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極限まで削ぎ落とした体に、鬼が宿る。

そのうまのなはらいすしゃわー

極限調教で最高の状態に仕上がったライスシャワーを表したフレーズ。出典はJRAのCM「The WINNER 天皇賞(春)」。
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93年 天皇賞(春)。

極限まで削ぎ落した体に、鬼が宿る。

“王者”メジロマックイーンの三連覇を阻んだ、漆黒のステイヤー。

悪役(ヒール)か、英雄(ヒーロー)か。

悪夢か、奇跡か。

その馬の名は──


ライスシャワー


※JRAキャンペーンCM「The WINNER 天皇賞(春)」


概要編集

2012年JRAが公開したCMシリーズ「The WINNER」のうち、GⅠ天皇賞(春)」PR用に作られた作品で使われたフレーズ。


1993年の勝ち馬「ライスシャワー」の当時の状態を、一文で端的に表現している。


PIXIVでは、このCMをモチーフとしたイラストにタグがつけられており、特にウマ娘ライスシャワーのものが目立つ。


「極限まで削ぎ落とした体に、鬼が宿る。」状態とは?編集

1993年の春の天皇賞は3連覇を狙うメジロマックイーンが圧倒的に本命視されており、骨折からの復帰戦となるステップレース「産経大阪杯」(GⅡ)をレコードで圧勝していて、まさに万全な状態だった。


一方のライスシャワー陣営は有馬記念での惨敗のリベンジに燃えており、飯塚好次調教師と主戦の的場均騎手はマックイーンに打ち勝つ為に入念な準備を行った。


京都競馬場の3200mだけに照準を絞り、そこへピークを持っていくために使うレースを逆算。まず、2500mのハンデ戦GⅡ「目黒記念」を選び、厳しいレースを経験させて精神力を鍛えた。出走時の馬体重は448kg。

このレースでは小柄なライスには辛いトップハンデ59kgを背負い、GⅢダイヤモンドステークスで芝3200mの日本レコード(当時)をマークした強敵マチカネタンホイザとマッチアップ。馬格と斤量の差が響いて2馬身半千切られたが、ライスの闘志に火をつけることが出来た。


次走のステップレースにはGⅡ日経賞を選択。出走時の馬体重は6kg絞って442kg。別定戦の2500mで目立った強敵はおらず、疲労が残らないように良い雰囲気で楽しい競馬を経験させた。斤量は1kg減の58kgだったが、ライスはほぼ馬なりで楽に走り、苦労なく勝利。


そして、ここから打倒メジロマックイーンのため、天皇賞に向けて極限の調教が始まった。美浦のダートコースでひたすら厳しく追い、叩いて叩いて、絞れるだけ絞り続けた。併せ馬ではマックイーンのロングスパートにしっかりついていけるよう、ゴール板を駆け抜けた後もムチを入れて追い続けた。


傍から見ていた者から「馬を壊す気か!」という言葉が飛び出すほどの過酷さだったが、並外れた精神力、闘志の強さを持つライスはその調教に耐え抜いた。穏やかだったライスの眼光は日に日に鋭くなり、だんだんと猛獣のような迫力が滲み出てくるようになってきた。やがて、うっかり手を差し出したら指を食いちぎられるのではないかと思える程の、殺気のようなものが漂い出す。最終追い切りの頃には威風堂々たる姿となり、肌も神々しいほどに輝いていた。


レース当日の馬体重は、日経賞から更に12kgも絞った430kg。肋骨が浮き出る程に痩せた腹には鋼のように強く、それでいて靭やかな筋肉がついていた。肩が盛り上がり、引き締まった腰はパンと張っている。まさに「極限まで削ぎ落とした体」となっていた。


的場騎手が馬房に向かうと、ライスは頭を低く下げ、歯を鳴らし、落ち着き無く前脚で地面を掻き続けていた。その眼は不気味な輝きを放っており、的場騎手はライスの全身から迸る気迫に圧され、初めて馬に「恐怖」を感じたという。馬産農家の家に生まれ、幼い頃から馬と共に育ち、過去8000頭以上の競走馬に跨ってきた的場騎手が…である。それは、あたかもライスシャワーに《鬼》が宿ったかのようだった。


本馬場入場の後、メジロマックイーンは珍しくイレ込み、ゲート入りを嫌がり続けた。その様子は、まるで鬼気迫るライスシャワーのプレッシャーに怯えているようにも見えた。


レースが始まると、ライスは的場騎手の心を読んでいるかのように無駄なく動き、マックイーンの後ろをしっかりと追走。第3コーナーでマックイーンがロングスパートを仕掛けた瞬間、的場騎手のゴーサインに反応して外側後方3/4馬身差程をピタッ!と追走。直線に入ってムチが入ると、マックイーン、メジロパーマーの2頭のスパートを物ともせずに外から並びかけ、それを上回る鬼脚で一気にかわし、千切り捨てた。


残り1ハロンで的場騎手が追うのをやめる程の圧勝であり、三連覇に手をかけた“王者”メジロマックイーンの最も得意な走りを正面からねじ伏せた完璧な横綱相撲。しかも勝ち時計はレースレコードを1.6秒更新する3:17.1。


レースを終えてヘトヘトのライスシャワーに対し、的場騎手は優しく首を撫でて「ありがとう。ご苦労さん」と声をかけた。馬房に戻ると、ライスはホッとしたような顔をした。そこに《鬼》の面影はもう微塵もなく、いつもの穏やかで優しい眼差しが戻っていた。


「悪役(ヒール)か、英雄(ヒーロー)か」とは?編集

ライスシャワーは前年の菊花賞で無敗二冠馬ミホノブルボンの三冠を阻止しており、更にメジロマックイーンの史上初同一GⅠ3連覇という大記録も阻止した。この後、極限調教の反動なのかすっかり調子を崩してしまい、勝てなくなってしまう。


すると、「大記録を阻止したのは嫌がらせだったのか!」などと言われるようになり、ライスシャワーは祖父ロベルトのように悪役(ヒール)のような扱われ方をするようになっていった。


一方で、ライスシャワーは飯塚調教師にとって初の天皇賞馬であり、オーナーの栗林家にとっても天皇賞馬は1962年クリバン以来、春の楯は1960年クリペロ以来という久々の快挙。また、関西馬優勢の時代にあって、関東の競馬関係者にとって関東馬ライスシャワーが関西の“英雄(ヒーロー)”だったブルボン、マックイーンを倒したことは、大いに喜ぶべきことでもあった。


ユートピア牧場(※)の育成牧場に過ぎず訪れる人も殆どいなかった「大東牧場」(千葉県)は、“名馬ライスシャワーの牧場”として一躍有名になり、競馬ブームの中でマスコミや競馬ファンが連日訪れるようになった。ライスが休養に訪れている問などは、ファンサービスが大好きなライスのおかげて牧場全体が明るい雰囲気に包まれた。


ライスシャワーのそばにいる人にとって、ライスシャワーは間違いなく“英雄(ヒーロー)”そのものだった。


※ユートピア牧場はライスシャワーの生産牧場。

関連項目編集

ライスシャワー 的場均 JRAの本気(CM) 天皇賞(春)

悪役 ヒール 英雄 ヒーロー 悪夢 奇跡


ビートブラック……このCMが放送された2012年の天皇賞(春)の勝ち馬。

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