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※注意編集

 このキャラクターは、その所業故に賛否両論が非常に激しく、時折過剰なキャラヘイト表現や、「似たような人物」など本来の記事内容の趣旨からズレた書き込みが行われる事があり、それが原因となって編集合戦へと発展する事も多々あります。


 原則中立性のある記事を保つ為、そして無益な編集合戦及び、絵師演者脚本家といった関係者全般への風評被害及び、誹謗中傷行為を防ぐ為にも、そういった悪意を含んだ書き込みは極力控えるよう、お願い致します


概要編集

CV:こおろぎさとみ (FGO Fes. 2022で行われた朗読劇『FGO THE DRAMALOGUE-アヴァロン・ル・フェ-』でのキャスト)

キャラクターデザイン:TAa


 2部6章『妖精円卓領域アヴァロン・ル・フェ』の登場人物。美しい女性の姿をした妖精。温和で人間に対しても好意的な態度で接する。珍しいものを好む。

 妖精國における六つの氏族「風の氏族」の長でソールズベリーの領主。

 オベロンからは「汎人類史の妖精に最も近い」と言われている。


 人間を顧みない妖精達の中では珍しく妖精と人間の共存を願っており、ソールズベリーは人間と妖精が仲良く暮らす平和な町になっている。その方針に反対している側近のコーラルのこともクビにしたりはせず、身近に仕えさせる器の広さを見せる。


 氏族長だけあって妖精として強い力を持ち、中でも彼女が持つ「風の声」は破格の能力で、通常だと不特定多数に発信するだけのところ、彼女が使うとオベロン曰く「妖精國全土の噂を聞ける」ほど。


 主だった人物関係としては、牙の氏族の長ウッドワスから好意を抱かれており、妖精騎士トリスタンからは嫌われている。また妖精騎士ランスロットにとっては大恩人であり、主君であるモルガンの命令よりオーロラの意思を優先する。

 諸事情からキャメロットへの出入りが禁じられているため、会議には通信という形で参加している。

 訪れたばかりのカルデア陣営をある程度助けたこともあるが、女王モルガンへの叛意と看做されればソールズベリー共々ひとたまりもない内容の発言をしており、妖精騎士トリスタンからは反女王派として討伐する機会を密かに狙われている。




関連タグ編集

Fate/GrandOrder 妖精円卓領域アヴァロン・ル・フェ 妖精 妖精國 ソールズベリー(Fate)
























美しすぎる女妖精への疑惑編集

 前編の公開時点では穏当な人物であると思われたが、後編で明かされた情報を合わせることで、不穏な側面が見え隠れする。

  • オベロンが言った「汎人類史の妖精に最も近い」ということは、トリスタンが妖精達の宴に取り囲まれながらも武器から絶対に手を離さないほどに危惧し警戒していた、気まぐれに善行も悪行も無邪気に行う、人間の常識が通用しない存在と言える。(被害者の具体例はこち
  • 追放された妖精達が集まるコーンウォールの村には、かつてオーロラに仕えていたハロバロミアも居た。
    • 件の村は “嫌われもの” になった妖精が集まって出来た領域だというが、彼が“嫌われもの”になった理由とは? 氏族長お付きの身分だったともあらば、人間不足であぶれたらしい他の下級妖精達と同じ事情とは考えにくい。
    • 彼曰く「罪を犯した風の氏族は罰として翅をちぎられる」らしく、風の氏族である己を誇る言動を取る彼自身も翅が無かった。描写された範囲では彼は人間を前にして本能に呑まれ暴走する仲間を止めようとする理性的な人格であり、故郷から追放されるような罪を犯す様を連想しにくいキャラに見えるが……
  • 妖精國では誰もが正体不明の大穴に近づきたがらず、無意識に避けてるのに、大穴を常に監視する形で建築されている罪都キャメロットを除けば最も大穴に近い位置にソールズベリーの街を構えている。
  • ソールズベリーの法に、独立権のない人間を脱走者扱いでベリル統治下のニュー・ダーリントン送りにするというものがある。基本的に各々の都市が独立している妖精國において、都市同士で人間の引き渡し条約が結ばれていることは異例であり、統治者同士すなわちオーロラとベリルの繋がりが示唆されている
    • ノリッジが厄災に襲われた場合の住民避難先についてキャメロットで会議が行われた際、ニュー・ダーリントンで受け入れることをベリルが表明した直後、出席した各氏族がそうはさせまいと独自の受け入れ案を表明した一方、オーロラだけは簡単な現状報告とウッドワスへの窘めの言葉以外に何も言うことは無く、自分の意見さえ終始表明していなかった。
  • 神という危険な存在に繋がる情報をモルガンによって消されていたブリテン異聞帯で、ソールズベリーは神を祀る聖堂を有する街であった。
  • ブリテン異聞帯で最も穢れている湖水地方に自ら踏み入り得体の知れない醜い肉塊を引き上げ、結果として妖精國で最も美しいと評される竜の妖精メリュジーヌを再誕させている。一聞すると美談のようではあるが、そもそもそこはただでさえ誰も近付きたがらない上ソールズベリーからも遠く離れ、さらに反女王派を掲げるノクナレアの居城に程近い場所である。一体何の用があってそんなところに訪れたのだろうか。鏡の氏族の元に訪れていたのでその帰りというだけの可能性は高いが……
    • 補足すると、湖水地方は鏡の氏族の本拠地であり、特にメリュジーヌが眠っていた昏き沼は彼らが竜種アルビオンを「ほねほねさま」と呼んで御神体として祀っている土地である。要約すると、鏡の氏族たちですら畏れ多いと安易に近づこうとしない(加えてサーヴァントや妖精に強い効力を示す毒性を持つ)沼になぜ風の氏族であるオーロラが接近、侵入できたのか不明である。
    • パーシヴァルはかつて、メリュジーヌが絶望の涙を流していたことを目撃している。その日は鏡の氏族が皆殺しにされた日でもあった。また、パーシヴァルはソールズベリーには近づきたがらなかった。
    • メリュジーヌの絆礼装において、オーロラのことを「醜悪にして害悪」と評しているとも読める記述がある。
  • 前編で未だ行方不明のままのマシュを探す主人公達の下へ、人間牧場に新しく『外の人間』が収容されたという情報をコーラル伝いで提供している。しかし皆がそこへ向かったところ、タイミング悪くモルガン直轄の妖精騎士三柱が一人妖精騎士ガウェインに遭遇してしまうのだが、いくらなんでも話ができすぎている。更に言うとこの出来事は、主人公達がオーロラに請われてソールズベリーにおける問題事を幾つか解決し、周囲からそれなりの評価を得て頼られ始めた矢先に起きた。
    • それまでの流れは『予言の子』一行の存在を知らしめ周囲に拡散させる意図にも繋がるため、モルガンを打倒したいオーロラにとっても悪くない話のはずである。オーロラまたはその周辺による情報漏洩や誘導があったと仮定した場合、臣下の裏切りや敵工作員の介入があったならともかく、そうでないなら態々自分から芽を摘んている行為に等しい。モルガンに目をつけられる万が一の事を恐れていたのなら、スプリガンの様に『我関せず知らんぷり』を決め込めば良いだけの話である。
    • なお、アルトリア・キャスターの妖精眼にはオーロラに二心が有ったとは映っていない。
  • 前述の通り風の氏族の長としての力で、離れた所に声を届けること、及び妖精國全土の噂=国中の情報を収集することが可能。つまりは機械が封じられているブリテン異聞帯においては情報戦で最上位の地位にあり、彼女の手の者が居ればどこでもスパイじみた真似が可能である。
    • ベリルは度々、姿が描写されていない人物と情報のやり取りをしていた。
    • 終編で、モルガンと「救世主トネリコ」が同一人物であること、一度滅んだ妖精國において妖精を蘇生させたモルガンのやり方がカルデア式召喚であることを、誰かの受け売りの形で語っている。前者はマシュを介して主人公側も知っているため、彼処に自身の協力者が居ればどうということはないが、後者はカルデア陣営…少なくとも主人公側は全く把握していない事実である。それ以外でカルデア式召喚のことを知り、なおかつ妖精國を蘇らせたことを理解しているのはベリルとモルガンのみ。モルガンがオーロラの情報源にはなり得ないので、残るはベリル。
    • この事実に嘘や悪意的な解釈を巧みに織り込んだ偽情報を「モルガンの真実」と称して妖精國中に流した結果、真に受けたキャメロットの邪悪な上級妖精達は叛意を翻し、オーロラは自ら直接手を下すことなくモルガン殺害に成功している。
  • ロンディニウムで反乱が起こった時、反乱した兵士達の一部は粛正騎士の姿をしていた。ブリテン異聞帯においてその装いをした兵士達が居るのはオーロラが統治するソールズベリーのみである。
    • 上記の粛清騎士はソールズベリーに於いて、パーシヴァル率いる円卓軍との同盟関係を結ぶことに激しく反対している(が、直後にオーロラの鶴の一声によって撤回した)。この際、上記の騎士によってロンディニウムはソールズベリーと近年険悪な関係であったことが語られるが、恐らくこれはメリュジーヌの涙を見たパーシヴァルが意図的に接触を控えさせたためではないかと推測される。
  • 心身共にボロボロにされ冷静な判断力を失っていたウッドワスを唆して思考の誘導を行いモルガンへの不信感を植え付けた。結果、モルガンは自身に最も尽くしていた彼に襲われ重傷を負い、自らの手で返り討ちにしなければならなくなった。
  • 2部のPVでは背景に自然現象のオーロラが描かれている。

