概要
作州宮本村の浪人で、お杉の息子(バガボンドでは実子ではなく妾の子)。宮本村時代には武蔵と好んでつるんでいた。戦で名を挙げようと、武蔵が村を出る切っ掛けを作った。許嫁であるおつうのことが好きだったが、彼女は武蔵に恋い焦がれており、そのことは又八もうすうす気づいていた。
17歳の時に武蔵と共に関ヶ原の戦いに志願するも、彼らの所属していた西軍は1日で壊滅し、重傷を負って落ちのびる。
初期の合戦では一度の戦闘で数人ほどの山賊を一太刀も受けずに斬り殺していたが、情夫を続けるうちに次第に弱くなってきている。結果、水をあけられる形となった武蔵に対して時おり嫉妬心を露わにしている。
狡猾な面があり自らを強く、大きく見せようとすると同時に、英雄や豪傑への憧れも強い。大坂で普請中にひょんなことから佐々木小次郎宛ての印可状を手にすると小次郎の名を僭称して威張り散らすが、本人に見つかってしまいボコボコにされた(バガボンドでは小次郎が聴覚障害を持っているのをいいことに取り入って金魚の糞になっていた)。
だが、酒と女を覚えて詐欺を働いてきた都の日々を振り返る中で、自身が欺瞞や虚栄で塗り固められた人間であるということを強く恥じている。
原作では、名を挙げるために徳川秀忠暗殺に手を貸すも失敗し、沢庵に諭され涙ながらに改心。武蔵及びおつうとも和解した。そして、かつて愛人関係にあったお甲の娘・朱美と結婚し、巌流島へ赴く武蔵を見送る。
大河ドラマ「武蔵 MUSASHI」では、鉄砲商人として成功を収めるが、その存在が江戸幕府に脅威を与えると警戒した柳生宗矩の放った刺客に暗殺される。
バガボンドでは、年老いた後、路傍で武蔵と小次郎の話を講談のように語り継いでいる。
立ち位置からダメ人間の典型例とされることが多く、事実吉川版の連載中には作者の下に「本位田家の子孫だというだけでバカにされるようになった、どうしてくれる」と抗議の手紙が来たほどであった。
しかし、剣禅一如として己の人生を最後まで武に捧げた武蔵とは対照的に、悪い意味で「人」であり続けた又八は、ある意味本作のもう一人の主人公と言っても過言ではなく、吉川版においてはヒロインのおつう以上にキャラが立っているといえなくもない。