それゆけアンパンマン
茶色のマントをひるがえし 世界の果てまで飛んで行け
泣いてる子供の友達だ
正義の味方アンパンマン
概要
1970年創刊の童話『十二の真珠』内のエピソード『アンパンマン』に登場する主人公「アンパンマン」のこと。作品としては力無き正義と隣人愛・自己犠牲について描かれた反戦・ヒーローアンチ物。
自身の戦争経験を元にして描かれ、戦う事よりもその戦いの被害でその日の生活もままならない民衆を救って欲しかったという自国への反感が反映されている。
それはヒーロー物というジャンルそのものへの反感にも繋がっている。自らの能力で壊した町を直したりその手助けをしたりせず、「力こそ正義」と言わんばかりに超常的能力を駆使して戦うだけ戦って去っていく、被害者へ目を向けていないような彼らの正義(戦争中に国がよく使っていた言葉)への不信感を当てつけた作風となっている。こうした経緯故か。当時はあまり人気がでなかった。
現在のアンパンマンはヒーローとしても活躍して、その上で復興活動も行うヒーローとなっている。
ヒーローと言っても悪者と戦うのが中心ではなく、パトロールで見つけた困っているみんなを助けるのがメイン。
戦う時もできれば事情を聞いてから。そして戦いを避けれるなら避ける。そんなこだわりが隙になって弱点を攻撃されることもあるけれど、それが彼の正義のヒーローとしての在り方だ。
戦わなくていいなら、それが一番いい。
でもそんなことを言ってられない場合もある。
初代アンパンマン詳細
その正体はアンパン顔のヒーローではなくただの空を飛べるだけのオジサンだった。颯爽と空をかける絵本のアンパンマンとは異なり、初代アンパンマンは薄汚いこげ茶色のマントを身にまとい、ヨロヨロとしか飛べないただの人間だったのだ。おまけに小太りで、顔も団子鼻のさえない外見である。
ばいきんまんをスーパーパワーで懲らしめる絵本のアンパンマンとは異なり、初代アンパンマンに出来ることは空を飛ぶことと、アンパンを焼くことくらいだった。アンパンマンは悪と戦う力が無かった。アンパンマンは人一倍優しく、人一倍正義感があるだけのただの人間でしかなかった。だからアンパンマンは、パンを焼いた。悪者を打ち倒す力が無い彼には、貧困や飢餓に苦しむ子供たちに手を差し伸べることくらいしかやれることは無かったのだから。
さえない外見から、アンパンマンはメディアにも取り上げられず、同じヒーローたちからもバカにされ、手を差し伸べた子供達からすらカッコ悪いと告げられた。それでもアンパンマンは弱音を吐くことは無かった。自分が弱くてみっともないことは、アンパンマン自身が一番知っていたからだ。
そして、ある日アンパンマンは某国で長きに渡る戦争が続き、子供達に食料がいきわたっていないことを知る。アンパンマンは必至でアンパンを焼いた。戦争を止められないのならば、せめていま苦しむ子供たちを助けるしかない。たくさんのアンパンを抱えて、アンパンマンは子供たちの元へと向かった。
空を飛んで駆けつけたアンパンマンは子供たちにアンパンを分け与えた。おいしそうにパンにむしゃぶりつく子供たちに、アンパンマンは告げる。
「私は何度でも、アンパンを運んでくるぞ」と。
子供たちは空に消えていくアンパンマンを見送った。世界一カッコ悪いヒーロー、アンパンマンは真の正義の味方として子供達を救ったのだ。
だが、そこに一発の砲声が轟いた。
直後、空の彼方から、一つの影が地上に真っ逆さまに落ちていった。
アンパンマンは、敵機と誤認されて高射砲に撃ち落とされた。
それ以来、アンパンマンはとんと話題に上らなかった。
銅像も記念碑も何も建てられることが無く、アンパンマンの物語は終わった。
だが、アンパンマンは死んだとは限らない。助けを求める人がいれば、アンパンマンはまた飛んでくるかもしれない。
なぜなら彼は、正義の味方だからだ______。
彼はかつて町の子供たちに向かい、「私はマンガにも描かれなければ、テレビに出ることも無い」と告げていた。その顔には哀しみでも自棄でもなく、笑顔の花が咲いていた。
それから3年後の1973年、絵本『あんぱんまん』が発売された。
顔は最早人間からかけ離れた単なるパンになってしまったが、顔をすべて失っても貧しい人たちのために働き続ける彼の姿は、多くの子供たちの心に残された。
今やアンパンマンは日本のみならず海外の子供達さえも魅了する一大コンテンツとなったが、自らが醜く、ボロボロの姿になることで、誰かの笑顔を作り続けるという精神は、大空に散った初代と何も変わらない。
今日もアンパンマンは、子供たちの笑顔を護っている。
本当の意味で愛と勇気しか友達のいなかった初代の魂は、後継者が全世界の子供たちと友達になることで、ようやく救われたのかもしれない。
まとめ
あんぱんまんとは元々貧しい人達やお腹が空いた人達にパンを分け与える小太り中年の話である。
そしてそれを踏まえた絵本第一作目の元祖あんぱんまんもアンパンマンはあんぱんを元にしたかわいい見た目になったが、それでも自分を犠牲にしてでも人々を助ける話である。
今ではアンパンマンのデザインも更にかわいい見た目になり、役目もあんぱんを配ることだけでなく困っている人達を助けるというように活動の範囲を広げ、現在に至る。
もちろんこれはフィクションである。
…そう、
この世界にあんぱんまんは実在しない。
当然、どんなに苦しい境遇の人達の前にも現れはしない。
作り話の世界に住んでいるアンパンマンは絵本やアニメの中の世界を救うことで精一杯なのだから。
だからこそ…
現実世界のことは自分達で互いに助け合いを。
誰にでも彼になる資格はある。
無理に大きなことや自分に無理なことはしなくていい。
小さな良いことからコツコツと。
まずはあなたの隣の困っている人から…
……現実世界のアンパンマンは君達さ!