 上述したオーロラの一連の行動と疑惑は一応妖精國に伝わる予言の成就と女王モルガンの打倒に繋がっており、結果として主人公陣営に対しても利として働いている。しかしながらあまりに不穏な描写ややり口の数々から、ブリテン異聞帯で最も危険な人物はモルガンではなくオーロラではないかと疑われている。


 そして女王モルガンが倒され、ブリテンを大厄災が襲う時、このような不穏当な立ち回りをする彼女は一体何を考えているのか、その本質と目的が明らかにされた。


2部6章ツイログ






















これより先、ネタバレ注意!!編集

























スプリガン

「なぜいま殺した!?『大厄災』の後で良かっただろうに!」

「妖精どもには纏め上げる王が必要不可欠だ!それはモルガンの歴史が証明している!」

「あの女、何を考えて───────考えて───────」


「いや。もしや……何も考えていないのか?」

「未来への展望も、権力への執着も、自分の思うまま国を運営する信念も─────」

「何もない、のか?ただ、"自分がきらいなもの" を排除するだけの女だったと!?」


「─────信じられん!」

「そんな頭で2千年も生きていられるなぞ、物の怪にも程がある!」


大番狂わせ

本質の露呈編集

 モルガンを流言で以て打倒した後、ノクナレアが次の女王として即位する戴冠式にて、オーロラは同じように縷言で以て王の氏族に下っていた他の妖精を唆し、ノクナレアとその配下達を謀殺して罪をアルトリア達に被せようとした。

 これによって妖精國は完全にトップ不在となり、疑心暗鬼になった北と南の妖精による再びの争いを止められる者が居なくなってしまう。更にはそのタイミングで、『大厄災』の予兆となるモース化現象が急激な速度で蔓延し始めたため妖精たちがパニックに陥り、次の王が誰か決められる状況ではなくなってしまったため、国中が大混乱状態になってしまう。

 これにはオーロラを傀儡とした国盗りを目論んでいたスプリガンも流石に困惑。何故ならどの道ノクナレアを蹴落とすにしても、国の維持を考えればまず戦後の混乱を治めることが肝要であり、王が居なければ防げない大厄災の存在も明示されていた。その点からすればこのタイミングでのノクナレア暗殺はメリットが一切無く、とりあえず誰でも良いから王を立てて事を治めさせることが最優先なのは政治の素人でもすぐに分かるはずだからである。

 また、苦しむ妖精たちの現状を憂う言動をしていたオーロラが中継ぎの王を立てず、妖精國の民の苦しみを長引かせ更なる危機に曝すような行動をするのは矛盾してしまう。自分が王になりたいにしても、前述したように中継ぎを奔走させ全てが終わってから蹴落とす方が無駄な労力を使わずに済む。

 なのに何故────と考えた末にスプリガンが呟いたのが上記の台詞。


 推察通り。オーロラはブリテンの平和を望む正義の聖女でも、ブリテンの支配を企む悪の黒幕ラスボスでもない。

 その実像は、自身が他者から称賛されること以外は何も考えておらず、そのために邪魔な存在を排除することを行動原理としていただけの自己愛の権化

 汎人類史はおろか、これまでの特異点異聞帯の物差しで見ても突出して異質な性質を持った、人間的な損得勘定や信念で測れない「妖精」という生き物の本質を象徴した存在だったのである。



「生まれた目的」という本能編集

 大前提として、TYPE-MOON世界における妖精は「生きていく上で全存在をかけて果たすべき『目的』を持って生まれて来る生き物」と定義づけられている。

 妖精はその「目的」を果たせなければ存在自体が枯れて衰弱死してしまうため、「目的」を最優先しようとする本能を持ち、オーロラの行動もほぼ全て自身の妖精としての「目的」に沿っている。※1


