概要
時計塔の地下に広がる大迷宮(ダンジョン)。地上では失われた神秘が色濃く残っており、竜種の牙や純度の高い霊石といった現代では得られない貴重な呪体が眠る。地上からは消えた幻想種が闊歩している危険地帯。
ここから発掘される物品による収入や研究によって、時計塔は他の魔術組織より優位を保っており、時計塔の根幹をなす施設。時計塔がロンドンに居を構えた理由自体この霊墓によるものである。
そのため運営は学科、派閥から独立した秘骸解剖局が行っており、彼らの許可を得られなければ迷宮に入ることはかなわない。
多くの魔術師が成り上がりを夢見て迷宮にもぐるが、入るには解剖局と契約を結ばなければならず、そして発掘作業の任期を終える前に幻想種が跋扈する迷宮で死に絶える。一般の魔術師が迷宮に入ればまず出てくることはなく、現代の奴隷制度と揶揄される。その危険性ゆえにまれに生還したものは生還者(サヴァイバー)と称される。
この迷宮の由来については時計塔においてさえ不明だが、世界の裏側に行きそこなった巨大竜種の亡骸だという伝説が伝わっている。
なお霊墓アルビオンは存在する座標が現在の人理版図(テクスチャ)から厳密には決定されておらず、不規則に座標を移動させている。『現実に依存していないため、逆にどこにでもいられる』その性質から、本来地下数十㎞にある一地形が同時に地表近くにも現れることがあり、その彷徨っている空間から秘骸解剖局が管理している出入口とは別に、非合法に侵入することができる。
そのあり方は原理的には異なるが、彷徨海や異界に通じる帰らず(バミューダ)の海とそれぞれ性質が酷似している。
時計塔(クロックタワー)に対して時計坑(クロックホール)とも。
プレラーティによるとコーバック・アルカトラスの大迷宮よりは攻略の余地があるらしい。迷宮として作られた大迷宮と偶然生まれた迷宮との違いだろうか。
構造
竜の遺体は千切れていろいろなところに点在しているが、存命していたころは2kmに及ぶ巨竜であったと推察される。
一般の魔術師には「竜の遺体という魔力資源が眠っている」としか伝えられておらず、最初の発掘団もそう考えていたが、掘り進めていくうちにこの領域が異常なのは竜の遺体によるものではなく、そもそもこの一帯が「特別な路」であることが判明した。
竜はこの世界で朽ちようとしたのではなく、星の内海に通じる物理的な通路であるこの一帯で力尽き、「星の内海に移動する途中で死亡した」のである。
この一帯は星の内海に通じる物理的な通路ではあるが、竜ですら途中で力尽きる護りがあるため、人間の力では掘り進めることは不可能とされた。
一方で竜の遺体そのものが「潜りながら地下を削っていた」ため、時計塔の魔術師たちはそれにそって発掘をすることであっさりと最深部である地下80km地点までは到達できた。
本来であれば上部マントルにさえ食い込んでいるはずの地下80㎞地点は、人間の手で掘れる最下層と位置付けられ、天文台が建てられた。
ここから先の探掘は不可能とされているが、さらなる神秘を求めて、現代でも発掘作業は進められている。
- 0〜10km層『採掘都市』
採掘都市マギスフェア。探掘者たちが地上に戻るのがめんどくさいとして作り上げた生活圏が由来。ある意味で、もう一つの学術都市。
事件簿本編の図には「採掘都市アギスフェス」とあるが、これは誤字である。
- 10〜40km層『大魔術回路』
静脈回廊オドベナ。竜の遺体から剥がれたものか、はたまた土地そのものがもっていたのか、巨大な魔術回路が張り巡らされている。いかなる魔術師にも傷つけられず、それを避けて採掘した結果、巨大な回廊となってしまっている。
一説では、妖精たちが『妖精郷』を世界の裏側に移転させる際に使用された魔術回路ではないかと考察されている。
- 40〜60km層『古き心臓』
竜の心臓が発掘された場所。巨大な空洞であるため、以降この場を特別な祭祀場としている。
強力な炉心である竜の心臓を納める竜骨は、地上最高の強度を持つ神秘の結界であり、この区域の竜骨は破壊できず、欠片も採掘できていない。また、この空洞での戦闘はいかなるものであれ、外界に被害を及ぼすことはない。
心臓がここにあるのは、通常の防御結界が堅く、竜の胴体はここで止まってしまったからと思われる。
- 60〜80km層
人間が潜れる限界点。封印指定の本拠地、『天文台』カリオンがある。
竜の心臓部分から頭がずいぶんと離れているが、これは竜の執念が頭だけになっても地下潜航を止めず、胴から千切れても進んだからではないかとされる。
天文台がここにあるのは、最後まで諦めなかった『竜の頭蓋骨』、つまり『目』の残留魔力が今も生きているから。
また、探索者によってはここまでを『古き心臓』と呼ぶ。
- 80〜400km層『妖精域』
人間の踏み入れられる領域ではない、ということでこう呼ばれている。この先は前人未到。
その他、虚無の穴(ナル・ピット)と呼ばれる大穴が存在している。フリューガーの師匠であるゲラフはこの大穴を発見した時に竜の心臓との流れを感じ取っており、最低でも古き心臓まで通じているのは間違いない深度がある。
通常の採掘ではまず使われることのない経路であり、ここを降りて戻ってきた者はいない。
道中には魔眼を持つ巨大な蚯蚓などの生物が縄張りを張っているほか、さらに奥にはケルベロスやアバドンと同じ源流を持ち、同じ元型を持つ、あるいはそれらの大本と思われる霊墓アルビオンの主とも言うべき規格外の獣が存在している。
