概要
待ちガイルとは、ガイルの伝統的な戦法である。
ガイルならどの作品でもできるが「卑怯」みたいなニュアンスで使われたら初代スト2やダッシュ時代を指す。
飛び道具ソニックブームや中足牽制で飛ばせて対空という「飛ばせて落とす」の一種だが、リュウやケンと違い、後出しジャンケンの要領で相手の行動を潰せるため色々と物議を醸した。いわゆる「ガン待ち」の開祖でもある。
やり方
初代ガイル(スト2)
相手に対して後ろ斜め下にレバーを入れ、以下のように対応する(コマンドは1P側の時)
- 相手が正面から近づいてくる→しゃがみ中足(↓+中K) or ソニックブーム(←ため→+P)
- 相手が飛んで近づいてくる→サマーソルトキック(↓ため↑+K) or 通常技対空(しゃがみ強P等)
- 相手が待ち戦法に切り替える→ソニックブーム
これで、ほぼあらゆる状況に対応可能な戦法の出来上がり。
なお待ちガイル同士の対戦動画が有名なため誤解されがちだが、”ソニックで飛ばせてサマソで落とす”は誤り。溜め時間の関係でサマソは間に合わないので、ソニックに前ジャンプを合わせられたら遠強Kやしゃがみ強Pで対空する。サマソは牽制のしゃがみ中Kをジャンプ回避された際に撃つ。
サマソ漏れで出る空中弱Kも空対空として成り立つので、やはり隙が無い。
強さの理由
- よく分からんけど、ソニックブームを前ジャンプで避ければ良くね?
- 硬直が異様に短いので、前ジャンプ見てから対空が間に合う
- じゃあ地上からじわじわ近づこうよ
- ソニックをガードすると後退&不利フレームでなかなか前進できない
- それでも近付けた!ここから反撃だ!
- 異様なリーチのしゃがみ中Kで怯まされて、追撃のソニック
- ならしゃがみ中Kを出される寸前に前ジャンプしよう
- こっちも硬直が短いのでサマーソルトキックで迎撃余裕、起き攻めのソニック
- 竜巻旋風脚ならソニックをすり抜けつつ突進できるぞ!
- しゃがみが基本の待ちガイルには当たらない、サマソやしゃがみ強Pで迎撃されてソニック
- こっちもガン待ちしてやる!
- ソニックブーム! ソニックブーム! ソニックブーム!(ガイル側からすれば近づく理由がない)
- 波動拳で遠距離戦だ!
- ソニックで相殺しつつ避ければいいだけ、体力リードされていると時間切れでガイルの勝ち
- なら体力リードしてからガン待ちすればいいよね?
- 開幕ソニックをガードしたら削りでアウト、ジャンプで避けても対空されてアウト
...お分かりだろうか、初代スト2でコレをやられるとダルシム以外のキャラは近づくことも飛び込むこともできず一方的に負けてしまうのだ。ゲーセンで禁止令を出されたという逸話まである凶悪な戦法である。
波動拳のくだりだが、ソニブと波動拳の硬直はソニブの方が短いため距離が近いとガイルの牽制が確定、遠くてもガイル有利の読み合いになる。連打は何の対策にもならない。
ガードされても一時しのぎの波動拳と違い、ソニブはガードさせたら投げに行けるのでリターンも大きい。いわゆる攻めガイルという奴で、知ってる相手には波動拳連打は通じない。
(ダッシュ以降の波動拳は強いので、それなりに対策になる)
後に研究が進んで色々と対策が編み出されたが、それに至るまでに数多の初心者の心をへし折ったのは言うまでもない。
一応補足しておくと当時はスト2人気絶頂期&格ゲー黎明期で、昇竜拳や波動拳が出せないレベルのプレイヤーはゴロゴロいたので「対策しない奴が悪い」の風潮はなかった。そんな環境でこんなクソ戦法をされたらキレるのも当然である。
格ゲー文化が根付いた現代でも、ガチ初心者相手に待ちガイルはやめた方がいいだろう。
弱点
全体で見るとガイル側のミスに依存したり、それなりに高度なテクを要求されるため、当時の待ちガイルが如何に凶悪だったのかがうかがえる。
- 封印バグ
初代スト2特有のバグでガイルは被弾すると一定時間必殺技を発動不能になる。通常技を一発出せば解除できるので即弱Pを出せばいいが、解除法を知らないと詰むので注意しよう。なおダッシュで修正された。
対ガイルの筆頭。リーチが長いのでしゃがみ中Kの射程外から攻撃でき、ソニブもスライディングで回避可能。だいぶきついのでこの場合は攻めガイルに戦法を変えることになる。
当初は「詰み」と言われてたが、後に研究が進んでガイルのしゃがみ強P、遠強Kをジャンプ小or中Kで潰せることが分かった。ガイル側も近中Kで対策できるが、タイミングが難しいうえこっちは鷹爪脚(ジャンプ↓+K)で潰される。
ソニック読み前ジャンプが決まれば春麗有利の展開になり、ジャンプ小or中Kが入ればそのままダウンを取ってハメに持ち込める。なので初代スト2のやり込みが進んだ時期には相性五分とまで言われていた。
- ザンギエフ(立ちスクリュー)
