毛利隆元
もうりたかもと
前半生
1523年(大永3年)、安芸毛利氏当主・毛利元就とその正室・妙玖との間に長男として生まれる。幼名は少輔太郎。
天文6年(1537年)当時毛利氏が従属していた周防の戦国大名・大内義隆の元に人質として送られ、また同年中に元服も果たし、義隆から一字を賜り「隆元」と名乗った。以降、隆元は大内氏に仕える武将の一人に加えられると共に、毛利氏もこの人質関係を通して、大内氏からの絶大な信頼を得る事となる。
人質とはいえ、山口における隆元の暮らしぶりは優雅なものであり、また後に岳父となる内藤興盛や陶隆房(晴賢)ら大内氏の家臣らとも親交を深め、さらに優れた知識と教養を身につけていくなど、その後の人格形成においても多大な影響を与えるものとなった。
天文9年(1540年)に実家への帰還を許され、翌々年の月山富田城の戦いにも父・元就と共に従軍。その後天文15年(1546年)に元就が隠居を表明したのを受け、家督を相続して毛利氏第14代当主(第53代とも)となる。
しかし人質生活の影響か、必要以上に覇気のない性格となってしまった隆元に実権を完全に委譲するのは不安があったのか、これ以降も元就が実権を握り続ける事となる。また当の隆元自身も、実権の移譲を辞退したとも伝わっており、こうした人柄を不安視した元就は老臣・志道広良に隆元の訓育を任せる事となる。
当主としての活動
天文18年(1549年)、大内義隆の養女(内藤興盛の娘)である尾崎局と結婚、両親がそうであったように隆元もまた、終生彼女を深く愛し側室を持たなかった。
翌天文19年(1550年)に毛利家中で専横の限りを尽くした井上元兼とその一族が粛清を受けると、隆元は新たな毛利家中の行政官僚組織として、側近の赤川元保を筆頭とした直属の五奉行制度を発足させた。とはいえここでも主導権は元就の側にあり、また親隆元派の官吏達と親元就派の武将達との対立により、当初は必ずしも狙い通りに組織が機能した訳ではなかった。
天文20年(1551年)、大内義隆が陶隆房により自害に追い込まれる(大寧寺の変)と、隆元はこれを「虎狼之心」と罵り、当初より隆房との交戦を強硬に唱えた。対して元就は当初、戦力に不安のあった事から交戦に対して慎重であったが、これに対して隆元は重臣たちを動かし、家中に対して陶氏の横暴無慈悲ぶりを喧伝する事に務め、やがて元就の心中も交戦に傾いていく事となる。
そして弘治元年(1555年)、父と共に旧友の晴賢(天文21年に隆房より改名)を厳島の戦いで滅ぼすに至るのである。
その後の防長計略で大内氏を滅ぼし、その旧領の大半を手中に収めると、出雲の尼子氏に応戦する元就に対して、自身は豊後の大友氏の侵攻に対応。弟・隆景の支援を受けつつ、これを撃退することに成功した。
一方で同時期には元就が再び隠居を宣言、隆元への完全な政権移譲を図ろうとするが、この時もまた隆元からこれを拒絶されており、以降も元就と隆元の二元体制が亡くなるまで続く事となる。
吉田郡山城の戦い以降、毛利氏は中央との繋がりを深めつつあり、永禄2年(1559年)には元就との連署で正親町天皇の即位料を献納し、従四位下大膳大夫に任じられると、翌永禄3年(1560年)には室町幕府第13代将軍・足利義輝より安芸の守護に任じられた。
これ以降も亡くなるまでの3年間に備中・備後・長門そして周防の守護職にも任じられ、これにより毛利氏は中央政権より正式に中国地方の大名としての立場を認められたと共に、従来の国人領主連合という形から、戦国大名としての支配体制へと急速なを脱皮を果たしていく契機ともなった。
不慮の死
永禄3年の尼子晴久の急死、さらに幕府の仲介による大友氏との和睦を経て、毛利氏は尼子氏討伐に全力を傾けるようになっていく。隆元もまた尼子攻めに参陣すべく出雲へ向かっていたが、その途上で毛利氏傘下の備後国人・和智誠春からの饗応を受けた直後、安芸の佐々部で急死した。時に永禄6年8月4日(1563年9月1日)、死因は原因は食中毒とも毒殺とも言われるが、正確なところは未だ定かではない。
41歳という働き盛りでの息子の死に対し、元就の悲嘆も尋常なものではなかったとされ、前出の和智誠春らのみならず、隆元の腹心であった赤川元保らまでもが、後に隆元暗殺の疑いをかけられ誅伐されている。
嫡男である幸鶴丸(毛利輝元)はこの時点でまだ11歳と幼く、齢60を過ぎた元就は輝元が家督を継いだ後も引き続き後見役として、毛利氏を率いていく事となる。
現存する書物などから推測されるに、温厚で篤実な人物であったとされる。人質生活の間に培った優れた教養と知識を有しており、また父と共に月山富田城の戦いや厳島合戦などに参加し、北九州の雄・大友氏相手にも激しい攻防を繰り広げるなど、武将としても優れた素質を持っていた。
ただ、一般的な認知度としては地味の一言に尽きてしまう。働き盛りでの急死した事もさることながら、様々な面で有能な父や弟たちの存在もまた、そうした認識に多分に影響を及ぼしている。
後世「謀神」と称され戦国時代最高峰の策略家である父・元就をはじめ、生涯不敗を誇る猛将・元春、毛利水軍を統率し豊臣秀吉から一目置かれた智将・隆景といった弟たち・・・そのような周りを見渡せばチートだらけの一家の中、隆元は確固たるアピール要素がこれと言ってなかったのも事実であった。
事実、当の隆元も積極的な自己アピールをしないばかりか自己卑下が強く、他の家族たちへの強い劣等感に苦悩する一面も持っていた。折に触れて「自分は生来、無才覚無器量である」と自嘲的に記していたり、他の兄弟から除け者にされているのではないかと被害妄想的なものも持ち合わせていた。
そのような性格から父・元就をして「優柔不断で武将としての資質に欠けている」と評しており、これも完全な実権移譲が行われなかった理由の一つとされている。
そんな隆元の真価は、主に財務・内政の面で発揮されていた。皮肉にもそれが明るみに出たのは隆元の死後であり、彼が亡くなってから毛利氏の収入が落ち込んだ事は、彼の働きにより毛利氏の財政が回っていた事、ひいては元就をはじめとする毛利氏の邁進もまた、その働きなしにあり得なかった事を如実に表すものであった。
また防長経略の後、大内氏の旧領を統治するのみならず、大内氏が行ってきた勘合貿易の再開を図るべく、隆元の主導で勘合札(割符)を山口で入手し、商業取引を進めていた事も明らかになっている。
その性格や立場から、生前お世辞にも仲が良かったとは言えない毛利三兄弟であるが、隆元の死後に明るみに出たこれらの縁の下の力持ちぶりを知って以降、自家を優先しがちだった元春・隆景も兄に対して敬服し、一層毛利本家を支えるべく尽力していく事となる。
以上のように、彼の優れた財務・内政能力は他の優秀な家族にも十二分に対抗できる能力であった。
元就や弟たち、何より隆元自身がこの事実を早々に理解できていたならば、もう少し違う形で生前評価されたかもしれず、歴史ファンの中には、彼が早死にしなければその後の毛利家の舵取りは変わっていたかもしれないと考える者も少なくはない。
また芸術の素養もあったようで、雪舟の影響を受けたのか力強い筆使いの墨絵を描いており、現代にも遺っている。
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