概要
『遊戯王シリーズ』のカードの1枚。レベル4・闇属性・戦士族の効果モンスター。Vジャンプ2002年2月号に付属したのが初出。
罠カードを使いやすくする効果が他のカードと悪い意味で噛みあい、対戦環境で暴れまわったせいで禁止カードに指定される事態となった。現在はエラッタ(カード効果の調整)されたことで使用可能に戻っている。
外見としては両腕の鉤爪が特徴的。顔は千年眼に似た単眼だけで鼻や口は無く、頭部側面からは斧のような刃が突き出ている。
前提知識
このカードの強力さ、そしていかに凶悪なコンボが成立したかを理解するには、そもそも遊戯王OCGにおける罠カードの仕様や制約を踏まえる必要がある。
罠カードは相手ターンでも発動でき、相手の行動に対応して発動する文字通り罠のような使い方ができる代わりに、手札からセット(伏せる)した後そのターンを終了しなければ発動できないという制約がある。自分のターンで発動させるのは不可能ではないが、他のカードの効果によるセットでなければいけないので、やはり一手間加えることを強いられる。
つまり伏せられてから相手に破壊されると、そのカードがどれだけ強力な効果を持っていても無意味になる。
特に《チェーン・マテリアル》などのように自分のターンで発動すべきカードの場合、相手ターンの間に除去されないよう守りきる必要があり、手札にあるからといってすぐに効果を発動できるというわけではない。
魔法カードを墓地から手札に加える《聖なる魔術師》が長らく禁止カードであるのに対して、ほぼ同じ条件で罠カードが対象の《闇の仮面》に規制がないままという点からも、この2種類のカードの使いやすさの違いが分かるだろう。
そのため、罠カードは発動さえできれば魔法カードと比べてより強力な効果が多い傾向にある。
そして、マキュラの能力はこういった前提をこれ1枚でぶち壊しにする。
エラッタ前の性能
カードテキスト
効果モンスター
星4/闇属性/戦士族/攻1600/守1200
このカードが墓地へ送られたターン、このカードの持ち主は手札から罠カードを発動する事ができる。
解説
このカードが墓地に送られると、そのターンのエンドフェイズまで手札から罠カードを発動できるようになるというルール介入型の効果を持つ。発動できる回数が言及されていない以上は枚数に制限なし。
このカードの効果が適用されている間は手札に加わった罠カードを魔法カードと同じようにすぐに発動することができ、《八汰烏の骸》や《強欲な瓶》のようなドロー効果をもつ罠カードを即座に使うことで高速でデッキを回す事ができた。
特に最初の自分のターンでいきなりこのカードの効果を発動してカードを高速で墓地に溜めて、このカードとほぼ同時期に登場した罠カード《現世と冥界の逆転》の条件をすぐに満たして発動し、相手のデッキ枚数を一気に0にするという凶悪な1ターンキルが横行。このカードの効果発動を皮切りにデッキが高速で回転して即座に勝負を決める様は、まさしく「処刑人」の名にふさわしいものであった。
「このカードが墓地へ送られ」さえすれば、元あった場所がフィールドだろうが、はたまた手札やデッキだろうが構わず、墓地に送る方法も問わないという発動条件の緩さもこのカードの凶悪さに拍車をかけていた。
さらにこのカードの効果分類はルール効果である。つまりどういうことかというと墓地に送った瞬間から効果が適用され、「《天罰》を使って効果を無効にする」といったこともできない。
禁止カード
このようなカードが規制されないはずもなく、2002年5月に制限カードになる。2003年4月に準制限カードに緩和されるが、2005年3月に禁止カードとなって以降は長らく変更されなかった。
仮にこのカードが禁止解除された場合、闇属性・戦士族というステータスから戦士族のサポートを共有できる《終末の騎士》や《ダーク・グレファー》でデッキから直接墓地に送る事で容易に効果を発動することができる。また、そのターンが終了したとしても《戦士の生還》で手札に戻す事で再び墓地に送る機会を得られた。上記の効果の凶悪さと相まって、エラッタでもされない限り今後どのような環境の変化があったとしても禁止解除されないであろうと噂されるカードの1つとなっていた。
