概要
法の暗黒時代とは、「逆転裁判4」以降度々取り沙汰されている逆転裁判シリーズのテーマであり、作品内の日本における法曹界の闇でもある。これに深く切り込んだのが「5」である。
事の発端は、「4」の7年前に起きた「弁護士である成歩堂龍一が、捏造された証拠品を法廷で提出した事件」と、その1年後に起きた「検事である夕神迅が、希月真理を殺害した事件」に始まる。弁護士と検事双方で立て続けに起きた大スキャンダルは、一般人が法曹界に不信を抱くには十分であった。
ちなみに、この2つの事件にはいずれも真犯人がいたのだが、当時はその事実を暴くことができず、疑念は膨らみ続けることとなった。
更に、調子に乗ったマスコミがゴシップ記事を次々に発行したり、冤罪や捏造をモチーフにしたマスコットキャラクター(※)まで生み出したりしたことにより、法曹界や世間問わず、不信は社会現象にまで発展するに至った。
※「えんザイくん(左)」と「ねつゾウくん(右)」
これらが重なり、いつしか「手段を選ばず」の方針が重要視されるようになり、最終的には「検事も弁護士も捏造で対抗する」という無茶苦茶な光景がまかり通るまでになってしまった。そのため、「4」の時点では悪徳の弁護士や検事が蔓延っているのは勿論、彼ら法律家を育てるための学園でも、教師生徒問わず「手段を選ばず」「捏造」等という考えが支持されている。
一般人側も、そんな連中が管理している法を信用できる筈がなく、何かの事を解決するために犯罪に手を染める者も現れるようになった。そうなると単純に犯罪が激増するだけでなく、「発生した犯罪を裁くために犯罪を犯し、その犯罪を更なる犯罪で裁く・・・」というまさに悪循環に陥ってしまう事となるため、非常に性質が悪い。
最終的に、発端となった2つの事件の真犯人が逮捕されたことにより、成歩堂と夕神に対する疑惑は晴れ、法の暗黒時代にも終焉の兆しが見えるようになった。その後、検事側では「3」と「4」の間に新たに検事局長となった御剣怜侍によって、多くの悪徳検事が査問会にかけられ、一掃されるに至った模様。弁護士側も、正しき心を持った者たちが中心となって、界隈を立て直していくことになるであろう。
余談
法の暗黒時代がクローズアップされるようになったのは「4」からだが、『実際は「3」以前から暗黒時代だったのではないか?』という声も時々ある。確かに「3」以前の法曹界でも、不正や職権乱用を繰り返していた者たちはおり、「4」以降とは違う意味で暗黒だったのは疑いようもない。
しかし、「3」以前はあくまで一部の権力者が行っていたことであるのに対し、「4」以降は法曹界だけにとどまらず一般人まで欺瞞に染まっている等、単純にその絶対数が多いことが問題になっているのであり、そういう意味では、より広範囲に闇が浸透していた「4」以降の方が深刻である(当然前者も深刻ではあるのだが、そのベクトルが違う)。
そもそも逆転裁判の世界では、増え続ける犯罪を迅速に処理するために、最長3日で判決が出る「序審法廷制度」が採用されている。そのため、十分な現場検証が行われないまま裁判が始まることも珍しくなく、冤罪が発生しやすくなるのは想像に難くない。このような背景故、「3」以前の問題や「4」以降の暗黒時代も半ば必然的に起こったものとも言え、最初に記述した2つの事件が起こらずとも、遅かれ早かれ同じようなことになっていたのかもしれない。