当初圧倒的不利と言われたザンギエフだが、後にスクリューパイルドライバーを立ったまま繰り出す「立ちスクリュー」が編み出され、一瞬の隙を突いてハメに転じるプレイングが可能になった。
しゃがみ中Kの先端がギリギリ吸い込みの範囲外なので徹底されると厳しいが、ガイル側からすれば凄まじいプレッシャーの中で立ち回ることになる。熟練プレイヤーともなると、動画だけで知ったつもりになった”にわか待ちガイル”は絶好の鴨なんだとか。
ザンギエフ「何を勘違いしている。狩るのは俺で、狩られるのは貴様だ」
- しゃがみ中Kの発生負け
ガイルのしゃがみ中Kは発生8Fでこれは遅い方。強いと感じるのはブーツ部分に食らい判定がないためで、足首あたりがめり込む距離だと負けることがある。
特にダウン系の足払いと相打ちor負けになった場合は起き攻め+封印状態でガイル側が大きく不利になる。初代スト2は小足連打など壊れコンボが多いので、状況次第ではそのままハメられて死ぬ。
- しゃがみ中Kに差し返し
しゃがみ中Kは攻撃判定が消えた後も食らい判定が残るので、空振りした直後に足払いをされると一方的に食らってダウンする。そこから起き攻めされて死。
- ソニックブーム後の攻防
ソニブ直後にサマソは撃てないので、読みで前ジャンプされた場合は通常技対空による読み合いが発生するのだが、ここでミスると3段や小足連打といったコンボを食らう。状況次第ではピヨって死。春麗以外でも相手の技量次第でワンチャンはある。
- ガイル側のミス
中足を出すタイミングだったり、対空技の使い分けだったり、溜め時間の把握だったりと意外と難しい。クソ戦法に見えて意外とやり込みを求められるのだ。処理落ちもあるので必ずどこかでミスはする。
- 同キャラ
初代スト2だと起こり得ない現象だが、同キャラだとタイムアップまで決着の着かない千日手になる事も。相殺し損ねたソニック一発が勝負を決める事だってある。
昨今の待ちガイル
初期には猛威を振るったものの、実のところ使えば絶対に勝てる戦法ではなかったりする。上でも触れたが当時は昇竜拳を安定して出せる時点で尊敬される環境だったので、現在の猛者相手に待ちガイルはそう易々と通じないと思われる。
しかしCPU戦ではかなり強く、昨今のリマスター作品で「初めてスト2をやる」という人には非常にオススメできる戦法である。中足、サマソ、ソニックブームの駆け引きで当時のプレイヤー達がどうしてストⅡに夢中になったのかが理解できるだろう。
最近のストリートファイターでは弾無敵の必殺技、削りダメージ無効のブロッキング、対空ずらし等の対策も増えたため、そこまで凶悪な戦法ではなくなっている。とは言え、上手い人が使えばまだまだいける。特に語源となったキャラクターであるガイルはストリートファイターシリーズの新作が発表されるたび、今もプレイヤーの間でアレンジされながら戦術の一つとして使われている。
そうしたアレンジ待ちガイルの中でも特に有名な例の1つは、プロゲーマー・ウメハラの操るガイルが2018年3月のストリートファイターV対戦イベントにて披露し勝利した「タメを放棄しレバーニュートラル状態の棒立ちで待つ」戦術だろう。あくまでプロレベルの操作技術と駆け引きを前提に成立する作戦であり、並のプレイヤーではマネしてもまず勝てないやり方なので詳細はここでは割愛するが、ともあれ、「ガイルは立ったままでも待てる」(こともある)のだ。
他の作品では
ガイルのような『←ため→で出る優秀な対地攻撃』と『↓ため↑で出る優秀な対空攻撃』を持つキャラクターは俗に『溜めキャラ』と呼ばれ、同様に待ちガイル戦法が(一応)可能であることが多い。
しかし開発陣には「ガン待ち」はヤバいと周知されており、各々システムで対策されているのが常なので、昨今の格ゲー事情から考えて必ずしもこれが有効とは限らない。
『溜めキャラ』側にも待ちガイル戦法以外の戦術が取れるように、他に必殺技や特殊な能力が持たされている事が多く、「あくまで戦術の一つとして取れるようになっている」程度のバランスである場合が多い。
溜めキャラの一覧
(作品名50音順+同作品内キャラ名50音順、作品とキャラ記事の両方があるキャラ、かつ待ちガイル戦法可能なキャラのみ)
- アカツキ電光戦記 - 魏、エレクトロゾルダート、ムラクモ
- アルカナハート - 廿楽冴姫、アンジェリア・アヴァロン
- アンダーナイトインヴァース - バティスタ
- ギルティギア - ヴェノム、メイ
- KOF - アッシュ・クリムゾン、ハイデルン、ロバート・ガルシア(KOF99~2000)
- ストリートファイター - ガイル、ディージェイ、ナッシュ、ブランカ、レミー
- 堕落天使 - クール(備考:格闘スタイルが「チキン」)
- ペルソナ4 THE ULTIMATE - 桐条美鶴
- etc...
関連イラスト
ご覧のように待ちガイルのいる風景や、待ちガイルの様にしゃがんでいるイラストにこのタグが付く。