 彼女の「生まれた目的」は、『誰よりも自分がいちばん愛されること』

 なので、一見好ましく映ったオーロラの今までの言葉や行動は全て、ただ一時の、その場における他者から称賛を貰うためのパフォーマンスである。

 例えば以前から行ってきた人間の保護や、肉塊だった頃のメリュジーヌの保護等も、裏を返せば「心優しい人格者として評価されたい」から。「予言の子」一行に手を貸したのも、「助けを求めてきた相手を拒んだら相手から好いてもらえない」「『国中の皆を苦しめる悪い女王』を倒すのに一役買えば国中の皆は自分に感謝して愛してくれる」という自分本位な動機のため。


 また、「誰よりも自分がいちばんに」という部分が特に厄介で、自分より注目や称賛を集める=愛される存在が居るとオーロラは「目的」を果たせないことになる。加えて、妖精とは基本的に生まれつきの完成品であり、その中でも風の氏族は他の妖精のような働き・傷つき・学び・奉仕する役割を持たず、「ただそこにいるだけで価値のある妖精)という特に完成された存在であるため、その権化であるオーロラは自分を高めることを知らない。なのでオーロラは常に「いちばん」であろうとするための手段として、「自分以外のいちばん」が居れば相手の足を引っ張る形で潰そうとする以外の選択肢を持たないのである。


 ノクナレアを謀殺したのは「皆の暮らしを良くしてくれるかもしれない新しい女王として、皆が自分(オーロラ)より彼女に注目し、称賛と愛を捧げる」状況を壊すため。尚且つノクナレアが第二のモルガンとして自身の目の上の瘤になるのを防ぐために他ならない。

 スプリガンが「王位は後で簒奪できる」と高を括っていたのに対し、早々に謀殺の仕込みを済ませておく程にオーロラはノクナレアを危険視していた。何故なら、血液を与えることで妖精なら誰でもかつ縦横無尽に配下を増やせる彼女の能力は放置する程彼女の立場を盤石にし、なおかつオーロラから「自分をいちばんの存在として仰ぐ者」を奪うシェア争い上の大敵だからである。


 他にも回想シーンで、鏡の氏族を悪人に仕立て上げる言説をメリュジーヌに話して皆殺しにさせたことが明らかになっており、理由は作中で明示されていないためあくまで推測の範疇だが、オーロラの性質と予言の発表時期を照らし合わせると、「救世主の予言」という妖精國で最も求心力のあるものをもたらしたというこの一点であると考えられる。

 鏡の氏族の予言は未来視に等しい精度を誇り、その氏族が妖精國の未来を変える「救世主」と「真の王」の存在を示したことは、妖精たちの人一倍好奇心旺盛な点から見てもオーロラにとって自分以上に注目を惹きつける事柄であると同時に、『妖精國で一番愛される存在が自分ではなくなる』と突きつけられたも同然の仕打ちになる。

 「これから生まれる=既存の妖精にはなれない救世主」は勿論、「真の王」も具体的な名前が挙がらなければ「もしかしてオーロラ様では?」と期待する者も出ようが、彼女以外の名前が挙げられてしまえば皆そちらに期待するのは確実で、その時点でオーロラの存在感は二の次三の次になってしまう。従って「救世の予言」並びに「予言の子」と「真の王」など自分から「皆の愛=生まれた目的の実現」を奪う災害でしかなく、それを広めた鏡の氏族は、彼女からすればまさに厄災そのものだったのである。

 (なお、この予言を逆手に取って「予言の子」に相当する存在を自らの手で造り出し、配下に置くことで自身の求心力を維持・向上する試みから生まれたのが、ソールズベリーの養育院及びパーシヴァルだったのだが、具体的な方法はメリュジーヌとウッドワスに任せ切りにしていた上に、思うような結果が得られなかったため双方をあっさり放棄した)


 このように、彼女にとって他者とはあくまで自身の妖精としての「目的」に必要不可欠なものであり、言い換えれば「自分を褒め称え、飾り立ててくれる装飾品(アクセサリー)かつ舞台装置」でしかない。

 故にオーロラは、氏族長としての権限を使おうとはするが、その地位に氏族を守るべき責務がついていることは認識していない。予言より以前は鏡の氏族に自ら足を運んだりと、氏族長としての義務は果たしているが、それはあくまでも自身の「妖精の目的」に反しないからしているだけなのである。

 故郷であるはずの妖精國や領地のソールズベリーも、そもそもオーロラからしてみればモルガンが一代で勝手に作った箱庭とその一部に過ぎないため端から愛着は無く、いちばん愛されたいという「目的」より優先順位は当然低い。なので国や領地を護ろうとする動機が生じるはずも無く、そんな妖精國の次期リーダーや民の安寧などどうでもいい。

 妖精國として俯瞰すれば、「真の王」が居たところで結局は問題の先送りでしかないことと、厄災が収まればブリテン異聞帯の有り様はモルガンの作った妖精國ではなく当初の更地になることを考えると、どのみち妖精國を護る動機は彼女からは出てこないだろう。(本編では奈落の虫が全てを飲み込んだが、あれはあくまでも『楽園の妖精』が使命を果たし、大厄災を全て撃退した結果なので、大厄災が暴れるだけであれば恐らく、最初にベリルと汎人類史のモルガンが見た更地同然のブリテン島だけが残った状況に近い有り様になると思われる)

 実際に大厄災が起きても、彼女は「自身が受け持つソールズベリーの町や領民を護る」といった領主らしい意識は一切持たず、「そこにいるだけで価値のある妖精」という風の氏族の性質に従い「時間が経てば何もかも収まる、悩みごとはみんな誰かが解決してくれる」と他人任せにして自分は動こうとしなかった。

 確かに大厄災だけであれば上述の通り放置していても収まる現象ではあったとはいえ、それは “ブリテン全土の住民の生存率を度外視すれば” という話である。なので町が燃えようと民が暴徒と化そうと何事も無いように微笑み、対応を急き立てられれば「生き残った北の妖精を自身の造った養育院の内部駆除用機能で始末する」「領内に出たモース病の妖精の処理を町の人間達に丸投げする」「余所から助けを求めて逃げてきた妖精は見捨てる」といった場当たり的な棄民の指示を笑顔のまま次々に出し、挙げ句「妖精國や妖精達が滅んだら自分は外の世界 (汎人類史) に移り住む=自分を褒め称えてくれる人達がいる他の場所を探せばいい」と考え、一人さっさと実行のための算段を練っていた彼女の非情さは、側近のコーラルや画面の前のマスター達を唖然とさせた。

