松倉勝家
まつくらかついえ
大和五条藩主や肥前島原藩主を務めた松倉重政の嫡子。島原において父共々圧政を行い島原の乱を誘発させるが、乱後に処刑された。1597年~1638年。諱は重次とも。
元は大和国の戦国大名筒井氏の家臣で勝家の曾祖父・松蔵秀政や祖父・松倉重信は筒井順昭・順慶父子に仕えていた。特に重信は島左近と共に「筒井の左近右近」と謳われた名将だった。
筒井家の当主が順慶から養子の定次(順昭の弟である慈明寺順国の子)に代替わりしてから豊臣秀吉によって大和郡山から伊賀上野に転封される。この時に父・重政は大和に留まり秀吉の直臣となった。勝家が生まれてから3年後に発生した関ヶ原の戦い後、重政は徳川家康から大和五条二見城主に任じられ大名となった。重政は大坂の陣でも後藤又兵衛らと激戦し活躍したが、勝家が父に従って参陣していたか留守居だったかは不明。
さて島原半島にある日野江藩はキリシタン大名の有馬氏が当主を務めていたが、当時の藩主有馬直純はキリシタン弾圧を嫌がり、幕府の了承を得て日向国縣藩(宮崎県延岡市)に転封されていた。
その後、1616年に有馬氏の後任として重政が五条から転封されることになり勝家も父に従った。
五条藩主時代は名君との評価もあった重政だったが、島原に来てからは人が変わったように弾圧をするようになった。
まず日野江城が手狭であることからより広大な島原城に本拠地を移し日野江藩は島原藩となる。
藩の実際の石高が4万石程度であるにもかかわらず幕府に10万石と報告し、それを取り繕うために重税をかけた。
更に、ルソン遠征を計画したり城下町の整備、参勤交代の金、島原城の改修など、外様ゆえのコンプレックスから幕府に熱烈なアピールをしようとし、その財源を領民からの税に求めた。
重政はそういう意味では仕事熱心と言えなくもなかったが、その熱心さは幕府に対して気に入られることのみに向けられ、領民の負担には全くの無頓着であった。
さらにキリスト教に対しても弾圧を加えている。意外にも重政は南蛮貿易の利もあって最初は黙認していたが、幕府からの圧力もあり弾圧に本腰を入れた。これ自体はどこの領地でも同じであったがこれも他の領地を超えるひどさだったという。
こうした弾圧については当時は日本に合法的に居留していた外国人の日記類だけでなく、日本の記録からも見られ、誇張だけでは到底説明できずほぼ事実と考えられている。
1630年に重政は急死し勝家が藩主を継いだが勝家は父以上の恐怖政治を行う。
勝家はたとえ小さいものでも税をかけたとされ、井戸ができたら井戸の税、子供ができたら人頭税、人が死んだら遺体を埋める穴に税や住宅税などありとあらゆるものを課した。
そうして納税できなければ人質を取った上で水牢(時には妊婦を入れたという話もある)や蓑踊り(蓑を人にまいて火をつけ踊らせる)という残虐極まる拷問を行ったという。
どんな拷問をしたところで既に領民は出せる財産すら何もない状態であった。
拷問をすればそれでも金が出てくると思ったのか、金が出てこないことを承知で見せしめ目的だったのかは彼のみぞ知る所であるが、いずれにしても勝家は金を集める最低限のセンスさえもなかった。
また、父と同じくキリシタンにも過激な弾圧を加えたがために反攻されてしまう。
これが世にいう島原の乱(島原・天草の乱)である。
島原の乱は老中松平信綱が鎮圧、勝家は津山藩主森長継に預けられたが、松倉屋敷から農民の死体がでてきたことで残虐政治が表に出た。
その後、江戸の森家屋敷で斬首にさせられた。享年42。
重税や払えなかったものへの拷問を行い民を苦しめたとしてまた、一揆の原因として、江戸時代で唯一、武士の名誉である切腹を許されずに不名誉な斬首で処刑された大名となった(他に斬首に処された大名は有馬晴信がいたが、キリシタン大名ゆえに切腹を選ばずに斬首を選んだ)。
これは幕府が乱を起こした原因として以外で上記の恐怖政治を考えた末できわめて重罪と判断したためである。
また、松倉親子の暴走も、元をたどれば幕府側がキリシタン弾圧の甘さを叱責したり、様々な松倉親子の事業案を褒めたたえてきた幕府側の落ち度によるところもあり、その点の負い目もあったという説もある。
ちなみに天草領主・寺沢堅高は領地一部没収で済んたが精神を病んで自殺。
島原・天草の領主は二つの家とも断絶したが、勝家の長弟である重利の家は300俵の旗本として続いた。
島原はのちに赴任した高力忠房が善政をしき、復興はなったが二代目・隆長が税を重くしたため改易。
奇しくも隆長と勝家は二代目で重税を行ったために改易されてしまった人物である
島原はその後深溝松平氏、戸田氏を経て先ほどの深溝松平氏が再び治めることになり明治を迎える。
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第15章-1 亡命者
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