神獣の域に踏み込んだそれは、隔絶した権能を纏い、現代の魔術などでは絶対に伍することのできない古き心臓よりさらに向こう側のルールを身に宿した、文字通りの規格外。
存在の次元が違いすぎるという理由でⅡ世とグレイは普通に「見られた」だけで死にかけ、真名解放した最果てにて輝ける槍でさえ視線を逸らせただけで傷つけることはできなかった。
秘骸解剖局
霊墓アルビオンを探索するための組織。組織構造としては、全体を運営する「管理部門」、発掘・探索のための道具を提供し、アルビオンを研究する「資材部門」、発掘者たちを登録する「発掘部門」の3つに分かれる。
君主(ロード)の十二家に権利を独占されないために生まれた組織であり、血統主義の傾向が薄いのが特徴。彼らは魔術師というより、発掘のための魔術使いとされる。
霊墓アルビオンへの入り口は秘骸解剖局の関係組織で占められたミラービルのエレベーターでしか向かえず、地下45階、深度的には地下数百メートルの場所にあり、4か所しかないため人の出入りを管理することができている。
- 秘骸解剖局・管理部門
アルビオンに降りる人間や資材、多くのデータを握っている。アルビオンに降りられる入り口はごく少数しかなく、すべて管理部門が押さえているのだが、正式登録された発掘者にもこっそりと呪体を持ち出そうとする者が後を絶たないため、重要な部門。
- 秘骸解剖局・資材部門
発掘、探索のための道具をつくる部門。その性質上、魔術師の工房としては珍しく、同じものを量産する必要があるため、いくつかの魔術師の工房を合体させた「複合工房クリエグラ」を持つ。ここではかつて、魔女の道具が作られていたこともあるとか。
アルビオンの研究を進めているのもこの部門。前世紀末、罪人ガザミィ(悪霊ガザミィ。時計塔の厄ネタの1つ)が消えてからアルビオンの変化が激しくなり、激務に追われている。
- 秘骸解剖局・発掘部門
実際に発掘する部門。ドクター・ハートレスがやってきて現代魔術科が隆盛するまでは、新世代の魔術師が成り上がるにはここに登録され、発掘者として成功するしかなかった。
アルビオン(巨大竜種)
ロード・エルメロイⅡ世の事件簿で時計塔に伝わる伝説として語られていた存在。Fate/GrandOrder2部6章妖精円卓領域アヴァロン・ル・フェでもその存在が語られている。
神代が終わろうとしたとき、それでもブリテン島に残ろうとして死滅した幻想種。その遺体が霊墓アルビオンの礎となった存在であり、最後の純血竜。
現代において『竜』と呼ばれる、世界の裏側に移動した竜種たちの残した“竜の因子”が付着し、それぞれの生態を維持したまま“竜の生態”となったものとも違う大本の存在。
竜種における冠位(グランド)であり、地球が誕生した時から“いた”のであれば46億年近い生命情報を持っていたことになるという、人間の認知によって象られた神、信仰によって発見された神とは違う原初の超存在。
汎人類史において多くの竜種が神代の終わりを予見したとき、幻想が失われる前に世界の裏側へ移動する中で表側に長く留まっている。
この点についてロード・エルメロイⅡ世は『自分ほど強力な竜であればあるいは、とも考えたのかもしれないし、もっと別の理由が彼にはあったのかもしれない』と考察している。
理由はどうあれ「ここはもう人間の世界だ」とやがて受け容れ、世界の裏側へ移動しようとした時には既に裏側へ移動するための孔を穿ちようがないほどに神秘は衰退しており、転移のしようなどなくなっていた。
それでもアルビオンが諦めることはなく、『神秘による転移ができないのなら、物理的に移動する』と神秘の残る地底へと潜っていき、最期は地中で力尽きた。
ひとつの山にも匹敵するその遺骸はやがて地中のうねりによっていくつにも引き裂かれ、元から巨大だった身体をさらに大規模にした迷宮と化した。これが霊墓アルビオンである。
時計塔がこれの上にあるのは偶然ではなく、この巨大竜種の遺骸という最大級の神秘が埋まっていたからこそ、その上に魔術協会の総本山が建てられているのである。
汎人類史とは異なる歴史を辿った世界においては、『北の妖精』たちの大地である湖水地方の森となっている。
境界のアルビオンと呼ばれ、遺っている竜骨が失われると湖の栓が抜けて湖水地方一帯が海に戻り、地上と霊洞の境界が無くなってしまうらしい。
かつて朽ちる前にアルビオンは自らの左腕を切り離している。
切り離された左腕は湖の中で動くことすらないままのただの肉塊でしかなかったが、そんなものに興味を抱いて唯一自分に近づいたある妖精を参考にすることによって竜の妖精というものへと変性した。それこそが今も生きるアルビオンにして、汎人類史の異類婚姻譚の妖精の名を付けられた妖精メリュジーヌである。
また、ある事情から地上自体が妖精域として見なされておりアルビオンの遺骸も星の内海までの道を作り出している。
マーリンに案内されたカルデア一行は、時間短縮の魔術により一時間で星の内海に到達、その道中で隠された真実を知らされることとなった。
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魔術協会 時計塔(TYPE-MOON) TYPE-MOON 幻想種 ロード・エルメロイⅡ世の事件簿