CV:長克巳
概要
リ・エスティーゼ王国国王。在位39年で69歳という高齢であり、本来なら既に王位を息子に譲っていてもおかしくない年齢なのだが、その跡継ぎの王子達に問題があるのに加え王派閥と貴族派閥の争いが続いているため、未だに王座に留まっている。
人物像
常に国民達を思いやる優しく慈悲深い王であるが、彼の場合優しさが過ぎて、甘さに繋がってしまっている。手厳しい言い方をするならば、良い人物ではあるが、良い王ではない。現に12巻作者雑感で語られた『王様優秀度』では、12位中7位(失敗はないが、大きな成功もない)という低順位に位置している。
特に彼の最大の失政が、後継者問題の解決を先送りにし続けた挙句、長男への情愛から彼を切り捨てられなかった事である。
作中では甘さが悪い方向に働いている事が多いが同時にランポッサ最大の魅力でもあり、ガゼフ・ストロノーフや内務尚書といった貴族・非貴族問わず有能な軍人や官吏から強い忠誠を捧げられている。また、彼の甘さを陰で愚痴っているレエブンも善良な人柄や民草を想う心を認めている。
彼の優しさは一種のカリスマでもあり、それ故に自身を補佐する、自分より優れている人材を集める事に秀でているとされる。
しかし、この優しさという甘さが結果として王国滅亡の要因の1つとなった上に、肝心の長男の命を奪う事にも繋がっており、甘さが故に良かれと思った事が全て裏目に出る結果となっている。
逆に彼の最大の成功は、平民出身だが最強格の武人であるガゼフ・ストロノーフに戦士長の座を与えた事によって、バハルス帝国やスレイン法国が無視できない程の戦力を手に入れられた事である。
容姿
健康的でない痩せた体、ほつれた白髪で顔色は良くない。手は枯れ木の様に細い。
かつての争いで膝を痛めているため、歩行時には杖を付いて歩く。
作中の動向
ガゼフから彼の命を救った謎の魔法詠唱者(マジック・キャスター)、アインズ・ウール・ゴウンの報告を受ける宮廷会議で登場した。
作中では、派閥対立が国を蝕んでいる事実を理解しながらも貴族を潰せる力が無く、歯がゆい思いに苦しんでいる(しかし時として非情な決断を下さねばならない政治の場で、情に流されて後継者の件を始めとした諸問題を先送りしてしまう自身の悪癖がこうした現状を招いたのも事実であるため、彼にも責任がある)。
愛国心も強く家族思いの人格者で子供達を等しく愛しているが、長男は父の想いを理解せず暴走し、次男とは自身の人を見る目の無さが一因ですれ違い(これはザナックが兄のバルブロを刺激しないよう、『能ある鷹は爪を隠す』の如く自身の才覚を隠していたせいでもある)、三女には裏切られると四面楚歌に陥ってしまっている、作中の為政者の中における屈指の苦労人の1人。
最期
『大虐殺』以降はやつれてしまった自身に代わり、次男のザナックが隠していた優秀さを発揮して政務を務めていた。
そんな時に自国の貴族が魔導国による聖王国支援部隊の馬車を襲撃するという事件を起こしてしまい、誰もが魔導国の陰謀だと考える中、魔導国から使者としてアルベドが来訪。
謝罪の証として自らの首を差し出す提案をしたが受け入れられず、宣戦布告が言い渡された。
(※捕捉※
なお、この提案はアルベドに即却下されている為に愚策であるかの様に作品外で批判を受ける事があるが、実際にはこの時点のランポッサが打てる策としては最善かつ最も効果的なものであると言える。
もはや衰退は免れない腐敗した国の王であり、実権は既にザナックが掌握している死に体であるとはいえ、ランポッサが未だ一国の王である事には変わりがなく、実行犯の三流貴族と比べればその首の価値は遥かに高い。外交上その王の首を差し出すと言われれば普通は受け入れるか、返答を保留するほかない。
もしランポッサの首で今回の騒動を手打ちにするならば貴族派閥の介入を許すことなくザナックへの王位継承が円滑に進むことになり、保留されたらされたで対策の準備をする時間を稼ぐことができる。
