概要
京都府京都市西部で軌道線2路線(嵐山本線・北野線)を有する私鉄。嵐山へ通じる軌道線として「嵐電」の通称で親しまれており、比叡山の京都側ではケーブル・ロープウェイを運営している。
京福グループの中核企業であり京阪ホールディングス(株式の約43%を保有)の傘下となっているが京阪の共通ロゴは使用していない。また、個人株主の死去に伴う相続税の物納により国(財務大臣)が株式の約8%を保有する大株主になっているため、資本関係上は第三セクターとなっているものの、上述の事情もあり「第三セクター鉄道」として扱われることはほとんどない。
社名の「福」は福井県に由来する。京都と福井を結ぶ目的があったわけではなく、もとは京都電燈(関西電力と北陸電力の前身)の電気事業の関連から鉄道へ進出したもの。戦後長く福井支社を置き同県内においても鉄道路線を運営しており、約100km離れた異なる二都市に鉄道路線を有する変わった私鉄(他に現代では弘南鉄道や伊豆箱根鉄道が保有路線同士が接続していない事例であるが、ここまで離れているのは極めて珍しい)として知られていた。しかし、福井では半年間に2度にわたる正面衝突事故を起こした末営業を休止し、2003年に鉄道に関する経営や資産を全てえちぜん鉄道へ譲渡している。
なお、福井本社自体は福井事務所という形で縮小しながらも存続しており、現在においても福井県内にはバスや不動産を保有している。というか京福バスは一般路線バスとしては福井県内にしか走っていない(高速バスには京都線があり、文字通り京福間を連絡する京福グループ唯一の交通手段)。京都市内の京福グループのバスとしては傘下の京都バスがある(両社はベージュ地に茶色の帯という点で似通った塗装である)。
上記における経緯の結果として、「鉄道の営業地域とバスの営業地域が全く異なる場所に存在する」非常に珍しい形態の交通事業者となった。
路線
現有路線
- 京都本社・嵐山線
北野線:帷子ノ辻〜北野白梅町
これらの路線は地元では「京福電鉄」と呼ばれる事はほとんどなく、愛称である「嵐電」の方が通りが良い。
- 京都本社・比叡山
鋼索線(叡山ケーブル):ケーブル八瀬〜ケーブル比叡
叡山ロープウェイ:ロープ比叡〜比叡山頂
両線へと向かう叡山線は叡山電鉄へ譲渡されたが、これら京都側から比叡山山頂へ向かうケーブル・ロープウェイは譲渡されず引き続き京福に残っている。「嵐電」の愛称の範囲には含まれない。
なお、大津側から比叡山へ向かう比叡山坂本ケーブルは、同じ京阪グループの比叡山鉄道による運行。
過去の路線
- 京都本社・叡山線
すべて現在の叡山電鉄。
叡山本線:出町柳〜八瀬遊園(現:八瀬比叡山口)
鞍馬線:宝ケ池〜鞍馬
- 福井本社・越前線
以下の2線は現在のえちぜん鉄道
越前本線(現:勝山永平寺線):福井〜勝山
三国芦原線:福井口〜三国港
以下の2線は廃止
永平寺線:金津(現:芦原温泉)〜東古市(現:永平寺口)〜永平寺
丸岡線:本丸岡~西長田(現:西長田ゆりの里)
車両
すべて両運転台車。多客期など2両を連結しての運用もある為すべての車両に電気連結器が装備されている。
モボ2001形以外は全て吊り掛け駆動であり、車体載せ替えや機器流用の関係もあって、車体は近代的だが足回りは旧式(もっとも路面電車においてはそういったことはよくあることで、コストの問題もあるが特に制御機に関しては旧型の方がストップ・ゴーの多い運転条件から反応が早いために有利という面もあった)。
また、床の高さ自体は他都市の(旧型の)路面電車と同じだが(併用軌道内の停留所が西大路三条と山ノ内しかないこともあり)ステップがないことも特徴である。現在の都電や東急世田谷線も同様であるが、京福は少なくともモボ101のころから(ただし登場時は福井鉄道のように折り畳み式ステップがあったとされる)ステップがない。
路線譲渡後のえちぜん鉄道では、福井鉄道との乗り入れのために超低床・路面電車タイプ(LRV)の車輌を導入し一部(田原町~鷲塚針原)ではホームの一部分の高さを下げるなど苦心して直通を成功させている。一方でノンステップ高床構造の嵐電では、それ故に通常の鉄道に近い走行装置を流用出来るため、高価なLRV無しで車輌刷新が可能な状況ではある…が、逆に言えば、在来車でバリアフリー化がある程度済んでいるため、在来車の置き換えが進んでいないという側面も見られる。
2024年度より新型車を導入予定。愛称は「KYOTRAM(きょうとらむ)」。
嵐電ではモボ2001形以来20数年ぶりの新車で、VVVF車の導入は2例目となる。
2028年度までに7両が導入されるとしており、これによりモボ101形とモボ301形がすべて置き換えられる。
- モボ101形
車籍は1929年からある。1975年に更新工事で車体載せ替え。
1990年に冷房化改造。製造された6両が全て在籍している。
- モボ301形
1971年製造。2両いたが2007年に一度引退、その後翌年の2008年に301号のみ現役に復帰。
理由は地下鉄延長による乗客増加が見込まれたため。
- モボ501形
1984年から翌85年にかけて旧型車の機器を流用し4両製造された。
登場時は乗車用扉が車両中央部にあり、他車と動線が異なることから運用に制限があった。
モボ2001形の製造により503、504が廃車。
501と502は2016年11月に乗車用扉の移設工事が行われ、現在は他形式と共通で運用されている。
- モボ611・621・631形
1990年から1996年にかけて旧型車の機器を流用して製造された。
合わせて14両在籍。実はモボ611よりモボ621のほうが先に登場している。
- モボ21形
平安京遷都1200周年を記念して1994年に製造された。
嵐電開業時の車両をイメージした外観から「レトロ電車」と呼ばれる。
2両在籍。車番はモボ621形の続番で26号、27号。
ダブルルーフ調の屋根はダミー(クーラーキセ)であり、車体構造自体はモボ621とほぼ一緒。
独特の外見もあり観光シーズン時には優先的に使用されるほか、貸切車両での指名も多い。
- モボ2001形
2000年製造。
初のカルダン駆動車(厳密に言えばWNドライブ)であり、現在唯一のVVVF制御車である。
2両在籍。形式名はもちろん製造年から、また嵐電初の4桁形式車でもある。
吊掛け駆動オンリーからいきなりVVVF車両を導入した事例は極めて珍しい(同様の事例としては筑豊電気鉄道がある)。
キャラクター
嵐電には江ノ電との姉妹提携キャラクター「あらん」と駅娘・駅務員「福王子ひかる」の2キャラクターが、叡山ケーブル・ロープウェイにはアテンダント「八瀬かえで」が存在する。
関連タグ
京都 京都市 嵐山 路面電車 比叡山 福王子ひかる 八瀬かえで
叡山電鉄:1986年4月1日に叡山本線・鞍馬線系統を分離したかつての子会社(叡電)。現在は親会社京阪の完全子会社になっている。
えちぜん鉄道:事故を起こし休止していた福井県内の2路線を2003年に継承した会社(えち鉄)。福井市など沿線各市町村の第三セクター。
島原鉄道:京福と同じく資本構成上は第三セクターだが「第三セクター鉄道」扱いされない会社。
京阪ホールディングス:親会社。