作者は広瀬けいた。連載期間は1996年7月号から1998年4月号まで。
単行本はA5判で全2巻。略称は『樋渡』。物語のカウントは『しめきり○発目』。
概要
タイトルの通り架空の高校である「私立樋渡高校」の漫画研究会を舞台にした作品。
公式のキャッチコピーは暴走漫研ギャグマンガ。
キャッチコピーが示すがごとく、エース掲載・関連作さらには往年の名作をも怒涛の如くパロディのネタにして容赦なくイジりまくった、伝説のパロギャグ漫画である。
特に『エース』系の看板であるエヴァとガンダムに対しては自重という概念そのものを放り投げてイジり倒してあるため、両作のガチなファンに対しては読む人を確実に選ぶので、要注意。
四方八方を敵に回しかねない壮絶なネタ振りと1回7Pというページ数の少なさから、往時には単行本化は絶望視されていた。「無事に単行本が出てよかった…」というのが、当時の本作ファンの偽らざるホンネである。
今のエース読者に対して説明するならば『ケロロ軍曹』(吉崎観音)を高年齢向けにしてパロとギャグのエッジをギリギリかつスタイリッシュに効かせまくったっぽい(あくまで「っぽい」のがミソ)作品、とでも言おうか。ある意味では『少年エース』における『ケロロ』の先達、と言ってもいい。
ちなみに単行本2巻は同作者の別作『神ノ手人材リース』が同時収録されている。同作においてはラストに安八がゲストで登場している。そのためか同作に関連した内容のイラストにも本作のタグ(あるいは略称の『樋渡』タグ)が付される事がある。
↑こーゆーの(いわゆる神満)が『神ノ手人材リース』ネタの代表例
あと単行本化自体はされているものの発表掲載全ストーリーの単行本収録そのものは現在でも成されていない。(なので全ストーリーを読みたければ国会図書館や古書店で連載時期の『少年エース』を一通り漁る必要がある)
登場人物
- 安八志郎
- メイン画像。本作の(客格)主人公。樋渡高校漫画研究会の部長にして同校の番長。本人は体力的にはフツー(むしろ虚弱側)でケンカもさほど強くないが技術力はピカ一(というか、明らかにオーバーテクノロジーの持ち主)で、その技術力をもって高校の裏の権力者の地位にいる。時に行き過ぎて大事な部員を自らの研究のモルモットにしてしまう事も。
- 主武装はビームサーベル(実は改造チャッカマンによる超高圧ジェットバーナー)とリュック式ミサイルポッド。連載後期にはE.T.フィールドという心の壁を利用したシールドすらも体得した。武装の原料を調達する関連から、ご近所のその筋である角川組と繋がっていたりする。(が、元々樋渡漫研そのものが同組と深いつながりがある。詳しくは後述)
- ものの見事なガノタであるが、一年戦争の世界に放り込まれたら即ザクに乗り込み塗装を青くして「青いイナズマ」と名乗りたいとのたまっている。
- 鈴里京一
- 入学早々、鉄パイプで安八を襲い返り討ちに遭った「クールで危険な(イカレた)悪党(ワル)」に憧れる一年ヤンキー。安八の非常識っぷりから何を勘違いしたのか「クールで危険な悪党」になるため、彼が束ねる漫研に入部する。
- 基本的には常識人で、いわばツッコみ役。非常識な漫研部員たちに振り回される日々。安八の「やりすぎ」に思わず敵の心配をしてしまう、お人好し(?)な一面もある。いわばもう一人の主人公(主格主人公)だが、物語(読者)の視点的には彼の立ち位置で描写される事も多いため真の主人公でもあるかもしれない。
- のちに草ノ瀬れなの『20Pのラブレター』(作中作)の信者系ファンになる。
- 犬養竜美
- ビオランガオ
- 草ノ瀬れな
- 樋渡高校に通う、現役女子高生ヤンキー漫画家。実は京一に惚れてしまい告白のためのラブレターを20ページの漫画にしたら、それを編集者に見初められてデビューしてしまったというヒト。
- のちに京一が『20P』の信者系ファンになった事で物理的な距離は縮まったが、精神的な距離は思いっきり遠くなり、泣きぬれる日々を過ごすことになった。
- 武田
- 樋渡高校の近隣学校にして不良の吹き溜まりな世紀末系底辺校「凡蔵工業高校」の番格。安八を狙い毎度のごとく樋渡高校に殴り込み抗争を仕掛け、そして、いつも安八ひとりに返り討ちに遭う。
- 実は密かに面倒見も人も良く、付き合いもよい性格。武田は安八を「血で血を洗うライバル」と思っているが、安八は武田を「楽しく付き合ってくれる友達」と思っている。
- のちに京一と「同病相憐れむ」ように意気投合していく。
- リトル・グレイ
- 連載後期に登場した新入生・新入部員。ニューメキシコ州ロズウェルからの留学生。実は地球侵略のための日本調査員。だがさらに実は、ガチのオタク。1999年に地球を侵略する予定だが、好きな漫画やアニメが複数あるため、それが終わるまでは侵略の予定を延ばそうとか考えている。
- よりにもよって安八と共同開発者仲間となり、彼のオーバーテクノロジーがさらに飛躍する事となっていく。
- 角川組の組長
- 恰幅のある禿頭の男性。コワモテ集団角川組を束ねる組長。安八に材料を供与し、それと同時に彼に兵器(ではないかもしれないが)を受注する、アレな人。
- 可愛い孫娘に、素敵な服を買ってやりたいという微笑ましい動機からコスプレ衣裳を買っていく小意気で心優しいじーちゃんでもあったりする。
- 樋渡高校漫研初代部長。その独特な80'sタッチは現在でもコアなファンが多いらしく、樋渡高校漫研の同人誌にゲスト原稿を寄稿した折には行列もできた。
余談
絶版本の復刊を嘆願するサイトで3巻の復刊を求める署名が集められている。ただし本作は、前出の通り全2巻であり3巻は存在しない。
一応、企画自体は存在し、先走ってISBNまで取得していた(参考:hon-toの該当データ)ようだが、発刊編集の最中に当時の上層部やメディア提携先あたりからストップがかけられてポシャったものと思われる。つまり、この第3巻とは「幻の3巻」なのだ。(……まぁKADOKAWAだしなぁ…)
なので、実はこの投票、単行本未収録エピソード(連載時、さすがにネタとしてヤバいために単行本化時に封印された話や、連載終了後に一時的に企画として復活した時の話)があるので、それらをまとめて3巻目にて出して欲しいということである。
実は件のサイトは未収録作品の単行本化も復刊投票として扱うシステムになっている。しかも、同一の作品であっても「既刊単行本の復刊」と「未収録作品の単行本化」に対しては、投票企画を切り離し、それぞれ別投票として扱うシステムになっている。
そのため、この3巻投票に関しては「復刊にならない(から復刊サイトで投票するのは違う)」と言われる事もあるが、それはサイトのシステム上、復刊投票として取り扱わなくてはならないだけであり、実際に言葉通りの「復刊」として投票しているワケではなく、本質は「未収録作品の単行本化の希望投票」である。(件のサイトにおいて、これに該当する復刊投票には「未収録作品」のタグがきちんと付されている。もちろん本作3巻の「復刊投票」にも同様のタグがキチンとついている)
関連タグ
樋渡:略称・表記揺れ