概要
不動明王の境地であり、彼から立ち上がる浄化の炎「火生三昧」に存在する明王。
サンスクリット語では「ウッチュシュマ」といい、これはインド神話の火神アグニの別名である。
アグニ自身は天部の神(火天)として取り入られておりべ別人扱いだが、闇を照らし穢れを焼き尽くす烏枢沙摩明王の特徴はアグニのそれをイメージソースにしていると考えられる。
日本においては真言宗、天台宗、臨済宗、曹洞宗、日蓮宗で信仰されている。不浄を滅する属性から厠(トイレ)にお札が祀られる事が多い。
呼称
仏典では後に「明王」がつかず単に「烏芻沙摩」「烏芻沙摩」と呼ばれる事が多い。大元帥明王に関係する修行書『阿吒薄倶元帥大將上佛陀羅尼經修行儀軌』では「烏枢沙摩将軍」、『薬師如来觀行儀軌法』では「烏芻沙摩金剛」と呼ばれる。「烏枢沙摩明王」表記は12世紀の日本天台宗系の伝承集成書『行林抄』にみられる。
燃え上がる炎のような髪型をしており「火頭金剛」と呼ばれる。その他の異称として除穢金剛、穢積金剛、受触金剛、不浄潔金剛、不浄忿怒、不懐金剛などがある。
エピソード
『陀羅尼集経』では軍荼利明王(こちらも「明王」がつかない)と登場。世尊(仏陀)が二人と「軍荼利菩薩」の印と真言を用い、毘那夜迦(ビナヤカ)等の悪鬼と不敬な者達を退散させる。
『ウッチュシュマ・ヴァジュラパーラ・スートラ』ではその高慢さに他の神々も手を焼いた、とある梵天王を調伏する。この梵天王は天女たちと遊び惚け、傲慢さを神々に指摘されるが、聞き入れず逆に彼らを神通力で束縛してしまう。他のところから派遣されてきた金剛の神々にも同じ目に遭わせてしまう。釈迦如来はその金剛智をウッチュシュマに変え、梵天王のもとに遣わす。梵天王は穢れた力を投げつける等抵抗したが通用せず、最終的には釈迦の足元に跪く事になった。
創作における烏枢沙摩明王
青の祓魔師では「烏枢沙摩」表記(読みは「ウチシュマー」)で登場。
御利益
家内安全、厄除け、福徳円満、現世利益 ……など、他多数
戦国時代には“体内の女児を男児に替える”と言われ、男児授受の利益があると大いに信仰された。
御真言
オン・シュリ・マリ・ママシュリ・マリシュシュリ・ソワカ
オン・クロダノ・ウンジャク・ソワカ (※解穢真言)
解穢(ゲエ)真言は、文字通り“穢れを解く(≒祓う)”御真言で、トイレ掃除の際に唱えると様々な御利益があると、現在でも実しやかに伝わっている。