カカカカカーッ、これが概要だ!
「中華の覇王」と呼ばれた伝説の料理人、秋山階一郎の孫。16歳。作中では「ジャン」と表記されることがほとんどである。
階一郎の死を機に、彼のライバルであった五番町睦十の店・『五番町飯店』に世話になるところから物語が始まる。
痩せマッチョで、身長はやや低めの坊主頭。刃物を並べたかのような凶相で、少年漫画の主人公とは思えないような悪人面に「カカカカカ!」「クックックッ!」「ケケケケー!」という悪役のような笑い声が特徴。性格も「噛みつきまわる野良犬のよう」と形容されているほど危険な男である。
両親はある事情により死亡しており、階一郎からは男手一つで折檻を受けながら、赤城山中で料理の手ほどきを受け続けた。背中には今も階一郎から受けた無数の切り傷があり、他人にはそれを見せようとはしない。
祖父のことは生前は「じいちゃん」と呼んでいたが、病で味覚が無くなったのを機に焼身自殺してからは死に逃げた彼を負け犬として「ジジイ」と呼びつつも、秋山の名を誇りに思っており、それを守る方法が勝利だけだと信じている。
階一郎のスパルタ教育の甲斐あって、中華料理に関しては(あらゆる意味で)ほぼ無敵であったが、最初期ではマンツーマン経験しかなかったゆえに、大人数向けの宴会料理がうまくできないという弱点を一瞬だけ見せていた。
また彼の粗野で破天荒な言動は審査員の心象を悪くしがちな点も、彼の好きな「勝負」の上では大きなマイナス要素である。観客や審査員からの罵倒や悪評を大胆かつ繊細な料理でひっくり返しつつも結局は悪辣な言動で元の木阿弥にしてしまうのが醬のお家芸。
料理は勝負だ、決まってんだろ!
モットーの「料理は勝負だ」も、もちろん階一郎の教え。
勝つためならば、殺人以外は文字通りなんでもする。
もっというと、それが勝つためでなくてもなんでもしている。
以下にその事例を挙げる(ネタバレ注意)。
- 営業時間が終了した料理屋にズカズカ入り込み、机を叩いて無理やり炒飯を作らせたのに、(料理人がいい加減に作ったからだが)一口も食わずにゴミ箱に流し込んで一言「これ─もしかして料理?」(記念すべき第一話の所業)。
- 特殊な調合によりキノコの幻覚興奮作用を引き出し、審査員を多幸感中毒にして高得点を書かせる。その後審査員は病院送りになった。
- ライバルが作る料理の脂っこさと審査員の満腹度を見越して、甘いスープを先に出し、後のライバルの料理を食べられなくする。そして「お前の料理なんか誰も食わねーよ ザマーミロ!」と高笑い。
- 一応フォローすると、その対戦相手は良い子ちゃんなのだが、料理人の父親からも「勝負のための料理には全く向いていない」と評され、勝負の連続で審査員が満腹に近い状態である上、自身の料理の審査が後になることを考慮せずに重く、冷めると味が落ちてしまう料理を出してしまったことが敗因であり、ジャンも「熱いうちに食べてこそ極上」と料理の味自体は認めている。また、ジャン自身も後にこれと同じ過ちを犯して負けている。
- 悪魔のような笑みで『料理は勝負だ!おまえらも審査員もみんな血まみれにしてやる!!』と啖呵を切り、ありったけのハトの首を掻き切り、生き血でデザートを作る。
- 新しい春巻のアイディアを求め、「この店の都合はどうでもいい 俺の都合が大事なんだよ!」と静止を振り切って外国料理屋の厨房に突入する。
- 市場で買った大量のカワハギの肝をその場で捌いてかき集め、残りは「犬にでもくれてやれ」と後始末もせず去ろうとして魚屋と大ゲンカ。
- ミニスカを履いて女装してライバル店の映るTV番組に潜入し、生首を模した料理をプレゼントし、さらに爆竹で放送事故を起こす。