このカードと似た効果を持つカードに、罠カードをセットしたターンに発動できるようにする事で手札から発動しているも同然の状態にすることができる永続魔法《王家の神殿》があり、これはエラッタで「1ターンに1度だけ」と制限が付けられて復帰した。
また、その後も手札から罠カードを発動できるようにするカードはいくつか登場しているが使える条件が限定的な上に1枚しか罠カードを手札から発動できないようになっており、上記のような悪用は難しくなっている。
それゆえ「1ターンに1度とエラッタすれば戻ってこれるのではないか?」という声もあったが、上述の《王家の神殿》と違い、モンスターカードかつ罠カードを伏せる必要のないマキュラでは性能が違い過ぎた。そのため、「インフレしている現環境だと1ターンに1度だけでは確実に悪用できる」だとか、「せめて原作効果や原作の状況を再現するようにできれば戻れるかも?」といった説が囁かれていた。なお、この場合でも手札をすべて捨てるというコストと相性の良い《裁きの天秤》等のカードが存在している。
ちなみにアニメ『遊戯王5D's』ではクロウ・ホーガンやZ-ONEが特定の条件を満たすことで手札から発動することができる罠カードを使用しており、クロウが使用した《デルタ・クロウ-アンチ・リバース》がアニメと大差ない効果でOCG化されている。
原作・アニメにおいて
原作漫画『遊戯王』のバトルシティ編において、闇マリクが孔雀舞との対戦で使用。
戦闘破壊されたときに効果を発動し、戦闘破壊されたモンスターを蘇生して攻撃力を上げる罠カード「命の綱」を手札から発動してこのカード自身を蘇生して強化し、反撃に繋いだ。
原作では手札から罠を発動する際にその罠カード以外の手札を全て捨てるという重いコストを払わなければならなかったがOCG及びアニメではこのカードのテキストから手札コストが無くなっていたため、代わりに手札を全て捨てるというのは「命の綱」の方のコストになっていた。
なおOCG効果ではフィールドから墓地に送られてから効果を発動し、その後罠カードが使用可能になるため、原作のように「戦闘破壊されたマキュラを自身の効果で発動した手札の命の綱で蘇生」ということはできない(あらかじめマキュラの効果を発動しておけば可能)。
アニメオリジナルの「ドーマ編」でも闇遊戯VSグリモ戦でグリモが使用。罠カード「隠れ兵」の効果により特殊召喚された。この時はオベリスクの巨神兵を召喚するための生け贄(今の用語で言うとリリース)に使われ、効果は使用されなかった。
現在の性能
カードテキスト
※攻守等は変化なし。
このカード名の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):このカードがモンスターゾーンから墓地へ送られた場合に発動できる。
このターンに1度だけ、自分は罠カードを手札から発動できる。
解説
OCGが11期に突入したときに大幅なエラッタを加える形で帰ってきた。
大きな変更点は3つ。
- 罠カードの上限
- 墓地へ送られる前の場所の指定
- 効果の種別
まず大方の予想通り、発動できる罠カードの数が1枚だけに限定された。同名カードの効果の発動も1ターンに1度であるため、同名カードを複数枚墓地へ送ったり、墓地から手札に戻したあと即座に墓地へ戻すといった手段を取っても、発動できるのは1枚のまま。
原作・アニメでこのカードの効果によって手札から罠カードを発動させる場面でも、いずれもそのターン内に1枚しか発動していないため、原作の状況をある程度寄せた形になったとも取れる。
次に手札やデッキから墓地へ送ると発動できない。テキストをよく読むと「フィールド上から~」ではなく、あくまでモンスターゾーンと指定されているので、他のカードによって魔法・罠ゾーンに置かれていた場合であっても発動の条件を満たせない。
そして3つ目の変更点としてルール効果から墓地へ送られた時に「発動」する誘発効果へと変更された。そのため「発動」を無効にすることが可能となり、以前のテキストと比較すると相手は対処しやすくなり、凶悪度が大幅に減った。
マキュラ単体もそうだが、先述した《現世と冥界の逆転》もエラッタを受けていたため1ターンキルは不可能となった。
いくら呼んでも帰っては来ないんだ
もうあの時間は終わって、君も人生と向き合う時なんだ――――――
ただし手札コストが消滅したことで原作よりは強化されている。