 (ある意味、妖精國の民たちの不安定さ・存在の軽さを理解しており、その有り様から考えると無駄なことをしなかっただけともとれる。とはいえ、妖精の悪性を目にして救うのを諦めても自身の民として最低限の庇護を図っていたモルガンや、嫌悪と良心及び責務から自身の手を汚してでも民であった妖精を滅ぼすと決めたバーゲストとオーロラの特性を比べると血も涙もないという印象は強い)


 そして彼女は、自分より注目され愛されるモノと同様に自分を称えないモノを敵視する。それは感情論のようなものではなく自身の「目的」を曲げかねない存在として脅威になり得るからである。

 それは自身の腹心や同胞とて例外ではなく、前編序盤で登場したハロバロミアは、オーロラに正論好き」と疎まれた故に翅をちぎられ追放された被害者だった。

 コーラルも「民を捨てて自分は安全な鐘楼に引き籠る」「外の惨状そっちのけで異邦の魔術師を庇護(=捕獲)し、 / 彼女から汎人類史の情報を収集する事にばかり関心を寄せる」といった方針に異を唱えた=オーロラの意思より他の妖精達や人間達を優先した=オーロラを何よりも一番の存在として扱うのをやめた為――――

無題


 虫に変えて踏み潰した。


 実はこうした彼女の本質は章の前半部分で片鱗が出ており、「自分は妖精國の存続よりも妖精の在り方を大切に思っている」という発言は、自分がいちばん愛されている状況を作ろうとする彼女の意志が「自分の生存」や「世界の維持」よりも優先順位が高いことに繋がっていた。


 つまり前半で見せた人格者ムーヴは、ほぼ全てが上辺だけで中身の無いスカスカなハリボテ虚言だったということになるが、では何故こうした側面が「相手の嘘や悪意を見抜く妖精眼」を持つアルトリアに見抜けなかったのか。

 これはオーロラが、自身の口にした言葉を全て自分にとっての真実にする性質、言い換えれば一種の強力な自己暗示の力を持っていたため。

 彼女は誰にでもいい顔をしたい八方美人故に、状況次第でいくらでもブレる自身の言動で自己矛盾を起こさないため(更に言えば恐らくはモルガンの妖精眼を誤魔化すため)これを用いて「自分の全ての言動は無自覚に放ったものである」と内心で強く言い聞かせる事により、表層意識だけを見るのならこの段階で何も考えていないも同然の存在と化し、文字通り自覚無く「目的」のために行動できるようになっていたのだ。

 そのため彼女が口にする賞賛や罵倒は、真偽など関係なく表に出した時点で全てが「真実」であり、自分が心にも無い綺麗事の台詞を考えたり嘘を吐いたりした自覚も、他者を引きずり落とすために悪意を以て奸計を用いたり、事実の曲解や罪の捏造を行ったりしたという自覚も一切抱けない

 挙句には「『誰からも愛される美しいオーロラ』のイメージに傷が付くような自身の言動」も都合よく忘却・脳内補完してしまう始末で、上述の鏡の氏族虐殺の折にもオーロラは「自分がメリュジーヌを唆して無実の存在を一方的に滅ぼした」事実を忘却し、あんないい妖精達(鏡の氏族)を滅ぼす様な奴はこの世で最も穢らわしい存在だと周囲に心から嘆いて見せた。

 ノクナレア暗殺も自分ではなく「『予言の子』一行がやった事」になっていた (当初はノクナレアごと一行の毒殺をも図っていた事と、その中には『異邦の魔術師』まで含まれていた事さえ体良く忘れている) ため、「真の王」不在による大厄災の発生も因果関係や罪責は自分自身で撒いた種だと結び付かず、コーラルの件でさえ彼女の中では「軽いお仕置きのつもりだったが、“うっかり” 見失って “うっかり” 潰してしまった」という認識に書き換わっており、それを本当に真実だと思い込んでいる(恐らくもう少し時間が経っていれば更に記憶を捻じ曲げ「いつのまにか虫に変身していたから気付かなかった。悪戯でもしようとしていたのかしら」だの「誰かがコーラルを虫に変えて殺した」だの言い出していた可能性まである)。


 そんなオーロラの言動だけなぞれば、損得勘定も信念も存在しないという、統治者ではない有象無象の妖精たちの大多数に近く、他の町の統治者には当てはまらなかった特徴であり、普段の統治者としての行動とのギャップも手伝ってスプリガンが困惑したのはあるかもしれない。

 そして彼女を取り巻くのもまた、彼女と価値観の共通度が特に高い風の氏族が主であることから、彼らはオーロラを無邪気に支持し続け、オーロラは妖精國での地位を維持し続けた。

 更に「その時々の理想の自分に忠実に生きられる+都合の悪い事は綺麗に忘れられる」という性質故に自己肯定力が決定的に強かったことから、自己肯定ができなくなった妖精が輝きを失いモースに堕ちるという妖精國特有の破滅条件にも当てはまらず、結果として妖精暦の代から数えれば実に約3000年もの年月を生きながらえてきた。


 妖精國が、汎人類史との乖離が大きいことを示す異聞深度がEXの数値を示している根拠を説明するならば、妖精としての「目的」という軸を外すと人間には理解が難しくなるオーロラは十分にその役割を果たすキャラクターの一人である。


備考編集

 ノクナレア(及び、未遂に終わったが「予言の子」一行)を暗殺する際、オーロラは流言だけでなく毒を用いていた。

 養育院に設置していた内部駆除用の機能も、「指先ひとつで眠るように旅立てる」という言から毒ガスの類ではないかと推測できる。


 ここで連想されるのが、妖精暦400年に起きたウーサー暗殺である。

 ウーサーも毒によって殺され、トネリコ曰く犯人の動機は「自分が気に入らないからというだけで」だった。そして脚本担当の奈須きのこ氏自身による同人誌『Avalon le Fae Synopsys』で、この同じ手口の暗殺もオーロラによるものだったと言及されている。(後述「余談」も参照されたし)

 また、ブリテン異聞帯の始まりであるケルヌンノス殺害も手段は毒殺であり、となればこれもはじまりのろくにんのうち、風の氏族の祖となった亜鈴が主導したのではないかという疑念が持てる。※2


 文字通りの「毒婦」としてのオーロラの性質は、先祖代々のだったのかもしれない。


  • オーロラの実力

 大厄災がソールズベリーを襲い、町にモース病の症状が蔓延し始めてもオーロラは全く動じなかった。モルガンや協力者のオベロンに対してはあれだけ警戒していたにもかかわらずである。

 これは危機感が無いというわけではなく、前述のメリュジーヌを毒沼から拾い上げた件から察するに、妖精起因の呪いは本当に彼女にとっては脅威でなかった可能性がある。


 また、前記した「妖精國全土の噂を聞ける通信能力」や、他の妖精を別の生き物に変えてしまうことで上級妖精の耐魔力を抜いて瞬殺できる程度の能力はあり、モルガンやウッドワスのような桁外れの戦闘力こそないが、判明している能力だけでもそれなりの生存能力と戦闘能力は持っていると言える。


