概要
それぞれが六道の衆生を救うとされる。ただし真言宗系と天台宗系では人間道担当の変化身が異なる。重複分を合わせて七観音という事も多い。
六道の衆生に対応する六観音、という概念は中国天台宗の開祖である天台大師・智顗の『摩訶止観』巻第二上が初出。
しかし対応する観音の名称は異なっている。
変化身の数ごとのカテゴリーとしては『観音経』(『法華経』第二十五章)の三十三普門示現から着想された「三十三観音」、チベット仏教における「百八観音」などがある。
チベットにも六道ごとの衆生を救う「観音の六つの変化身」という概念はある。観音菩薩以外の尊格にもみられる性質で『バルドゥ・トェ・ドル(チベットの死者の書)』には六道ごとの衆生を救う仏達が「六聖仙」として現れる。
ちなみに人間道担当の聖仙の名は「シャーキャシンハ(釈迦種師子仏)」だが、釈迦牟尼いがいにも「グル・リンポチェ」と呼ばれるニンマ派開祖パドマサンバヴァの別称でもある。托鉢用の鉢と錫杖を持つという姿も彼の像と一致する。
六道との対応
中国での六観音
地獄道:大悲観音
餓鬼道:大慈観音
畜生道:師子無畏観音
修羅道:大光普照観音
人間道:天人丈夫観音
天道:大梵深遠観音
『摩訶止観』では、それぞれの衆生の三障(仏道の実践と成就を妨げる三つの障害)を破ると記されている。ちなみに三障とは煩悩障(貪欲・瞋恚な・愚痴の三毒をはじめとする衆生の煩悩による障り)・業障(重罪である「五逆」と一般人も行いがちな「十悪」の悪行による障り)・報障(地獄・餓鬼・畜生の三悪趣に転生してしまうことによる障り)のこと。
日本での六観音
地獄道:聖観音
餓鬼道:千手観音
畜生道:馬頭観音
修羅道:十一面観音
天道:如意輪観音
寛信『伝受集』や實運『諸尊要抄』のように、日本での六観音と『摩訶止観』の六観音を同一視する説もある。重複する二つの変化身のうちでは准胝観音のほうが挙げられる。