概要
室町幕府で寺社奉行職を務める武士。主君である足利義満に呼び出されては無理難題を押し付けられ、困り果てた末に景徳山安国寺を訪ねて一休さんの知恵を借りるという物語の橋渡し役を担う。
人物
本来は義満から「後小松天皇の落胤であり、南朝とも縁を持つ伊予の局の実子でもある一休を監視せよ」、つまりは足利将軍家を脅かす危険因子になりかねない一休の動向を探る密命を帯びており、奉行という要職を務める高官の身にありながら配下に任せずに単独でその任務を遂行している。しかし、気まぐれに任せた義満の戯れを痛快な頓智で返してみせる一休に何度も助けられているため、良好な交友を結ぶ仲に発展している。
若くして奉行職に就いた確かな実績と家臣随一の武芸を誇る知勇兼備の明朗快活で誠実な人柄の好青年であり、義満から度々名指しで呼び出されるなど主君からの信任も篤いのだが、時には将軍家の親類縁者や幕府関係者などからも頭を悩ませる難問奇題を投げかけられる一種の不幸体質であり、その度に馬を走らせて「一休さーん!一大事でござるー!」と安国寺に駆け込むのがお約束となっている。
また、西国屈指の守護大名として権勢を馳せる大内義弘の愛娘である末姫(すえひめ)に身分違いの恋心を抱いており、末姫もまた密かに新右ェ門に好意を寄せているなど相思相愛の関係にあるが、本人は全く気付いていないなど男女の機微には極めて疎い(一休も二人の想いには気付いており、仲を取り持とうとして和尚様から怒られた事がある)。
モデル
蜷川新右衛門とは、実在の室町幕府高官である、蜷川氏当主が代々名乗った通称。モデルとなった蜷川氏当主、蜷川親当については当該リンクを参照。テレビアニメ版の設定上では略記の『新右ェ門』、テレビドラマ版の設定上では史実に準拠した『蜷川新右衛門』が用いられている。
史実の室町幕府には「寺社奉行」という奉行人は存在しない。延暦寺を担当する山門奉行、興福寺などを担当する南都奉行、そしてその他の仏寺を担当する寺奉行、神社を担当する社家奉行などが置かれていた。義満は、主な寺社にはそれぞれ奉行人を設置して将軍家との取次を担当させる政策を取った。新右ェ門が寺社奉行と名乗りつつも安国寺以外の寺社にほとんど関与していないのは、ある意味ではこの政策に合っているかもしれない。
関連イラスト
「そこを何とかお願いしますよ一休さん。ねっ、この通り!」
「やれやれ、上様のご機嫌取りも一苦労でござる…。」