 オーロラは刹那的にしか生きられない妖精ではあるが、見た目と口先だけの存在ではなく、そこは腐っても氏族長という他ないだろう。


  • その他捕捉事項

※1

 作中で「目的」に沿って生きていると描写された妖精はそれほど多くはなく(ホープ、ノクナレア、オベロン等)、オーロラはそれを律儀に3000年続けていたことを考えると、ある意味妖精として真面目だったと捉える声もある。

 ただし、そもそも個々の「目的」が明かされた妖精自体が一部ネームドキャラに限られ、(その内オベロンとアルトリア・キャスターは、周りの環境と状況下によって『そうせざるを得なかった』影響が強く、内心では「目的」を達成する事自体嫌々やっていた本来の使命=「目的」を捨てて永らえたモルガンも汎人類史のモルガンの介入によって変質したイレギュラーであるため、妖精國の他の妖精が「目的」に囚われず平然と生きていたと考えるのは早計と言わざるを得ない。

 事実モース化したホープや発狂したドラケイ、欲望に歯止めが効かなくなった結果「目的」が邪魔者の排除に切り替わり、周りのものを破壊・殺戮するだけの悪妖精(アンシリー・コート)化した妖精達の有り様を通して「目的」に沿う生き方ができなかった妖精の運命は明示されているため、無事な妖精は何らかの形で個々の「目的」に沿うように生きており、物語の本筋には関わらないから描写を省かれただけと考えるのが自然である。

 重ねて言うが、妖精の「生まれた目的」は「存在基盤に直結した本能、あるいは宿命そのもの」であり、「不真面目な者なら放り出せる程度の単なる課題」ではない。後天的に別の「目的」を見つけて上書き更新するケースもある(元の「目的」は新しく生まれる妖精に引き継がれる)という設定も出ているが、それも「自身の存在の全てをかけて果たすべきもの」であるため気まぐれ程度でコロコロ変えられる程容易なものではない。

 オーロラが一つの「目的」を保持し続けたのは「真面目だったから」というより「本能に忠実かつ『自分を変える』という概念を持たない種の妖精」だったからと考えられ、3000年続いたのも「そうした性質に偶々合う環境に居られた上、他者に潰されない強い力と高い地位が有ったから」という点が大きいだろう。


※2

 はじまりのろくにんの中にオーロラのような妖精が居た場合、亜鈴5人を毒殺してでも「目的」に沿って聖剣を作っていたのではと解釈する声もある。

 が、妖精は基本的に代々「目的」を受け継いで生まれるとされており、そう考えると異聞帯ブリテンの各氏族の祖であるろくにんとその後継である氏族長の「目的」は同じ=オーロラの祖先の「目的」も「自分がいちばんに愛されること」であって「聖剣鍛造」の責務は後から生じたもの…所謂「任務」や「指令」に近いと推定できる。

 この「目的」と「自分の預かり知らないところで人々や神々が死に、糾弾する相手も残らない」事態は決して対立はしない(自分を知っていてかつ責めず肯定してくれる相手だけ生きていればいい)ため、「自分を褒めてくれる気の合う5人の仲間と一緒にサボり、外の世界の滅びを見ても反省せず、生き残って糾弾しに来た存在を毒殺」という流れは成立しないとは言い切れない。(「サボりを咎める口喧しい真面目ちゃんとして振る舞ったら嫌われるから、仲間に合わせてサボった」という可能性も、「自分は聖剣作りなんてしたくないし、自分だけ怠け者として失望されるのも嫌だから、残りの五人に甘え都合のいい言葉で誑し込んだ」という可能性も両方考えられる)

 「亜鈴は仔と違い唯一無二の存在なため、死んでしまうと『次代』は発生せず、生まれるのはあくまで同等の力を持つ亜鈴返り」という情報もあり、元祖の亜鈴と亜鈴返りがどこまで近い存在なのかは不明瞭=力は同等でも「目的」まで同じとは限らないとする意見もあるが、それでもセファールというブリテンからすれば未知の存在の襲来に予め備えるような「目的」が果たしてろくにんが生まれるより前に生じるか、襲来を確認してから「目的=聖剣鍛造」を植え付けたろくにんを星が生み出そうとして間に合うのかという疑問は残る。






知った上で付き合っていた面々編集

 性質を正確に理解すれば彼女を真に自分の陣営に引き入れることも不可能ではなく、実際それを分かっていたオベロンは相互利用できていた。ただし、その「妖精の目的」の内容故に、理解していても舵取りが難しいので、かなり慎重な交渉を要した。

 「オーロラが何も考えず気まぐれを起こしていたのではないか?」という考えについては、オベロンとオーロラは共謀してお互い情報共有をしており、オベロンの手広い情報網の一端をオーロラの風の声が担っていた事を前提に置くと考えにくい。

 何故ならオベロンの計画は、意図せぬ状況でオーロラが気まぐれを起こしただけで瓦解するからだ。事実、主人公一行がソールズベリーで妖精國における内事情の調査を兼ねた『社会勉強』という名の奉仕活動に励んでいた折には、領民から頼られだした=自分より目立ち始めたと看做して態と虚偽の情報を流し、間接的に粛清しようとしていたため、それに気づいたオベロンは脱出後さっさとソールズベリーには戻らない算段を取っている。

 そもそもオベロンの計画は「モルガンの排除」「聖剣の作成」「ケルヌンノスの排除」の3段階で成り立っている。しかし、ケルヌンノスが残ったままだとブリテン異聞帯の初期状態のような更地になるだけなので、ブリテン自体を消すには至らず計画を達成できない。したがってこの異聞帯の特徴である「聖剣が無い状況」で気まぐれを起こされるのは、オベロンにとっても都合が悪かった部分もある。故に人間牧場での一件直後、単独で密かにソールズベリーに向かい「一行は打倒モルガンに必要だ」と念入りに説いてオーロラを牽制していた。(一方のオーロラは必要ないと考えていた節がある。というのもこの出来事から分かる様に、一行の存在もまたモルガンと同じく「自分から『いちばん』を奪おうとする目障りな存在」である為、むしろ彼処もまとめて居なくなってくれた方が都合が良い上、他の大勢の妖精と同じく、あの女王に「予言の子」なんかが敵うわけないと見ていたからだ。事実、対モルガンという点に限って言えば打倒のトリガーになったのは当人の口先であり、主人公達は全滅寸前まで追い込まれてしまっていた)

