「僕は下等生物共(ニンゲンドモ)のそういう所が大嫌いなんだ
愚鈍で無知で思慮の浅い夢見がちな愚物共が
上位存在(ぼくら)を都合のいいように理解した気になりやがって」(第34話より)
「・・・ああ・・・これだから
人間は嫌いなんだ
愚かで幼気で・・・
『運命(じぶん)』の虚しさを思い知らされる・・・」(第52話より)
△概要
混沌の邪神・最上位六柱の第三柱。通称「『運命』のミュスカー」。シンボルマークは「三角形」。
マグちゃん達より早く復活した邪神で、ウーネラスの探知を逃れながら水面下で活動していた。現代の混沌教団を率いており、マグちゃんを破壊神として招き入れようと画策している。
邪神の中で唯一人間態を持ち、人間態は『黄色いフードを被った萌え袖の片目隠れの少年』、本来の姿は『1つ目のイカ(もしくは現在のミュスカーから人面や毛髪を取り外した)』のような姿をしている。
デザインのモチーフは、ハスター、黄衣の王、イカだと思われる。
△性質
『神』としての自負はマグちゃんやナプタークに匹敵する程に強いが、それ以上に「『人間』に対する侮蔑」の感情が強い。何度も過ちを犯す人間に失望しており、故に「『神への畏怖の念』を用いて、神が人間を管理・統率すべき」とする思想に到達。その目的を達成するため、神すら滅ぼせるマグちゃんの力を求めている。
また、その思想から「人間に寄った思考」を嫌い、それに染まったウーネラスやナプタークを見下している。特に、ウーネラスとは人間に対する考えの食い違いから互いに激しく対立している。
第三柱とだけあって、戦闘能力はかなり高い。バトルでは「分体強化」を行ったウーネラスに完勝する程に強く、彼女をして「バトル展開では勝てない」と言わしめた。
総じて智謀・戦闘双方に長けた恐るべき策士であるが、反面真面目なツッコミ気質でもあり、流々やナプタークにはペースを乱されがち。
△権能
- 運命の調律
彼がメインとして用いる権能。簡単に言えば「因果律操作」。
その本質は、彼の持つ超聴覚で集めた情報から周辺の可能性を完全に把握、自身の望んだ結果へと誘導し事象をもたらすというもの。劇中では物を落とす、福引やパチンコを当てるといった些細なものから、バタフライエフェクトの要領で気象を操り、雪崩、落雷、竜巻を起こす、さらには隕石を落とすといった強力なものまで幅広い活用を見せた。
また自身へのあらゆる攻撃を逸らす力を常時発動しており、位が上のマグちゃんの攻撃ですら100%回避可能(ミュスカー曰く「先読みは預言者(ぼく)の得意分野だ」)。さらに応用で周囲の人物や物体の形状、位置を把握するレーダーとしても扱えるなど、上位存在達が持つ権能の中でもトップクラスの汎用性を誇る。
但し、飽くまでも数多ある可能性の中から、望む結果を導き易くなるだけで、確実性を求める場合「事前にそうなるように仕込む」必要があり、また可能性が0の事態は起こせない。さらに、他者の思惑や考えまでは思い通りに出来ない、上記の通り聴覚に依存している為にそれに作用する攻撃に弱い等、チート能力ではあるが存外に穴がある。
その為、音波攻撃で聴覚に不具合をもたらし、広範囲かつ不可視の攻撃故に100%回避不可能な攻撃手段を持つ(さらに言えば他者の精神に干渉できる)ナプタークは天敵といえる。
この権能はいわば『目先の結果を得る』のに特化した対処療法であり、ミュスカー及びその周囲の者にしか利をもたらさず、彼の望む全人類には手が届かない。本人はその点を自覚しているか不明だが、初登場時に「ささやかな力」と自虐したのは皮肉にも的を射ている。
逆に、ミュスカーの語る人類の愚かさは、自分が先読みに優れているだけに『持たざる者の目線での思考』を放棄しているため、抜本的な対策に考えが及ばずこの能力に縛られているとも評せる。
- 運命の静寂
運命の調律によって構成された広域結界。展開された範囲内に起こりうる運命を事前に探知し、逆に何も起こらない空間に仕立て上げる。ただし、発動には長時間の綿密な探知が必要。
劇中ではこの結界内部にノス=コシュの「夢幻の薫香」を充満させ、領域内の人間を全員眠らせるという合わせ技を見せた。
△活躍
その存在は第29話から仄めかされており、「無位の存在」のゾンゼ=ゲやグ=ラを尖兵として封印から解き放つなど暗躍していた。
