタンバイフェイズにコントローラーのライフにダメージを与える強制効果を発動するのでクシャトリラモンスターの効果誘発に利用できる。
- 夢幻崩界イヴリースとは違って墓地を経由しないのでディメンション・アトラクターが刺さらないし、地属性なので墓地に行ってもビーステッドに活用されない。基本的に通常召喚で出すので増殖するGも反応しない。
など、微妙な能力が見事に噛み合っている。
マタンゴを使われる側は対策として崔嵬の地霊使いアウスを経由してドナを出してフィールドを空けるルートを構築。
マタンゴを使う側はそれに対してクシャトリラ・ユニコーンなどで相手のエクストラデッキを確認してドナやアウスを除外して対策する、と言った具合に環境トップデッキで大真面目にマタンゴを巡るメタゲームが行われている。
前述の通り、マタンゴは相手ターン中の効果の発動がエンドフェイズと遅いことが、対クシャトリラ以外でも有利に働く可能性があるのも利点と言える。
これの送りつけを防ぐためだけにエンドフェイズまで無限泡影を温存する必要があるのは使われる側からしたらたまったものではないだろう。
これはマタンゴだけではなく、送りつけモンスター全体に言えることだが、「自分のフィールドにカードが存在しないこと」をトリガーとして発動できる後攻の捲り札を潰せる点も大きい。
汎用性が高いものだけでも拮抗勝負、無限泡影の手札発動、ライトニング・ストームの発動をまとめてケアできるのは地味ながら大きく、先攻1ターン目なら送りつけても損になりにくい。
もっとも流行ったのは一瞬だけではあったものの、いわゆるスタン落ちがなく、カードプールが広がる度、陰日向にいたカードにも光が当たる可能性がある遊戯王の面白さを体現した一枚と言えるだろう。