また、提案を蹴られた場合には「魔導国は相手国の権威を軽んじる礼儀に欠けた国である」事を諸外国に喧伝する事も可能であり、当初の『飴と鞭』の方針上、恐怖で世を支配するつもりは無い魔導国としては頭を抱える状況になるところであった。
そもそも何れの決断も一国の宰相とはいえ魔導王の遣いでしかないアルベドの一存では決められない事柄である。
つまりもしこの時、アインズの命令のもと『国家単位の飴と鞭』という方針がナザリック内で固まっていなければ、アルベドは何も出来ずに引き下がるしかなかったのだ。
自分という手札を最大限に活かしたこの一手はそれまでのランポッサの能力からは想像も出来ない巧みさを含んでおり、アルベドも(皮肉混じりながらも)この提案を決断してみせたランポッサを素直に称賛している。)
しかし開戦の日以降、魔導国は自領から動こうとせず、宣戦布告は単なる脅しとの見方が強くなった。
この隙に交渉とザナックやラナーを逃がす準備に入るが、これは息子の命を盾に脅されやむなく離反したレエブンが情報操作を行っていたためであり、王宮内に正しい状況が知れ渡ったのは開戦から1ヶ月経過した後であった。
住民を皆殺しにする魔導国のやり方に、交渉による解決は不可能と判断したザナックに監禁されるが、ザナックによる40万の軍勢が敗北し王都に魔導国軍が迫った事で監禁から解放された。
もはやこれまでだとして王冠や王笏など王国を示す品々を魔導王に渡す準備を始めるが、やって来たラナーからの「王都内に隠せば破壊活動を抑えられるだろう」という提案を受け入れ、クライムに品々を託しラナーと2人きりになった後は彼女に薬瓶(恐らく自害用の毒薬)を渡した。
その後、ラナーがクライムと共にナザリック入りするのを目的とした『茶番劇』のための道具として利用され、状況から恐らくラナーに『剃刀の刃(レイザーエッジ)』で斬り殺されて死亡した。
余談
本作で現地人が悲惨な目に遭う事は珍しくないが、ランポッサⅢ世の場合は我が子を想う親の愛が裏目に出て長男は暴走の末に惨殺、次男は部下に裏切られて非業の死を遂げ、末っ子からは裏切られて殺害されたという、単純に殺されるよりも救いようのない最期を迎えている。
しかも嘲笑うが如く殺害された時に使用された剣は、自身が最も信頼を寄せていた忠臣の形見であり、最期の最期まで救いは無かった。
関連タグ
第一王子。剣の腕に秀でているが、頭脳面では弟や妹に劣る。典型的な馬鹿王子だが、それでも親としてちゃんと愛していた。しかし、その想いは終ぞ本人には届かなかった。
第二王子。レエブン侯から次期王に推薦されている。我が子の中で最も自身を理解してくれている真の息子。
第三王女。無垢な愛娘。立場上は『スペアのスペア』だが、内政の天才。
彼女の本性には気付く事は無かったが、無類の親愛を向けていた。しかし、当の本人からは「その他大勢」程度にしか思われていなかった。
王国最強の戦士にして、自身が厚い信頼を置く忠義の士。ランポッサⅢ世とは、主従関係を超えた強い信頼関係で結ばれていた。
本来なら戦士長の座は、実力があっても平民如きでは手に入らない座だが、持ち前の人徳の高さで彼にその座を譲渡した。この事から、ランポッサⅢ世がただの無能では無い事を示している。
『王派閥と貴族派閥の間を行き交う蝙蝠』の皮を被った王の忠臣。
同作品のキャラクター。いずれも『優しさが過ぎて甘さに繋がってしまう』という、共通の悪癖を持つ。
特に後者に関しては『優しく慈悲深い王であるが、それが行き過ぎるせいで内部派閥による反発を招いており、更に国中に蔓延している問題を先送りにしてしまっている』点や、『戦乱の時代ではなく平和な時代の王ならば『名君』になれていたかもしれない』という点に始まり、『関係者に懐刀と言える忠義の士と智謀に長けた腹黒の女性が存在している』のも同様であるなど、共通点が多い。