概要
TC第45巻に収録の「人間うつしはおそろしい」に登場する。
これを飲むと体内でばい菌が増殖して、増えたばい菌がやがて汗と一緒に流れ出し、汗が乾くとばい菌も空気中に混ざる。ばい菌が混ざった空気を吸い込むと、ばい菌を飲んだ人とそっくりになる病気にかかってしまう。使用時以外は密閉された試験管の中に保存されている。風味はのび太曰く「へんな味」。
具体的にどうやるのかは不明だが、戻すことも可能。
ストーリー
- 勉強しようという意欲がぜんぜんない。
- めんどくさがりで、根気がなくてだらしない。
- 注意力がたりない。いつもぼやっとしている。
- あやとりばかりやってないでスポーツもしなくては。
- もっとあらゆることにやる気を起こさないとだめだ!
「…と、先生はいったんでしょ、わかってんだ。いつもいわれているから」と長々と話したのび太は、顔を真っ赤にしたママに、「だれのことだと思ってるの!」と怒鳴りつけられ、いつもよりこっぴどく叱られることになった。
その後のび太が「今叱られながらつくづく考えた」と言いだしたので、頑張れば君も人並みになれるさと賞賛するドラえもんだったが、のび太の考えは「ぼくが人並みになるんじゃなくって、みんなをぼく並みにする、そんな道具はないの?」という斜め上のものであった。
「君の考えることはいつもどこかおかしいよ」と苦言を呈するドラえもんに、のび太は「世の中不公平なんだよ。同じ人間なのに、頭や体が強かったり弱かったり、こんなこと許せない」と訴えるので、ドラえもんはひみつ道具『人間うつし』を出し、のび太に口を大きく「あ~ん」と開けさせ、このばい菌を飲ませた。
これによって、「のび太病」が蔓延しみんなのび太そっくりになるというのである。
「さあ、街中にばい菌をばらまいてこい。」「いやな感じ。」
次の日になると、ママは「ごはん食べるの?めんどくさいなあ」「どうせまたおなかがすくんだから、食べるだけむだじゃないかしら」というので、パパもママも食事をしないで出掛けることになった。ドラえもんはのび太病がうつらないようにばっちりマスクをしていた(が、そもそもの口のサイズが大きいのでマスクのサイズが合っていない)。
学校へは全員三十分ほど遅れ、先生も顔を赤らめて、遅れてごめんなさいと謝っている。算数の時間になると、昨日教えたばかりの問題が誰ひとり解けなかった。先生も黒板の問題を解くことができないので、子どもたちから、先生のできない問題ができるはずがありませんと言われている。
のび太は「そのあとの授業もめちゃくちゃ。いやあ、世の中公平になったよ。これでくらしやすい社会になるぞ」と満足して、ドラえもんに報告していた。
しかし、ドラえもんが腹がへって目がまわりそうだよと訴えたので、のび太も給食を食べなかったことに気づき、ママにたのもうとしたらどっかへ遊びにいってしまっていた。
「無責任な!」「まるでのび太くんみたい。」
外に出ると、スネ夫は犬に追い掛けられてドブに「ボチャ」と落ちて大泣きし、ジャイアンはあやとりをし、ママは女の子となわとびをし、挙句「ごはんなんて作りかた忘れちゃった」と言う始末。
街中がのび太そっくりになった結果、街中が混乱してしまっていた。
何もかもが元通りになったあと、のび太は自分のやり方がまちがっていたと反省したので、ドラえもんは今度こそ勉強やスポーツに励むのか、と考えたが、のび太が考えたのは、「ばい菌を先生に飲ませて、ぼくに先生をうつす(つまり、頭のいい人間と同レベルにする)」というものであった。そのため、ドラえもんは「ちっともわかっていない」と渋い顔をし、腕を組んで座っていた。
余談
上述のとおり、ドラえもんは罹患しないようにマスクを着用していたが、ママを探しに外出したときは外している。ばい菌が繁殖し終わったのだろうか。
また、のび太は他人が自分と同じ能力になると平等になっていいと考えた結果この事態を引き起こしているが、のび太レベルでなくとも自分と全く同じ能力の人間ばかりだと個性がなくなり、能力の優劣は消え、競争原理も働かなくなり、張り合いのない世の中になり、社会は停滞する可能性がある。
ラストの先生にうつす発言にしても、一歩間違えれば小学校の教師レベルの知性の人間が街中に蔓延する可能性があるわけで、その場合生徒も同じレベルなので授業どころか学園生活自体が成り立たなくなる。
そういった意味では、かなり危険なひみつ道具と言える。
初期においてはママの顔がキテレツ大百科の木手みちこ(キテレツの母親)になるというミスが存在した(しかもちょくちょく元の顔に戻る)。単行本では修正されている。
ひみつ道具がばい菌であることでパンデミックを想起させるとして問題視されたか、現在もアニメ化はされていない。
関連タグ
日本じゅうがきみのレベルに落ちたら、この世の終わりだぞ!!:街中の範疇に収まっているが、この迷言を体現してしまった。