 なので両者は少なくとも、打倒モルガンまでは協力出来ると相互理解した上で組んでいたと考えられ、このあたりもお互い打倒モルガンまでの協力関係だったという根拠である。

 とは云えど回想で分かる通り、お互いの本質が対極の特性を持っている事もあってなのか、線引きを越えない範囲かつ紙一重の際で探りあっていた節がある。ただし、オーロラが気まぐれを起こす事は計算内としても、タイミングについてはどこまでがオベロンの計画だったかは疑問が残る。


 オーロラを最も間近で見ていた一人。

 肉塊でしかなかった頃にオーロラに掬い上げられた彼女は、その時に見たオーロラの美しい輝きに魅せられると同時に深く愛し、その輝きを守ることを己の使命として新たな形を得た。

 そのため、オーロラが自身に向かって鏡の氏族に謂れのない罪を着せる考えを示し、遠回しに「始末してこい」と迫ってきた際も、「それでオーロラの輝きが曇らずに済むなら……」と従ってしまった。

 鏡の氏族はメリュジーヌ=アルビオンの遺骨を祀る大人しい種族で、メリュジーヌにとってはかけがえのない家族にも等しい存在であり、そんな相手を虐殺するなど当然耐え難いことではあったが、それ以上に「彼女たちの存在が注目を集めることによってオーロラの輝きが曇ること」「当人の願いを拒むことで自身がオーロラの輝きを曇らせること」「そのせいでオーロラが苦しむこと」「オーロラに不要とされること」の方が耐えられなかったのである。

 しかし、罪悪感を殺し虐殺を終え「オーロラさえ労ってくれるなら自分は報われる」と言い聞かせながら帰って来た彼女が目の当たりにしたのは、上記の通り、自身の所業を無かったことにして「犯人=モルガンの手先である妖精騎士ランスロット」「この世で最も醜い存在」「外見はどんなに綺麗にとりつくろっても、所詮は自分(オーロラ)の真似ごとをしているだけ。あんな汚いモノは思うだけでも汚らわしい」と、冷たい文句でメリュジーヌを切り捨てるオーロラの姿だった。この瞬間、メリュジーヌはオーロラが他者への労いや感謝を抱く余地の無いただの自己愛の権化でしかないと悟った。

 『予言の子』一行がオックスフォードへ遠征中に起きたロンディニウムの虐殺と炎上も、鏡の氏族と同様にオーロラから自分と義弟(パーシヴァル)のどっちを取るか二者択一を迫られ、悩みになやんだ末に前者を選び、彼の仲間と住民に加え最も大切にしていた一番弟子さえも、文字通り攻め滅ぼしたのだった……

 (しかもパーシヴァルの養護院における回想から推測するに、オーロラの言動とメリュジーヌが取った一連の行動、並びにその果てのやり取りに関してはこれだけで済んでおらず、他にも彼女の「目的」と気まぐれに基づく『お願い』によって、メリュジーヌは何度も人種や領民内外を問わず罪の無い者達を幾人も手にかけ、全て終えるとその度にオーロラの半理不尽かつ上辺だけの罵倒を自分の預かり知らぬ所で浴びせられ、その本質を突き付けられては苦しみ嘆いていたことが窺える)


 二度も家族を裏切った上、冤罪で何人も殺してしまった自責と罪悪感で押しつぶれされかけていたメリュジーヌだったが、それでもオーロラを見限れなかった。自身の願い、あの日見た輝きへの憧れからオーロラへの愛を捨てられなかった。それらを捨ててしまえば己は身も心も己でいられなくなると分かっていた……

 その想いは最後まで変わらなかった。


 なお、鏡の氏族はその予知能力の強さから、氏族長のエインセル以外は未来で起きる悲惨な事実を変えられないことに対し疲れ果ててしまった故か、皆がみな悲観かつ消極的になっており、滅ぼされる前から滅びを予見して受け入れていた。

 メリュジーヌに殺されるときですら彼女に同情し、妖精亡主と化してさえそれは使命のためであり恨みのためではないという、汎人類史の価値観で見れば聖人の域に達している。

 そんな彼女たちを悪人として滅ぼし、なおかつその罪から逃れたオーロラの非道さがより際立つというものである。






迎えた結末編集

 大厄災に襲われ、妖精や人間達が争い、燃え盛るソールズベリーの町に戻ってきたメリュジーヌをオーロラは「いつも通り」の笑顔で迎える。

 オーロラはコーラルの顛末を「自分の認識」に沿って語り、妖精國を捨てて汎人類史の世界へ行くという考えをメリュジーヌに明かし、共に来るように誘った。

 改めてオーロラの本質を見たメリュジーヌは涙を流し、オーロラの腹を剣で貫いた。

 動機は義憤や失望、憎悪ではない。

 今まで通り「オーロラの輝きが曇ってしまうことを防ぐため」「オーロラ自身が輝きの曇った己に傷つき苦しむことを防ぐため」である。(もしメリュジーヌが自身の為だけに生きる存在であれば、どんな手を使ってでもオーロラを生かすと明言している)


 己の欲望に忠実過ぎるオーロラは並外れた自己肯定力を持つが、それに必要な原動力を他者に依存している。

 しかしその点において、オーロラがその思想を危険視されず、それどころか氏族長として祭り上げられたのは、彼女の統治する民が疑うことを知らない純真無垢――言い換えれば幼稚で刹那的な愚か者ばかりの妖精たちと、元からこの世界での身分や立場が低かった人間たちという「相性が良すぎた」存在ばかりだったからと考えられる。

 では汎人類史ではどうなのか。メリュジーヌは「汎人類史の世界ならば、必ずその本質を見透かされ排斥される。そうすれば君は輝きを失ってしまうだろう」と見解した。


 後述の独白の中では、オーロラはメリュジーヌ関係以外は「目的」に関わる事項以外の「欲望を出した」ことが無いらしく、周囲に合わせて行動を選んでいた節があるので、メリュジーヌの語る排斥はいずれ訪れるとしても、それまでは数年か数十年か数百年かは分からないが持った可能性もある。「おいおいね」の件から察せられる通り彼女の時間感覚は人間の比ではない。

 しかし、その間に彼女の望むモノを一時的に手に入れられたとしても、たった一度の失策や不運だけで今まで積み重ねてきた全てを一瞬で失う汎人類史において、ただ美しく在り続けるだけで学習や向上といった変化を知らない彼女では適応が望めず、生き残ることは極めて難しい。

 (加えて言えば、妖精オーロラ=異聞帯出身の神秘の存在が外部に認知を広げていけば、いずれは抑止力妖精を超える人外神秘を秘匿する機関異端排除の専門機関の跋扈する、正に人外魔境と言う他ない世界とぶつかる事態となるのは目に見えているため、余程狡猾に立ち回らなければ自滅を待つのみである。この点についてはメリュジーヌが聞き及んでいたかは明確ではない)


