概要
リチャード・マシスンの短編小説を映像化した、1971年のアメリカのテレビ映画。
主演デニス・ウィーバー、監督スティーブン・スピルバーグ。
荒野のハイウェイで何の気なしに追い越したトレーラーに、執拗に付け狙われる男の恐怖を描いたサスペンスムービー。
元々はテレビ映画として制作されたもので、後に劇場で公開され、当時無名だったスピルバーグの出世作となった。
スティーブン・キングのお気に入りの映画のひとつであり、「スピルバーグの最も独創的な作品」と称して絶賛している。
あらすじ
セールスマンのデイヴィッド・マンはカリフォルニアでの商談のために、自動車で荒野のハイウェイを走っていた。その途中で1台の大型トレーラーを追い越すが、そこから彼の悪夢は始まった。
トレーラーは、マンの車を執拗に追いかけ、追い抜いてはノロノロ運転をしたり、道を譲って先に行かせるふりをして対向車とぶつけさせようとするなど、悪質な嫌がらせを繰り返してきた。しかもそれだけにとどまらず、列車が通過している踏切に後ろからマンの車を押し込んで突っ込ませようとしたり、警察に通報しようとしたマンが駆け込んだ電話ボックスごと彼を轢き殺そうとするなど、次第にその行為は明確な殺意と共にエスカレートしてゆく。
振り切っても追いつかれ、隠れてやり過ごしても待ち伏せされて、得体の知れぬ相手の悪意と狂気に追い詰められてゆくマン。逃げ切れないと悟った彼は、遂にトレーラーと真っ向から戦う事を決意する…。
余談
- 悪意ある車が主役のホラー映画「ザ・カー」「クリスティーン」と比較される事が多い。その2作においては人外の魔物に操られた車自体が怪物となっているが、本作の敵のトレーラー運転手はあくまで人間である。ただしその顔は最後まで出る事なく、手足が映るのみという演出がなされた。これによって「大型トレーラー自体が意志を持った怪物」かのように印象付ける効果があった。
- トレーラーの運転手がなぜ殺意を持ってマンを付け狙うかの理由は、本作内においては最後まで明らかになっていない。原作小説では「ケラー」という名前の男で、アメリカ各地で同じような危険行為を繰り返して相手を死に追いやってきた殺人ドライバーであり、マンはたまたま目をつけられたに過ぎなかったという説明がなされている。
- 「ジョジョの奇妙な冒険」第3部のホウィール・オブ・フォーチュン戦は、この映画にインスパイアされた部分が多い。
- マンがレストランでトレーラーの運転手を探るシーンは、スピルバーグの尊敬する黒澤明による1949年の映画「野良犬」において、村上が遊佐を特定しようとするシーンのパロディ。
- 2017年に起きた東名高速夫婦死亡事故以降、煽り運転が注目あるいは潜在化していたものが露出されたことで、この映画も「誇張はされてるが荒唐無稽な話ではない」と静かに再評価されることとなった。
- 中盤、マンが電話ボックスを利用するシーンにおいて、電話ボックスに反射する形でうっかり監督のスピルバーグが映り込んでしまっている。