- 香りの調合で味覚潰しを行ってきた対戦相手の包丁を、その前に予め塩酸をぶっかけてめちゃくちゃにしていた。
- 生魚を持った相手の足をひっかけて倒す。
- 対戦相手が自分の料理の様子をよく見ていることを逆手にとってわざと塩を入れず、調理時間終了後にこっそり塩を入れる(本来ならルール違反)。
- 高笑いしながらチェーンソーを振り回す(大型サメの解体のために必要だった)。
- 大会予選でガス管を潰してガスを独り占めにする。さらに天井に届くような火柱を立てて消火用スプリンクラーを意図的に発動させ、ライバルたちの料理を水浸しにして台無しにする。そしてこの作戦を掻い潜った料理人がいたと聞くと「ふざけやがって!」と逆ギレ。しかも仮に作戦を掻い潜っても醬が作ったのは強力な火力で油を飛ばしたサッパリしたチャーハンの為、後に審査されるチャーハンがどれも脂っこいと感じてしまう二段構え。
- 料理に使うため、会場の金網によじ登り、金網をゴリゴリと包丁で切り取って破壊(ただし、調理用に巨大な網が必要だった)。
- 食べて欲しいなら土下座をしろと大谷に踏み躙られながら言われ、延々と土下座の状態をキープし続ける。
- サメ肉とほぐしたフカヒレを極寒の冷凍庫の中で長時間、数千本ものもやしの一本一本に注入する。
- ダチョウ牧場のダチョウを盗み出し、生きたまま首を切り落とし、様々な調理を試しつつ食い散らかす。
- さらに後日別のダチョウ牧場に無許可で侵入し、生きたままダチョウの首を切り飛ばし、生肉を食いちぎる。そして自分に懐かないダチョウに一本背負いを食らわせる。その一連の現場を牧場主に見られたが、殴られただけでなぜか逮捕されない。
- ジャンは審査員への意趣返しにゲテモノ料理をテーマにする。幾つかのゲテモノ食材はたべやすく作ったものの、ウジ(無菌で衛生的に食用で問題自体はない)だけは受け付けないだろうとこっそり(でも大量に)仕込んで料理を審査員に食べさせる。バレたら自分でもウジを生きたままむしゃむしゃ食って見せる。
料理漫画でしょ?これって悪役のやることだよね?と思われるかもしれないが、残念ながらすべて料理漫画の主人公の所業である。
ただ彼の名誉のために言っておくが、ジャンが闘うライバルたちにも何でもする連中が多数おり、必ずしもジャンだけが異常というわけではない。前述の通りジャンは殺人以外なら何でもしているが、ライバルたちの中にはトラックでジャンを轢き殺すことすら厭わない者までいる。そんな危険な連中に対抗するために大喜びで、じゃなかった、やむをえずしている部分もある(なんだこの料理漫画…)。
もう一つ、実は相手が真面目に作った料理そのものには罵倒したことがない。逆に言えば、いい加減に作った料理は容赦なく罵倒したり、自分の料理や作品に真摯に向き合っていなかった対戦相手のその姿勢への痛烈な罵倒ばかりだったりする。なお、言葉は丸めないが、忠告として耳を傾ければ、割と欠点の指摘としては適格。敗者への容赦ない死体蹴りには変わりないが。
それに加えて負ける時は悪あがきをしたり、相手の実力を認めてなかったり、審査員にいちゃもんをつけることなく素直に敗北を受け入れている。こうした潔さと負けるときは酷い負け方をすることで、鬼畜さとのバランスをとっている。
また上記のエピソードのうちいくつかは、ジャンの機転と実力の高さ、料理に対して妥協しないものと示すものとして受け止められることもあり、必ずしも鬼畜な所業とは言えないとされるものもある。
更にジャンは、調理において派手なパフォーマンスで観衆の好奇心を煽り、自分の料理への興味を惹き出す戦略を有効に使っており、一見残酷に見えて、後に完成品で評価を一転させる手法をよく用いている。