 また、汎人類史では土地に染み付いた呪いに由来するモース化現象は無いと思われるが、それ以前にこの世界における妖精は、自分たちの純粋性が人間特有の狡智さと強欲さから来る醜い悪意に染まることを恐れ、一部を除けば自分たちから関わろうとすることは良しとせず、霊脈の多い秘境、あるいは神秘が色濃く残るイギリスの僻地から繋がる妖精郷に引き篭っているため、人間が居る土地で見かけることはまず無い。

 そんな皆からすれば、いくら自分たちと精神性が近い故の無自覚と云えども、オーロラがやっている事は自分の欲のままに振る舞う、ずる賢くて汚い人間と同類であるため、当然ながら歓迎されることなどまずあり得ない。(そもそも妖精國の妖精には、依存レベルで人間の存在が必要不可欠なため、人間が居ない妖精だけの環境で生活など当然出来るはずもなく、早々に瓦解するのは目に見えていた。オーロラも内心では薄々それを理解していたので、あえて此方の同胞と暮らす案は口にしなかったのだろう……)


 以上を踏まえるとメリュジーヌが言う所の排斥には、人間社会は勿論のこと、妖精社会においても爪弾きにされて何処にも居場所が無くなり、(自分を除けば) 文字通り独りぼっちで惨めに生きるしか道はないという意味も含まれており、どう足掻いてもオーロラは、彼女にとって都合の良い条件を満たせる妖精國でしか生きられなかったのだ。

 そして万が一運良く生き延びたとしても、最終的には妖精國でのそれとかけ離れた姿に変質する可能性が高く、そのまま悪妖精化するか、目覚めて鏡を見ては醜悪な立枯れた自分を見て「こんなのは自分じゃない」「自分は病気なだけで、明日になったら元に戻っている」と都合のいい自己解釈をしながら一日を終えて全てを忘れ、また目覚めては鏡を見て…という毎日を送る、或いは彼女を憐れんだメリュジーヌに介錯されるかの結末になると思われる。

 (ホープの様に妖精としての「目的」を忘れて自我を保てなくなる可能性もあるが、自己愛の塊という事は強固な理性とイコールである為有り得ない。またオーロラからすれば、心を壊す事は別な意味で無様な生き恥を晒すこの上ない屈辱であり、それが後述する良くも悪くも『特別な執着』を抱くメリュジーヌの目前であれば尚更無理だっただろう。それは当然自害も同様である)


 いずれにせよ、汎人類史に出たオーロラに待ち受ける苦しむだけの末路が現実になる前に手にかけたのは、彼女なりのオーロラへの愛と感謝の形であった……


 終盤、死ぬ間際のオーロラは、オベロン・ヴォーティガーンからブリテンを守る為に最後の飛翔をする、かつてメリュジーヌであった竜アルビオンを見上げた。

 廃墟と化した館で彼女は過去を振り返る。


 誰も愛さない代わりに、誰も欲しがらない。自分より輝くものが現れたら、無意識に陥れて排除する。ブリテンでもっとも美しい妖精。彼女は3000年間そうあり続けた。オベロン・ヴォーティガーン曰く「加害者であり傍観者でもあったからここまで生きてこられた」「ブリテンでもっとも無垢な簒奪者」だった。

 その一方で女王暦になってからは翅の輝きが落ち、自らが醜悪な生き物であることを心のどこかで自覚しつつあった。


 ただ、オーロラは過去に一度だけ自分の為にならない、つまり他者から褒められる目的でない事をした。それが、暗い湖の底で蠢く肉塊であるメリュジーヌを救い出した時である。もちろん、動機は一緒にいた侍女達に「ブリテンでもっとも美しい妖精が、ブリテンでもっとも醜いものを助ける」という自分の素晴らしさをアピールするだけの打算に満ちた行動だった。

 しかし、抱き上げた肉塊は嗚咽し涙を流し、その涙がオーロラにはこれまで見たこともないほど悲しく、温かく、真摯なものに見えた。そして、救助行為をしたことによる周囲からの羨望の期待ではなく、自分の行い自体に感じ入ったことも初めてであった。


 メリュジーヌは、触れたくもなかった肉塊であった状態から「きみのようになりたい」と思い、美しい妖精になった。その美しさは、長く生き衰えていたオーロラが憧れ、憎み、疎ましく思う程であり、彼女の心の醜さを湖面のように映し続けた。オーロラも、そんな美しい存在を生み出した自分は良いことをしたのだという、純粋な本心で微笑んだ。それは生まれて初めての、賞賛されたいという狙いを持たない微笑みだった。


 竜へと変貌したメリュジーヌの、飛びながら砕け散っていく姿を子供のように見上げながら


「…………消えろ、消えろ。……高く、高く。……どこまでも…………高く………………」


 祝福と呪詛、その両方が込められた言葉を呟き、勝ち逃げの如くオーロラは死んだ。

 血に染まりながらも、彼女は最後まで美しく(みにくく)輝き続けた。


 発言が全て真実になってしまう彼女にとっては、翅の輝きが落ちて醜い存在になりつつある事実は、たとえ自覚していても口に出したが最後、自分の存在を否定することを意味するため、今の今まで本音を語ることができなかったと考えられる。


 また、オーロラの風の声の能力を考えると、風の声をメリュジーヌに聞かせたのは意図的なものと考えられる。オーロラにとってメリュジーヌは妖精の「目的」の例外に位置しており複雑な感情を抱いている。メリュジーヌの鏡のような性質と、翳りを見せる翅と、最後の独白でメリュジーヌを本当に無垢と評した事をまとめると、彼女なりの筋の通った理由があった可能性もあろう。

 さらに同人誌『Avalon le Fae Synopsys』によれば、妖精國に生まれた当初のオーロラは16歳頃の姿をしていたが、ある時を境に20〜24歳の今の姿に成長してしまった……とされている。メリュジーヌの外見年齢も大体16歳以下に見える事を考えると、彼女の存在はオーロラにとって「自分がかつて失った理想の姿」であると同時に「誰にも渡したくないもの、二度と手放したくないもの」という側面もあったと思われる。事実『Fate/Grand Order フロム ロストベルト』においては (あくまでも本作における一解釈ではあるが)、メリュジーヌの無垢な美しさがいずれ自分を上回り、取って代わられてしまうことを深層意識で恐れながら、都合の良い難癖を付けて抹殺することも出来たにもかかわらず、自身の目的の為に使い潰す形で抑えつける範囲に留めていた。

