概要半端ないって~!
事の発端は、2009年1月5日に行われた第87回全国高校サッカー選手権大会第4戦(準々決勝):滝川第二VS鹿児島城西戦であった。
鹿児島城西は、エース:大迫勇也(当時)の4試合連続2ゴールを含む一挙大量6得点を挙げて滝川第二に完勝(滝川第二はこの試合まで無失点を守り抜いており、元来は守備に定評のあるチームだったのだが、この試合では一気にそれを突き崩されてしまうこととなった)。
その後、敗れた滝川第二のロッカールームにカメラが入り、当時、同校サッカー部のキャプテンを務めていた中西隆裕が半泣きになりながらその気持ちをぶちまけた際に言い放たれたのがこの台詞である。
「大迫 半端ないって!もう~!!あいつ半端ないって!」
後ろ向きのボールめっちゃトラップするもん!
そんなんできひんやん、普通……そんなんできる!?
言っといてや!できるんやったら……」
(別の選手)「あいつ点取ったら喜べよな」
「喜べよ!」
(別の選手)「カメラの前ばっか行ってな」
「応援団の所行けよ!なんでコーナーフラッグ行くねん!
もうヤケやねん!コーナーフラッグ行くなよ!みんな城西…
(大迫が)また一面やし…
またまたまたまた2発やし…
1発にしとけば良かったやん!1発に!!」
敗戦の悔しさをにじませながらも相手の怪物染みたプレーを称賛する中西キャプテンの独特の表情やテンション、さらに「○○半端ないって」という改編のしやすい文章から、じわじわと人気が広まっていき、やがてネット上やSNSではこの台詞を改変したやり取りが多数見られるようになった。
pixivにおいても、中西選手が「半端ないって!」と言った瞬間をパロディ化したイラストが多い。
そしてその9年後……この台詞が再び大きな注目を浴びる時がやってきた…。
またまたまたまた決勝ゴールやし
2018年に開催されたロシアワールドカップグループリーグH組第1戦の日本VSコロンビア戦でのこと。
日本は前半開始早々にコロンビアのファールを誘ってPKを獲得して先制点を挙げることに成功、さらにこの時ファウルを取られた選手がレッドカードで退場処分を受けたこともあって数的優位に立った。
しかし、この後は上手く攻撃のチャンスを作れずに逆にコロンビアの猛攻に押される形となり、逆に前半39分に同点ゴールを奪われてしまう。
それでも、後半に入ると数的不利にあるコロンビアの選手たちが体力を消耗して運動量が大幅に落ちたことや、日本側の縦パスを組み込んだ波状攻撃が功を奏して勢いを取り戻し、徐々に相手のゴールを脅かすようになる。
そして、後半の28分、遂にその時は訪れた。
香川真司との交代で途中出場した本田圭佑のコーナーキックを大迫がヘディングで見事に合わせて待望の追加点を獲得!
この歓喜の瞬間、TwitterをはじめとしたSNS上でこの言葉が飛び交ったのは言うまでもないだろう。
「大迫半端ないって!!」
ファンの興奮は相当なものだったようで、一時はTwitterのトレンドに「#大迫半端ないって」がランクインするという事態にまでなった。
試合は、この大迫の決めた2得点目が決勝点となり、日本はコロンビアに見事勝利。
4年前のブラジル大会で1-4で惨敗した雪辱を見事に果たすことに成功し、初戦を白星で飾るという最高のスタートを切った(さらに、日本を含むアジア勢がワールドカップ本戦で南米勢に勝利したのもこの試合が大会史上初である)。
なお、この決勝点にフォーカスされがちだが、大迫が半端なかったのはゴールだけではない。というのも、このゴール後にはピンチのシーンで最終ラインPAまで下がってハメス・ロドリゲスのシュートをDF顔負けのディフェンスで止めるなど、守備面でも彼がいなかったらとなるほどの大活躍で勝利に貢献した。
その後も日本は第2戦のセネガル戦を2-2のドローに持ち込むなど健闘、最終戦のポーランド戦では0-1で惜敗し、勝ち点と得失点差でセネガルに追いつかれたたものの、フェアプレーポイント(受けた警告の数をポイント化したもの)でセネガルを僅かに下回ったことでグループ2位が確定、辛くも2大会ぶりかつ今大会アジア勢唯一の決勝トーナメント進出を決めた。
余談や…全部余談や……
- 件の発言が飛び出した経緯について、中西氏は「『もう泣かんとこう』って、みんなに声掛けたんです。その後にテレビカメラが入ってきて、和ませようという気持ちもあって、本音ではありますが、あの言葉が出た」と語っている。とはいえ、本人もまさか自分の発言が全国規模でここまで受けてしまうとは思っていなかっただろうが。
- 大学時代は「『大迫半端ない』の人じゃない?」と声を掛けられたこともあり、サッカー部の飲み会等で先輩から「大迫のところを俺の名前に換えて言ってみて」等と言われてやらされたこともあったという。
- ワールドカップロシア大会でも、試合中にこの「大迫半端ないって」と書かれた応援用の横断幕が映し出されたことがあり、それを目にしたNHKの鳥海貴樹アナウンサーが「今日は半端ないヘディングゴールがありました!大迫!!」と言う一幕があった。
- 今大会、2試合目のセネガル戦でGKの川島永嗣自身の真正面に飛んできた低いシュートを、キャッチせずにパンチングではじき、そのボールが目の前にいた相手のエースFWの足に当たって先制点を許した。この試合の後、twitterで「『大迫半端ないって』の対義語に『川島それはないって』」「キャッチするボール、めっちゃパンチングするもん」と拡散されてしまった。
- カップヌードルのCMでは、プロテニス選手の大坂なおみを起用したパロディが製作された。
- ちなみに、監督も「あいつ、絶対将来(日本)代表になるな」「俺握手してもらったぞ」と自チームの選手たちをフォローするような形で話題に乗っかており、最終的には監督の「(この試合以降は)城西を応援しよう」とスポーツマンシップの鑑のような形で映像が締められている。