もう一つ、彼は食べられない料理は絶対に作らない。彼の作る料理は間違いなく美味である。食べた後?サテナンノコトヤラ…。
人間関係?別にいいじゃんかそんなのは。
祖父から料理を教わっていたときは一切抵抗せず、極めて従順であった。しかし一度世に出ると、傲岸不遜、手段は選ばずのオレ様な振る舞いをしており、中も外も敵だらけ。特にキリコ、大谷日堂とは激しく火花を散らす仲である。
ただ、この様な人格になった原因は、間違いなく幼少期の経験にある。
赤ん坊の頃に両親の爆とコウを失い、祖父の階一郎からは虐待同然の折檻が日常茶飯事であった等、まともな愛情を受けた例がなかった。その一方で、常人には理解し難いが祖父との間には確かに絆があり、彼の行動の根底には「秋山の魔法を万人に認めさせる」と言う価値観を一途に(そして暴力的に)追及しているに過ぎない。
更には、通っていた学校でも家族がいないのを理由に性格の悪い教師から嫌がらせを頻繁に受けた結果、常軌を逸した攻撃的な人格の持ち主となってしまったと言えるのである。
なお、回想にて祖父が自殺する前のジャンは、普通に礼儀正しく医師の元に行き対応しており、性格が破綻した契機は祖父の自殺なのは間違いないだろう。
一方でキリコには自分を殴った時に出来た傷を見て何かを感じたり、落ち込む様子を見て助け舟を嫌味を言いながら出そうとするなど、意外と親切な面も多い。逆にキリコが料理で宴会失敗したジャンに、コツを教えてやろうとしていたこともあり、料理の思想はともかく腕は認め合う仲である。
また最初期は、キリコのことを「お嬢さん」「お嬢ちゃん」呼びするレアな場面が見られる。
料理の失敗を慰めてくれた小此木タカオにはかなり心を開いており、休日はバイクで遊びに行ったり年相応に笑う場面も見せる。小此木が悪役なら悪役らしく行こうと言ったときはそれに乗っかり、悪魔のコスプレをして料理対決に登場するようなノリノリぶりも披露していた。
また小此木に料理を教えるときは、祖父のような折檻や叱責をほとんどせず(蟇目との対決の際は、突貫で代打の小此木を仕立て上げるためという事情で頭突きをしたのが、唯一の例外)丁寧に教えている。
勝負のためなら悪役だが、勝負以外では意外と非常識な行動は控えめ、また自分の調理中に危険な場所に近寄った司会とカメラマンを咄嗟に庇う一面もあり、そんなギャップも彼の魅力である。
また『R』の最終回では、月給がずっと12万円と明かされており、そんな薄給でキリコに殴られつつこき使われているなんて、むしろぐうの音も出ないほどの聖人では?と見る目を変えてしまう読者も。
『2nd』ではキリコと結婚して息子が生まれているが自身は五番丁飯店を離れて海外で腕を振るっている。
息子からは母親の教育により自身をライバル視されているが、実際のところ家族関係は全く悪くなく、それどころか終盤でいざ再会したと思いきやちゃっかり第二子を作っていた。
タカオ曰く「教育がヘタ」とのことだがどうやら上記の件のように祖父のような厳しい教育が出来ないらしく、それをキリコが代わりに担っていたとも言える。(容姿が無印の頃に若返っているくせに)性格も大分落ち着いているので尚更である。
関連イラストが最高にうまいんだ!
ジャンの顔を他作品のキャラに移植するタイプのパロディ系イラストが目を引く。
関連項目もしっかり読んでみな!
黒鉄雀…別の世界線のジャン
秋山ジャン…同名だが息子。Jr.とも。
空手バカ一代…本記事で挙げたジャンの台詞「これ─もしかして料理?」は、芦原英幸が道場破りで使っていた「それ もしかすると空手?」という台詞のオマージュという説がある。