劇中の本格的な登場は第33話。スキー場にマグちゃん(と流々と藤沢家の皆さん)を導いた後、吹雪の中で邂逅する。マグちゃん、そして居合わせたイズマと交戦し、両者をその権能で翻弄するが、流々の天然さに振り回され、マグちゃんを逃してしまう。以降は側近の狂信者・閼伽村と共に暗躍するもそのツッコミ気質が災いし、マグちゃん奪取計画は悉く失敗に終わる。
しびれを切らしたミュスカーは、ついに最終手段として第六柱ノス=コシュの封印を解き、『運命の静寂』と『夢幻の薫香』の二大権能で愛倉市のほぼ全域に人間を眠らせる結界を展開。さらに自身は『夢幻』の権能で幻覚を使えるようになる。
これにより一時はマグちゃんを追い詰めたものの、マグちゃんの協力要請を受けたナプタークと接触した際、「混沌の神の恥晒しめ」「下等生物共(ニンゲンドモ)の飯事(ままごと)に現をぬかして 永遠に店(そこ)で遊んでいればいい」と愚弄したことで、彼は激怒。『狂乱の咆哮』により聴覚器官にダメージを受けてしまう。
それにより『運命』の結界に穴が生じ探知能力を封じられた上、ナプタークの足止めによってマグちゃんが完全復活したり、ノス=コシュがイズマ、グ=ラ、ゾンゼ=ゲの連携にて捕縛され流々が目覚めたりと、次第にジリ貧に陥っていくミュスカー。
信徒に手を出され激昂するマグちゃんと対峙したミュスカーは、遂に自らの敗北を悟るや「ならば『マグ=メヌエクを本来の姿に戻す為の犠牲』になろう」と覚悟を決めたが、流々の制止によりそれすら叶わなかった挙げ句、ウーネラスの策により再び弱体化(=人間態を極限までデフォルメしたような姿)させられてしまった。
以降はマグちゃんやナプタークと同様、力を取り戻すべく栄養摂取に励んでいるが、弱体化の影響なのか味覚が子供舌になり、効率的な栄養の摂取が出来なくなってしまっている。
人間をひどく見下し嫌悪するようになったのには、過去のある出来事が原因であるようだ。
彼の回想から断片的に読み取ると、人間態のミュスカーと瓜二つな容姿の、常に目を閉じた(恐らく盲目)羊飼いの少年が彼を神としてあがめており、災厄を回避する予言を人々に与えたものの、その少年は「邪神の力を悪用した」と誤解され、コミュニティを追放された模様(「報復に来た」と言われていることから、普段から碌な扱いを受けていなかったと思われる)。しかし、少年はそれでも追放した大人を恨まず、それどころか人々に幸福をもたらすようミュスカーに祈った。
ミュスカーはその祈りに応えようと人類に歩み寄ったが、彼らが願うのは身勝手な欲望ばかり。辟易していたミュスカーの目に突然飛び込んできたのは、一帯を吹き飛ばすほどの大爆発。そしてその中から現れたマグ=メヌエクだった。圧倒的な力で恐怖を振りまく姿を見たミュスカーは、その姿こそが「本物の神」だと確信し、彼がマグ=メヌエクに固執するきっかけとなった。
ウーネラスの裏切りを予見で知ったミュスカーは、マグ=メヌエクを手中に収めるためにそれを利用。ノス=コシュに接触し、「聖騎士団が来たら抵抗せず封印されること」「目覚めたら自分に協力すること」を約束し、直後に自身も封印される。その後は誰よりも早く復活を遂げ、来るマグ=メヌエクの復活に備えて力を蓄えていた。
尚、この経緯から分かる通りミュスカーが持つ『人間に対する悪意』は、上記の『少年を不遇に追いやった大人達への憎悪』が根源である。
現に全ての人類を憎むのであれば、わざわざ自身の計画に人間を巻き込まないために眠らせることはしないだろう。自分を慕った少年の顔を模した仮面を身に付けないだろうし、閼伽村に対しても冷たく接するだろう。
ミュスカーの存在は「マグちゃんが流々に出会わなかった、或いは出会った故にトラウマを得てしまったifの姿」といえる。
△余談
彼のモチーフと思われるハスターだが、クトゥルフ神話に取り込まれ邪神と称される前は、「羊飼いのハイータ」という作品に登場する「穏やかな羊飼いの神」であった。ミュスカーの出自は、ここから来ているのかもしれない。
第7巻の巻末後書きによると、作者曰く「出したら終わるキャラ(要約)」だったという。
△関連タグ
マグ=メヌエク、ユピスス、ウーネラス、ナプターク、ノス=コシュ:彼と同じ混沌の神々。
:モチーフになったと思われる物。