 (モルガンとの決戦時、戦力面で言えばウッドワスが死んだタイミングでメリュジーヌも突撃させた方がより確実にもかかわらず撤退の指示を出していた点も、妖精國中の魔力を集めているモルガン相手だと彼女もただではすまないと無意識に考え守ろうとしたからという可能性はある。これを踏まえて見ると鏡の氏族殲滅とロンディニウム陥落の件についても、裏を返せば恋愛と家族間で思いの差はあれど、本来自分一人だけに向けられるべき情愛をメリュジーヌから抱かれている者達への嫉妬と当てつけと解釈する事も出来る)


 そのため、本音で自らより美しい存在を認めながら死ぬことは、「誰よりも美しくなければならない」という「努力が出来ない身」には重すぎる使命を持ち、それ故に他者を貶めることしか出来なかった彼女にとって、最も屈辱的であれど、救いある最期だったのかもしれない。


 日々枯れていくだけの生活がすなわち死ぬよりもおぞましいことである彼女にとって、汎人類史へ逃げようとした気まぐれの選択は地獄行きの切符であり、それを食い止められて最後まで称えられ続けたまま幕を閉じたことで、結果的に妖精らしく生まれ持った「目的」を果たした。改めて、自分に都合の良い世界を真実にしてしまう「妖精としての強み」は並大抵ではない。




 女王暦になる前の妖精暦から生きている彼女が「汎人類史への移住そのものが不可能か」どうかについては、妖精暦から存在するケルヌンノスの影響が汎人類史に波及しようとしていたことから、「女王暦で存在しているかどうか」の判定の可能性が高い。そもそも外に出られないならメリュジーヌが介錯する必要は無くなる。






余談編集

  • 「ブリテンを滅ぼした女」

 異聞帯の妖精國ブリテンの滅びの引き金を引いたのはオーロラだが、ここで汎人類史のブリテンの滅びの要因を振り返ってみる。

 汎人類史のモルガンはブリテンの王の証たる島の神秘の加護を持って生まれた、いわば「王としてブリテンを統べる」という「生まれた目的」を抱えた存在だったが、父王ウーサーとマーリンが次代の王として異母妹のアルトリアを作り出したことによって「目的」を阻まれ憤慨

王位を奪い返し「目的」を果たすために周囲を操り、時には我がさえ利用してアルトリアを陥れた結果、円卓どころかブリテン自体を滅ぼしてしまった

 妖精國のモルガン及び彼女のブリテンは、奇しくも「汎人類史の己のように『生まれた目的』に振り回された存在」によって滅んだと言える。

 またオーロラの最後は「全マスターからヘイトを買いつつも、自分に与えられた役割を全うした結果、美しいまま最期を迎えた」のに対してモルガンは「全マスターから同情を買いつつも、自分に与えられた役割を放棄した結果無惨な最期を迎えた」と対照的になっている。


  • 制作者からの人物評

 ライターである奈須きのこ氏から担当絵師であるTAa氏への依頼は「FGO史に名を残すほどの問題人物」であったとされている。

 過去に人類を滅ぼし得る規模の所業を行ったビースト達であっても、彼らには「その愛をもって人類を滅ぼす」という信念で一本の筋を通しており、それすらも置き去りにするほどの問題人物は中々に無いと言える。


  • 「成長」の背景

 オーロラの見た目が成長するに至ったきっかけや過程については不明だが、マスターの間ではモルガン(トネリコ)が妖精暦500年時に妖精國を復興させた頃ではないか?という説が浮上している。

 上述の通りモルガンはオーロラだけをモニター越しで会議に参加させており、キャメロットへの出入りも禁じている事から、彼女が妖精たちにもたらす影響力を熟知していたことが窺える。そして妖精暦の終わり頃――「救世主トネリコ」としての最後の活動時に起きた大きな出来事と云えば、言わずもがなウーサーと当時の円卓軍毒殺を発端とした、最初のロンディニウム炎上と崩壊である。

 ここからオーロラがウーサー殺害に裏側で関わっており、モルガンは彼女が風の氏族の長という立場の関係上抹殺出来ない (モルガンの実力を考えるとやろうと思えばやれたに違いないが、そうした場合オーロラと同等あるいはそれ以上の能力を備えた『次代』が発生して氏族長の席に収まり、同じ事が延々ループされる可能性が高かった。そんな堂々巡りが繰り返される位なら、今ある当代を抑えつけてしまう方が余程手っ取り早いし合理的である) ため、代わりの報復として当人の外見年齢を変える=老いの形で美しさを奪える力を示すことで同じ轍を踏ませない為の対策処置としたとも考えられる。事実見た目の美しさの重要性は、オーロラが自分の醜い本質を自覚し始め、メリュジーヌに愛憎を抱く根幹ときっかけにもなっている。


  • 汎人類史の「オーロラ」

 氏族長は全員「元ネタの妖精」が存在するのにオーロラだけは存在しないことから、汎人類史ではすぐに消され、伝承にも残らない程度の存在でしかなかったのだろうと思われている。

 が、地域や時代を広げれば「ペリー・ダンサー(イングランド)=フィル・ヒリーシュ(スコットランド)」や「アウローラ(ギリシャ)」など名称の意味が近しい存在はあるので、変質して存在している可能性もある。


その後の登場編集

 『サーヴァント・サマー・フェスティバル2023!』のミニシナリオにてアルトリアを題材としたゲームをプレイすることになったのだが、黒髭が自作したゲーム・『妖精界の村』にて彼女にそっくりな姿をしたボスキャラであるブラッドオーロラーが登場した。(当然アルキャスはこの事に驚愕していたが、当の黒髭は妖精國での顛末を知らなかったのかよく理解していなかった)

 これは元ネタの中の「ラスボスではないが攻撃回避力と追尾力が高く、ゲームクリアの高い壁になる難敵(しかも存在としてはラスボスより古株)」のポジションであり、モルガンやアルトリアから見た妖精國での彼女の立ち位置と一致するダブルパロディに仕上がっている。






最後に編集

 ユーザーをはじめとするコンテンツの受け手は劇中の登場人物と脚本家、及びそれを演じる役者は完全に別物である事を理解し、安直にそれらを混同して、尊厳を傷付けるなどネタ・冗談の範囲を逸脱する様な過激な誹謗中傷行為、過激なネタ行為は、絶対にやめましょう。

 それらは名誉毀損・信用毀損・侮辱罪・威力業務妨害・脅迫罪など刑法に定められた犯罪になり得る行為です。


 声優さん、脚本家、絵師さんに対しての誹謗中傷行為、ダメ、ゼッタイ。


参考リンク編集


関連イラスト編集

光彩【FGO第2部6章】⑥

オーロラ「I do.」


真・関連タグ編集

悪女 毒婦 ファム・ファタール 暗君 毒親 八方美人 虚言癖 虚仮 頭オーロラ

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